論文ID: 61.2106
伊豆・小笠原弧北端に位置する伊豆大島火山において1.8 kaのカルデラ形成以前の山体形成史を復元するため,東部のフノウの滝周辺にて先カルデラ火山新期山体を構成するフノウの滝湖成層・火山灰土層に着目し,それらに含まれるテフラの認定,14C年代測定,珪藻分析を行った.フノウの滝湖成層に含まれるフノウの滝テフラと同湖成層直下の火山灰土層から検出されたクリプトテフラは,それぞれ新島宮塚山テフラ (Nj-Mt, 12.8 ka),大室ダシ1テフラ (Od-1, 13.4 ka)に対比された.13 ka頃は伊豆大島火山の先カルデラ火山新期山体形成中であり,その形成期開始期に相当する可能性が高い.同湖成層を堆積させた凹地地形は,当時の海面高度からすると海岸線付近で発生するマグマ水蒸気噴火に由来するとは考えにくく,筆島火山と伊豆大島火山の接触部付近での噴出物による閉塞が起源である可能性がある.