本文は斜面地中水の集中流の機構に関して, 水文地形学および災害科学の立場から論じたものである. 集中流のタイプには, その発生因からみて次のようなものがある.
1. 地形支配型集中流: 1-1. 谷頭凹地に発生するもの, 1-2. 斜面末端部に発生するもの.
2. 地質支配型集中流: 2-1. 風化帯または運積土層下部に発生するもの, 2-2. 透水性の異なる地層の境界に発生するもの.
3. 複合型集中流: 上記の要因が複合したもの.
筆者は, 上記各種の集中流の例を紹介し, これらが斜面の発達とどのように関係しているかについて論じた. また, 地中流に関する野外実験の結果を紹介した, 実験によれば, 降雨流出の繰り返しとともに, 地中水の流出率が増加し, またピーク流量にいたる時間が短縮することが示された. これは溶流, あるいは浮流として斜面物質が排出して, パイプなどの大間隙が発達したことを意味する. このような過程は“斜面の疲労”としてとらえることができ, 斜面の不安定性を評価する上で重要である.