2017 年 82 巻 3 号 p. 189-203
アム・ダリヤ堆積盆地は, トルクメニスタンからアフガニスタン北部におよぶ堆積盆地で, 古くから炭化水素の存在が確認されている。アフガニスタン側では, 北西部のジャンガル・エ・カラン, ヤティムタク, クワジャ・ゴーガーダク, クワジャ・ブランのガス田, 南東部のアンゴット油田など, 多くの油・ガス田が発見されている。しかしながら, この地域の石油システムは, 研究が限られていて, 十分には理解されていない。
本研究では, アム・ダリヤ堆積盆地のアフガニスタン側における堆積物の埋没史と熱史を再現して, 炭化水素の生成と排出をシミュレートすべく, 一次元の堆積盆地モデリングを実施した。主な目的は, ジュラ紀前期~中期の根源岩の熟成度を推定し, キッチンエリアと炭化水素の生成・排出のタイミングを特定することである。
本モデリングでは, アム・ダリヤ堆積盆地を北西-南東に横断する公開された地質断面図を基にしたが, さらに実際の坑井から取得されたデータを参照して, 入力パラメータを補正した。また, 根源岩ポテンシャルが高いと推定された北西部・中央部・南東部の3つの向斜構造にはそれぞれ, 擬似坑井 (1~3) 配置した。
本研究により, ジュラ紀前期~中期の根源岩の熟成度は, キッチンエリアの場所によって異なることが推定された。北西部の向斜構造 (擬似坑井-1) では, 根源岩は白亜紀にすでにガス生成帯に達し, その後ガスを排出したと推定される。したがって, この地域の根源岩は, 隣接するガス田にガスを供給した可能性が最も高い。一方, 南東部の向斜構造 (擬似坑井-3) の根源岩では, 今まさに油生成・排出帯後期にあり, 油を排出し続けている。アンゴット油田の油は, この向斜構造から供給されていると推定される。中央部の根源岩 (擬似坑井-2) も油生成・排出帯後期の熟成帯にあるが, 擬似坑井-3との相違は, 古第三紀以降に隆起して, トラップが形成される前に炭化水素の排出が停止したことである。