質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
特別支援学級の担任がバーンアウトに至るまでの心理的プロセスに関する質的研究
複線径路等至性アプローチ(TEA)による分析を通して
小沼 豊
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2023 年 22 巻 1 号 p. 145-160

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抄録
本研究は,初めて特別支援学級の担任を経験し,バーンアウトから休職を選択した1 名にインタビューを行い,心理的プロセスと特別支援学級(以下,支援学級)への意識の変容,教師への支援の在り方について明らかにすることを目的とした。方法論として,個人の径路の深みを探ることができる,複線径路等至性アプローチ(TEA)を採用し分析に用いた。その結果,〈子どもからの抵抗感〉,〈子ども理解・支援計画を立てる〉,〈学校行事と校務分掌に追われる〉,〈評価のための資料収集(テストづくり)〉,〈保護者との協力に不安がある〉という分岐点を経験していた。保護者対応のストレス,子どもからの暴力に対する無力感が蓄積し,休職に至るまでの選択が明らかになった。TLMG 図からは,特別支援教育と自身の実践(働きかけ)の関連について,行動と意識レベルでの内省が生じていることが示された。見通しがもてなく不安な状態の中で,「子どもとの関わり方の模索」「保護者対応」(行動)といったことに影響し,意識の変容が生じていた。本研究では,特別支援教育に携わった経験がない場合には,見通しや専門的見立ての援助を受けられるような体制の重要性が示唆された。
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© 2023 日本質的心理学会
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