質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
質的心理学が切り開く地平
日本質的心理学会設立集会「シンポジウム」
大谷 尚無藤 隆サトウ タツヤ
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2005 年 4 巻 1 号 p. 16-38

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抄録

本論文は日本質的心理学会設立記念集会におけるシンポジウム「質的心理学が切り開く地平」の誌上再録版であり,3 人の話題提供者の発言が収録されている。大谷は教育工学の立場,無藤は保育研究の立場,サトウは心理学史研究の立場,をそれぞれ前提としながら,各人の研究と質的研究のあり方について検討を行い方法論や技法についての提案を行った。大谷は「質的アプローチは研究に何をもたらすか」というタイトルで話し,従来扱えなかった新たな研究テーマや研究分野の創造とそれによって研究の拡張と発展ができるのではないか,とした。無藤は「質的研究から現場を変革し,学界を開いていく」というタイトルで話し,質的研究をすることが研究者と実践者との関係,研究の場と実践の場の関係,狭い心理学と他の学問との関係をつくり変えていきやすいのではないかと主張した。サトウは「質的心理学は心理学以外を排除するための名称ではない」というタイトルで話し,学会設立の意義を科学社会学の視点から検討した。以上,質的研究,特に質的心理学という名称に固執するのではなく,量的研究との差異化や融合,様々な分野の融合,現場における様々なアクターの融合,ということが目指されるべきであると総括できる。

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© 2005 日本質的心理学会
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