質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
精神障害をもつ人に対するアセスメントツールの導入
臨床ソーシャルワークの新たな問題
吉村 夕里
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2006 年 5 巻 1 号 p. 121-143

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抄録

近年,日本のソーシャルワーク実践は,障害者ケアガイドラインのような,利用者の社会生活を評価するアセスメントツールが導入されるという,新しい局面を迎えている。本研究の目的は,利用者の自己決定やインフォームドコンセントの結果とされる,アセスメントツールを使用した精神障害をもつ人へのソーシャルワークのプロセスを明らかにすること,そしてツールを使用した臨床ソーシャルワークの問題点を明確化することである。筆者による臨床心理士や精神保健福祉士へのインタビュー調査の結果,①アセスメントツールを使用するソーシャルワークは面接場面における利用者‐専門職関係を基盤にしている,②ツールは利用者と支援者の非対称な関係のなかで使用されている,③ツール使用の合意形成は専門職の技術や方法によって恣意的に操作可能である,ことを明確化した。以上の結果は,利用者‐専門職間に対称的な相互交渉のシステムを確立することの重要性を明らかにしている。

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© 2006 日本質的心理学会
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