抄録
レコードリンケージにおける個人同定処理は,計算機が未発達であった時期から必要とされていたこともあり,国内では経験的な手法についての議論が先行している.本稿では,レコード値の一致型ペア数に対して,2項分布の和を想定し,ポアソン近似することで統計モデルに基づいた手法を議論する.また,経験的な知識の統計モデルへの利用方法についても検討し,計算機による同定処理の自動化を行う際に有用なレコード値の頻度を考慮した判定基準を提案した.解析例によって,統計モデルの適合度を検証することができ,新規でレコードリンケージを行う場合のみならず,既存の照合結果の検証にも有効であることが示唆された.