目的:本研究は,母親の乳がん罹患にともなう思春期の子どもの困難を明らかにすることを目的とした.
方法:病院3施設と患者会2施設で実施した乳がん患者とその家族が経験する心理的変化に関する自記式質問紙調査のうち,12–18歳の乳がん患者の子どもが回答した自由記述欄の回答データを使用した.分析は内容分析を用いた.
結果:有効回答97部のうち,自由記述欄に回答があったのは27部であった.分析では,思春期の子どもは母親の乳がん罹患により,【『乳がんに罹患した母親』として,母親を想う中で生じる困難】,【自分自身に起きた意識の変化】,【家族内での家族員との関わりや自身の役割に対する困難】,【がん患者家族として周囲と関わる際の困難】を経験していることが明らかになった.
結論:家族員である母親の乳がん罹患という出来事が,子どもの思考に影響を与え,家族との関わりに変化を及ぼし,さらには家族以外との関わりにも影響を及ぼす具体的な内容が示された.看護支援として,母親が自身の疾患の状況を正確に伝えられるようサポートすること,同じ経験や気持ちを共有できるピアサポートを紹介することの必要性が示唆された.