教授学習心理学研究
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謎解き読みによる「ごんぎつね」(新美南吉)の教授学習過程
―― 文学教育研究において定番化している解釈を問い直す ――
梶原 郁郎
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2021 年 17 巻 1 号 p. 35-58

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抄録
本稿は児童の解釈の変容過程に着目して,謎解き読みによる授業「ごんぎつね」(新美南吉)の成果と課題を報告している。この作業は,授業記録と事前事後質問の結果を踏まえて遂行されている。 これまでの「ごんぎつね」研究では,ごんは死をもって最後に兵十と心が通いあえたとする,作品全体の解釈が定番化している。この全体解釈Ⅰ(心の交流)に対して,【人間と動物との[撃つ-撃たれる]関係をまだ知らない純粋無垢な子ぎつね】のごん像が新たな全体解釈Ⅱ(警戒心無)として提出されている(梶原,2018a)。これを受けて本授業内容は,【村人に撃たれるかもしれないという警戒心がごんにないことを場面⑥まで一貫して読み取りうるか】を中心発問として構想された。その読解過程の授業記録を本稿は成果として報告した後,事前事後質問の結果を考察している。26名中13名(50%)が事前の全体解釈Ⅰを事後には全体解釈Ⅱに変容させて,10名(38%)が事後も全体解釈Ⅰを維持した。この23名と他3名(12%)の結果を本稿は,本文各箇所の解釈の事前事後の変容との関連を踏まえて考察して,本授業の成果と課題を報告している。
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© 2021 日本教授学習心理学会
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