論文ID: 2108
中新世末にアフリカ大陸で誕生したと考えられる人類は,いつ頃からユーラシア大陸へ,そして東方アジア地域へと進出したのか.この問題を考察する上で,東方アジア最古級の人類化石であるインドネシアのジャワ原人資料はその要として注目されてきた.特に世界文化遺産に登録されたサンギラン遺跡はジャワ原人化石の中心的産地で,最も古いジャワ原人がどこまで遡るかについても鍵を握る遺跡であるが,編年の枠組みは長い間統一されていなかった.本稿では,まずサンギラン遺跡の概要を記した上で,年代観の変遷史・論争史を概観する.次に,当遺跡の編年の再構築と年代論争の終結に向けての筆者らの近年における研究成果を紹介し,ここ二十年来の通説─ジャワ原人の最古のものは150万年前を超えるという年代観─を見直す必要があることを述べる.