第四紀研究
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琉球列島への黒潮流入と第四紀サンゴ礁形成
木庭 元晴
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1992 年 31 巻 5 号 p. 359-373

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抄録
琉球列島の最も古い第四紀サンゴ礁は, 電子スピン共鳴年代測定法によって70~60万年前と測定された. 琉球列島でこれより前のサンゴ礁石灰岩といえば, 始新世のものである. 中新世後期~160万年前の間に堆積した泥岩・砂岩を島尻層群と称するが, これは漸深海環境で堆積した. 前期更新世には中国から沖縄に続く1,000kmの長さに陸橋が形成される. この時代以降のサンゴ礁形成の原因をここでは論じた. 黒潮がこの陸橋の背後の沖縄舟状海盆に入り込むまでは, 琉球列島のようなサンゴ礁縁辺地域にあってはサンゴ礁が形成されなかった. この根拠は現在の黒潮の三次元構造を使って本文に示している. ルソン火山弧が台湾に衝突し, 琉球弧と台湾の間の境界地域は深く屈曲し, 与那国凹地は深くなった. そして現在のように, 黒潮が与那国凹地から背弧盆に入った. この結果, 熱帯水塊が琉球弧に入って第四紀サンゴ礁が70~60万年前に形成され始めるのである.
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