教授学習心理学研究
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テスト得点の伸びを抑制するのは本当に誤概念なのか? : 「論理操作の不十分さ」の可能性の検討
立木 徹伏見 陽児
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2008 年 4 巻 1 号 p. 10-16

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抄録
学習者が学習内容に関して誤概念を有しており,それが学習成果に大きく影響を及ぼすことは,今や常識と呼べるまでになっている。これまで学習者の誤概念を修正するためにさまざまな教授方略の有効性が検討されてきた。そこでの効果はおもにテスト得点の伸びという測度で評価されている。本研究の目的は,それらの実験においてテスト得点の伸びを抑制していたのは,誤概念に対する学習者のこだわりだけではなく,彼らの論理変換操作の不十分さもあったのではないかという問題を検討することにあった。「金属ならば電気を通す」というルールを取り上げ,大学生を対象に実験を行った。その結果,(1)教材文の記述内容(ルール)から論理変換する操作を適切にはできない大学生が少なからず存在すること,(2)事後テスト得点には,誤概念に対するこだわりよりも,読み物内容からの論理変換操作の不十分さが強く関わっていたこと,等が示された。テスト得点を従属変数として実験を行い,学習者の誤概念に学習成果抑制の原因を帰属させていた研究結果についても,学習者の論理変換操作の不十分さという観点も考慮した再分析を行う必要があることが指摘された。
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© 2008 日本教授学習心理学会
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