第四紀研究
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神戸沖ボーリングコアにおける完新世貝形虫群集の垂直変化
西日本の海峡の開口と相対的海水準変動に関連して
入月 俊明増田 富士雄宮原 伐折羅広津 淳司植田 静喜吉川 周作
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2001 年 40 巻 2 号 p. 105-120

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抄録

神戸沖の大阪湾で掘削された2本のボーリングコア(OB-1とOB-2)を用いて貝形虫化石を調査した.56試料から52種の貝形虫類が同定された.これらの貝形虫化石群集は数量解析に基づき,5つの化石相に分けられた.すなわち,下位から化石相はBM(湾汽水泥底相),SM(湾奥泥底相),SS(湾奥砂質泥底相),DS(湾中央砂質泥底相),DM(湾中央泥底相)に変化する.約11,000~10,000年以前は閉鎖的内湾奥(水深2~7m)に優占する汽水性種が多産する.約9,700年前に明石海峡が開口し,湾奥から湾中央部の浅海泥底種が増加した.貝形虫群集は大阪湾と播磨灘が水島灘と通じた約8,000年前に変化しはじめた.明石海峡からの潮流が強くなるにつれて,潮間帯や外浜の種が砂質堆積物とともに多量に深い神戸沖の大阪湾に運搬された.潮間帯から外浜に生息する種と湾中央部の深海泥底種の産出個体数が最大になる時期は5,500年前前後である.このことは神戸沖が明石海峡からの潮流の影響を強く受けるとともに,古水深が最大になったことを意味している(最大古水深は約33m).その後,2,000~1,600年前頃からの海退により,これらの外洋性の種は減少し,閉鎖的で有機物の多い湾の泥底に生息する種が増加しはじめた.これらの内湾性種は,明石海峡からの粗粒堆積物の運搬が減り,淀川からの洪水性粘土の供給が増加することにより,さらに増加した.本試料中には,日本の内湾に普遍的に生息するBicornucythere bisanensisが含まれ,その中でM型が大阪湾の南の紀淡海峡から最初に侵入し,その後,約8,350~8,000年前になってA型が優占するようになった.

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