質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
ソマティクスを基盤とする教育実践における教師の身体知
協働的インタビューとムービングTAEを用いた言語化の試み
山田 美穂橋本 有子
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2023 年 22 巻 1 号 p. 25-44

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抄録
本論文は,ラバン/バーテニエフ・ムーブメント・スタディーズ/システムに基づいた身体教育を実践する教師/研究者(第二著者)が,大学の演習授業において感覚的に活用している身体知を探索した自己研究を,共同研究者(第一著者)が記述し提示するものである。身体的体験の言語化という困難な課題に取り組むため,身体的ムーブメントを交えた5 回の協働的インタビューの後,TAE ステップにムーブメントを組み合わせた「ムービングTAE」を用いた6 回の分析セッションを行った。インタビューを通して,身体知の中核には教師が「マーブル」と呼ぶ全身での学習体験があり,試行錯誤を通してそれが受講生にマーブルを生じさせるための教授法へと変換されていることが示され,マーブルについての説明は細密になっていったが,十分な言語化には至らなかった。ムービングTAE ではさらに授業中の教師の行為についての身体知が探索され,教師と受講生との相互作用や授業空間における現象を含んだ理論が生成された。以上から,身体知の自己研究においては,教師/研究者が苦しみながらも自身の経験と向き合う方法と,他者との対話にひらかれる方法との間を反復することが重要である と考えられた。そのために身体感覚とムーブメントを活用して教師/研究者の体験を身体的に再現するという方 法の有効性と,そこに存在する共同研究者によるサポートの意義および留意点について考察した。
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© 2023 日本質的心理学会
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