家族看護学研究
Online ISSN : 2758-8424
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家族システムを解釈する方法としての『円環的認識論』―家族看護における位置づけと活用―
今井 美佳柳原 清子
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2024 年 29 巻 p. 51-60

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抄録

家族をシステムとして捉えた家族アセスメントの見方とは,家族集団としての家族メンバー間と,家族のメンバーと外部(ケアを提供する看護師も含まれる)との,複数の関係性に注目する事である.複数の人間同士の関係の理解を助けるものとして,円環的認識論(circular epistemology)がある.これは,相互作用やコミュニケーション過程を重視する見方とされる.G, Batesonは,人間の生における相互作用の存在を重視し,生命のコンテクスト(文脈)を学ぶという事を,二つの生き物の外的な関係の問題として論じた.そして,関係とは,相互作用の当事者である二者により,それぞれの単眼視覚を持ち寄った双眼的な視界を与える二重視覚で作り出される二重描写の産物であるとした.家族看護実践では,この二重描写を理解することが重要であり,そのために家族メンバーが「現実」として語る苦悩や病の語りに注目する.この語りは,家族システム内・外のシステムとの交流におけるメンバーの調整の産物であり,交流相手との二重描写をもとに家族メンバーが表す物語である.時間軸上に配置された経験を伴う物語から,家族メンバーのコンテクスト(文脈)を学び知ることで,援助者は,相互作用に関与する人々にとっての意味が付与された奥行きある情報で理解する事ができる.円環的認識論に基づき家族システムを解釈するものの見方とは,家族の相互作用を,当事者のコンテクストを通して現れる「関係」として可視化しようと試みることである.そして,そこでは援助場面の当事者である家族システムと看護師の関係も考慮される.

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© 2023 一般社団法人日本家族看護学会
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