仙台平野南部に位置する熊の作遺跡の発掘現場において,貞観津波に対比される砂層が発見された.砂層は有機質泥層に挟まれ,下位の地層との境界は明瞭であった.砂層の最下部は変形していることが確認され,堆積物の荷重によるものと考えられた.また,変形している砂層基底部と砂層主部の間にはほぼ水平の泥層が認められ,これは一連の堆積イベントで流速が大きく変化したことを示していると考えられた.この砂層には,Nitzschia brevissimaなどの半乾燥環境や陸域を好むとされる珪藻種や,Navicula gregariaなどの汽水生の珪藻種が多産する.放射性炭素年代測定を行った結果,砂層の堆積年代として,貞観地震の発生年代と矛盾しない年代(西暦745~930年)が算出された.