論文ID: 63.2220
北上山地北部の外山川最上流部には,標高700 m内外に幅広い河谷を埋積して厚い堆積物をもつ堆積段丘が発達する.この段丘堆積物は河川性の砂礫層を主として,湿地的な環境下で堆積したシルト層を挟有する.段丘堆積物の最上部には粗粒物質を含まない粘土層が累重する.堆積物最上部の粘土層にはMIS 3後期の約36 cal ka BPに降下した十和田大不動テフラ(To-Of)が挟在する.段丘堆積物の5層準より得た花粉組成は,針広混交林の組成を示す.この段丘堆積物の容積は,流域の削剥速度から推算される土砂生産量を下回るものであり,段丘堆積物堆積当時(最終間氷期後期~最終氷期前期亜氷期)に斜面から河谷に供給された砕屑物は河川上流部に留まるだけでなく中流域まで流下して広い堆積段丘を形成したと考えられる.