抄録
本研究では,日常的に通常学級の授業に参加している特別支援学級の生徒を対象としたインタビュー調査を行い,他者との具体的なかかわりへの言及を交流と定義し,それがどのように語られるのかを,ディスコース分析によって検討した。その結果,生徒と研究者は,複数の解釈レパートリーに依拠して交流に言及することが分かった。これらの中では,異なるアイデンティティが構築された。生徒たちは,〈生徒〉,〈学習者〉,〈個人〉,〈級友〉,〈交流級の一員〉,〈部活の一員〉といった立場から交流に肯定的に言及していたが,〈生徒〉,〈学習者〉,〈個人〉,〈支援級の一員〉といった立場から交流とは距離を置く発話を行うこともあった。また,生徒たちは,前者のアイデンティティを重層化させて交流を肯定的に言及し続けることもあったが,後者のアイデンティティを参照してそこに条件を付与したり,交流をしない説明をしたり,機会が制約されていることを説明したりしていた。これらの結果から,交流を行わないことは積極的な合理性を持つ場合があること,生徒たちはアイデンティティを作り変えることで交流への言及を絶えず変化させていることが分かった。