質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
人生の意味の心理学モデルの構成
人生観への統合的アプローチにむけて
浦田 悠
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2010 年 9 巻 1 号 p. 88-114

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抄録

人生の意味についての心理学的研究には,一定の知見の蓄積はあるものの,いまだ哲学的な理論背景と実証研究を統合するような包括的な理論モデルは見られない。そこで本論文では,やまだの質的データからのモデル構成の方法論を参考に,人生の意味についての統合的なモデルの構成を試みた。ここでは,Ⅰ基本枠組・Ⅱ基本要素・Ⅲ基本構図の 3 つのモデルを構成した。構成プロセスとしては,哲学・人間学・心理学の理論から理論的な枠組を構成する一方(Ⅰ基本枠組の構成),心理学における先行研究で見られている様々な意味の類型に関するデータをまとめて分類した(Ⅱ基本要素の構成)。そして,最終的にこれらの基本要素と基本枠組を媒介し,包括的に関係づける構図を構成した(Ⅲ基本構図の構成)。モデルでは,人生の意味の 4 つの基本的な原理として,「個人的意味」「関係的意味」「社会的/普遍的意味」「宗教的/霊的意味」を提示した。これらの原理は,「個人的意味」から「関係的意味」へ,さらには「社会的/普遍的意味」から「宗教的/霊的意味」へと展開する入れ子構造として捉えられた。最後に,意味システム・アプローチによって事例の分析を試みた。このモデルによって,これまで曖昧であった人生の意味の「幅」や「深さ」といった概念をより明確化するとともに,個人の多様な人生観を捉える新たな方法論やモデルを生成する可能性を模索した。

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© 2010 日本質的心理学会
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