2004 年 3 巻 1 号 p. 130-156
小津安二郎の映画『東京物語』をテクストにして,並ぶ身体配置と語り(ナラティヴ)との関係を,次の3 場面において詳細に分析した。1)並ぶ関係と対面関係の語りが交互に現われる場面の比較,2)対面関係から並ぶ関係へ移行する場面の分析,3)並ぶ関係において語りが不調であるときから協調的になる変化プロセスの分析。対面関係の対話的語りに対し,並ぶ関係の語りを共存的語りと名づけたが,そこでは,自己と他者が相互に主体となり,類似したことばを重ねて繰り返す「かさねの語り」がみられた。これらの結果をもとに,対面関係と並ぶ関係について,自己と他者の身体配置とかさねの語りのモデル化を行い,「かさね」概念を「うつし」「むすび」概念と関連させて考察した。