抄録
インドネシア政府は,原油や石油製品(ガソリン・軽油)の輸入削減,省エネルギー・環境対策等の目的で,自国の天然ガスを輸送用燃料として代替することを国策として推進しているが,CNG車の普及はあまり進んでいないのが現状である.そこで,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,インドネシアのエネルギー鉱物資源省石油ガス総局(MIGAS)と共同で,同国でCNG車が持続的に普及する環境づくりを行うことに合意し実証事業を実施した.
本実証事業では,インドネシア最大の経済圏であるジャカルタ首都圏および東部工業団地等の周辺地域を対象に,日本の技術によるCNG充填所の設置やCNG車両の導入・運行を通じて,普及4条件(?国際基準調和によるCNG車の安全・信頼性の確保,?国際基準に沿った品質のCNG車用燃料の供給,?安価な燃料価格と優遇措置によるユーザー経済性の周知,?充填所の適切な配置と安定運営によるユーザー利便性の実現)に基づいた制度設計支援を行い,併せて省エネルギーと温室効果ガス削減を目指した.
洪水被害により一部の実証を断念したものの,実証計画策定時と同様の前提条件に補正して評価した結果,石油代替効果と温室効果ガス削減効果について当初の目標を上回る改善効果を確認した.また,制度設計支援の成果として,現地の実情や実証データに基づき提言書をまとめ,MIGAS総局長に提出した.インドネシア政府からは,当該提言書に対し高い評価をいただくことができ,国家エネルギー委員会(DEN)での検討において,すでに活用されている.