第四紀研究
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大磯丘陵の更新世吉沢層の植物化石群集 (II)
辻 誠一郎南木 睦彦
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1982 年 20 巻 4 号 p. 289-304

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抄録

大磯丘陵北東部の土屋地域に分布する約14.5万~約11.7万年前の吉沢層の大型植物化石・花粉化石の群集を調べた結果;
1. 下部のSB-0からSB-3は大型化石として主にSapium sebiferum・Aleurites cordata・Vitex cf. cannabifolia・Paliurus・Stephania japonica を, 上部のKlp-2以降は主に Cryptomeria japonica・Alnus japonica・Berchemia を普遍的に産した.
2. 花粉化石の層位による産状から, 下位よりK-I, II, IIIの花粉化石群集帯を区分し, K-I帯はa, b両亜帯に細区分した. K-I, II, IIIを中井町才ヶ戸のKa-III, IV, V~VIの各帯にそれぞれ対比した.
3. 大型化石・花粉化石の層位による変動を総合し, Klp-2を境として下部の吉沢-I植物化石群集帯と上部の吉沢-II植物化石群集帯を設定した. 前者には暖温帯性の植物群が含まれるのが特異であり, 後者は暖温帯性植物群を欠き Cryptomeria japonica・Alnus japonica が卓越するのが特異である.
4. 植物化石群集の変遷は, 従来までに報告された古地理の変遷を支持し, 特にK-II帯での Quercus (Cyclobalanopsis)・Celtis-Aphananthe-Trema などの暖温帯性植物群の生育から, Klp-1の時期を吉沢期の最高海水準期とする従来の見解を支持した.

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