抄録
本研究の目的は,青年期の摂食障害傾向における,拒食と過食という食行動の心理的特徴について,拒食と過食に伴う感情・意識,および食行動に対する意味づけという観点から明らかにすること,および,その心理的特徴の推移するプロセスについて検討することである。予備調査では,大学生を対象にスクリーニング・テストによる質問紙調査を実施した。本調査では,10 名の調査対象者に対して半構造化面接を実施した。その結果得られた,拒食と過食それぞれの心理的特徴に対し,時系列的に分析を行ったところ,拒食の場合は,「痩せへの希求・自己改善欲求」「食事制限の習慣化」「節制へのとらわれ」「拒食への没入・自己目的化」という 4 つの段階が,過食の場合は,「ストレスに対する気晴らし・慰め」「むちゃ食いの習慣化」「過食に対する義務感・二重生活」「過食への没入,生きがい化」という 4 つの段階が示された。これらの結果をもとに,摂食障害傾向における,拒食と過食の心理的意味について考察した。