JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
解説
世界技術規則第24号に基づいた室内試験による 乗用車・小型商用車のブレーキエミッション計測
― GTR24和訳と解説 ―
萩野 浩之
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2024 年 2024 巻 11 号 論文ID: JRJ20241102

詳細

世界技術規則第24号に基づいた室内試験による乗用車・小型商用車のブレーキエミッション計測

― GTR24和訳と解説 ―

Laboratory Measurement of Brake Particle Emissions for Light-Duty Vehicles United Nation Global Technical Regulation No. 24 on June 21, 2023

— GTR24 Japanese translation with explanation —

萩野 浩之

Hiroyuki HAGINO

欧州理事会が可決した,自動車の新たな排出基準を定める規則Euro 7に従い,次世代の自動車は,ブレーキ粒子を計測した排出量の規制値が管理されたものが広く普及される.本稿では,乗用車や小型商用車から排出されるブレーキ粒子の計測法について,国際連合の欧州経済委員会から発行され,世界的に調和された手順書である世界技術規則第24号(GTR24)の和訳と解説を行った.

1. はじめに

環境へ配慮した自動車の普及を目的とした,新たな排出基準を定める規則Euro 7が欧州委員会から提案され,欧州理事会は2024年4月12日にRegulation(EU) 2024/1257を採択した1).欧州における次世代の自動車に対する型式認証や品質管理において,これまでは排出ガス規制を定めていたが,ブレーキ摩耗由来の粒子質量(PM,Particle Mass)排出に関する規制を新たに追加し,粒子個数(PN,Particle Number)も試験方法に基づいたブレーキエミッション計測が義務付けられる.試験方法について現行のEuro 7の通則には,2023年6月21日に発行された世界技術規則第24号2)(GTR24, United Nation Global Technical Regulation No.24)に基づいて計測することが明記されている.

GTR24には,乗用車・小型商用車に使用されるブレーキから排出されるブレーキ粒子質量および粒子個数(以下,ブレーキエミッション)の測定に関する世界的に調和された手順が記載されており,ブレーキダイナモメータを使用したWLTP-Brake cycle(Worldwide Harmonised Light-Duty Vehicles Test Procedure-Brake Cycle)3), 4) を実施するためのシステム要件,試験条件,測定装置の構成について,GTR24に定義されている.また,試験装置の校正と検証に関する要求事項を含め,ブレーキエミッション計測のための試験システムの設計と設定に関する要求事項もGTR24に規定されている.GTR24は英文で155頁あり,1つブレーキに対する試験の結果について,表13.6.に基づいた286項目を報告することになっている.この内容を読者がすべてを理解するにはGTR24に記載されたブレーキ制御に関する手順以外にも,エアロゾル(気体中に浮遊する粒子と周囲の気体の混合物)を測定するための専門的な知識を要する.

本稿は,現行GTR24の和訳と解釈を加えた解説記事であり,日本語では前例がほとんどない.全体を通して,段落や図表の番号が整合するように原文を和訳した.原文の背景にあたる「I. Statement of technical rationale and justification」は長文であるため割愛し,「II. Text of the GTR」のみ和訳した.必要に応じて,参考文献を追加した.原文に基づいて使用するべく用語は和訳していない.解釈には,例えば,原文で使用されている"Measurement"は"測定"と"計測"と和訳できる.日本産業規格(JIS Z 8103)5) では,"測定"は「ある量をそれと同じ種類の量の測定単位と比較して,その量の値を実験的に得るプロセス」,"計測"は「特定の目的をもって,測定の方法及び手段を考究し,実施し,その結果を用いて所期の目的を達成させること」とそれぞれ定義されている.このため本稿では,排出されたブレーキ粒子の質量や粒子個数などの個々の物理量を得ることを"測定",その"測定"した値を用いて,排出量の値を求めることを"計測"と和訳し,JISで定義されている用語の使い方を配慮した.本稿が日本におけるブレーキエミッション計測に携わる関係者の一助となれば幸いである.

2. GTR24の適用範囲

GTR24に適用される車両は,摩擦材とブレーキディスクまたはブレーキドラムの組み合わせによる,摩擦ブレーキを使用する,カテゴリー1-1およびカテゴリー2で,車両総質量は3500 kg未満である.

安全で環境にやさしい車の普及を目的とし,自動車の構造および装置の安全・環境に関する統一基準の制定と相互承認を図るため,国連の車両等の型式認定相互承認協定を締約した国6) は,GTR24を任意に適用することができる.日本では環境・安全の確保を考慮し,GTRの適用が推進されている7)

3. 用語の定義

3.1 車両ならびにブレーキダイナモメータの構成

3.1.1 "Category 1 vehicle" カテゴリー1車両

主として1人以上の乗車を目的として設計し,製造された,4輪以上の車輪を有する自動車をいう.

3.1.2 "Category 1‒1 vehicle" カテゴリー1-1車両

運転席の他に8席以下の座席を有するカテゴリー1の車両をいう.カテゴリー1-1車両は,立席の乗客を乗せることはできない.

3.1.3 "Category 2 vehicle" カテゴリー2車両

主として物品の運送のために設計・製造された4輪以上の車輪を有する自動車をいう.このカテゴリーには,(a) 牽引ユニットおよび (b) 特別な装置を装備するように明確に設計されたシャーシも含まれる.

3.1.4 "Mass in running order" ランニングオーダー質量

燃料タンクを容量の90%以上に満たした状態で,運転者,燃料,液体の質量を含み,製造者の仕様に従った標準装備を装着した車両の質量をいい,それらを装着した場合は,車体,キャビン,カップリング,スペアホイール,工具の質量を含む.

3.1.5 "Mass of the driver" 運転者の質量

運転者の座席基準点に位置する定格75 kgの質量をいう.現行規則では,0.5人乗りの追加質量とは,37.5 kgの質量を意味する.

3.1.6 "Maximum vehicle load" 最大車両積載量

技術的に許容される最大積載質量から走行中の質量25 kgおよびオプション装備の質量を差し引いたものをいう.

3.1.7 "Optional equipment" オプション装備

メーカーの責任において車両に装備される標準装備に含まれない装備のうち,顧客が注文できるすべての装備をいう.

3.1.8 "Standard equipment" 標準装備

締約国の規制法令に基づき要求されるすべての機能を備えた車両の基本構成をいい,構成または装備レベルに関するさらなる仕様を生じさせることなく装備されるすべての機能を含む.

3.1.9 "Vehicle test mass" 試験車質量(試験自動車重量)

走行時の質量に,供試ブレーキが搭載される個々の車両にオプションで装着される機器の質量(kg)を加えたものをいう.なお,日本の道路運送車両法では「重量」の語を用い続けているが8),物理量は「質量」であることと,日本産業規格(JIS)(JIS D 0102-1996)9)では,「車両総重量」にかえて「自動車総質量」を用いて明確に定義していることから,本稿では試験車質量とする.

  1. (a)   カテゴリー1-1車両(M1車両カテゴリー)

0.5人乗りの追加質量に相当する37.5 kg

  1. (b)   カテゴリー2車両 車両総質量 3.5 t 未満(N1 車両カテゴリー)

25 kgに最大車両積載量の28%を加えたもの.

3.1.10 "Road Loads" 走行抵抗

平坦で滑らかな路面上で,指定された速度および質量で車両を移動させるのに必要な総力または動力をいう.走行抵抗は,ドライブトレイン(駆動列)の摩擦損失を考慮する.GTR24では,全摩擦ブレーキのエミッション試験における走行抵抗を考慮するため,公称イナーシャ(慣性モーメント10) ~12))の13%という一定割合の低減が考慮されている.

3.1.11 "Tyre dynamic rolling radius" タイヤ動的負荷半径13)(タイヤ動荷重半径10)

タイヤメーカーが公表13)しているタイヤサイズ(mm)の1 km当たりの回転数(または1マイル当たりの回転数)に相当するタイヤ半径をいう.

3.1.12 "Brake force distribution" ブレーキ力配分(制動力配分10) ~12)

各車軸のブレーキ力と総ブレーキ力との比率を,車軸ごとに百分率で表したものをいう.

3.1.13 "Nominal Wheel load" 公称輪荷重10) ~12)

車両試験総質量,試験対象の車軸(フロントまたはリア),および2車軸間のブレーキ力配分の関数としての(等価)回転質量を意味する.これは,車両の走行抵抗を考慮する前の,供試ブレーキの荷重を表す.

3.1.14 "Test wheel load" 試験輪荷重

車両試験総質量,試験対象車軸(フロントまたはリア),および2車軸間のブレーキ力配分の関数としての(等価)回転質量を意味する.車両の路面荷重を考慮した後の,供試ブレーキの荷重を表す.適用輪荷重とも呼ばれる.

3.1.15 "Brake nominal inertia" ブレーキ公称イナーシャ(公称慣性モーメント10) ~12)

タイヤの動転半径に等しい回転半径における輪荷重のイナーシャ(慣性モーメント)10) ~12)を意味し(kg·m2),車両の総路面荷重を差し引く前の実車と同じ運動エネルギーをブレーキに与える.

3.1.16 "Brake test inertia" ブレーキ試験イナーシャ(試験慣性モーメント)

タイヤ動的負荷半径に等しい回転半径における輪荷重のイナーシャであって,車両の走行抵抗を差し引いた,実車と同じ運動エネルギーをブレーキに与えるものをいう.ブレーキ負荷イナーシャともいう.

3.1.17 "Brake torque" ブレーキトルク(制動トルク10) ~12)

ブレーキアッセンブリの接線方向の作動力から生じる摩擦力と,これらの摩擦力の発生点と回転軸との間の距離の積(N·m)を意味する.ブレーキトルクは,油圧ピストン面積,見かけの摩擦係数,供試ブレーキの有効ブレーキ半径の関数である.

3.1.18 "Hydraulic pressure" ブレーキ油圧

ブレーキと摩擦材との間にクランプ力を発生させるためにブレーキから供給される正味の圧力を意味する.油圧は,ブレーキの摩擦係数と有効ブレーキ半径と組み合わされ,実際のブレーキトルクを発生させる.

3.1.19 "Threshold pressure" ブレーキ油圧閾値

内部摩擦とシール力に打ち勝ち,ブレーキキャリパーのピストンまたはドラムホイールシリンダーを動かし,ブレーキトルクを発生させるための最小油圧を意味する.

3.1.20 "Piston diameter" ピストン径

キャリパーまたはドラムホイールシリンダー内の油圧ピストンの直径を意味し,総ピストン面積の計算に使用される.油圧ピストン径ともいう.

3.1.21 "Piston area" ピストン面積

ブレーキキャリパーまたはドラムブレーキシリンダーの片側に作用するすべての油圧ピストンの作用面積をいう.

3.1.22 "Effective brake radius"有効ブレーキ半径(有効制動半径,有効半径10)

ディスクブレーキの場合,回転中心と治具(固定具)に組み付けられたキャリパーピストンの中心線との間の距離をいう.ドラムブレーキの場合,有効半径はドラムの内径の半分である.

3.1.23 "Friction coefficient" 摩擦係数

ブレーキパッドとディスク,またはブレーキシューとドラムの間に働く接線力と法線力の比を意味する.ディスクブレーキの場合,供試ブレーキから得られる見かけの摩擦係数の値は,ブレーキトルク,ブレーキ油圧,ブレーキ油圧効率,有効ブレーキ半径,ピストン面積の関数となる.見かけの摩擦係数は計算(数学的)値であり,直接測定することはできない.ブレーキの効きとも呼ばれる.

3.1.24 "Brake fluid displacement" ブレーキフルード液量

ブレーキ減速時にブレーキキャリパーまたはブレーキホイールシリンダが作動液を過渡的に(体積的に)使用することをいう.

3.1.25 "Average by time" 時間による平均

ブレーキイベントを通して,ある測定値を平均化する方法を意味する.結果として得られる値は,2つのインスタンス(閾値と到達したレベルの終了点)間の積分を,対応する点間の継続時間で割ったものと同じ結果になる.

3.1.26 "Average by distance" 距離による平均

ブレーキイベント中の所定の測定値に対する平均化方法を意味する.結果として得られる値は,2つのインスタンス(閾値とレベル到達の終了)の間の積分を,この時間経過の間に移動した(または走行した)距離で割ったものと同じ結果になる.

3.1.27 "Sampling rate" サンプリングレート

オートメーションシステムが様々なパラメータをサンプリングする頻度を意味する.これは,各パラメータについて1秒間に測定されるイベントの数を表す.

3.1.28 "Fast sampling rate" 高速サンプリングレート

250 Hz以上のデータ収集システムの収録周期を意味する.高速サンプリングレートは,ダイナモメータ・チャンネル(ダイナモメータによる測定と制御に使用する伝送路)に適用される.

3.1.29 "Slow sampling rate" 低速サンプリングレート

10 Hz以下のデータ収集システムの収録周期をいう.

3.2 試験機の構成

3.2.1 "Brake dynamometer"ブレーキダイナモメータ

あらかじめプログラムされた試験手順で作動しながら,試験対象のブレーキに機械的および電気的な働きを与え,制御し,データを収録する技術システムをいう.

3.2.2 "Torque measurement sensor" トルク測定センサー

ブレーキアッセンブリのねじれひずみを等価出力に変換する電気機械装置をいう.等価トルクは,角減速率と実効ブレーキイナーシャに由来する.

3.2.3 "Servo controller" サーボコントローラ

ブレーキトルクまたは油圧を意図した値(設定値)に変調するシステムを意味する.サーボコントローラはまた,ブレーキ減速イベントの終了時にブレーキトルクまたは圧力の解放を制御するアルゴリズムも提供する.

3.2.4 "Climatic conditioning unit" 空調制御装置

輸送ダクトおよびブレーキエンクロージャーに,清浄で,調整され,制御された冷却空気を供給する空気処理システムをいう.

3.2.5 "Cooling air" 冷却空気

GTR24に記載されるダクトを通じて,空調装置によりブレーキアッセンブリに供給される,清浄で,調整され,制御された空気をいう.

3.2.6 "Cooling air temperature" 冷却空気温度

ブレーキエンクロージャーの上流で測定された冷却空気流の温度をいう.

3.2.7 "Cooling air relative humidity" 冷却空気湿度

ブレーキエンクロージャーの上流で測定された冷却空気流の湿度をいう.

3.2.8 "Cooling air absolute humidity" 冷却空気絶対湿度

ブレーキエンクロージャーの上流で測定された冷却空気流の絶対湿度をいう.

3.2.9 "Cooling airspeed" 冷却気流速度

形状および断面積が一定の直線ダクトの長さにおいて,リアルタイムで測定される冷却気流の平均速度をいう.

3.2.10 "Cooling airflow" 冷却気流

ブレーキアッセンブリに供給される冷却気流の平均流量を意味する.

3.2.11 "Maximum operational flow" 最大運転流量

GTR24に規定されるすべての関連する冷却空調要件および測定要件を満たしつつ,システムが達成できる最大冷却空気流量をいう.

3.2.12 "Minimum operational flow" 最小運転流量

GTR24に規定されるすべての関連する冷却空調要件および測定要件を満たしつつ,システムが達成できる最小冷却空気流量をいう.

3.2.13 "Brake enclosure" ブレーキエンクロージャー(筐体)

ブレーキエンクロージャーとは,空気力学的に設計されたチャンバーで,冷却空気が一方の端から入り,他方の端から出る.これは,ブレーキアッセンブリの周囲を流れる冷却空気に除塵されていない空気が入り混じるのを防ぐ気密された筐体である.ブレーキエンクロージャーは,ブレーキアッセンブリを覆う.

3.2.14 "Sampling Tunnel" サンプリングトンネル

ブレーキエンクロージャーとサンプリング面をつなぐ剛性のあるダクトをいう.エンクロージャー内で発生したブレーキ粒子がサンプリング装置および各測定器に向かって移動するトンネルの部分を意味する.

3.3 ブレーキ部品

3.3.1 "Brake under testing" 供試ブレーキ

GTR24に従ってブレーキ粒子排出量を計測するために試験機関が使用する摩擦ブレーキアッセンブリおよび関連する車両パラメータをいう.試験中のブレーキ.車両パラメータには,車体,パワートレイン,および摩擦ブレーキの割合を計算するために必要なその他のシステムからのパラメータが含まれる.

3.3.2 "Brake assembly" ブレーキアッセンブリ

ディスクブレーキの場合,ディスク,ブレーキパッド,ブレーキキャリパー,および(ブレーキアッセンブリをブレーキ治具およびダイナモメータに取り付け,固定し,接続するための)関連部品を意味する.ドラムブレーキの場合,ドラム,ブレーキシュー,バックプレートアッセンブリ,および(ブレーキアッセンブリをブレーキ治具およびダイナモメータに取り付け,固定し,接続するための)関連部品で構成される.ブレーキダイナモに適合し,接続するために,ブレーキ治具に取り付ける.

3.3.3 "Service brake" サービスブレーキ

運転者が通常の運転中に車両の速度を直接または間接的に,かつ段階的に制御したり,車両を停止(スタンドストップ)させたりすることを可能にするブレーキシステムを意味する.摩擦ブレーキまたは非摩擦ブレーキを含む.

3.3.4 "Full-friction brake" 全摩擦ブレーキ

ブレーキディスクまたはドラムと相手摩擦材との間の摩擦のみを使用する,車両に取り付けられたサービスブレーキをいう.

3.3.5 "Brake fixture" ブレーキ治具

テールストック(または非回転面)をブレーキダイナモメータシャフト(回転面)に接続してブレーキアッセンブリを取り付けるための機械装置または治具をいう.テールストック側(または非回転面)は,ブレーキトルクと関連する接線力を吸収する.回転シャフトは,ブレーキ試験の慣性による運動エネルギーをブレーキアッセンブリへ伝達する.

3.3.6 "Universal style fixture" ユニバーサル式治具

ブレーキアッセンブリを取り付けるために必要なものとは異なる追加的な延長部や突出部のない,円筒形で左右対称のブレーキ治具を意味する.ホイールハブはアッセンブリに含まれない.

3.3.7 "Post style fixture" ポスト式治具

ポスト式治具とは,ブレーキアッセンブリを取り付けるために,車両のナックルの代わりに,丸くて硬いチューブとアダプターを使用するダイナモメータへ取付ける治具を意味する.ホイールハブを取り付けてアッセンブリを完成させる.

3.3.8 "Brake calliper" ブレーキキャリパー

ドライバーのブレーキペダル入力をブレーキパッドのクランプ力に変換し,制動トルクを発生させる機械装置をいう.

3.3.9 "Brake disc" ブレーキディスク

ディスクブレーキアッセンブリにおいて,ブレーキキャリパーがブレーキパッドを回転するディスクを挟みこんで摩耗可能な装置をいう.この装置は,ブレーキが車両の運動エネルギーを熱に変換する際に,主要な熱吸収・放散装置として機能する.

3.3.10 "Brake pad" ブレーキパッド

プレッシャープレート(金属製)と摩擦材から構成されるブレーキキャリパーに装着される摩耗性の部品を意味する.ブレーキパッドはブレーキディスクを挟み,摩擦力を発生させ,ブレーキトルクを発生させる.

3.3.11 "Brake drum" ブレーキドラム

ドラムブレーキアッセンブリにおいて,ブレーキホイールシリンダがブレーキシューを回転するドラムへ押しあてて摩耗させる装置をいう.この装置は,ブレーキが車両の運動エネルギーを熱に変換する際に,主要な熱吸収・放散装置として機能する.

3.3.12 "Brake shoe" ブレーキシュー

円弧状の構造金属シューと(接着またはリベット止めされた)摩擦材で構成される部品を意味する.ブレーキシューをドラムへ押し付けて,摩擦を発生させ,ブレーキトルクを発生させる.

3.3.13 "Friction material part number" 摩擦材品番

特定の摩擦材供給者,配合,環境マークを識別するための固有のコードを意味する.

3.3.14 "Disc or drum part number" ディスクまたはドラムの部品番号

特定のディスクまたはドラムを識別するために製造業者によってラベル付けされた固有のコードを意味する.

3.3.15 "Brake runout" ブレーキ振れ(BRO)

ブレーキディスクのアウトボードブレーキ面の中心線から半径方向外側に10 mmの位置にあるスポットの横方向の変位の合計,またはブレーキドラムの内側摩擦面の中心線上にあるスポットの半径方向の変位の合計を意味する.

3.3.16 "Running clearance" 走行クリアランス

ブレーキが解放された状態で一回転する間の,ディスクのブレーキ面とブレーキパッドの間の軸方向の距離をいう.ドラムブレーキの場合は,ドラムの内径とブレーキシューの半径方向の距離.

3.4 WLTP-Brake cycle

3.4.1 "Driving cycle" 走行サイクル

車両の速度対時間を表す一連のデータ点を意味する.走行サイクルは,各Tripは一連の個別かつ連続した事象から構成される.これらのイベントには,ブレーキ滞留,加速,巡航,減速が含まれる.

3.4.2 "WLTP-Brake cycle" WLTP-Brake cycle

Worldwide Light Vehicle Test Procedureデータベースの車両アクティビティから導き出されたドライビングサイクルを意味し,総時間は15,826秒で,TripとTripの間の冷却区間も含まれる.このサイクルは,Trip#1~#10と303回のブレーキ減速イベントから構成される.

3.4.3 "Brake emissions test" ブレーキエミッション試験

3つのセクション(冷却空気調整,すり合わせ,ブレーキエミッション計測)から構成され,試験対象のブレーキの粒子排出量を計測する一連の試験をいう.

3.4.4 "Cooling air adjustment" 冷却空気調整

供試ブレーキを用いて,すり合わせおよびエミッション計測に対して適切な冷却空気流量を規定する手順を踏むセクションをいう.冷却調整セクションともいう.

3.4.5 "Brake bedding"ブレーキすり合わせ

ブレーキエミッション計測セクションを実施する前に,ブレーキ力,ブレーキの効き,ブレーキエミッションなどを安定化させるため,一連の手順に従った手順をいう.また,すり合わせ手順,またはすり合わせセクションともいう.

3.4.6 "Brake emissions measurement" ブレーキエミッション計測

ブレーキエミッション試験のうち,PMとPNのエミッションをサンプリングして測定するセクションを意味する.エミッション計測セクションとも呼ばれる.

3.4.7 "Brake acceleration event" ブレーキ加速イベント

直線速度が既知の速度で所定の設定値まで上昇する測定可能な期間を意味する.このイベントは,ブレーキ定速イベントまたはブレーキ減速イベントより常に先行する.なお,GTR24で使用している"イベント(event)"は,ディスクやドラムの回転,ブレーキによる減速など,"行われる制御や操作"のことを意味する.

3.4.8 "Brake cruising event" ブレーキ定速イベント

速度がゼロでない,直線速度が一定である測定可能な期間をいう.

3.4.9 "Brake dwell event" ブレーキ停止時間

サイクル中の速度ゼロにおける,測定可能かつ予測可能なブレーキ停止をいう.

3.4.10 "Brake deceleration event" ブレーキ減速イベント

サイクルの間,直線速度が既知の速度で所定の解放速度まで減少する測定可能な期間を意味する.

3.4.11 "Deceleration rate" 減速率

サービスブレーキの作動,路面荷重,および電気機械からの非摩擦トルクによって誘発される車両の直線速度の総減速率をいう.

3.4.12 "Brake stop" ブレーキストップ

車両を停止または静止させるブレーキ減速イベントの総称をいう.

3.4.13 "Brake snub" ブレーキスナッブ

速度をゼロでないレベルまで低下させるブレーキ減速事象の総称をいう.

3.4.14 "Soaking section" ソーク区間

TripとTripの間の区間で,ブレーキが低速回転(およそ毎分5回転以下)し,ブレーキが冷えて初期ブレーキ温度が次のサイクルTripを開始するための所定のレベルに達するのを待つ区間を意味する.

3.4.15 "Initial speed" 初速度

ブレーキによる減速が開始されるときの車両の速度をいう.

3.4.16 "Release speed" 解除速度

ブレーキ減速イベント終了時の車両の速度を意味する.

3.4.17 "Nominal linear speed" 公称直線速度

WLTP-Brake cycleの 時刻iにおける車両の目標(または設定)速度を意味する.

3.4.18 "Actual linear speed" 実直線速度

WLTP-Brake cycle実行中の時刻iにおける車両の直線速度を意味する.実速度ともいう.

3.4.19 "Speed violation" 速度違反

WLTP-Brake cycleにおいて,実際のダイナモメータによる速度トレースが,GTR24に規定される速度トレース許容値を超える場合をいう.

3.4.20 "Initial brake temperature" ブレーキ初期温度

WLTP-Brake cycle中のあるブレーキ事象の開始時におけるブレーキディスクまたはブレーキドラムのバルク温度を意味する.

3.4.21 "Final brake temperature" 最終ブレーキ温度

WLTP-Brake cycle において,所定のブレーキイベントが終了した時点のブレーキディスクまたはブレーキドラムのバルク温度を意味する.

3.4.22 "Average brake temperature" 平均ブレーキ温度

所定区間におけるブレーキディスクまたはブレーキドラムの平均温度をいう.

3.4.23 "Peak brake temperature" ピークブレーキ温度

あるブレーキイベント中に測定されたブレーキディスクまたはドラムの最高温度を意味する.

3.5 PMとPNの測定

3.5.1 "Particle" 粒子

GTR24において,粒子(particulate)という用語は,空気中の浮遊物質(suspended matter)に対して使用される.粒子状物質(particulate matter)という用語は,堆積物質(フィルタに捕集された状態)に対して使用される.

3.5.2 "Particle number emissions" 粒子個数排出(PNエミッション)

供試ブレーキから排出され,GTR24に規定される希釈,サンプリングおよび測定方法に従って定量された粒子の個数(PN,Particle Number)をいう.

3.5.3 "Total particle number emissions" 総粒子個数排出(TPNエミッション)

供試ブレーキから排出される総粒子個数(すなわち,固体および揮発性物質を含む粒子個数)をいう.

3.5.4 "TPN10" TPN10

供試ブレーキから排出され,GTR24に規定される希釈,サンプリングおよび測定方法に従って定量される,電気移動度径約10 nm以上の公称粒子径の総粒子個数(すなわち,固体および揮発性物質を含む粒子個数)をいう.学術的文章では,TPN10の"10"という最小可測径を示す変数は"TPN10"と"10"を下付きで表記する.

3.5.5 "Solid particle number emissions" 個体粒子個数排出(SPNエミッション)

供試ブレーキから排出される固体粒子の個数をいう.

3.5.6 "SPN10" SPN10

供試ブレーキから排出され,GTR24に規定される希釈方法,サンプリング方法,および測定方法に従って定量された,公称粒径約10 nmの電気移動度径以上の固体粒子の個数をいう.学術的文章では,SPN10の"10"という最小可測径を示す変数は"SPN10"と"10"を下付きで表記する.

3.5.7 "Particulate matter (PM) emissions" 粒子質量排出(PMエミッション)

GTR24に規定される希釈,サンプリングおよび測定方法に従って定量化された,供試ブレーキから排出される粒子の質量をいう.大気汚染物質である粒子状物質(Particulate Matter)と混同することがあるが,ブレーキ粒子エミッションにおけるPMは,主に粒子質量(Particle Mass)を意味する.

3.5.8 "PM2.5 emissions" PM2.5エミッション

空気力学的直径(空気動力学径)が2.5 μm以下のPMをいう.捕集効率が50%になるときの粒径(直径)をカットオフ径と呼び,空気動力学径に対してカットオフ径が2.5 μm以下となるPMをいう.学術的文章では,PM2.5の"2.5"というカットオフ径を示す変数は"PM2.5"と"2.5"を下付きで表記する.

3.5.9 "PM10 emissions" PM10エミッション

空気力学径(空気動力学径)が10 μm以下のPMをいう.捕集効率が50%になるときの粒径(直径)をカットオフ径と呼び,空気動力学径に対してカットオフ径が10 μm以下となるPMをいう.学術的文章では,PM10の"10"というカットオフ径を示す変数は"PM10"と"10"を下付きで表記する.

3.5.10 "Sampling plane" サンプリング平面

サンプリングノズルの入口が位置する平面(サンプリングトンネルの軸に垂直)をいう.

3.5.11 "Sampling probe" サンプリングプローブ

サンプリングトンネルからエアロゾルの代表部分を取り出し,測定システムに移送するように設計されたステンレス管をいう.エアロゾルとは,気体中に浮遊する粒子と周囲の気体の混合物をいう.

3.5.12 "Sampling nozzle" サンプリングノズル

サンプリングプローブの入口に取り付けられ,サンプリングトンネルからブレーキ粒子を等速的に採取することを目的とした,先端がナイフエッジ(ナイフの刃のように鋭くとがった稜線)の薄肉ステンレス鋼円筒をいう.

3.5.13 "Sampling nozzle tip" サンプリングノズル先端

エアロゾルがサンプリングノズルに入るサンプリングノズルの上流側の断面をいう.

3.5.14 "PM Sampling system" PMサンプリングシステム

エアロゾルがサンプリングノズル先端部に入った後に移動する一連の構成部分をいう.これには,流れ方向に,PM用のサンプリングノズル,PM用のサンプリングプローブ,PM用の分級器,PM用のサンプリングライン,フィルタホルダが含まれる.

3.5.15 "PM separation device" PM用の分級器

GTR24の仕様に従って,エアロゾルからPMの関連部分を分粒する(所定の空気動力学径以上の粒子を除去する)装置をいう.

3.5.16 "Separation efficiency" 分級効率

空気力学的直径で分級器に入る粒子全体に対する,分級器によって除去される粒子の比率をいう.

3.5.17 "PM Sampling line" PMサンプリングライン

PM分級器の出口とフィルタホルダの入口を接続する硬質または可撓性チューブをいう.

3.5.18 "Filter holder" フィルタホルダ

GTR24の仕様に従ったフィルタ上でPMの捕集を可能にする装置をいう.

3.5.19 "PN Sampling system" PNサンプリングシステム

エアロゾルがサンプリングノズルの先端に入った後に移動する一連の構成部分をいう.これには,流れの方向において,PN用のサンプリングノズル,PN用のサンプリングプローブ,PN用のプレ分級器,粒子トランスファーチューブ,フロースプリッター(該当する場合),およびPN測定システムが含まれる.

3.5.20 "Particle transfer tube" 粒子トランスファーファーチューブ

PN用のサンプリングプローブの出口と PN用のプレ分級器の入口を接続する可撓性チューブをいう.PNプレ分級器がPNサンプリングプローブの出口に直接接続されている場合,粒子トランスファーチューブとは,PNプレ分級器の出口とPN測定システムの入口を接続する可撓性チューブを意味する.

3.5.21 "PN measurement system" PN測定システム

GTR24に従った粒子数濃度の測定を可能にするシステムをいう.これには試料調整システム,PNトランスファーチューブおよび凝縮式粒子計数器(凝縮式粒子数カウンター)が含まれる.

3.5.22 "Sample conditioning system" 試料調整システム

PN測定システムのうち,TPN10およびSPN10をそれぞれ測定するために凝縮式粒子計数器(凝縮式粒子数カウンター)に供給されるエアロゾルを希釈し調整する部分をいう.

3.5.23 "Particle number counter" 粒子計数器(粒子数カウンター)

GTR24の仕様に従って粒子数濃度を測定する装置をいう.

3.5.24 "Standard conditions" 標準状態

1気圧(101.325kPa)に相当する圧力,ならびに0 °C(273.15K)に相当する温度をいう.

3.5.25 "Background emissions" バックグラウンドエミッション

環境調整システムおよびダイナモメータ冷却空気が運転されており,排出に影響を与えるブレーキ操作またはブレーキ回転がない場合に,エミッション試験と同じ計器を用いて粒子数濃度を測定することをいう.

3.6 試験システム

3.6.1 "Calibration" 校正

その出力が基準値と一致するように測定系の応答を設定する工程を意味する.

3.6.2 "Major maintenance" 主要保守

測定の精度に影響を及ぼす可能性のある部品またはモジュールの調整,修理または交換をいう.

3.6.3 "Reference value" 基準値

国家標準または国際標準にトレーサブルな値をいう.トレーサビリティとは,国家計量標準までさかのぼれる計量標準を用いて測定器を校正することによって,試験機関の間で測定値のばらつきなどを確認するときに,それぞれの試験所が国家計量標準まで追跡可能となることを意味する.

3.6.4 "Setpoint" 設定値

制御システムが到達を目指す目標値をいう.

3.6.5 "Verification" 検証

測定システムの出力が,適用された基準値と一つ以上の予め定められた許容差,閾値の範囲内で一致するかどうかを評価することを意味する.

3.6.6 "Response time" 応答時間

基準点において測定される成分の変化と,サンプリングノズル入口を基準点として定義した最終読み値の90%の測定システムの応答(t90)との間の時間差であって,測定成分の変化が少なくとも60%のフルスケール(FS)であり,0.1秒未満で起こるものをいう.応答時間は,システムに対する遅延時間とシステムの立ち上がり時間からなる.立ち下がり時間(Rise Time)とも呼ばれる.

3.6.7 "Fall time" 立ち下がり時間

設定信号の変化が0.1秒未満で起こる場合,基準点における測定成分の変化が初期読み値の90%から10 %に立ち下がるt90とt10の間の時間差を意味する.

3.6.8 "Drift" ドリフト

温度,圧力,電圧,電流などの影響による,特定の設定値に対する規定時間内の測定信号の変化を意味する.つまり,測定以外の要因によって,測定器の特性の変化による,好ましくない指示値の連続的または漸進的な変化が生じること.

3.7 非摩擦ブレーキ

3.7.1 "Friction braking" 摩擦ブレーキ

互いに相対的に移動する車両の2つの部分間の摩擦によってブレーキ力(制動力)が発生する,摩擦ブレーキシステムを使用した車両の減速を意味する.

3.7.2 "Non-friction braking" 非摩擦ブレーキ

例えば回生ブレーキなど,摩擦ブレーキシステムのみを使用しない別の技術的手段によっても車両を減速させることを意味する.これは,駆動用の充電式エネルギー貯蔵システム(REESS,REchargeable Energy Storage System)の公称電圧が20Vを超える純電気自動車およびハイブリッド電気自動車に適用される.

3.7.3 "Full-friction braking" 全摩擦ブレーキ

摩擦ブレーキシステムのみを使用した車両の減速を意味する.

3.7.4 "Electric machine" 電気機械

電気エネルギーと機械エネルギーを変換するエネルギー変換装置をいう.

3.7.5 "Category of propulsion energy converter" 駆動エネルギー変換装置のカテゴリー

(i)内燃機関,または(ii)電気機械を意味する.

3.7.6 "Hybrid electric vehicle" (HEV) ハイブリッド電気自動車

駆動エネルギー変換装置の一つが電気機械であるハイブリッド自動車をいう.

3.7.7 "Hybrid vehicle" ハイブリッド自動車

少なくとも2つの異なるカテゴリーの駆動エネルギー変換装置と,少なくとも2つの異なるカテゴリーの駆動REESSを含むパワートレイン(動力伝達装置)を搭載した車両をいう.

3.7.8 "Not off-vehicle charging hybrid electric vehicle" (NOVC-HEV) 非外部充電式ハイブリッド電気自動車

外部電源から充電できないハイブリッド電気自動車をいう.GTR24では,NOVC-HEV は駆動REESSの公称電圧により"NOVC-HEVカテゴリー 1 "と"NOVC-HEV カテゴリー 2 "に分類される.

3.7.8.1 "Not off-vehicle charging hybrid electric vehicle – Category 1" (NOVC-HEV Cat. 1) 非外部充電式ハイブリッド電気自動車-カテゴリー1 (NOVC-HEV Cat.1)

公称電圧が20V以上60V以下の駆動REESSを備え,外部電源から充電できないハイブリッド電気自動車を意味する.

3.7.8.2 "Not off-vehicle charging hybrid electric vehicle – Category 2" (NOVC-HEV Cat. 2) 非外部充電式ハイブリッド電気自動車-カテゴリー2 (NOVC-HEV Cat.2)

公称電圧が60V以上の駆動REESSを搭載し,外部電源から充電できないハイブリッド電気自動車をいう.

3.7.9 "Off-vehicle charging hybrid electric vehicle" (OVC-HEV) 外部充電式ハイブリッド電気自動車(OVC-HEV)

外部電源から充電可能なハイブリッド電気自動車をいう.

3.7.10 "Pure electric vehicle" (PEV) 純電気自動車(PEV)

駆動エネルギー変換装置として電気機械のみを搭載し,駆動用REESSのみを搭載したパワートレインを有する車両をいう.

3.7.11 "Pure internal combustion engine vehicle" (ICE) 純内燃機関車(ICE)

すべての駆動エネルギー変換装置が内燃機関である車両をいう.

3.7.12 "Rechargeable electric energy storage system – REESS" 充電式電気エネルギー貯蔵システム

電気駆動のために電気エネルギーを提供する充電式エネルギー貯蔵システムをいう.

3.7.13 "Brake Emissions Family Parent" ブレーキエミッション・ファミリーペアレント

同一のブレーキシステムを搭載した2台以上の車両からなるファミリーの中から選択された1台の車両をいう.一定の条件を満たす車両のグループ(ファミリー)の親.現在のブレーキファミリーの定義では,同じブレーキが2台以上の車両に搭載されている場合,試験を実施するためのブレーキエミッション・ファミリーペアレント車両の適切なパラメータの選択に関する指針が示されている.

4. 略語と記号

4.1 略語

表 4.1.に,GTR24で使用される略語の一覧,簡単な説明,および各略語の該当する場合の単位を示す.

表 4.1. 略語2)

略語

定義

単位

ABT

Average Brake Temperature during Trip #10; Trip#10の平均ブレーキ温度

°C

AH

Absolute humidity; 絶対湿度

mg H2O/kg dry air

BRO

Brake runout; ブレーキ振れ

µm

CSV

Comma-separated values; カンマ「,」区切りのデータ形式

-

DM

Disc mass before testing; 試験前のディスク質量

kg

DOP

Dioctyl phthalate; フタル酸ジオクチル

-

ECE

Economic Commission for Europe; 国際連合欧州経済委員会

-

EF

Emission factor; 排出量(排出係数)

-

EN

"European Norm" - European technical standard; 欧州規格(欧州技術規格)

-

FA

Vehicle front axle; フロント車軸

-

FAF

Front axle brake force distribution; フロント車軸ブレーキ力配分

%

FBT

Final brake temperature at the end of the brake event;

ブレーキイベント終了時の最終ブレーキ温度

°C

H13

High-efficiency air filter with a filtering efficiency of at least 99.95 per cent

フィルタ効率99.95%以上(EN1822-1規格のH13クラス)の高効率エアフィルタ

-

HEPA

High-efficiency particulate Air filter; 高効率エアフィルタ,通称:ヘパ

-

IBT

Initial brake temperature at the start of the brake event; ブレーキ開始時の初期ブレーキ温度

°C

ICE

Internal combustion engine; 内燃エンジン

-

IR

Isokinetic ratio; 等速比

-

L0-P

Post-style brake fixture with wheel hub connection;

ポスト式ブレーキ治具(ホイールハブ接続)

-

L0-U

Universal-style brake fixture without wheel hub connection;

ユニバーサル式ブレーキ治具(ホイールハブ接続)

-

LHC

Left-hand corner of the vehicle; 車両の左側コーナー

-

MRO

Mass in running order; ランニングオーダー質量

kg

MVL

Maximum vehicle load; 最大車両積載量

kg

NOVC-HEV

Not off-vehicle charging hybrid electric vehicle; 非外部充電式ハイブリッド電気自動車

-

NOVC-HEV Cat.1

Not off-vehicle charging hybrid electric vehicle category 1

非外部充電式ハイブリッド電気自動車-カテゴリー1 (NOVC-HEV Cat.1)

-

NOVC-HEV Cat.2

Not off-vehicle charging hybrid electric vehicle category 2

非外部充電式ハイブリッド電気自動車-カテゴリー2 (NOVC-HEV Cat.2)

-

OD

Disc/drum outer diameter; ディスク/ドラム外径

mm

ODS

Open document spreadsheet; オープンドキュメント形式スプレッドシート

-

OVC-HEV

Off-vehicle charging hybrid electric vehicle; 外部充電式ハイブリッド電気自動車

-

PEV

Pure electric vehicle; 純電気自動車

-

Plane A

Vertical plane aligned with the enclosure’s inlet;

平面A エンクロージャーの吸気口に沿った垂直面

-

Plane A1

Horizontal level aligned with the axis of the brake rotation and the duct axis;

平面A1 ブレーキ回転軸とダクト軸に沿った水平面

-

Plane B

Vertical plane at the end of the transition from the inlet duct to the central section of the enclosure, perpendicular to the duct axis; 平面B 吸入口ダクトからエンクロージャーの中央部分への移行部の端にある垂直面で,ダクト軸に垂直.

-

Plane C

Vertical plane tangential to the largest brake for M1, N1 vehicle category, perpendicular to the duct axis; 平面Cダクト軸に垂直な,M1,N1車両カテゴリーの最大ブレーキの接線方向にある垂直面.

-

Plane D

Vertical plane aligned with the axis of the brake rotation;

平面D ブレーキ回転軸に沿った垂直面

-

PND1

Primary particle number diluter; 一次希釈器

-

PND2

Secondary particle number diluter; 二次希釈器

-

PAO

poly-alpha-olefin; ポリα-オレフィン

-

PBT

Peak brake temperature of the brake event; ブレーキイベントのピークブレーキ温度

°C

PCRF

Particle concentration reduction factor; 粒子損失補正係数

-

PM

Particulate matter mass; 粒子状物質質量

mg

PM2.5

Particulate Matter mass for aerosols with aerodynamic diameter below 2.5 µm; 空気力学的直径(空気動力学径)2.5µm以下の粒子状物質質量

mg

PM2.5 EFref

Reference PM2.5 emission factor of the tested brake before applying the friction braking share coefficient; 基準PM2.5排出量(摩擦ブレーキ分配係数を適用する前の供試ブレーキのPM2.5排出量)(全摩擦ブレーキとして測定したPM2.5排出量)

mg/km

PM2.5 EF

Final PM2.5 emission factor; 最終PM2.5排出量(摩擦ブレーキ分配係数を適用したPM2.5排出量)

mg/km

PM10

Particulate Matter mass for aerosols with aerody)namic diameter below 10 µm; 空気力学的直径(空気動力学径)10 µm以下の粒子状物質質量

mg

PM10 EFref

Reference PM10 emission factor of the tested brake before applying the friction braking share coefficient; 基準PM10排出量(摩擦ブレーキ分配係数を適用する前の供試ブレーキのPM10排出量)(全摩擦ブレーキとして測定したPM10排出量)

mg/km

PM10 EF

Final PM10 emission factor; 最終PM10排出量(摩擦ブレーキ分配係数を適用したPM10排出量)

mg/km

PN

Particle number, 粒子数

#

PNC

Particle number counter; 粒子計数器(粒子個数カウンター)

-

PTFE

Polytetrafluoroethylene; ポリテトラフルオロエチレン

-

PTT

Particle transfer tube; 粒子トランスファーチューブ

-

RA

Vehicle rear axle; リア車軸

-

RAF

Rear axle brake force distribution; リア車軸ブレーキ力配分

%

REESS

Rechargeable electric energy storage system; 充電式エネルギー貯蔵システム

-

RH

Relative humidity; 相対湿度

%

RHC

Right-hand corner of the vehicle; 車両右側コーナー

-

SPN10

Solid particle number concentration of particles larger than 10nm; 粒径10 nm以上の個体粒子数濃度

#/cm3

SPN10 EFref

Reference SPN10 emission factor of the tested brake before applying the friction braking share coefficient; 基準SPN10排出量(摩擦ブレーキ分配係数を適用する前の供試ブレーキのSPN10排出量)(全摩擦ブレーキとして測定したSPN10排出量)

#/km

SPN10 EF

Final SPN10 emission factor; 最終SPN10排出量(摩擦ブレーキ分配係数を適用したSPN10排出量)

#/km

SAE

Society of Automotive Engineers; 米国自動車技術会

-

SEE

Standard error of estimate; 推定標準誤差

-

TPN10

Total particle number concentration of particles larger than 10nm; 粒径10 nm以上の総粒子数濃度

#/cm3

TPN10 EFref

Reference TPN10 emission factor of the tested brake before applying the friction braking share coefficient; 基準TPN10排出量(摩擦ブレーキ分配係数を適用する前の供試ブレーキのTPN10排出量)(全摩擦ブレーキとして測定したTPN10排出量)

#/km

TPN10 EF

Final TPN10 emission factor; 最終TPN10排出量(摩擦ブレーキ分配係数を適用したTPN10排出量)

#/km

ULPA

Ultra-low particulate air filter; 高効率エアフィルタ,通称:ウルパ

-

UN GTR

United Nations Global Technical Regulation; 国連の世界技術規則

-

VPR

Volatile particle remover; 揮発性粒子除去装置

-

WLTP

World-wide harmonized light vehicle test procedure; 乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法

-

4.2 記号

表4.2.は,GTR24で適用される記号のリスト,簡単な説明,および記号の単位を示す.

表 4.2. 記号2)

記号

定義

単位

a

Transition angle of the brake enclosure; ブレーキエンクロージャーの遷移角度

°

a1

The minimum distance between the sampling probes; サンプリングプローブ間の最小距離

mm

a2

The minimum distance between the sampling probes and the tunnel walls; サンプリングプローブとトンネル壁面間の最短距離

mm

a

Deceleration; 減速度

m/s²

A1…3

Metrics for target temperatures; 目標温度の指標

°C

B1…3

Metrics for measured temperatures; 測定温度の指標

°C

C1…3

Metrics for the temperature difference between target and measured values; 目標温度と測定値の温度差の指標

°C

c

Friction braking share coefficient; 摩擦ブレーキ配分係数

-

d

Total distance driven over Trip #10 or the WLTP-Brake cycle: 走行距離

km

di

Sampling tunnel inner diameter; サンプリングトンネル内径

mm

dn

Sampling nozzle inner diameter (applies to both PN and PM); サンプリングノズル内径

mm

dn-PM2.5

The inner diameter of the isokinetic nozzle for sampling PM2.5; PM2.5サンプリングの等速吸引ノズル内径

mm

dn-PM10

The inner diameter of the isokinetic nozzle for sampling PM10; PM10サンプリングの等速吸引ノズル内径

mm

dn-SPN10

The isokinetic nozzle’s inner diameter for SPN10 sampling; SPN10サンプリングの等速吸引ノズル内径

mm

dn-TPN10

The isokinetic nozzle’s inner diameter for TPN10 sampling; TPN10サンプリングの等速吸引ノズル内径

mm

dpiston

Calliper piston hydraulic diameter; キャリパー油圧ピストン径

mm

dp

Sampling probes inner diameter (applies to both PN and PM); サンプリングプローブ内径

mm

ds

The inner diameter of the PM sampling line; PMサンプリングライン内径

mm

dtl

The inner diameter of the PN internal transfer line; PN計器用の内部粒子トランスファーチューブ内径

mm

dtt

The inner diameter of the PN transfer tube; PN粒子トランスファーチューブ内径

mm

dx

Electrical mobility diameter; 電気移動度径

µm

η

Brake calliper or drum efficiency; ブレーキキャリパーまたはドラムの効率

%

f

Brake rotational speed; ブレーキ回転速度

rev/min

fr (dx)

PCRF for each particle of electrical mobility diameter dx; 電気移動度径dxの各粒子に対するPCRF

-

fr-SPN10

Arithmetic averaged PCRF for the SPN10 measuring device; SPN10測定器の算術平均PCRF

-

fr-TPN10

Arithmetic averaged PCRF for the TPN10 measuring device; TPN10測定器の算術平均PCRF

-

hB

Length of Plane B (enclosure); 平面Bの長さ(エンクロージャー)

mm

hD

Length of Plane D (enclosure); 平面Dの長さ(エンクロージャー)

mm

He

The point that defines the end of the mandatory horizontal part in the layout; レイアウトの必須水平部分の終わりを定義する点

-

Hs

The point that defines the start of the mandatory horizontal part in the layout; レイアウト内の必須水平部分の開始点を定義する点

-

In

Brake nominal inertia;ブレーキ公称イナーシャ

kg·m²

It

Brake test inertia; ブレーキ試験イナーシャ

kg·m²

lA1

Length of plane A1 (enclosure); 平面A1の長さ(エンクロージャー)

mm

li

Length of inlet or outlet transition of brake enclosure; ブレーキエンクロージャーの入口または出口の長さ

mm

l1

Height of the enclosure at Plane C; 平面Cにおけるエンクロージャーの高さ

mm

l2

Depth of the enclosure at Plane C; 平面Cにおけるエンクロージャーの深さ

mm

L1

Minimum length of the straight duct upstream of the inlet of the brake enclosure; ブレーキエンクロージャーの入口上流側の直線ダクトの最小長さ

mm

L2

Minimum length of the straight duct from the last disturbance upstream of the sampling plane to the sampling plane; サンプリング面上流の最後の擾乱からサンプリング面までの直線ダクトの最小長さ

mm

L3

Minimum length of the straight duct from the sampling plane to the next disturbance downstream of the sampling plane; サンプリング面からサンプリング面の下流にある次の擾乱までの直線ダクトの最小長さ

mm

L4

Minimum length of the straight duct from the last disturbance upstream of the airflow measurement element to the airflow measurement element; 流量測定装置上流の最後の擾乱から流量測装置までの直線ダクトの最小長さ

mm

L5

Minimum length of the straight duct from the airflow measurement element to the next disturbance; 流量測定装置から次の擾乱まで直線ダクトの最小長さ

mm

μ

Average by distance friction variable for disc brakes (Friction Coefficient); ディスクブレーキの距離平均摩擦変数(摩擦係数)

-

MMix

The molar mass of air in the balance room; 秤量室の空気モル質量

g/mol

Mveh

Vehicle test mass to simulate on the dynamometer; ダイナモメータ上で模擬する試験車質量

kg

ν

Kinematic viscosity of air; 空気の動粘度

m2/s

Nin(dx)

Upstream PN concentration for particles of electrical mobility dx; 電気的移動度dxの粒子に対する上流PN濃度

#/cm3

Nout(dx)

Downstream PN concentration for particles of electrical mobility dx; 電気的移動度dxの粒子に対する下流PN濃度

#/cm3

NQ

Average normalised cooling airflow; 平均冷却ノルマル流量

Nm³/h

NQPM2.5

Average normalised PM2.5 sampling flow; 平均PM2.5サンプリングノルマル流量

Nl/min

NQPM10

Average normalised PM10 sampling flow; 平均PM10サンプリングノルマル流量

Nl/min

NQTPN10

Average normalised TPN10 sampling floww; 平均TPN10サンプリングノルマル流量

Nl/min

NQSPN10

Average normalised SPN10 sampling flow; 平均SPN10サンプリングノルマル流量

Nl/min

NQs

Average normalised airflow in the sampling nozzle; サンプリングノズルの平均ノルマル流量

Nm³/h

Pb

Atmospheric pressure in the balance room; 秤量室内の大気圧

kPa

Pbrake

Brake pressure; ブレーキ油圧

kPa

Pr

Particle penetration; 粒子透過率

%

pthreshold

Threshold pressure required to develop braking torque; ブレーキトルクを発生させるブレーキ油圧閾値

kPa

Pe(2.5)

PM2.5 filter load corrected for buoyancy; 浮力補正したPM2.5フィルタ荷重質量

mg

Pe(10)

PM10 filter load corrected for buoyancy; 浮力補正したPM10フィルタ荷重質量

mg

Pe(Corrected)

Buoyancy-corrected filter mass; 浮力補正したフィルタ質量

mg

Pe(Uncorrected)

Filter mass without buoyancy correction; 浮力補正していないフィルタ質量

mg

Q

Average measured (actual) cooling airflow; 平均冷却流量(実測値)

m3/h

Qset

Nominal (or set) cooling airflow; 公称冷却流量(設定冷却流量)

m3/h

QPM2.5

PM2.5 sampling flow (actual); PM2.5サンプリング流量(実測値)

l/min

QPM2.5-set

Nominal (or set) PM2.5 sampling flow; 公称PM2.5サンプリング流量(PM2.5サンプリング流量設定値)

l/min

QPM10

PM10 sampling flow (actual); PM10サンプリング流量(実測値)

l/min

QPM10-set

Nominal (or set) PM10 sampling flow; 公称PM10サンプリング流量(PM10サンプリング流量設定値)

l/min

rb

Bending radius of the cooling air duct; 冷却風ダクトの曲げ半径

mm

reff

Effective brake radius; 有効ブレーキ半径(原文ではBrake effective radiusと3.1.22項と異なる表記)

mm

rP

Bending radius of the sampling probe or sampling line; サンプリングプローブまたはサンプリングラインの曲げ半径

mm

rR

Tyre dynamic rolling radius; タイヤ動的負荷半径

mm

ρa

Density of air; 空気密度

kg/m3

ρf

The density of PM filter material; 未使用のサンプリングフィルタの密度

kg/m3

ρw

The density of the PM microbalance calibration object; 天びんを校正する分銅の密度

kg/m3

SPN10#

Average normalised and PCRF-corrected SPN10 concentration; ノルマル体積への変換とPCRF補正後のSPN10平均濃度

#/Ncm3

SPN10back

Average normalised SPN10 concentration during the background check; バックグラウンド測定時のSPN10平均濃度

#/Ncm3

SPN10b EF

Average SPN10 count per unit distance driven during the background check; バックグラウンド測定中の単位走行距離あたりのSPN10平均排出量

#/km

Sp

Output signal for cooling air pressure; 冷却空気圧の出力信号

kPa

SQ

Output signal for cooling airflow; 冷却流量の出力信号

m³/h

SRH

Output signal for cooling air relative humidity; 冷却空気相対湿度の出力信号

%

St

Output signal for cooling air temperature; 冷却空気温度の出力信号

°C

tbrake

The total duration of the deceleration event (stop duration); 減速イベントの合計時間(停止時間)

s

t90

Response time of particle number counter; 粒子個数カウンターの応答時間

s

τbrake

Brake torque; ブレーキトルク

N·m

τbrake-avg

Time-averaged brake torque; ブレーキトルクの時間平均

N·m

T

Cooling air temperature; 冷却空気温度

°C

Ta

Air temperature in the balance room; 秤量室温度

°C

Tbrake

Brake (disc/drum) temperature; ブレーキ温度

°C

TPN10#

Average normalised and PCRF-corrected TPN10 concentration; ノルマル体積への変換とPCRF補正後のTPN10平均濃度

#/Ncm3

TPN10back

Average normalised TPN10 concentration during the background check; バックグラウンド測定時のSPN10平均濃度

#/Ncm3

TPN10b EF

Average TPN10 count per unit distance driven during the background check; バックグラウンド測定中の単位走行距離あたりのSPN10平均排出量

#/km

U

Average cooling airspeed; 平均冷却風速

km/h

Us

Average airspeed of air entering the sampling nozzle; サンプリングノズルに流入する空気の平均風速

km/h

V

Average actual linear speed of the WLTP-Brake cycle; WLTP-Brake cycleの平均実線速度

km/h

Vset

The average nominal linear speed of the WLTP-Brake cycle; WLTP-Brake cycleのの平均実線速度の公称値

km/h

Wf

Specific friction work; 比摩擦仕事量

J/kg

WLn

Nominal wheel load without accounting for vehicle road loads or any other type of losses; 車両の走行抵抗やその他の寄生損失を考慮しない場合の公称輪荷重

kg

WLn-f

Nominal front wheel load without accounting for vehicle road loads or any other type of losses; 車両の走行抵抗やその他の寄生損失を考慮しない場合の公称前輪荷重

kg

WLn-r

Nominal rear wheel load without accounting for vehicle road loads or any other type of losses; 車両の走行抵抗やその他の寄生損失を考慮しない場合の公称後輪荷重

kg

WLt

Test wheel load after accounting for vehicle road loads or any other type of losses; 車両の走行抵抗やその他の寄生損失を考慮した場合の公称輪荷重

kg

WLt-f

Test front wheel load after accounting for vehicle road loads or any other type of losses; 車両の走行抵抗やその他の寄生損失を考慮した場合の公称前輪荷重

kg

WLt-r

Test rear wheel load after accounting for vehicle road loads or any other type of losses; 車両の走行抵抗やその他の寄生損失を考慮しない場合の公称後輪荷重

kg

5. 一般要件

5.1 適合要件

GTR24に基づくブレーキの適合性は,各締約国が定める各地域の排出規制値に対して評価されるものとする.ブレーキの適合性は,GTR24の6章から14章に従って,ブレーキファミリーの中で最も性能の悪い代表品を試験することによって実証されるものとする.

5.2 ブレーキエミッション・ファミリー

ブレーキエミッション・ファミリーは,キャリパー,ディスクまたはドラムとバックプレートのアッセンブリ,パッドまたはシュー,およびその他の特定の車両パラメータを考慮したブレーキアッセンブリによって定義される.

5.2.1ブレーキエミッション・ファミリーの特性化

電気自動車のグレードに関係なく,全ての車種は一つのブレーキエミッション・ファミリーに属することができる.(a)~(d)に記載された特性に関して同一のブレーキアッセンブリを搭載する車両のみが,同一のブレーキエミッション・ファミリーに属することができる.ブレーキエミッション・ファミリーの一員となるための資格基準は,GTR24の改正において拡張される可能性がある.

  1. (a)   キャリパーのタイプ

フローティングキャリパーまたは固定キャリパー,ピストンの数およびサイズ,リトラクションエレメントのタイプ.

  1. (b)   ブレーキのタイプ

ディスク(摩擦面,コーティング,シングル,デュアル,ベンチレーテッド,ソリッド,寸法,質量,材料配合)またはドラム・バックプレートアッセンブリ(摩擦面,シンプレックス,デュプレックス,寸法,質量,材料配合).

  1. (c)   摩擦材の種類

パッド(摩擦面,寸法,形状,材質,バッキングプレート,材料配合)またはシュー(摩擦面,寸法,設計,材質,バッキングプレート,材料配合).

  1. (d)   ブレーキエミッションに無視できない影響を与えるその他の特性

革新的なブレーキエミッション低減システムなど.

5.2.2 ブレーキエミッション・ファミリーペアレント

5.2.1項に記載された同一のブレーキアッセンブリを有する全ての車両について,摩擦ブレーキ配分係数(c)と3.1.14項に定義された試験輪荷重の積(WLt×c)が最も大きい車両を,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントとして選択する.GTR24で対象となる各車種の摩擦ブレーキ配分係数を,表5.1.に示す.試験輪荷重と摩擦ブレーキ配分係数の積が,同じブレーキエミッション・ファミリーの2台以上の車両で同じ場合,タイヤ動的負荷半径が最も小さい車両をブレーキエミッション・ファミリーペアレントとして選択するものとする.

表 5.1. 全車種における摩擦ブレーキ分配係数2)

ブレーキタイプ

車両タイプ

摩擦ブレーキ配分係数 (c)

全摩擦ブレーキ

ICEまたは表5.1.の非摩擦ブレーキに該当しない車両

1.0

非摩擦ブレーキ

NOVC-HEV Cat.1

0.63

NOVC-HEV Cat.2

0.45

OVC-HEV

0.30

PEV

0.15

注:車両固有の摩擦ブレーキ配分係数を決定するための詳細な試験方法は,GTR24の修正に含まれる.

摩擦ブレーキ配分係数と試験輪荷重の積は,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントを特定するためにのみ使用し,ブレーキアッセンブリからの排出量を試験する際の入力パラメータとしては使用しないこと.ブレーキアッセンブリは,8.1.1項(純ICE車の場合)または8.1.2項(NOVC-HEV,OVC-HEV,またはPEVの場合)に記載されているように,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントに対応する試験輪荷重を使用して,試験装置で試験する必要がある.

ブレーキエミッション・ファミリーペアレントの最終的なブレーキPM排出量とPN排出量は,それぞれGTR24の12.1.5項と12.2.4項に記載されているように,試験されたブレーキの基準PM排出量と基準PN排出量にブレーキエミッション・ファミリーペアレント車両のc値を乗じることで算出される.

5.3 端数処理(丸め)

すべてのデータは,少なくとも有効数字6桁で端数処理する.使用可能な有効桁数が少ない場合は,使用可能なすべての有効桁を使用してデータを処理する必要がある.中間結果の丸めは認められない.あるパラメータの最終値は,GTR24の13章で定義されたパラメータの小数点以下の桁数と一致させるために必要な有効桁数を丸めることができる.

6. 試験概要

6.1 試験セクション

ブレーキエミッション試験には3つの試験セクションがある.図6.1.にブレーキエミッション試験の概略を示す.

ブレーキエミッション試験の3つのセクションは次のとおりである.

(a) ブレーキ冷却調整セクション

このセクションでは,WLTP-Brake cycleのTrip#10を使用する.ブレーキ冷却調整セクションの詳細については,10章に記載している.

(b) すり合わせセクション

このセクションでは,WLTP-Brake cycleを5回繰り返す.すり合わせの詳細については,11章に記載している.

(c) エミッション計測セクション

このセクションでは,WLTP-Brake cycleを1回実施する.エミッション計測セクションの詳細は,12章に記載している.

図 6.1. 全摩擦ブレーキ搭載車のブレーキエミッション試験の構成2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

6.2試験実施手順

ブレーキエミッション試験を正しく実施するためには,試験機関が以下の手順を実施し,データを収録・記録しなくてはならない.

  1. (a)   試験システムが,システムレイアウト,冷却流量,温湿度制御,ブレーキダイナモメータ機能,ブレーキエンクロージャー設計,サンプリングトンネル設計,サンプリングプレーン設計に関して,7章で定義された要件を満たすこと.
  2. (b)   正しい入力パラメータの計算と適用,試験の設定,ブレーキ温度の測定,エンクロージャー内のブレーキの位置など,試験準備に関する8章に規定されるすべての要件を満たすこと.
  3. (c)   9章に従いWLTP-Brake cycleを実行し,品質チェックに適合すること.
  4. (d)   10章に規定されるブレーキ冷却調整セクションを実施する.
  5. (e)   11章に規定されるブレーキすり合わせセクションを実施する.
  6. (f)   PM,PN,およびMass Loss(ブレーキ摩耗量)を含む,ブレーキエミッション計測のための12章に規定される全ての項目を実施する.
  7. (g)   13章に規定される試験結果を報告する.
  8. (h)   最低限の校正要求事項および使用される測定器および機器の装置の構成の定期的な評価については,14章に従うこと.

7. 試験システム要件

7.1 試験システム全体のレイアウト

GTR24は,ブレーキからの粒子排出量の繰り返し再現性のある測定を目的とした標準ダイナモメータ試験方法を規定する.ブレーキエミッション試験を実施する技術システムには,系統的なアプローチが必要である.有効なブレーキエミッション試験を実施するためには,走行サイクル,冷却空気,ダイナモメータ制御,ブレーキエンクロージャー,サンプリングトンネル,サンプリングシステム,およびデータ収集が,GTR24に規定された要件を満たすよう,複数のサブシステムを確実に統合する必要がある.

図7.1.は,ブレーキダイナモメータを使用してブレーキエミッション試験を実施するために最低限必要なサブシステムを含むレイアウトを示している.図に示すレイアウトは,恒温恒湿となるよう調整された冷却空気を供給する可変流量ファンを備えた空調ユニットを特徴としている.冷却空気は,試験対象のブレーキアッセンブリ全体が収まるように設計されたブレーキエンクロージャーに導入される.ブレーキダイナモメータがブレーキの試験と制御を行う.エンクロージャーは,3つ(または4つ)のサンプリングプローブが取り付けられたサンプリングトンネルの端近くに直接接続されている.サンプリングプローブは,トンネルからPMおよびPN測定装置に向けてエアロゾルを抽出するために使用される.流量測定装置は,サンプリング面の下流のトンネル内に設置される.図7.1.に示す参考レイアウトを厳密に準拠する必要はない.空調および制御サブシステムを配置するために,いくつかの受け入れ可能な設備構成の選択肢がある.すべての設計は,同じブレーキダイナモメータ,制御ソフトウェア,データ収集,およびブレーキ治具を使用することができる.ただし,試験機関は,すべての設備構成が少なくとも表7.1.に示すサブシステムとその仕様を保証しなくてはならない.試験装置の各要素に関する詳細は,表7.1.に示すとおり,GTR24の該当する段落に記載されている.

図 7.1. 実験室でブレーキエミッション試験を実施するための参考レイアウト2)

注:このレイアウトでは,サンプリングトンネルがブレーキエンクロージャーに直接接続されており,3つのサンプリングプローブを想定している(4つのサンプリングプローブのレイアウトも可能).エンクロージャーの下流側でサンプリングプレーンの上流側など,サンプリングトンネルを曲げたレイアウトも可能.ブレーキダイナモメータは描かれておらず,灰色で示されているだけである(図7.2.ブレーキダイナモメータの図を示す).

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

表 7.1.ブレーキエミッション試験装置(図7.1)に必要なサブシステムと仕様2)

要素

サブシステム

記号

特徴

1

7.2.1項に従った可変流量送風機,空気温度,および空気湿度を制御する空調ユニット

2

7.2.2.1項に従った冷却空気フィルタ媒体

3

7.2.1.1項および7.2.1.2項に従ったブレーキエンクロージャーの上流に設置された冷却空気温度および湿度センサー

4

7.4項に従ったブレーキエンクロージャー

5

8.4.1項に従ったブレーキダイナモに接続されたブレーキアッセンブリ

6

7.3項に従ったブレーキ・ダイナモメーター(図には描かれていないが,灰色で示されているのみ)

7

7.5項に従ったサンプリングトンネル

8

7.6項に従ったPMおよびPNサンプリングプローブによるサンプリング面

9

12.1項および12.2項に従ったPM質量測定装置およびPN濃度測定装置

TPN10, SPN10

12.2項に従ったTPN10およびSPN10の信号を制御,測定,出力するシステム

PM2.5, PM10

サンプリング流量を制御するシステム,フィルタ上のブレーキ粒子状物質をサンプリングするシステム,および12.1項に従った信号を出力するシステ

10

7.2.3項に従ったサンプリング面の下流側に配置された流量測定エレメント

L1

7.4.2項に従ったブレーキエンクロージャーの入口上流側の直線ダクトの最小長さ

L2

7.6項に従ったサンプリング面の上流側の最後の擾乱からサンプリング面までの直線ダクトの最小長さ

L3

7.6項に従ったサンプリング面からサンプリング面下流の次の撹乱までの直線ダクトの最小長さ

L4

7.2.3項に従った流量測定要素の上流側の最後の擾乱から流量測定装置までの直線ダクトの最小長さ

L5

7.2.3項に従った流量測定装置から流量測定装置の下流にある次の擾乱までの直線ダクトの最小長さ

SQ, SP, ST, SRH

7.2.1項および7.2.3項に従った冷却流量,圧力,温度,および湿度の電子信号の出力

di

基準ダクトの内径.サンプリングトンネルの内径と同じ

Hs, He

7.4.2項に従ったレイアウト上(流れの方向に)必須の水平部分と直線部分の始点(Hs)と終点(He

7.2 空調ユニットと冷却空気

冷却空気は,a)ブレーキアッセンブリに清浄で連続的な冷却を提供し,b)エンクロージャーからサンプリングトンネルおよびPMとPNのサンプリングプローブへエアロゾルを輸送する.冷却空気は,7.2.1項に記載された仕様に従った温度および湿度の安定した条件下にあり,7.2.2項に定義された低バックグラウンド濃度値で清浄であり,7.2.3項に記載された仕様に従った繰り返し再現性のある試験条件を確保するために一定流量とする.

冷却空気は,空調ユニットによって恒温恒湿に調整し,試験装置に供給される.典型的なシステムの構成は,空気を冷却して除湿する冷却装置,空気の温度を上昇させる加熱装置,空気を加湿させるスチームまたはウォーターミスト発生装置が含まれる.本装置に不可欠なのは,閉ループ比例積分微分制御(PID),アラーム,およびすべての装置とインタフェースの状態を監視するセンサーである.システムは,幅広い流量範囲で調整された冷却空気が供給できる可変流量ブロワーで構成され,最小運転流量と最大運転流量によって定義される.最小運転流量および最大運転流量については,以下の仕様が適用される.

  1. (a)   最小運転流量は,100~300 m3/h(1.67~5 m3/min)の範囲とする.
  2. (b)   最大運転流量は,最低運転流量の少なくとも 5倍とする(500~1500 m3/h; 8.33~25 m3/min).
  3. (c)   最大運転流量は,最小運転流量より少なくとも1000 m3/h大きいものとする(1100~1500 m3/h; 18.3~25 m3/min).

システムの構成は,サンプリングトンネル内にわずかな負圧を提供するために,2つの可変流量ブロワー(片方は空気を押し出し,もう片方は空気を吸引する)を組み合わせてもよい.空調ユニット制御は,試験作業者とダイナモメータに必要なインタフェースを提供できることが必要である.

7.2.1 冷却空気の調整

試験機関は,調整された冷却空気の温度および湿度を継続的に監視および管理しなくてはならない.そのため,試験機関は,ブレーキエンクロージャーの上流に温湿度センサーを設置する必要がある.ブレーキエンクロージャーの上流にセンサーを配置することで,ブレーキ事象による熱負荷がフィードバック信号に影響することを避けることができる.図7.1.に,温度および湿度センサー(要素 3)の指示位置を示す.

温度センサーの精度は±1 °Cとする.絶対湿度および相対湿度を測定するセンサーは,公称値(すなわち50%)の±5 %の精度を有する必要がある.試験機関は,これらのセンサーからの信号を使用して,冷却空気の温度と湿度の安定性を評価するものとする.表7.2.は,冷却空気の温度,湿度,流量に関する要件をまとめたものである.

表 7.1.ブレーキエミッション試験装置(図7.1)に必要なサブシステムと仕様2)

パラメータ

冷却空気温度

冷却空気相対湿度

冷却空気流量

公称値(目標値)

23 ⁰C

50 %

10章にある

設定値(Qset)

平均値:最大許容差

±2 ⁰C

±5 %

設定値(Qset)の±5 %

瞬時値(1Hz): 最大許容差

±5 ⁰C

±30 %

設定値(Qset)の±5 %

瞬時値(1Hz): 最大許容偏差を超える許容偏差

規定なし

規定なし

設定値(Qset)の±10 %

瞬時値(1Hz): 最大許容差を超える最大時間

各試験セクションの所要時間の10 %

各試験セクションの所要時間の10 %

各試験セクションの所要時間の5 %

7.2.1.1 冷却空気の温度

測定地点における冷却空気の温度は,以下に定義するとおり一定とする.試験機関は以下の手順で実施する必要がある.

  1. (a)   冷却空気の温度を23 °Cに設定すること.冷却空気の平均温度は,設定(公称)値から±2 °Cを超えて逸脱しないこと.試験機関は,温度を公称値である23 °Cにできる限り近づけることを目指すものとする.
  2. (b)   本項(a)で規定される冷却空気の平均温度の要件は,冷却空気の調整,すり合わせ,エミッション計測を含むブレーキエミッション試験の全てのセクションに適用される(ソーク区間は含まない).
  3. (c)   13.4項の表13.6.に定義されているように,全てのセクションにおける冷却空気の平均温度を計算し,報告すること.
  4. (d)   冷却空気の温度の瞬時値は,公称値から±5 °Cを超えて逸脱してはならない.冷却空気の温度の瞬時値が公称値から±5 °Cを超えて逸脱する場合,試験設備は,本項(e)に記載の規定を確実に満たさなければならない.
  5. (e)   冷却空気の温度の瞬時値は,平均温度が本項(a)に規定される要件を満たしていることを条件として,試験時間(ソーク区間は含まない)の10 %を超えない範囲で,公称値(T < 18 °C または T > 28 °C)から±5 °Cを超えて逸脱することがある.

  1. (i)  

    冷却調整セクションにおいて,18 °C未満または28 °C以上の冷却空気温度の瞬間値(1 Hz)の総数が,527回未満であること.

  2. (ii)  

    すり合わせセクションの各WLTP-Brake cycleにおいて,18 °C未満または28 °C以上の冷却空気の温度の瞬間値(1 Hz)の総数が,1583回未満であること.

  3. (iii)  

    エミッション計測セクション(ソーク区間は含まない)のWLTP-Brake cycleにおいて,18 °C未満または28 °Cを超える冷却空気の温度の瞬時値(1 Hz)の総数が,1583回未満であること.

  1. (f)   冷却空気の温度の平均値または瞬間値(1 Hz)が,本項に規定される許容差から外れた場合,試験は無効とする.

7.2.1.2 冷却空気湿度

冷却空気の相対湿度は,以下に定義するとおり一定とする.試験機関は以下の手順を実施する必要がある.

  1. (a)   冷却空気の相対湿度を50%に設定する.冷却空気の平均湿度は,公称(設定)値の±5%を超えて逸脱してはならない.試験機関は,相対湿度を可能な限り目標値である50%に近づけることを目指すものとする.
  2. (b)   本項(a)に規定される冷却空気の平均相対湿度の要件は,冷却空気調整,すり合わせ,エミッション計測を含むブレーキエミッション試験の全セクションに適用される(ソーク区間は含まない).
  3. (c)   13.4項の表13.6.に定義されているように,全てのセクションにおける冷却空気の平均相対湿度を算出し,報告すること.
  4. (d)   冷却空気の相対湿度の瞬時値(1 Hz)は,公称値の±30 %を超えて逸脱してはならない.冷却空気相対湿度の瞬時値(1 Hz)が公称値から±30%を超えて逸脱する場合,試験機関は,本項(e)に記載の規定を確実に満たさなければならない.
  5. (e)   冷却空気の相対湿度の瞬時値(1 Hz)は,平均相対湿度が本項(a)に規定される要件を満たしていることを条件として,試験期間(ソーク区間は含まない)の10%を超えない期間,公称値から±30%RH(RH<20 %,またはRH>80%)を超えて逸脱することが許容される.

  1. (i)  

    冷却調整セクションにおいて,20% RH未満または 80% RHを超える冷却空気の相対湿度の瞬間値(1 Hz)の総数が,527回未満であること.

  2. (ii)  

    すり合わせセクションの各WLTP-Brake cycleにおいて,20 % RHより低い値,または 80% RHより高い値を示す冷却空気の相対湿度の瞬時値(1Hz)の総数が,1583回未満であること.

  3. (iii)  

    エミッション計測セクション(ソーク区間は含まない)のWLTP-Brake cycleにおいて,20 % RH未満または 80%RHを超える冷却空気の相対湿度の瞬間値(1 Hz)の総数が,1583回未満であること.

  1. (f)   相対湿度の平均値または瞬間値が,本項に規定される所定の許容差から外れた場合,試験は無効とする.

相対湿度に関する規定に加えて,試験設備は,ブレーキエミッション試験全体を通じて,冷却空気の平均絶対湿度が6~11 gH2O/kg乾燥空気の間に保たれることを保証しなくてはならない(エミッション計測中のソーク区間は含まない).絶対湿度の平均値が本項で規定される許容差から外れている場合,試験は無効とする.

7.2.2 冷却空気の精製

7.2.2.1 冷却空気のろ過

試験システムに流入する冷却空気は,フィルタ材料中の最も透過性の高い粒子径の粒子を少なくとも 99.95%低減できる媒体を通過するか,EN 1822 に規定される少なくともクラスH13のフィルタを通過するものとする.揮発性有機種を除去するフィルタ(木炭,活性炭,または同等品)は,H13(または同等品)フィルタの上流に設置する.図7.1.は,エアフィルタ(要素2)の位置を示している.

7.2.2.2 粒子バックグラウンドの検証

粒子バックグラウンドは,PN濃度ベースで定義されるものとする.試験機関は,PN測定に使用されるのと同じ測定器を用いて,粒子バックグラウンドを測定するものとする.PN測定システムに関する詳細は,12.2項に記載されている.試験機関は,TPN10とSPN10の両方のバックグラウンド濃度をシステムレベルとブレーキエミッション試験レベルの2つのレベルで測定し報告する必要がある.

7.2.2.2.1 システムレベルでの粒子バックグラウンドの検証

最初のレベルは,試験用プラットフォームの設置時,主要保守後,またはシステム誤動作の兆候がある場合のシステムレベルでの粒子バックグラウンドの検証に関するものである.試験機関は,システムレベルでの粒子バックグラウンドの検証のために,以下の手順で実施する必要がある.

  1.   

    ブレーキ治具とブレーキ構成部品が,ブレーキエンクロージャー内に設置されていない状態で,粒子バックグラウンドの検証を実施する.

  2.   

    TPN10およびSPN10測定システムが最小のPCRF設定値で動作している状態で,粒子バックグラウンドの検証を実施する.

  3.   

    冷却流量が所定の平均値まで安定してから,少なくとも5分後に粒子バックグラウンドの検証を実施する.冷却流量の安定性については7.2.3項,温度および湿度の安定性については7.2.1項に,それぞれの平均値の許容範囲で規定されているとおり.

  4.   

    2つの異なる冷却流量の設定において,粒子バックグラウンドの検証を実施する.システムの最小運転流量と最大運転流量を適用する.試験機関は,システムの粒子バックグラウンドの検証を実施している間,TPN10とSPN10の両方をサンプリングすること.試験機関は,流量を変更する場合,TPN10とSPN10は同一の等速吸引ノズルで測定することができる.

  5.   

    粒子バックグラウンドの検証手順は,バックグラウンド濃度が安定するのに必要な時間だけ実行する.粒子バックグラウンド濃度は,PCRF補正したPN濃度の5分間平均値が7.2.2.2.3項の最大許容レベル未満であるとき,安定しているとみなされる.

7.2.2.2.2 試験レベルでの粒子バックグラウンドの検証

第二のレベルは,ブレーキエミッション試験前後の粒子バックグラウンドの検証に関するものである.試験機関は,試験前の検証のために,以下の手順で実施する必要がある.

  1.   

    ブレーキアッセンブリを取り付け,すり合わせセクションの前に,予備試験を行う.ディスク/ドラムは回転させず,パッド/シューは動作させないこと.粒子バックグラウンドを検証している間は,ブレーキをかけないこと(ブレーキ圧ゼロ).

  2.   

    ブレーキエミッション試験用に設定した冷却空気流量で,試験前の検証を実施する.TPN10 およびSPN10測定システムは,供試ブレーキエミッション試験用に選択されたPCRF設定で動作させること.

  3.   

    冷却流量が所定の平均値まで安定してから,少なくとも5分後に粒子バックグラウンドの検証を実施する.冷却流量の安定性については7.2.3項,温度および湿度の安定性については7.2.1項に,それぞれの平均値の許容範囲で規定されている.

  4.   

    粒子バックグラウンドの検証手順は,バックグラウンド濃度が安定するのに必要な時間だけ実行する.粒子バックグラウンド濃度は,PCRF補正したPN濃度の5分間平均値が7.2.2.2.3項の最大許容差未満であるとき,安定しているとみなされる.

試験機関は,試験後検証のために,以下の手順で実施する必要がある.

  1. e.  

    パージする(最大風量でトンネル内に付着した粒子を洗浄する)前に,ブレーキアッセンブリを取り付けた状態で,試験後の粒子バックグラウンドの検証を行う.ディスク/ドラムは回転させず,パッド/シューは動作させないこと.粒子バックグラウンドを検証している間は,ブレーキをかけないこと(ブレーキ圧をゼロとすること).

  2. f.  

    ブレーキエミッション試験用に設定した冷却空気流量で,試験後の検証を実施する.TPN10およびSPN10測定システムは,ブレーキエミッション試験用に選択されたPCRF設定で動作させること.

  3. g.  

    エミッション試験の直後で,冷却流量が所定の平均値まで安定してから,試験後の粒子バックグラウンドの検証を開始すること.冷却空気流量の安定性については7.2.3項,温度および湿度の安定性については7.2.1項に,それぞれの平均値の許容範囲で規定されているとおり.

  4. h.  

    粒子バックグラウンドの検証手順は,バックグラウンド濃度が安定するのに必要な時間だけ実行する.粒子バックグラウンド濃度は,PCRF補正したPN濃度の5分間平均値が7.2.2.2.3項の最大許容差未満であるとき,安定しているとみなされる.

7.2.2.2.3 粒子バックグラウンド濃度の計算と報告

粒子バックグラウンドは,標準状態におけるTPN10およびSPN10濃度ベースで測定され,報告されるものとする.試験機関は以下の手順で実施する必要がある.

  1. (a)  

    粒子個数カウンター(PNC)のゼロ検証を実施する.装置製造者の仕様に従い,PNCの入口に適切な性能のフィルタを装着し,PN濃度を収録する.読み取り値は,PNCの入口で0.2 #/Ncm3を超えないものとする.フィルタを取り外すと,PNCは測定濃度の上昇を示し,フィルタを交換すると0.2 #/Ncm3以下に戻ること.PN測定装置は,いかなるエラーも報告してはならない.

  2. (b)  

    7.2.2.2.1項および7.2.2.2.2項に従い,システムレベルおよび試験レベルにおけるTPN10(TPN10b#) およびSPN10(SPN10b#)の両方のバックグラウンド濃度の平均値を測定する.13.4項の表13.6.に規定されるように,粒子バックグラウンド値を正規化した粒子数濃度(#/Ncm3)で報告すること.

  3. (c)  

    サンプリングトンネル内の粒子バックグラウンド濃度の5分間平均値は,TPN10とSPN10それぞれ,20 #/Ncm3を超えてはならない.20 #/Ncm3未満という許容差は,7.2.2.2.1項と7.2.2.2.2項に記載されているシステムレベルと試験レベルの両方の粒子バックグラウンド濃度を対象とする.

  4. (d)  

    (a)項に記載されたPNCのゼロ検証,および本項(c)項に定義された粒子バックグラウンドの許容差に適合しない場合,試験は無効となる.

  5. (e)  

    試験機関は,12.2.4項に基づき,ブレーキエミッション計測セクションのTPN10およびSPN10濃度値を報告する際,粒子バックグラウンド濃度を減算してはならない.

7.2.2.2.4 走行距離あたりの粒子バックグラウンドの計算と報告

試験機関は,異なるブレーキを試験する際に,冷却空気流量の設定の変更を反映するため,走行距離あたりの粒子個数で表される粒子バックグラウンドも報告する必要がある.走行距離あたりの粒子バックグラウンドの計算は,式7.1および式7.2によって決定される

  
TPN 10 b E F = 10 6 × T P N 10 b # × N Q ÷ V Set
(式7.1)
  
S P N 10 b E F = 10 6 × S P N 10 b # × N Q ÷ V Set
(式7.2)

ここで,

TPN10 bEF:サンプリングトンネル内のTPN10バックグラウンド(#/km)

SPN10 bEF:サンプリングトンネル内のSPN10バックグラウンド(#/km)

TPN10b#:標準状態に正規化され,PCRF補正されたサンプリングトンネル内のTPN10バックグラウンド平均濃度(#/Ncm3

SPN10b#:標準状態に正規化され,PCRF補正されたサンプリングトンネル内のSPN10バックグラウンド平均濃度(#/Ncm3

NQ:正規化されたサンプリングトンネル内の平均流量(Nm3/h)

VSet:WLTP-Brake cycleの平均速度の公称値(km/h)

  1. (a)   PNバックグラウンド濃度(TPN10b#およびTPN10b#)は,Time-Based fileの所定のパラメータから粒子バックグラウンドの検証を通して計算された標準状態に正規化され,PCRF補正されたTPN10b#およびTPN10b#とする.
  2. (b)   Time-Based fileの所定のパラメータから,粒子バックグラウンドの検証中において,標準状態に正規化された平均冷却空気ノルマル流量(NQ)を計算する.
  3. (c)   WLTP-Brake cycleの平均速度の公称値は,43.7 km/h(Vset = 43.7 km/h)である.
  4. (d)   13.4項の表13.6.に規定されているように,試験レベル(試験前と試験後の両方)のみで,走行距離ごとの粒子バックグラウンド粒子濃度を算出し報告すること.

7.2.3 冷却空気流量

試験機関は,ブレーキエミッション試験手順全体を通して,冷却空気流量を測定し,報告する必要がある.冷却空気流量の測定は,以下の要件を満たさなければならない.

  1. (a)   冷却空気流量の測定方法は,全ての運転条件下で設定値の±2%の精度で測定できるものとする.
  2. (b)   サンプリング面の下流の冷却流量を測定する.図7.1.に,流量測定装置(要素10)の指示位置を示す.
  3. (c)   流量を1点で測定する場合,流量計をダクトの中心に位置させ,気流の変化点(エルボ継ぎ手の曲げなど)から少なくともダクト内径の少なくとも5倍の長さ下流,およびダクト内径の少なくとも2倍の長さ上流に位置させる.流量測定は,サンプリングトンネルとは異なる内径を有する場合がある.その場合,ダクト径は流量計が設置されているダクトの内径を指す.流量計の設置により著しい圧力変化が生じないこと(すなわち,流量計における圧力が周囲圧力から±1kPa以内であること).ダクトの内径がサンプリングトンネルとは異なる内径(175 mm ≤ di ≤ 225 mm)を有する場合,35%以下(ダクトの内径が113.75 mm ≤ di ≤ 146.25 mm)とする.
  4. (d)   流量計をエンクロージャーの上流と下流で,多点測定する場合は,流量計を流れ方向に対して垂直に,ダクト内径の少なくとも5倍の長さ下流,ダクト内径の少なくとも2倍の長さ上流に設置する.ダクト径とは,流量計が設置されているダクトの内径を指す.ダクトの内径がサンプリングトンネルの内径と異なる場合は,本項(c)に定める位置に流量計を設置する.
  5. (e)   標準状態における流量を報告するように校正された流量計を使用すること.運転条件への適切な変換を確実にするため,温度センサーは±1°Cの精度を有し,圧力測定は±0.4 kPaの精度と確度を有するものとする.
  6. (f)   流量計が標準条件における値を報告するように校正されていない場合,測定装置の直前に設置された温度センサーを含むことを確認する.温度センサーは,本項(e)の精度要件を満たさなければならない.流量値を正規化するためにこの測定を使用する.
  7. (g)   流量計が標準条件における値を報告するように校正されていない場合,測定装置から上流で測定した絶対圧または大気圧との圧力差の測定を含むことを確実なものとする.圧力測定は,本項(e)に記載されている精度および正確さの要件を満たさなければならない.この測定値を用いて,流量値を正規化する.
  8. (h)   流量計を汚染から保護するためにエアフィルタを使用する場合,フィルタを流量計からダクト内径の少なくとも5倍の長さ上流側に設置すること.圧力損失を継続的に監視し,必要な場合は,測定された流量を適宜修正すること.流量計の製造者が提供する保護フィルタの種類および仕様に関する推奨に従うこと.

試験機関は,ブレーキエミッション試験の全セクションを通じて,冷却空気流量が以下のように一定であることを保証しなくてはならない.

  1. (i)   冷却空気流量(Qset)の設定値(公称値)は,ブレーキエミッション試験の全てのセクションにおいて同一で一定とする.冷却調整,すり合わせ,エミッション計測(ソーク区間を含む)の各セクションに同じ設定値とする.冷却調整セクションで不合格となった冷却空気流量の設定値は適用しない.
  2. (j)   冷却調整セクションでは,冷却空気流量の平均値は,試験開始時の設定値の±5 %以内とする.
  3. (k)   すり合わせセクションでは,冷却空気流量の平均値は,ブレーキの冷却調整セクションで定めた設定値(公称値)の±5%以内とする.
  4. (l)   エミッション計測セクションでは,冷却空気流量の平均値は,ブレーキの冷却調整セクションで定めた設定値(公称値)の±5%以内とする.
  5. (m)   13.4項の表13.6.に定義されるとおり,全てのセクションにおける冷却空気流量の平均値を計算し,報告すること.
  6. (n)   冷却空気流量の設定値(公称値)または平均値が,本項に規定する要件を満たさない場合,試験は無効とする.
  7. (o)   冷却空気流量の瞬時値は,冷却空気流量の平均値が本項に規定された要件を満たしている場合に限り,サイクル継続時間の5%を超えない時間であれば,冷却空気流量の設定値(公称値)の±10%の範囲で逸脱することができる.この許容差は,冷却調整およびエミッション計測に適用される.
    1.    冷却調整セクションでは,冷却空気流量の瞬時値が設定値(公称値)から±5~10%の範囲を逸脱した場合,サイクル継続時間の5%である264秒以内であれば許容される.
    2.    エミッション計測セクションでは,冷却空気流量の瞬時値が設定値(公称値)から±5~10%の範囲を逸脱した場合,ソーク区間は含まないサイクル継続時間の5%である792秒以内であれば許容される.
  8. (p)   本項で定義される平均値および瞬間値の許容差の範囲だけでなく,PMおよびPNのサンプリング流量とサンプリングトンネルの冷却空気流量からそれぞれ算出した,等速比の仕様を満たさなければならない.等速比の仕様は,PMおよびPNそれぞれ12.1.2.3項および12.2.3.2項に規定されている.
  9. (q)   試験前に,ダクトおよびエンクロージャーを対象としたシステムリークチェックを実施すること.所定のブレーキのエミッション試験用に設定した冷却空気流量に安定してから,少なくとも2分間測定する.測定された平均流量が設定値の±5%以内であれば,試験を続行する.流量が設定値の±5%を超えて変動した場合は,試験を中止し,流量測定装置を検証し,リークの可能性のある原因を特定し,問題を解決するための是正措置を講じ,リークチェックを成功させてから試験を再開すること.システムのリーク率を決定するために,システム製造者の仕様に従った代替方法を適用することができるが,試験機関は,常に設定値からの実際の流量変動レベルを報告するものとする.
  10. (r)   試験機関は,ブレーキエミッション試験のTime-Based fileにおいて,冷却空気流量を以下のように報告すること.
    1.    13.4項の表13.6.に定義されているように,実測値と正規化値の両方を報告すること.
    2.    測定された流量とサンプリングトンネルの内径を用いて,式7.3に基づき,サンプリングトンネルにおける対応する冷却空気風速の瞬時値を計算する.
    3.    13.4項の表13.6.に定義されているように,計算された冷却空気風速を報告すること.

  
U = ( 4 × 10 3 × Q ) ( π × d i 2 )
(式7.3)

ここで

U:表13.2による冷却風速(km/h)

Q:表13.2に従って測定された冷却流量(m3/h)

di:表7.1によるサンプリングトンネルの内径(mm)

7.3 ブレーキダイナモメータと自動システム

ブレーキダイナモメータは,制御された運動エネルギーを供試ブレーキに供給する技術システムである.図7.2.は,ブレーキダイナモメータを備えた試験システムのレイアウトを示し,GTR24に従ってブレーキエミッション試験を実施するために必要な最小限のサブシステムとの相互関係を示している.

ブレーキダイナモメータは,少なくとも次の要素から構成されること.

  1.   

    回転速度を加速または一定に保つための可変速電気モータ.また,実際の走行状態で試験イナーシャ(慣性モーメント)を調整し,非摩擦ブレーキを再現する.

  2.   

    供試ブレーキを作動させるサーボコントローラ(油圧または電気).

  3.   

    供試ブレーキを取り付け,ディスクまたはドラムの自由な回転を可能にし,ブレーキによる反力を吸収するための治具.

  4.   

    すべての必須サブシステムを搭載するための剛性構造.試験対象のブレーキが発生する力およびトルクを吸収できる構造とする.

  5.   

    データを収集し,試験システムの動作を監視するためのセンサーおよび装置.

図 7.2.ブレーキダイナモメータとオートメーションシステムの全体の試験レイアウト2)

注:S1:ブレーキダイナモメータ,S2:自動化・制御・データ収集システム,S3:空調ユニット,S4:S5:エミッション計測システム.C1およびC2:試験機関のエネルギー制御および監視システム.灰色の矢印は,供試ブレーキからのエアロゾルサンプルを示す.

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試験システムに不可欠なのは,自動化,制御,データ収集システムである(図7.2.-S2).

このシステムは,電気モータの回転速度を連続的に制御しつつ,ブレーキ動作やそれに伴い減速する回転速度も制御する.サブシステムS3,S4,S5(図7.2.中のS3,S4,S5)については,それぞれ7.2項,7.4~7.5項,12.1~12.2項で詳述する.図7.2.の各要素およびサブシステムは例示であり,図のとおり正確に適合させる必要はない.自動化,制御,データ収集システムは,ブレーキエミッション試験を可能にするすべての機能を実行する.加速イベントではブレーキディスクやブレーキドラムを回転させ,定速イベントでは速度を一定に保ち,減速イベントでは摩擦トルクを調節しながら回転質量の運動エネルギーをブレーキが吸収する.さらに,自動化,制御,データ収集システムは,オペレータへインタフェースを提供し,試験データを保存し,試験機関内の他のシステムのデータを処理する.自動化システムは,減速時に有効な試験イナーシャ(慣性モーメント)の合計を増減させるために(減速時に車両に固有の試験イナーシャを広く再現できるよう),電気モータのアクティブトルク制御を使用できること.また,電気モータは,走行抵抗と車両のパワートレインからの非摩擦ブレーキに相当する運動エネルギーの一部を吸収することができること.試験システムを動作させるソフトウェアは,少なくとも以下の機能を実行できること.

  1. f.  

    全てのクローズドループプロセス(主にブレーキ制御,冷却空気の調整,エミッション計測システム)を動作させることにより,走行サイクルを自動的に実行すること.

  2. g.  

    GTR24の13章に定義される出力を生成するために,全ての関連センサーから継続的にデータを収録し,報告すること.

  3. h.  

    モニター信号,メッセージ,アラーム,またはオペレータや異なるシステムからの緊急停止は,この試験システムへ統合すること.

7.4 ブレーキエンクロージャーの設計

ブレーキエンクロージャーは,ブレーキエミッション試験中にブレーキアッセンブリが設置される試験室である.エンクロージャーは密閉されており,未処理の空気が侵入してブレーキアッセンブリの周囲を流れる空気を汚染するのを防ぐ.エンクロージャーは,ブレーキを冷却し,エアロゾルをサンプリングトンネルに輸送するために,均一に調整された空気を送る.エンクロージャーの設計要件は,ブレーキ冷却およびブレーキ粒子の輸送効率に関連しており,試験システムが異なっても測定値の再現性を確保するための一般的ガイドラインを提供することを目的としている.図7.1.にある要素4が,ブレーキエンクロージャーの位置を示している.

7.4.1エンクロージャーの概略

図7.3にエンクロージャーの形状を示す.エンクロージャーは1つの水平面と4つの垂直面によって定義される.平面A1は,ブレーキの回転軸とダクトの入り口と出口の軸に沿った水平面を表す.平面Aは,エンクロージャーの入口に沿った垂直面を表す.平面Bは,入口ダクトからエンクロージャーの中央部分への移行の端にある垂直平面を表す.平面Cは,GTR24で対象となる車両の最大のブレーキアッセンブリ,または同様の寸法(直径450mm)を有するブレーキによって定義されるものとする.平面Dは,ブレーキの回転軸に沿った垂直面を表す.

図7.3にある"1"は,平面Aと平面Bの間のエンクロージャーのセクションとして定義され,灰色で示されている.移行角度"a"(図7.3.にある"2")は,移行領域がエンクロージャー内でどの程度滑らかに展開するかを定義する.図7.3.では,冷却空気は右から左に流れている.

図 7.3. ブレーキエンクロージャーの概略図2)

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7.4.2 設計仕様

ブレーキエンクロージャーの設計,エンクロージャー内での適切な気流の混合と流れの均一性の検証に関して,以下の一般仕様を満たさなければならない.

  1. (a)   ブレーキエンクロージャーは,ブレーキディスクやブレーキドラムの回転軸を中心として,2つの円錐形または台形が交差する形状とする.
  2. (b)   平面Aから平面Bにかけて,急激な変化がなく,滑らかで連続的であること.ダクトの軸方向と,エンクロージャーの断面に沿った水平面A1は,それぞれ地面に対して水平方向にすること.つまり,ダクトからの風の流れは,水平方向であること.
  3. (c)   入口と出口の断面は,大きさや形状が急激に変化しないよう,滑らかな移行角度(15 °≦a≦30 °)(図7.3.の要素2)を確保するよう設計すること.
  4. (d)   セグメント間の接続部分には(平面Aから平面Dの各接続部分は),試験中に空気中に飛散する可能性のあるブレーキ粒子を集めるような欠陥や特徴がないこと.
  5. (e)   セグメント間の接続部分に留め具を使用する場合は,エンクロージャー内部に突出しないこと.
  6. (f)   冷却空気は,水平方向にのみエンクロージャーに出入りすること.すなわち,平面A1によって定義されるエンクロージャーの中心軸は,気流方向と一致すること.冷却空気を流すトンネルの長さは,エンクロージャーの入口の上流側で少なくともダクト内径の2倍の長さ(2∙di)にわたって水平かつ直線とすること.エンクロージャーの後に冷却空気を流すトンネルの長さは,サンプリングトンネルに曲がりがある場合,7.5項に規定されているように,少なくともサンプリング平面の下流側の2倍の長さ(2∙di)にわたって水平かつ直線とすること.
  7. (g)   エアロゾルと接触するエンクロージャーの表面は,継ぎ目のない構造とすること.超清浄で超微細な表面を実現し,耐食性を高めるため,電解研磨仕上げのステンレス鋼(または同等のもの)を使用すること.
  8. (h)   すべての材料(ガスケットやシールを含む)は,組み立て時に使用される媒体(ブレーキ液など)に対して,耐性のある材料を選択すること.すべてのエンクロージャーの隙間と界面は,ガスケットライニングまたは同等のものを使用して気密に密閉すること.
  9. (i)   十分な混合を確保するため,エンクロージャーの入口における気流は,すべての気流試験設定において,少なくともレイノルズ数4000の乱流を維持すること.所定のブレーキエミッション試験に対するレイノルズ数Reは式.7.4を用いて計算する.

  
R e = ( U × d i ) ( υ × 3.6 × 1000 )
(式.7.4)

ここで,

Re:所定のブレーキエミッション試験におけるレイノルズ数(単位なし)

U:表13.2による平均冷却風速(km/h)

di:表7.1によるサンプリングトンネルの直径(mm)

υ:空気の動粘度(デフォルト値1.48×10-5 m2/sを使用する)

  1. (j)   平面Cは直径450 mmの任意のブレーキディスクの接線方向である.平面Cでの対気速度が,本項(l)で定義した速度均一性の最大許容差(±35%)を下回るように,エンクロージャー入口の断面を設計すること.必要であれば,平面Bの上流側のエンクロージャー入口側に整流板または拡散板を使用し,平面Cにおける可能な限り均一性の高い流れを確保しなくてはならない.
  2. (k)   図7.4に定義されているように,平面Cの9つの位置における対気速度を計算する.平面Cを,平面の辺に平行な線によって9等分する(l1は平面Cの高さを表し,l2は平面Cの軸方向の深さを表す).点C5を平面Cの中心とする.残りの8点は,点C5を中心に均等に配置し,図7.4に示すように,点C5と平面Cのエンクロージャーの壁を結ぶ仮想線の中間に配置する

図 7.4. 対気速度検証のための基準位置2)

注:左軸-外径450mmのディスクに対する平面Cを用いた適切な混合と流れの均一性の検証.右側-平面C上の測定位置の分布(流れ方向から見た図)

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  1. (l)   ブレーキアッセンブリまたはブレーキ治具を取り付けずに,平面Cの9つの位置で風速を測定する.ブレーキエミッション試験に使用する冷却空気ダクトはすべて,これらの測定中もエンクロージャーに接続したままとする.風速の測定は,試験システムの最小および最大運転流量で測定を実施する.各測定を実施する前に,少なくとも2分間は流れを安定させること.サンプリングトンネル流量の平均値が設定値の±5%以内であるとき,気流は安定したとみなされる.安定化後,少なくとも2分間,対気速度測定を行う.測定時間は,対気速度値に影響を及ぼす可能性のある対気速度パターンの不安定性を検出するのに十分な時間をとること.各位置での対気速度は,与えられた流れに対する全測定値の算術平均値の±35%を超えて変動しないこと.

ブレーキエンクロージャーの清掃およびメンテナンスは,頻度および手段に関して製造者が提供する仕様に従うものとする.ブレーキエミッション試験を開始する前に,エンクロージャーが清浄であることを確認する必要がある.

7.4.3 寸法

試験機関は,GTR24で対象となる車両の最大のブレーキアッセンブリに適合するようなブレーキエンクロージャーを選択するために,十分な注意を払うこと.これには,ブレーキ粒子の排出を低減するために設計された追加部品(例:ブレーキフィルタ装置)の寸法が,ブレーキが搭載される対応するホイールの寸法に適合することを条件とする.加えて,試験機関は,その選択が試験中に予想される速度,ブレーキ試験イナーシャ,ブレーキトルクの能力内であることを検証する必要がある.ブレーキエンクロージャーの大きさが過剰に大きい場合,低圧領域が生じたり,目標ブレーキ温度を達成するには風速が低かったり,粒子輸送時間の長さにつながる可能性がある.図7.5に,エンクロージャーの主要寸法を示すレイアウトを示す.

図 7.5. ブレーキエンクロージャーとその主要寸法の概略図2)

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ブレーキエンクロージャーの寸法に関する最小仕様を以下に示す.本項に記載された寸法仕様に加えて,試験設備は,選択された寸法が7.4.2項に定義されたすべての要件を満たす設計を提供することを保証しなくてはならない.

  1. (a)   ブレーキエンクロージャーを平面A1に対して対称に設計する.平面A1の長さ(lA1)は,流れ方向に沿ったエンクロージャーの最も長い長さを表す.平面A1の長さは,1200 mmから1400 mm(1200 mm≦lA1≦1400 mm)とする.
  2. (b)   ブレーキエンクロージャーを平面Dに対して対称に設計する.平面 D の長さ(hD)は,流れ方向に垂直なエンクロージャーの最長距離(高さ)を示す.平面Dの高さは600 mmから750 mm(600 mm ≤ hD ≤ 750 mm)の間とする.
  3. (c)   平面Cから平面Dまでの距離は,GTR24で対象となる車両で市販されているブレーキの最大半径と同じ長さである.図7.5.における平面Cの位置は,説明のために示したものであり,実際の寸法仕様に必ずしも対応して表していない.
  4. (d)   平面Bの高さ(hB)は,hB/hD 比が常に 60%以上(hB/hD > 60%)となるように設計する.平面Bにおける断面の移行深さは,本項(g)に定義されるエンクロージャーの軸方向の深さと等しくなるように設計する.
  5. (e)   出口の移行区間の長さ(li)および高さ(hB)は,入口の移行区間の長さ(li)および高さ(hB)と等しくなるように設計する.
  6. (f)   入口と出口の直径(di)は,7.5項に規定されるサンプリングトンネルのダクト内径の直径と等しいこと.
  7. (g)   平面D(ブレーキ回転軸に平行)におけるブレーキエンクロージャーの最大軸方向深さは,400 mm から500 mmの間とする.

7.5 サンプリングトンネルの設計

サンプリングトンネルは,ブレーキエンクロージャーの出口とサンプリングプローブの入口の間の部分として定義される.図7.1.は,全体レイアウトにおけるサンプリングトンネルの位置(図7.1.中の要素7)を示している.サンプリングトンネルの設計には,2つレイアウト,曲がりのないレイアウトと曲がりのあるレイアウト,いずれかを選択することが可能である.試験機関は,サンプリングトンネルの設計が以下の要件を満たすようにしなくてはならない.

  1. (a)   冷却空気は,エンクロージャーの出口とサンプリング面の間の断面に変化のない円形ダクトを流れること.
  2. (b)   エアロゾルと接触するトンネルの内面には,電解研磨仕上げ(または同等品)のステンレス鋼を使用すること.
  3. (c)   隣接するセクター間の移行部には,ブレーキ粒子状物質を蓄積させるような欠陥や特徴がないこと.
  4. (d)   ダクトの内径diは最低で直径175 mm,最大で直径225mm(175 mm ≦ di ≦ 225 mm)で一定とすること.ダクト内径diは図7.6に示すように定義される.
  5. (e)   本項(f)および(g)に記載された仕様を満たすことを条件に,サンプリングトンネル内(すなわち, ブレーキエンクロージャーの下流側でサンプリングプレーンの上流側)において,90 °以下の曲げを1回まで行うことができる.
  6. (f)   サンプリングトンネルに曲がりがある場合,曲げ半径rbは少なくともダクト内径(直径)の2倍(2∙di)とすること.曲げ半径rbは図7.6に示すように定義される.

図 7.6. ダクト径(di)と曲げ半径(rb)の定義(許可を得て図を引用)2)

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  1. (g)   サンプリングトンネルに曲がりがある場合,曲がり部からダクト内径(直径)径の少なくとも6倍の長さ(6∙di)の直管ダクトを,サンプリング平面の前に設置すること.さらに,少なくともダクト直径の2倍の長さ(2∙di)の直線ダクトを,サンプリング平面の後に設置すること.
  2. (h)   サンプリングトンネルに曲がりがない場合,少なくとも6倍の長さ(6∙di)の直管ダクト(もしくは直管の構造)を,サンプリング平面より上流側からエンクロージャーの出口までの間に設けること.さらに,少なくともダクト直径の2倍の長さ(2∙di)の直線ダクト(もしくは直管の構造)を,サンプリング平面より下流側から気流の変化点(例えば,サンプリングトンネルの曲がりや流量計用のフィルタ)までの間に設けること.
  3. (i)   本項(a),(c)および(d)のダクトに関する規定は,少なくとも,エンクロージャーの入口の上流にあるダクト内径の2倍の長さ(2∙di)から,サンプリング面の下流にあるダクト内径の2倍の長さ(2∙di)までのトンネルダクトに適用される.

7.6 サンプリング面

サンプリング面は,サンプリングプローブの入口が配置されるサンプリングトンネルの垂直面である.サンプリング面は,3つのサンプリングプローブを持つレイアウトと4つのサンプリングプローブを持つレイアウト,いずれかを設計することが可能である.

図7.1.にある要素8は,システム全体のレイアウトにおけるサンプリング面の位置を示している.サンプリングプレーンには,以下の規定が適用される.

  1. (a)   PMおよびPNのサンプリングは,サンプリングトンネルの同一断面で行うこと.PMおよびPNサンプリングについては,それぞれ12.1.1.1項および12.2.1.1項を参照されたい.
  2. (b)   本項(e)および(f)で定義されるダクト径に応じて,3プローブまたは4プローブのいずれかの構成を選択する.図7.7は,3プローブと4プローブにおけるPMおよびPNサンプリングプローブの適切な位置関係を示している.

図 7.7. トンネル内のプローブの間隔の図解(許可を得て図を引用)2)

注:サンプリングトンネル内のプローブの間隔を図式化したもの.白抜きの点はPMサンプリングプローブ(PM2.5/PM10)を表す.黒い点はPNサンプリングプローブ(TPN10/SPN10)を表す.原文の表記は,3-Probes Layoutは175 mm ≦ di <225 mmと誤りがあったため左図は著者により修正した.

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  1. (c)   サンプリングプローブは,サンプリングトンネルを中心として等間隔に配置し,サンプリングプローブ同士の間隔を47.5 mm以上とすること(図 7.7中の a1 ≥ 47.5 mm).サンプリングプローブの外径を起点に,サンプリングプローブ同士の距離を測定すること.
  2. (d)   トンネル内壁面からサンプリングプローブまでの距離は,47.5 mm以上となるようにサンプリングプローブを配置すること(図 7.7 中の a2 ≥ 47.5 mm).トンネル内壁面からサンプリングプローブまでの距離は,サンプリングプローブの外径を起点に測定すること.
  3. (e)   3プローブの場合,ダクト内径は175 mm以上必要である.ダクト内径が190 mmより小さい場合(175 mm ≦ di <190 mm),3プローブのレイアウトが必須となる.
  4. (f)   4プローブのレイアウトは,ダクト内径が190 mm以上の場合(190 mm ≦ di ≦225 mm)のみ可能である.

8. 試験準備要件

8.1 入力パラメータ

8.1.1 全摩擦ブレーキ

GTR24に従って全摩擦ブレーキエミッション試験を実施するために,試験機関は,試験対象のブレーキが搭載された車両に関する以下のパラメータを利用できること.

表 8.1. 全摩擦ブレーキに必要な試験パラメータ2)

No.

パラメータや入力値

備考

記号

単位

1

Vehicle make, model, and type

車両メーカー,モデル,車種

供試ブレーキが搭載されているブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両のメーカー,モデル,および車種(PEV,OVC-HEV,NOVC-HEV Cat.1,NOVC-HEV Cat.2,ICE)

-

2

Vehicle axle

車軸

供試ブレーキが搭載されているブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両の車軸(フロントまたはリア)

FA or RA

-

3

Brake mounting position in the vehicle

車両へ取り付けているブレーキの向き

ブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両における供試ブレーキの位置(右側コーナーまたは左側コーナー)

RHC or LHC

-

4

Vehicle test mass

試験車質量

本項(a)に規定されるブレーキダイナモメータで模擬されるブレーキエミッション・ファミリーペアレント車両の質量(試験車質量)

Mveh

kg

5

Brake force distribution

ブレーキ力配分

本項(b)のブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両における供試ブレーキのブレーキ力配分

FAF or RAF

%

6

Fixture style

治具の方式

8.4.1項に従うブレーキアッセンブリの治具の方式

L0-U or L0-P

-

7

Part number for the disc or drum

ディスクやドラムの固有コード

ブレーキメーカーがディスクやドラムに表示している固有のコード

-

8

Part number for the friction material

パッドやシューの固有コード

摩擦メーカーがパッドやシューに表示している固有のコード

-

9

Nominal Wheel Load

公称輪荷重

本項(c)に基づく走行抵抗やその他の損失を考慮する前の公称輪荷重(フロントまたはリア)

WLn-f or WLn-r

kg

10

Test (or applied) Wheel Load

試験輪荷重(適応輪荷重)

本項(d)に基づく走行抵抗やその他の損失を考慮した後の公称輪荷重(フロントまたはリア)

WLt-f or WLt-r

kg

11

Tyre dynamic rolling radius

タイヤ動的負荷半径

タイヤメーカーが公表している特定のタイヤサイズの走行距離あたりの回転数に相当するタイヤ半径

rR

mm

12

Effective brake radius

有効ブレーキ半径(原文ではBrake effective radiusと3.1.22項と異なる表記)

本項(e)で規定されている,ブレーキの中心から摩擦材の理論的な中心までの距離

reff

mm

13

Brake nominal inertia

ブレーキ公称イナーシャ

本項(f)で定義されている,タイヤ動的負荷半径を回転半径に持つ輪荷重で,サービスブレーキに実際のブレーキエミッション・ファミリーペアレント車両と同じ運動エネルギーを与えるイナーシャの公称値

In

kg·m2

14

Brake test (or applied) inertia

ブレーキ試験イナーシャ

ブレーキ適用イナーシャ

車両の走行抵抗または本項(g)に定義されるその他の損失によって誘発される減速力(13%)を差し引いた後のブレーキ公称イナーシャ

It

kg·m2

15

Disc/Drum maximum outer diameter

ディスク/ドラム外径

試験中のディスクまたはドラムの最大直径

OD

mm

16

Disc Mass

ディスク質量

試験前のディスクの質量 – 10章に記載されている試験中のブレーキを公称前輪荷重対ディスク質量グループに割り当てるために使用する

DM

kg

17

Number of pistons per side

ピストン数

ブレーキキャリパーの片側にあるピストン(または「ポット」)の数

#

18

Piston Mean (or hydraulic) Diameter

ピストン直径

8.4.1(h)項に定義されている供試ブレーキのピストンの直径

mm

19

Disc calliper bolt tightening torque (if applicable)

ブレーキメーカーが指定している場合のボルトの推奨締め付けトルク

N·m

20

Brake calliper or brake drum efficiency (if applicable)

ブレーキキャリパーやブレーキドラムの効率

ブレーキメーカーが指定している場合の摩擦損失,ピストントラベルなどを考慮した効率(指定がない場合は100%とする)

  
η

%

21

Threshold pressure

ブレーキ油圧閾値

ブレーキトルクが発生する前に内部抵抗に打ち勝つための最低圧力

pthreshold

kPa

22

Brake runout limit

ブレーキ振れの閾値

ブレーキ治具へに取り付けたときに許容されるディスクやドラムの軸や半径方向の最大の振れ

BRO

µm

表 8.1.に示す必要な試験パラメータの一部を計算する際には,以下の点を考慮する.

  1. (a)   試験車質量(Mveh)は,ランニングオーダー質量(MRO)に供試ブレーキを搭載する車両のオプション装備質量(kg)を加えたものである.

  1. (i)   カテゴリー1-1車両(M1車両カテゴリー)

0.5人乗りの追加質量に相当する37.5 kg

  1. (ii)   カテゴリー2 車両 車両総質量 3.5 t 未満(N1車両カテゴリー)

25 kgに最大車両積載量の28%を加えたもの

  1. (b)   前後のブレーキ力配分(FAFまたはRAF)は,それぞれ各車軸のブレーキ力と車両の総ブレーキ力との比率を表す.FAFは前車軸にかかるブレーキ力の割合を表す.RAFは後車軸にかかるブレーキ力の割合を表す.ブレーキ力の前後配分はパーセンテージで表される.各車両のブレーキ力配分(FAFまたはRAF)は,車両メーカーから提供される値とする.減速度0.65 G未満に対しては,UN 規則 No.90 の既定方法によるブレーキ力配分が適用される.これは以下に相当する

  1. (i)   カテゴリー1-1車両(M1車両カテゴリー)

前車軸 77%,後車軸 32%

  1. (ii)   カテゴリー2 車両 車両総質量 3.5t 未満(N1車両カテゴリー)

前車軸 66%,後車軸 39%

  1. (c)   公称輪荷重(WLn)は,車両の走行抵抗や寄生損失を考慮する前の,供試ブレーキ(フロントまたはリア)にかかる荷重を示す.これは試験車質量とブレーキ力配分の関数であり,式8.1aと8.1bから計算される.公称輪荷重は,試験輪荷重を計算するために使用される.さらに,10章に規定される冷却設定を調整する際に,供試ブレーキをその(WLn-f/DM)比に従ってディスク質量に対する公称前輪荷重グループに分類するために使用される.

  
WL n f = 0.5 × M veh × F A F

(式8.1a)

  
WL n r = 0.5 × M veh × R A F

(式8.1b)

ここで

WLn-f:表8.1による公称前輪荷重(kg)

WLn-r:表8.1による公称後輪荷重(kg)

Mveh:表8.1による車両試験質量(kg)

FAF:表 8.1に基づく前輪ブレーキ力配分

RAF:表 8.1に基づく後輪ブレーキ力配分

  1. (d)   試験輪荷重(または適用輪荷重)(WLt)は,車両の走行抵抗や寄生損失を考慮した後の,供試ブレーキ(フロントまたはリア)にかかる荷重を表す.これは公称輪荷重の関数であり,式8.2aと8.2bから計算される.WLtは,実走行中の車両の路面荷重を考慮するため,WLnに比べて13%低減される.WLtは,冷却調整,すり合わせ,エミッション計測セクションを含むブレーキエミッション試験全体に適用される.

  
WL t f = 0.87 × W L n f

(式8.2a)

  
WL t r = 0.87 × W L n r

(式8.2b)

  1. (e)   有効ブレーキ半径(reff)は,ブレーキ(ディスクまたはドラム)の中心から摩擦材の理論上の中心までの距離として定義される.この半径で描かれた円は,ディスクとパッド,またはドラムとシューの接触面の中心に置かれる.ディスクブレーキの場合,有効ブレーキ半径はブレーキ製造者が提供する.ドラムブレーキの場合,有効半径はドラムの内径の半分とする.
  2. (f)   ブレーキ公称イナーシャ(In)は,実車と同じ運動エネルギーをサービスブレーキに与えるタイヤ動的負荷半径に等しい回転半径を持つ輪荷重を表す.これは,公称輪荷重とタイヤ動的負荷半径の関数であり,式8.3から計算される.

  
I n = WL n × r R 2

(式8.3)

ここで,

In:表8.1に基づくブレーキ公称イナーシャ(kg·m2

WLn:表8.1に基づく公称輪荷重(kg)

rR2:表8.1に基づくタイヤ動的負荷半径(m)

  1. (g)   ブレーキ試験イナーシャ(It)は,車両の走行抵抗や寄生損失によって誘発される減速力を差し引いた後のブレーキ公称イナーシャを表す.ブレーキ試験イナーシャは,ブレーキへ与える主たる運動エネルギーとなる.ブレーキ公称イナーシャの関数であり,式8.4に従って計算される.ブレーキ試験イナーシャは,実際に運用する際の車両の走行抵抗や寄生損失を考慮し,ブレーキ公称イナーシャより13%低減される.ブレーキ試験イナーシャは,冷却調整,すり合わせ,エミッション計測セクションを含むブレーキエミッション試験全体に適用される.

  
I t = 0.87 × I n

(式8.4)

  1. (h)   ドラムブレーキのピストン平均(または油圧)直径(dpiston)は,ホイールシリンダーのピストン直径である.ディスクブレーキのdpistonは,供試ブレーキの等価ピストン径を表す.キャリパーが複数(n個)のピストンを含む場合,試験設備は,キャリパーの片側に作用する等価な個々のピストン径を用い,式8.5を用いてピストン油圧径を決定する.

  
d piston = d 1 2 + d 2 2 + + d n 2

(式8.5)

8.1.2 非摩擦ブレーキ

GTR24に従って非摩擦ブレーキエミッション試験を実施するために,ブレーキに関連する以下のパラメータ,およびブレーキエミッション・ファミリーペアレント車両のc値を試験機関が利用できるようにする.

表 8.2. 非摩擦ブレーキに必要な試験パラメータ2)

No.

パラメータや入力値

備考

記号

単位

1

Vehicle make, model, and type

車両メーカー,モデル,車種

供試ブレーキが搭載されているブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両のメーカー,モデル,および車種(PEV,OVC-HEV,NOVC-HEV Cat.1,NOVC-HEV Cat.2,ICE)

-

2

Vehicle axle

車軸

供試ブレーキが搭載されているブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両の車軸(フロントまたはリア)

FA or RA

-

3

Brake mounting position in the vehicle

車両へ取り付けているブレーキの向き

ブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両における供試ブレーキの位置(右側コーナーまたは左側コーナー)

RHC or LHC

-

4

Vehicle test mass

試験車質量

本項(a)に規定されるブレーキダイナモメータで模擬されるブレーキエミッション・ファミリーペアレント車両の質量(試験車質量)

Mveh

kg

5

Brake force distribution

ブレーキ力配分

本項(b)のブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両における供試ブレーキのブレーキ力配分

FAF or RAF

%

6

Fixture style

治具の方式

8.4.1項に従うブレーキアッセンブリの治具の方式

L0-U or L0-P

-

7

Part number for the disc or drum

ディスクやドラムの固有コード

ブレーキメーカーがディスクやドラムに表示している固有のコード

-

8

Part number for the friction material

パッドやシューの固有コード

摩擦メーカーがパッドやシューに表示している固有のコード

-

9

Nominal Wheel Load

公称輪荷重

本項(c)に基づく走行抵抗やその他の損失を考慮する前の公称輪荷重(フロントまたはリア)

WLn-f or WLn-r

kg

10

Test (or applied) Wheel Load

試験輪荷重(適応輪荷重)

本項(d)に基づく走行抵抗やその他の損失を考慮した後の公称輪荷重(フロントまたはリア)

WLt-f or WLt-r

kg

11

Tyre dynamic rolling radius

タイヤ動的負荷半径

タイヤメーカーが公表している特定のタイヤサイズの走行距離あたりの回転数に相当するタイヤ半径

rR

mm

12

Effective brake radius

有効ブレーキ半径(原文ではBrake effective radiusと3.1.22項と異なる表記)

本項(e)で規定されている,ブレーキの中心から摩擦材の理論的な中心までの距離

reff

mm

13

Brake nominal inertia

ブレーキ公称イナーシャ

本項(f)で定義されている,タイヤ動的負荷半径を回転半径に持つ輪荷重で,サービスブレーキに実際のブレーキエミッション・ファミリーペアレント車両と同じ運動エネルギーを与えるイナーシャの公称値

In

kg·m2

14

Brake test (or applied) inertia

ブレーキ試験イナーシャ

ブレーキ適用イナーシャ

車両の走行抵抗または本項(g)に定義されるその他の損失によって誘発される減速力(13%)を差し引いた後のブレーキ公称イナーシャ

It

kg·m2

15

Disc/Drum maximum outer diameter

ディスク/ドラム外径

試験中のディスクまたはドラムの最大直径

OD

mm

16

Disc Mass

ディスク質量

試験前のディスクの質量 – 10章に記載されている試験中のブレーキを公称前輪荷重対ディスク質量グループに割り当てるために使用する

DM

kg

17

Number of pistons per side

ピストン数

ブレーキキャリパーの片側にあるピストン(または「ポット」)の数

#

18

Piston Mean (or hydraulic) Diameter

ピストン直径

8.4.1(h)項に定義されている供試ブレーキのピストンの直径

mm

19

Disc calliper bolt tightening torque (if applicable)

ブレーキメーカーが指定している場合のボルトの推奨締め付けトルク

N·m

20

Brake calliper or brake drum efficiency (if applicable)

ブレーキキャリパーやブレーキドラムの効率

ブレーキメーカーが指定している場合の摩擦損失,ピストントラベルなどを考慮した効率(指定がない場合は100%とする)

  
η

%

21

Threshold pressure

ブレーキ油圧閾値

ブレーキトルクが発生する前に内部抵抗に打ち勝つための最低圧力

pthreshold

kPa

22

Brake runout limit

ブレーキ振れの閾値

ブレーキ治具へに取り付けたときに許容されるディスクやドラムの軸や半径方向の最大の振れ

BRO

µm

表 8.2.に規定される必要な試験パラメータの一部を計算する際には,以下の点を考慮する.

  1. (a)   試験車質量(Mveh)は,ブレーキエミッション・ファミリーペアレント車両のランニングオーダー質量(MRO)に供試ブレーキを搭載する車両のオプション装備質量(kg)を加えたものである.

  1. (i)   カテゴリー1-1車両(M1車両カテゴリー)

0.5人乗りの追加質量に相当する37.5kg

  1. (ii)   カテゴリー2 車両 車両総質量 3.5t 未満(N1車両カテゴリー)

25kgに最大車両積載量の28%を加えたもの

  1. (b)   前後のブレーキ力配分(FAFまたはRAF)は,それぞれ各車軸のブレーキ力と車両の総ブレーキ力との比率を表す.FAFは前車軸にかかるブレーキ力の割合を表す.RAFは後車軸にかかるブレーキ力の割合を表す.ブレーキ力の前後配分はパーセンテージで表される.各車両のブレーキ力配分(FAFまたはRAF)は,車両メーカーから提供される値とする.減速度0.65 G未満に対しては,UN規則No.90 の既定方法によるブレーキ力配分が適用される.これは,8.1.1(b)項に定義する,以下に相当する.

  1. (i)   カテゴリー1-1車両(M1車両カテゴリー)

前車軸 77%,後車軸 32%

  1. (ii)   カテゴリー2 車両 車両総質量 3.5t未満(N1車両カテゴリー)

前車軸 66%,後車軸 39%

  1. (c)   公称輪荷重(WLn)は,車両の走行抵抗や寄生損失を考慮する前の,供試ブレーキ(フロントまたはリア)にかかる荷重を示す.これは試験車質量とブレーキ力配分の関数であり,式8.1aと8.1bから計算される.公称輪荷重は,試験輪荷重を計算するために使用される.さらに,10章に規定される冷却設定を調整する際に,供試ブレーキをその(WLn-f/DM)比に従ってディスク質量に対する公称前輪荷重グループに分類するために使用される.
  2. (d)   試験輪荷重(または適用輪荷重)(WLt)は,車両の走行抵抗や寄生損失を考慮した後の,供試ブレーキ(フロントまたはリア)にかかる荷重を表す.これは公称輪荷重の関数であり,式8.2aと8.2bから計算される.WLtは,実走行中の車両の路面荷重を考慮するため,WLnに比べて13%低減される.WLtは,冷却調整,すり合わせ,エミッション計測セクションを含むブレーキエミッション試験全体に適用される.
  3. (e)   有効ブレーキ半径(reff)は,ブレーキ(ディスクまたはドラム)の中心から摩擦材の理論上の中心までの距離として定義される.この半径で描かれた円は,ディスクとパッド,またはドラムとシューの接触面の中心に置かれる.ディスクブレーキの場合,有効ブレーキ半径はブレーキ製造者が提供する.ドラムブレーキの場合,有効半径はドラムの内径の半分とする.
  4. (f)   ブレーキ公称イナーシャ(In)は,タイヤ動的負荷半径に等しい回転半径を持つ輪荷重を表し,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントの車両と同じ運動エネルギーをサービスブレーキに与える.式8.3から計算される.
  5. (g)   ブレーキ試験イナーシャ(It)は,車両の走行抵抗や寄生損失によって誘発される減速力を差し引いた後のブレーキ公称イナーシャを表す.ブレーキ試験イナーシャは,ブレーキへ与える主たる運動エネルギーとなる.ブレーキ公称イナーシャの関数であり,式8.4に従って計算される.ブレーキ試験イナーシャは,実際に運用する際の車両の走行抵抗や寄生損失を考慮し,ブレーキ公称イナーシャより13%低減される.ブレーキ試験イナーシャは,冷却調整,すり合わせ,エミッション計測セクションを含むブレーキエミッション試験全体に適用される.
  6. (h)   8.1.1(h)項に定義するピストン平均(または油圧)直径(dpiston).

8.2 試験の設定準備

8.2.1 全摩擦ブレーキと非摩擦ブレーキ

試験機関は,ブレーキエミッション試験を開始する前に,以下の作業を行うこと.

  1.   

    全ての試験文書(試験設備の校正成績書など),ブレーキ情報,制御プログラム,ダイナモメータの能力,および試験条件が利用可能であることを確認しなくてはならない.

  2.   

    対応する制御プログラム,試験パラメータおよび試験条件,並びにブレーキ情報を,ブレーキダイナモメータ制御システムに更新または情報を反映する.

  3.   

    8.4.1項の仕様に従って,ブレーキアッセンブリを試験治具とダイナモメータの試験架台に取り付ける.アダプターを主ダイナモシャフトに接続する.

  4.   

    ブレーキパッドまたはブレーキシューを取り付け,マスターシリンダーからブレーキまでのブレーキラインから気泡を取り除くために,徹底的なブレーキブリードを行うこと.

  5.   

    供試ブレーキ,ブレーキ治具,熱電対ワイヤー,油圧ブレーキラインを目視点検し,適切な配線と接続を確認する.

  6.   

    ダイヤルゲージの先端を,ディスクの外側表面の中心線から10 mm外側に置く(ディスクブレーキ)か,またはダイヤルゲージをドラムの内側表面の中心線上に放射状に置く(ドラムブレーキ)ことにより,ブレーキの振れ(BRO)を測定する.この測定中,ブレーキパッドやシューを取り付けてはならない.ダイナモメータに取り付けたディスクまたはドラムを手動で回転させながら,BROが50 μm以下であることを確認する.BROが50 μmを超えている場合は,ブレーキ治具の調整やブレーキ部品の点検を行い,BROを50 μm以下にする.試験開始前のBROが本項に定める許容差を超えたままの場合,試験は無効とする.

  7.   

    測定器の使用および洗浄について,測定器メーカーが定めた標準操作手順に従い,すべての測定器が使用可能であることを確認する.全てのフィルタ媒体が,フィルタの調整,取扱い,保管に関してフィルタ製造業者が定めた標準作業手順書に従って用意されていることを確認する.

  8.   

    3~30 barの範囲のブレーキ圧力でブレーキ静圧をかけ,ブリードチェック用の液量曲線を確認し,エンクロージャー内部の液漏れを目視検査する.

  9.   

    エンクロージャーを閉じ,空調ユニットをオンにし,7.2項の仕様に従って空調ユニットの動作を検証する.

  10.   

    各速度(5 km/h,50 km/h,135 km/h)に達する加速イベントを実施し,設定速度への加速中と目標速度で 10秒間定速で走行した後の残留トルクを報告する(ブレーキ圧ゼロの場合).5km/hでは1 m/s2,他の2つの目標速度では2 m/s2の加速度を適用する.回転トルクが0~20 N·m(ダイナモメータのベアリングが吸収するトルク,機械損失を除く)の間にあることを確認する.回転トルクがこれらの値を超えている場合は,BRO,ランニングクリアランス(熱電対の配線を含む),ブレーキブリードの順に再度診断した後,手順を繰り返す.供試ブレーキの空転トルクが20 N·m を超えた場合,試験は無効とする.

  11.   

    WLTP-Brake cycleの最初のブレーキイベントを10回繰り返し,データ収集,試験パラメータ,ブレーキ試験イナーシャ,およびシステム全体の動作を検証する.

  12.   

    供試ブレーキの冷却空気流量が不明な場合は,10.2.4項に記載されているように,類似のブレーキに使用される既知の値に調整する.選択された冷却空気流量が,10章に定義された仕様を満たしていることを確認する.そうでない場合は,公称値が定義されるまで,10.2.4項に従って冷却空気流量を調整する.

  13.   

    公称冷却空気流量を使用して,試験前のバックグラウンドエミッションレベルが7.2.2.2項に定義された許容範囲内であることを検証する.

  14.   

    ブレーキエミッション計測用の全ての機器および装置が有効であり,エラーや警告なしに作動していることを確認する.

  15.   

    問題がなければ,それぞれ11章および12章に定義された手順に従って,すり合わせおよびエミッション計測のセクションを続行する.

本項で規定される手順は,試験機関が同一のブレーキアッセンブリを用いて全てのブレーキエミッション試験セクションを実施する場合に適用される.試験機関が,試験に使用したブレーキアッセンブリとは異なるブレーキアッセンブリを用いて冷却調整セクションを実施する場合,(g),(m),(n)および(o)項を除く本項のすべての手順を冷却空気調整セクションに適用し,(l)項を除く本項のすべての手順をすり合わせおよびエミッション計測セクションに適用する.

8.3 ブレーキ温度測定

試験機関は,ブレーキディスクまたはドラムの温度測定に埋め込み型熱電対を使用する.以下の仕様が適用される.

  1.   

    市販の温度センサー(タイプK熱電対)を使用する.

  2.   

    測定温度の範囲が0 °Cから最低800 °C,最大許容差(許容差)が±2.2 °C,または測定値の±0.75%の組込型熱電対を使用すること.

  3.   

    熱電対をブレーキ部品に埋め込むために,先端が固い埋め込み式熱電対を使用すること.

さらに,埋め込み型熱電対をブレーキ部品に取り付けるための以下の規定が適用される.

  1. d.  

    ディスクブレーキ:埋め込む熱電対は摩擦面(摩擦経路の中心から半径方向に10 mm外側に位置し,ディスク表面から深さ0.5±0.1 mmの深さ)に配置する.ベンチレーテッドディスクの場合,熱電対をディスクプレートの2枚のフィンの中央に置く.図8.1.は,ブレーキディスクへの埋め込み式熱電対の適切な取り付け方法を示す.記号'X'はディスクとパッドの表面接触半径を示す.

図 8.1. ブレーキディスクへの埋め込み型熱電対の取り付け例2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

  1. e.  

    ドラムブレーキ:組み込み熱電対をブレーキドラムの内面から0.5±0.1 mm下の摩擦面の中心に設置する.図8.2.に,ブレーキドラムへの埋め込み型熱電対の正しい取り付け方法を示す.

  2. f.  

    GTR24に関連するブレーキエミッション試験中に,ブレーキパッドまたはシューの温度を測定するための埋め込み型または他のタイプの熱電対の設置することは,強く推奨されない.

ブレーキ温度は,13.4項の表13.6.に記載されるとおり,Time-Based fileで報告されるものとする.試験機関は,すべての試験セクションにおいて,ブレーキ温度の報告にこれらの熱電対測定値を使用する必要がある.一例として,試験機関は,9.2項に記載された仕様に従い,WLTP-Brake cycleの各Tripにおける初期温度の正しい適用を確認するために,Time-Based file内のTbrakeに収録された熱電対の温度測定値を使用する.

図 8.2. ブレーキドラムへの埋め込み型熱電対の取り付け例2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

8.4 ブレーキの設置位置

8.4.1 ブレーキアッセンブリ

ブレーキアッセンブリの取り付けは,回転軸,エンクロージャーの平面A1とDの位置に基づくこと.図8.3は,A1とDが回転軸と垂直に交差する適切な取り付け位置を示す.

図 8.3. ブレーキアッセンブリとキャリパーの取り付け位置2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

試験機関は,適切なブレーキ治具を使用して,非回転側をブレーキダイナモ軸(回転側)に接続し,ブレーキアッセンブリを取り付けること.ダイナモメータとブレーキ治具の最小サブシステムは,以下を含むものとする.

  1. (a)   ブレーキ治具を非回転側に取り付けるための取付部品.
  2. (b)   ブレーキトルクを非回転側に伝達する構造部品.
  3. (c)   ブレーキキャリパーまたはドラムブレーキのバッキングプレートアッセンブリを取り付けるための取付部品.
  4. (d)   ブレーキディスクまたはブレーキドラムを取り付けるための回転部品.
  5. (e)   ブレーキダイナモのシャフトをブレーキディスクまたはブレーキドラムに接続する回転部品.

ブレーキアッセンブリの治具は,摩擦が少なく,試験中に振動や揺れを生じることなく,ブレーキが 360°自由に回転できるものであること.試験機関は,ユニバーサル式(L0-U)またはポスト式(L0-P)のブレーキ治具を使用して,ブレーキアッセンブリをダイナモメータに取り付けること.

L0-Uは,ホイールハブなしでブレーキアッセンブリをダイナモメータのドライブシャフトに直接取り付けることができる.

L0-Pは,特定の車両のベアリングを取り付けることができる.図8.4.と図8.5.は,それぞれディスクブレーキとドラムブレーキの治具形状の断面図の例を示す.

図 8.4. ディスクブレーキに許容される治具形状の概略図の例2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

図 8.5. ドラムブレーキの治具形状の概略図の例2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

これらの治具のどのような回転部分の支点も,基準としてL0スタイルの治具を使用するのであれば,適用することができる.回転部分の支点には,片側が右または左にベアリング,あるいは両側がベアリングの場合がある.キャリパーアッセンブリーの取り付けに必要なものとは異なる追加部品は,延長部や突出部のない,円筒形で対称的な架台とする.例えば,図8.4は,L0-Uの3つの異なる型を示している.図8.4.は,2つのサイド・ベアリング,1つのサイド・ベアリング,片持ち梁スピンドルの3つの異なる型のL0-Uを示している.L0-UまたはL0-Pが対応できないブレーキ技術用の独自のブレーキ治具は,この要件から逸脱する可能性がある.その場合,試験機関は,独自のブレーキ治具を使用する必要性を示す適切な書類を提出しなくてはならない.

試験機関は,図8.6に示すように,前進走行時にブレーキが常に退避方向に回転するようにブレーキ構成(ブレーキディスクとキャリパー,またはドラムアッセンブリ)を取り付けること.

図 8.6. 車輪側(路面側)から見たディスク回転の模式図2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

冷却風が右から左へ流れる場合(図8.6.左側),ディスクは反時計方向(CCW)に回転する.冷却空気が左から右へ流れる場合(図8.6.右側),ディスクは時計回り方向(CW)に回転させなくてはならない.別の回転方向は認められず,試験は無効となる.

8.4.2 キャリパーの向き

試験機関は,キャリパーを冷却空気の流入との干渉を最小限に抑えるように配置するものとする.車両の取り付け位置に関係なく,図8.6に示すように,キャリパーの中心が12時の位置になるようにキャリパーをディスクの上に取り付ける.その他のキャリパーの向き(車両の取り付け位置など)や構成は認められず,試験を無効とする.ブレーキエミッション試験を実施する場合は,パーキングブレーキを取り外すこと.あるいは,パーキングブレーキ機能のないキャリパーを試験用に選択する.

9. WLTP-Brake cycle

9.1 概要

すべての種類のブレーキの試験サイクルは,時間ベースのWLTP-Brake cycleとする.WLTP-Brake cycleでは,ブレーキダイナモメータ上の速度の連続制御が要求される.ブレーキの場合,回転体の回転数を制御することになるため,物体が直線に沿って移動する速度と等価となるように制御する必要がある.図9.1にWLTP-Brake cycleの時間ごとの速度トレースを示す.

要約すると,WLTP-Brake cycleには以下が含まれる.

  1.   

    運転およびブレーキ条件が異なる10回の個別Trip(Trip#1~#10).Tripは冷却区間で区切られている.Tripの番号は,図9.1の右側のY軸に示されている.

  2.   

    サイクルの各Trip間の冷却区間を含まない,15826秒のアクティブ速度制御.WLTP-Brake cycleの速度トレースは,原文の付録Aに記載されている.

  3.   

    303回のブレーキイベント.各ブレーキイベントの主な特性は,原文の付録Bに記載されている.

  4.   

    総走行距離 192 km,平均速度 43.7 km/h,最高速度 132.5 km/h.

  5.   

    平均ブレーキ減速度は0.97 m/s2.最大ブレーキ減速度は2.18 m/s2

  6.   

    平均ブレーキ減速時間は5.7秒,最大ブレーキ減速時間は15秒.

図 9.1. WLTP-Brake cycleの時間ごとの速度(青色の折れ線)とTrip数(茶色の折れ線)2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

9.2 WLTP-Brake cycleの適用

9.2.1 冷却調整セクション

供試ブレーキを試験するための冷却空気調整は,GTR24の10章に記載されているように,WLTP-Brake cycleのTrip#10を使用して実施する.試験機関は,Trip#10の開始時のブレーキ温度に関する規定に基づき,冷却調整セクションを以下の手順で実施する.

  1. (a)   冷却風量を10章で決定された公称値に設定する.
  2. (b)   Trip#10におけるブレーキイベント#1から#7(WLTP-Brake cycle全体ではブレーキイベント#190から#196に相当する)のシーケンスに従ってブレーキを40±1 °Cまで温め,その後40±1 °Cまで冷却してから,(d)項の冷却調整セクションを開始する.
  3. (c)   (b)項のシーケンスを適用しても目標温度に達しない場合は,Trip#10 のブレーキイベント#1 から#7のいずれかを選択し,ブレーキ温度が40±1 °Cに達するまで数回繰り返す.
  4. (d)   40±1 °Cのブレーキ温度で,WLTP-Brake cycleのTrip#10を開始する.
  5. (e)   WLTP-Brake cycleのTrip#10を中断することなく実行しなくてはならない.9.3.1項には,中断の場合に必要な処置が記載されている.

記載されたブレーキ温度規定に従わない場合,冷却調整は無効となる.この場合,試験設備は,冷却風量を変更して冷却調整セクションを繰り返すこと.冷却調整の繰り返しには,同じブレーキ部品を使用することができる.

9.2.2 すり合わせセクション

すり合わせの手順は,11章に記載されているように,WLTP-Brake cycleの連続した5回の走行から構成される.WLTP-Brake cycleを正しく実行するには,Trip#1~#10をすべて連続して実行する必要がある.試験機関は,1~5回のWLTP-Brake cycleの開始時のブレーキ温度に関して規定に基づき,以下の手順ですり合わせを実施しなくてはならない.

  1. (a)   10章に記載された手順に従い,エミッション試験で使用する冷却流量の公称値(設定値)に設定する.
  2. (b)   すり合わせ1回目のWLTP-Brake cycleでは,ブレーキ温度23±5 °Cで走行を開始する.
  3. (c)   WLTP-Brake cycleのTrip#1~#10の間には,ブレーキを冷却するソーク区間を設けない.
  4. (d)   WLTP-Brake cycleを5回繰り返す間,ソーク区間を設ける.ブレーキ温度が40 °Cに達した時点で,その後の4回のWLTP-Brake cycleサイクルを開始する.
  5. (e)   WLTP-Brake cycle終了時のブレーキ温度が30 °Cから40 °Cの間であった場合,ブレーキを温めることなく,直ちに次のWLTP-Brake cycleを開始する.
  6. (f)   WLTP-Brake cycle終了時のブレーキ温度が30 °C未満の場合は,すり合わせセッションを中止し,要因を特定するか,9.2.1項の冷却調整を繰り返す.問題を解決した後,すり合わせセクションを最初から繰り返すこと.
  7. (g)   5回のWLTP-Brake cycleを中断することなく連続して実行しなくてはならない.9.3.2項には,中断した場合に必要な処置が記載されている.

本項で規定されている最低閾値温度30 °Cは,すべての試験済みブレーキに適用される.記載されたブレーキ温度規定に従わない場合,すり合わせ試験は無効となり,試験機関はすり合わせセクションを再試験する必要がある.再試験を行う場合は,新しいブレーキ部品を使用しなければならない.

9.2.3 エミッション計測セクション

WLTP-Brake cycleを正しく実行するには,Trip#1~#10をすべて連続して実行する必要がある.エミッション計測セクションの実行中は,WLTP-Brake cycleのTrip#2~#10を開始する前には,ソーク区間を設けることが義務付けられている.試験機関は,エミッション計測セクション実施する際に,WLTP-Brake cycleのTrip#2~#10を開始する前のブレーキ温度に関する規定に基づいて,以下の手順で実施しなくてはならない.

  1. (a)   10章に記載された手順に従い,エミッション試験で使用する冷却流量の公称値(設定値)に設定する.
  2. (b)   ブレーキのウォームアップ停止やスナビングは行わず,所定のブレーキ温度23±5 °CでWLTP-Brake cycleのTrip#1を開始する.
  3. (c)   WLTP-Brake cycleのTrip#2~#10を開始する前に,ソーク区間を設ける.ブレーキ温度が 40 °Cに達したら,Trip#2~#10を開始する.
  4. (d)   WLTP-Brake cycleのTrip#1~#9の終了時に,ブレーキ温度が 30~40 °Cであれば,ブレーキを暖めることなく,直ちに次のTripを開始する.
  5. (e)   WLTP-Brake cycleのTrip#1~#9の終了時に,ブレーキ温度が30 °C未満であった場合,エミッション計測試験を中止し,要因を特定するか,9.2.1項の冷却調整を繰り返す.問題を解決した後,新しいブレーキ部品を使用して,すり合わせセクションを最初から繰り返すこと.
  6. (f)   WLTP-Brake cycleを中断することなく実行しなくてはならない.9.3.3項には,中断した場合に必要な処置が記載されている.

本項で規定されている最低閾値温度30 °Cは,すべてのブレーキに適用される.記載されたブレーキ温度規定に従わない場合,エミッション計測試験は無効となる.

9.3 WLTP-Brake cycleの違反

9.3.1 冷却調整セクション

冷却調整セクションの途中で試験が中断(またはダイナモメータが故障)した場合,試験機関は試験を中止し,冷却調整手順を最初からやり直すものとする.その場合,ブレーキアッセンブリを取り外すことなくデータの確認と目視検査を行った後,試験機関は同じブレーキアッセンブリを使用してTrip#10の次の繰り返しを行い,冷却調整セクションを終了する.検査の結果,部品の緩み,ブレーキ液の漏れ,不適切な取り付け,過度の振動など,試験を完了するには不安要素がある場合,試験機関は新しいブレーキアッセンブリを取り付け,8.2.1項に従って冷却調整セクションを繰り返すものとする.

9.3.2 すり合わせセクション

試験機関は,試験を中断(またはダイナモメータに不具合)した時点からブレーキ操作を継続する.継続には,ブレーキパラメータの値がゼロでないTime-Based fileの最後に収録されたタイムスタンプを考慮する必要がある.試験機関は,実際のブレーキ温度がより低い場合,30 °Cに到達するためのウォームアップ停止やスナッブを実施しないこと.試験機関は,ブレーキ部品を分解しないこと.もしブレーキ部品がすり合わせセクションの開始後に分解された場合,すり合わせの完了とその後のエミッション計測に適さなくなる.ブレーキ部品を分解した場合,試験機関は新しいブレーキ部品と交換し,8.2.1項に従ってすり合わせセクションを最初から繰り返すこと.

9.3.3 エミッション計測セクション

WLTP-Brake cycleのTrip#2~#10を開始する前のソーク区間において,試験が中断(またはダイナモメータが故障)した場合,試験機関は,その中断が1時間を超えないことを条件として,部品を分解することなく,またはウォームアップ停止またはスナッブを実施することなく試験を継続しなくてはならない.試験機関は,中断した時に粒子捕集用のサンプリングポンプおよび冷却空気の供給を停止すること(この目的のために自動制御を強く推奨する).試験機関は,試験が再び開始され,7.2.3項に従って冷却流量が安定した後,サンプリングポンプおよび冷却空気の供給を再開する必要がある.

試験がTrip#1から#10の間に中断された場合,試験機関は,エミッション計測セクションを中止する.試験機関は,使用済みのPM2.5およびPM10フィルタを新しいものと交換し,部品を分解することなく,初期ブレーキ温度23±5 °CでTrip#1からエミッション計測を再開するものとする.

9.4 WLTP-Brake cycle 品質チェック

WLTP-Brake cycleが正しく実行されていることを確認するために,以下の品質チェックを実施しなければならない.有効なエミッション試験は,以下に記述される全ての基準に準拠しなければならない.

9.4.1 速度違反チェック

速度違反チェックは,ブレーキダイナモメータがWLTP-Brake cycleの速度トレースを正しく実行したことを確認するために必要である.速度違反は,ダイナモメータの実際の速度が,規定速度(公称速度)によって定義された速度トレースの許容差の範囲外にある場合に発生する.

  1. (a)   上限速度の許容範囲:指定された時点から±1.0秒以内に公称直線速度トレースより2.0km/h高い.
  2. (b)   下限速度の許容範囲:指定された時点から±1.0秒以内に公称直線速度トレースより2.0km/h低い.
  3. (c)   冷却調整セクションにおいて,速度違反の回数は,WLTP-Brake cycleの完全な Trip #10ごとに158回を超えないこと.これは,Trip#10の継続時間の3%に相当する.
  4. (d)   すり合わせセクションでは,WLTP-Brake cycleの全行程において,速度違反の回数が475回を超えないこと.これはWLTP-Brake cycleの継続時間の 3%に相当し,WLTP-Brake cycleの5回の繰り返しすべてに適用される.
  5. (e)   エミッション計測セクションにおいて,速度違反の回数は,WLTP-Brake cycleの全行程において475回を超えないこと.これはWLTP-Brake cycleの全行程の3%に相当する.ソーク区間は計算に含めない.
  6. (f)   13.4項の表13.6.に規定されているとおり,全セクションにおける速度違反の数を計算し,報告する.速度違反の計算には,全ての種類の事象(停止,加速,定速,減速)を含むが,ソーク区間は含まない.
  7. (g)   冷却調整セクションでWLTP-Brake cycleのTrip#10を実行しなかった場合,またはすり合わせセクションおよびエミッション計測セクションでWLTP-Brake cycle全行程を本項に規定された速度許容差の範囲内で実行しなかった場合,ブレーキエミッション計測試験は無効となる.

図 9.1. WLTP-Brake cycle中の速度違反の許容差(許可を得て図を引用)2)

From UN GTR No.24, by PMP, ©2023 United Nations. Reproduced with permission of the United Nations and translated informally by the author.

9.4.2 減速イベント数

減速イベント数の品質検査では,実行されたブレーキイベントの数を検査する.WLTP-Brake cycleの303回のブレーキイベントが,エミッション計測セクションですべて適用されていることを確認する必要がある.実際に適用されたブレーキイベントの数が公称値(すなわち303回)と等しくない場合は常に,この基準の違反が発生する.

試験機関は,13.4項の表13.6.に規定されているように,適用されたブレーキイベント数を検証する.試験パラメータである"停止時間(Stop Duration)"および"減速度-距離平均(Deceleration Rate - Distance Averaged)"をクロスチェックし,WLTP-Brake cycleの303回のブレーキイベントに対応する303回の数値およびゼロでない値を含むことを検証する.

減速イベント数の品質チェックは,エミッション計測セクションにのみ適用される.本項で規定されるとおり,WLTP-Brake cycleの303回のブレーキイベントをエミッション計測セクションで実施しなかった場合,無効な試験となる.

9.4.3 運動エネルギー散逸

運動エネルギー散逸の品質チェックは,WLTP-Brake cycleの実行中に正しい摩擦仕事量(Wf)を適用するために必要である.また,その他の入力パラメータ(ブレーキ試験イナーシャなど)が正しく計算され,適用されているかどうかの品質チェックも行われる.この品質チェックは,GTR24で対象となる車両に装備されているすべてのブレーキに適用される.非摩擦ブレーキ試験時の計算には,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントのパラメータを使用する.

WLTP-Brake cycleのTrip#10(冷却調整セクションの場合)およびWLTP-Brake cycle全行程(すり合わせ,またはエミッション計測セクションの場合)を通して計算されたすべてのブレーキ事象の比摩擦仕事量(J/kg)の合計が,規定された許容差の範囲外である場合は,運動エネルギー散逸品質チェックの違反が発生する.

  1. (a)   Trip#10における比摩擦仕事量の許容差の上限値:比摩擦仕事量の公称値5555 J/kgより278 J/kg高い.従って,許容差の上限値は5833 J/kgである.
  2. (b)   Trip#10における比摩擦仕事量の許容差の下限値:比摩擦仕事量の公称値 5555 J/kgより278 J/kg 低い.したがって,許容差の下限値は5277 J/kgである.
  3. (c)   WLTP-Brake cycleにおける比摩擦仕事量の許容差の上限値:比摩擦仕事量の公称値15983 J/kgより799 J/kg高い.したがって,許容差の上限値は16782 J/kgとなる.
  4. (d)   WLTP-Brake cycleにおける比摩擦仕事量の許容差の下限値:比摩擦仕事量の公称値15983 J/kgより799 J/kg低い.従って,許容差の上限値は15184 J/kgである.
  5. (e)   冷却調整セクションでは,Trip#10の比摩擦仕事量の合計値は,5277 J/kgから5833 J/kgの間とする.これは公称値の±5%に相当する.
  6. (f)   すり合わせセクションにおいて,WLTP-Brake cycle全行程の比摩擦仕事量の合計値は,15184 J/kgから16782 J/kgの間とする.これは公称値の±5%に相当し,WLTP-Brake cycleの5回の繰り返しすべてに適用される.
  7. (g)   エミッション計測セクションでは,WLTP-Brake cycle全行程の比摩擦仕事の合計値は,15184 J/kgから16782 J/kgの間とする.これは公称値の±5%に相当する.ソーク区間は計算に含めない.
  8. (h)   試験機関は,13.4項の表13.6.に規定されるように,提出されたブレーキエミッション試験のEvent-Based fileを使用して,各ブレーキイベントに対するトルクと角速度の時間積分を適用して,比摩擦仕事量を計算する.この計算には,試験輪荷重(WLt)の使用も必要であり,式9.1に従う.

  
W f = ( 2 × π 60 ) × f × τ brake × t brake WL t
(式9.1)

ここで

Wf:比摩擦仕事量(J/kg)

f:表13.1に従った回転速度(rpm)

τbrake:表13.1に従ったブレーキトルク(Nm)

tbrake:停止時間(s)

WLt:表 8.1 に基づく試験輪荷重(または適用輪荷重)(kg)

  1. (i)   式9.1は,Trip#10とWLTP-Brake cycleの114回と303回のブレーキイベントそれぞれの比摩擦仕事量を示す.試験機関は,各ブレーキイベントから算出された比摩擦仕事量を合計することで,総比摩擦仕事量(J/kg)を算出する.総比摩擦仕事量は,本項(a)‒(c)に記載される公称比摩擦仕事量と比較すること.
  2. (j)   ブレーキエミッション試験のいずれのセクションにおいても,比摩擦仕事量の合計値が本項に規定された許容範囲を逸脱する場合,試験は無効となる.

10. 冷却流量の調整

試験システムによって,ブレーキエンクロージャーの設計やサイズ,流量や風速,ダクト・システムのレイアウトや形状が異なる場合がある.各試験機関が同等のブレーキ温度を再現するために,気流速度を調整する適切な方法を定める.

10.1 試験方法の規定

10.1.1 ブレーキアッセンブリグループと検証パラメータの定義

供試ブレーキの適切な冷却空気流量を決定するために,試験機関はまず,ブレーキをディスクまたはドラム(ドラムをフロントブレーキとして使用する場合)の質量(DM)に対する公称前輪荷重(WLn-f)比で(WLn-f/DM)グループに分類する.

WLn-f/DM比は,WLn-f(kg)を試験前のディスクまたはドラム(ドラムをフロントブレーキとして使用する場合)の質量(kg)で除して算出する.試験機関は,8.1.1項に記載された仕様に従ってWLn-fを決定する.8.1.1(c)項は全摩擦ブレーキについて,8.1.2(c)項は非摩擦ブレーキについて定義される.

WLn-f/DM比に基づいて4つの異なるグループが定義される.

グループ 1:WLn-f/DM ≦ 45

グループ 2:45 < WLn-f/DM ≦65

グループ 3:65 < WLn-f/DM ≦85

グループ 4:WLn-f/DM>85

試験機関は,8.1.1項に記載された試験輪荷重(WLt)を適用する.8.1.2(d)項は非摩擦ブレーキ,または8.1.2(d)項に記載された試験輪荷重(WLt)とし,公称輪荷重(WLn)を用いないこと.

供試ブレーキの冷却空気調整については,3つのチェックパラメータが規定されている.これらのパラメータの目標値と許容差は,WLn-f/DMグループごとに異なる.試験機関は,冷却調整試験結果を比較する基準としてチェックパラメータを使用する.

  1. (a)   WLTP-Brake cycleのTrip#10における平均ブレーキ温度(ABT)
  2. (b)   WLTP-Brake cycleのTrip#10から選択された6つのブレーキイベントの初期ブレーキ温度の平均値(IBT)
  3. (c)   WLTP-Brake cycleのTrip#10から選択された6つのブレーキイベントの最終ブレーキ温度の平均値(FBT)

本項(b)および(c)でいうブレーキイベントとは,Trip#10の#46,#101,#102,#103,#104,#106である.対象ブレーキイベントの詳細は,表10.1に規定する.WLTP-Brake cycle全体を考慮した場合,ブレーキイベントに対応するシーケンス番号は,#235,#290,#291,#292,#293,#295となる.

表 10.1. WLTP-Brake cycleのTrip#10におけるブレーキ温度を検証するブレーキイベント2)

パラメータ

単位

減速イベント#

#46

#101

#102

#103

#104

#106

開始時間

s

2088

4438

4459

4494

4522

4903

終了時間

s

2092

4447

4467

4503

4529

4918

ブレーキ時間

s

4.0

9.0

8.0

9.0

7.0

15.0

初速度

km/h

97.4

112.0

68.2

80.9

73.4

132.5

最終速度

km/h

82.7

56.1

12.0

35.3

39.3

34.0

10.1.2 ブレーキ温度のパラメータと公差の検証

3つのチェックパラメータの目標値と対応する公差を表10.2.に示す.

  1. (a)   3つの確認パラメータの目標値と対応する許容差は,GTR24の適用範囲内のあらゆる種類の車両に搭載される,あらゆる種類のフロントブレーキに適用される.
  2. (b)   リヤディスクブレーキの場合,同じ車両のフロントブレーキに設定した冷却空気流量の公称値(設定値)を適用する.この場合,10.1.1項に記載されるWLn-f/DMカテゴリーへのブレーキの割り当ては,同じ車両のフロントブレーキのデータを用いて実施されるものとする.
  3. (c)   リアドラムブレーキの場合,同じ車両のフロントブレーキに設定した冷却空気流量の公称値(設定値)を適用する.この場合,10.1.1項に記載されたWLn-f/DMカテゴリーへのブレーキの割り当ては,同じ車両のフロントブレーキを用いて実施する.

表 10.2. WLTP-Brake cycleのTrip#10におけるブレーキの既定の温度指標と許容差2)

グループ

ABT [A1]

IBT [A2] ± 許容差

FBT [A3] ± 許容差

WLn-f/DM ≤ 45

≥ 50 °C

65 ± 25 °C

95 ± 35 °C

45 < WLn-f/DM ≤ 65

≥ 55 °C

75 ± 25 °C

115 ± 35 °C

65 < WLn-f/DM ≤ 85

≥ 60 °C

85 ± 25 °C

130 ± 35 °C

WLn-f/DM > 85

≥ 65 °C

95 ± 25 °C

150 ± 35 °C

10.1.3 検証パラメータと許容差の算定

供試ブレーキが10.1.1項に従ってWLn-f/DMグループに分類された後,試験機関は新しいブレーキ部品でWLTP-Brake cycleのTrip#10を実行し,表10.3.のセルに入力する確認パラメータの値を取得する.試験機関は,8.1.1項に定義されているWLt-fを適用する.8.1.1(d)項は全摩擦ブレーキに,8.1.2(d)項は非摩擦ブレーキに適用する.8.1.2(d)項の非摩擦ブレーキについては,10.1.4項に従って冷却空気調整を実施する.チェックパラメータの測定値は,作成された試験報告書ファイルを用いて以下のように計算する.

  1. (a)   ABT:WLTP-Brake cycleのTrip#10における平均ブレーキ温度

  1. (i)   目標値(A1)および許容差は,WLn-f/DMグループに依存し,表10.2.に定義される.
  2. (ii)   測定値(B1)は,13.4項の表13.6.に定義されているように,ブレーキエミッション試験のTime-Based fileから計算される.
  3. (iii)   B1は,Trip#10の全期間(5272 秒)に対応する全てのブレーキ温度の平均値に等しい.

  1. (b)   IBT:WLTP-Brake cycleのTrip#10から選択されたブレーキイベントの初期ブレーキ温度の平均値

  1. (i)  

    目標値(A2)および許容差は,WLn-f/DMグループに依存し,表10.2.に規定されている.

  2. (ii)  

    測定値(B2)は,13.4項の表13.6.に規定されているとおり,ブレーキエミッション試験のEvent-Based fileから計算される.

  3. (iii)  

    B2は,表10.1に記載される6つの選択されたブレーキイベントの各IBT値の平均温度値に等しい.試験機関は,式10.1に従ってB2を算出するものとする.

  
B 2 = ( Y 1 + Y 2 + Y 3 + Y 4 + Y 5 + Y 6 ) 6
(式10.1)

ここで

B2:WLTP-Brake cycleのTrip#10から選択されたブレーキイベントのIBTの平均値(°C)

Y1:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#46のIBT(°C)

Y2:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#101のIBT(°C)

Y3:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#102のIBT(°C)

Y4:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#103のIBT(°C)

Y5:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#104のIBT(°C)

Y6:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#106のIBT(°C)

  1. (c)   FBT:WLTP-Brake cycleのTrip#10から選択されたブレーキイベントの最終ブレーキ温度の平均値

  1. (i)   目標値(A3)および許容差は,WLn-f/DMグループに依存し,表10.2.に規定されている
  2. (ii)   測定値(B3)は,13.4項の表13.6.に規定されているとおり,ブレーキエミッション試験のEvent-Based fileから計算される.
  3. (iii)   B3は,表10.1に記載される6つの選択されたブレーキイベントの各FBT値の平均温度値に等しい.試験機関は,式10.2に従ってB3を算出するものとする.

  
B 3 = ( Z 1 + Z 2 + Z 3 + Z 4 + Z 5 + Z 6 ) 6
(式10.2)

ここで

B3:WLTP-Brake cycleのTrip#10から選択されたブレーキイベントのFBTの平均値(°C)

Z1:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#46のFBT(°C)

Z2:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#101のFBT(°C)

Z3:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#102のFBT(°C)

Z4:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#103のFBT(°C)

Z5:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#104のFBT(°C)

Z6:WLTP-Brake cycleのTrip#10からのブレーキイベント#106のFBT(°C)

選択した流量により冷却調整を実施した後,試験機関は,収録したブレーキ温度を,表10.2.に規定されている目標値と比較する.ブレーキ温度の目標値と試験結果の差は,式10.3,10.4,10.5に従って算出する.

  
C 1 = B 1 A 1

(式10.3)

ここで

C1:WLTP-Brake cycleのTrip#10における平均ブレーキ温度の平均値の差(°C)

B1:WLTP-Brake cycleのTrip#10におけるABTの実測値(°C)

A1:表10.2に基づく,WLTP-Brake cycleのTrip#10におけるABTの目標値(°C)

  
C 2 = | B 2 A 2 |

(式10.4)

ここで

C2:選択されたイベントのIBTの平均値の差の絶対値(°C)

B2:WLTP-Brake cycleのTrip#10から選択されたブレーキイベントのIBTの平均値(°C)

A2:表10.2に基づく,WLTP-Brake cycleのTrip#10におけるIBTの目標値(°C)

  
C 3 = | B 3 A 3 |

(式10.5)

ここで

C3:選択されたイベントのFBTの平均値の差の絶対値(°C)

B3:WLTP-Brake cycleのTrip#10から選択されたブレーキイベントのFBTの平均値(°C)

A3:表10.2に基づく,WLTP-Brake cycleのTrip#10におけるFBTの目標値(°C)

  1. (d)   試験機関は,得られた結果を表10.3に示す許容差と比較しなくてはならない.冷却流量調整セクションが正常に完了するためには,3つの基準をすべて満たさなければならない.冷却調整を検証した結果,表10.2.のすべての許容差を満たさない場合,試験機関は冷却流量を適宜調整して手順を繰り返すこと.
  2. (e)   表10.2に規定された3つの測定基準すべてを満たす適切な冷却流量がない場合,試験機関は,少なくとも2つのパラメータについて許容差を満たす適切な冷却流量を選択する.2つのパラメータの1つは,Trip#10の平均ブレーキ温度(ABT)である.そのような場合,IBTまたはFBTが表10.2.に規定される下限閾値を下回る場合,試験機関は,システムの最小運転流量による試験が実施されたことを実証すること.IBTまたはFBTのブレーキ温度測定値が表10.2.に規定される上限閾値より高い場合,試験機関は,システムの最大運転流量による試験が実施されたことを実証すること.成功しなかった冷却調整セクションのEvent-Based fileおよびTime-Based fileを,試験結果の出力データに含まれるものとする.
  3. (f)   最大運転流量が適用され,IBTおよびFBTの両方が表10.2.に規定される上限閾値より高い場合,試験機関は,システムの最大運転流量ですり合わせおよびエミッション計測セクションを継続すること.この場合,報告データには,最大運転流量で冷却調整セクションから得られたABT,IBT,およびFBT値を含め,Event-BasedおよびTime-Based fileは,試験結果の出力データに含まれるものとする.最小運転流量が適用され,IBTおよびFBTの両方が表10.2.に規定される下限閾値を下回る場合,試験機関は,システムの最小運転流量を適用するすり合わせおよびエミッション計測セクションを継続するものとする.この場合,報告データには,最小運転流量で冷却調整セクションから得られたABT,IBT,およびFBT値を含め,Event-BasedおよびTime-Based fileは,試験結果の出力データに含まれるものとする.
  4. (g)   最小運転流量が適用され,3つの温度指標がすべて表10.2.に規定される閾値の下限を下回る場合,冷却空気調整は無効とみなされる.

表 10.3. Trip#10中のブレーキ温度メトリクス[°C]と許容基準の計算2)

Trip#10イベント

略語

目標温度

冷却調整,試験温度

温度差

許容差

ABT

A1

B1

C1 /式10.3

C1 ≥ 0 °C

Average IBT

A2

B2 /式 10.1

C2 /式10.4

C2 ≤ 25 °C

#46

Y1

N/A

N/A

#101

Y2

#102

Y3

#103

Y4

#104

Y5

#106

Y6

Average FBT

A3

B3 /式10.2

C3 /式10.5

C3 ≤ 35 °C

#46

Z1

N/A

N/A

#101

Z2

#102

Z3

#103

Z4

#104

Z5

#106

Z6

10.1.4 冷却空気流量を調整するためのブレーキダイナモメータ試験

試験機関は,所定のダイナモメータで初めてブレーキを試験する場合,冷却空気流量を調整するために以下の手順を実施する.

  1.   

    8.2.1項に記載された試験準備仕様に従う.

  2.   

    冷却流量を,類似のブレーキに使用されている既知の値に調整する.有用な基準がない場合は,最大冷却空気流量の50%の流量を使用して試験を開始する.

  3.   

    WLTP-Brake cycleのTrip#10をブレーキ温度40 °Cから1回実施する.9.2.1項に従い,ブレーキ温度を40 °Cまで暖める.

  4.   

    10.1.3項に従い計算を行い,目標値と結果の偏差を評価する.

  5.   

    試験運転が表10.2.のすべての測定基準を満たす場合,工程を終了し,13章に従って試験報告書を作成する.この場合,(b)項で使用した冷却流量は,所定のブレーキエミッション試験の公称流量(Qset)を設定する.

  6.   

    フロントブレーキの場合,冷却調整セクションと同じダイナモメータの設定値を使用して,ブレーキエミッション試験セクションへ進む.ブレーキエミッション試験には,同じブレーキを使用する.

  7.   

    リアブレーキの場合,リア車軸の適切なダイナモメータの設定値が適用されていることを確認しながら,ブレーキエミッション試験セクションへ進む.必要な冷却流量は,対応する車両のフロントブレーキで決定された値と同じとする.

  8.   

    表10.2.のすべての許容差を満たさない場合,新たな冷却流量を決定し,(a)項からの工程を繰り返すこと.冷却調整セクションを繰り返し行う場合には,同じブレーキアッセンブリを使用することができる.

  9.   

    所定のブレーキの冷却流量の調整に適用した反復回数を,13.4項の表13.6.に規定するとおり報告する.

11. すり合わせセクション

すり合わせ手順は,エミッション計測を実施する前に,ブレーキアッセンブリを適切に事前調整し,エミッションを安定させるために必要である.すり合わせ手順は,冷却調整セクションで使用したものと同じブレーキ部品を使用するか,全く新しいブレーキ部品を使用して実施する.

11.1 フロントブレーキ

試験機関は,GTR24で対象となる車両のフロント車軸に装備される全てのタイプのブレーキについて,以下のすり合わせ手順を実施する.

  1. (a)   10.1項に規定される供試ブレーキの冷却流量の調整に従い,冷却流量を設定する.
  2. (b)   冷却調整およびエミッション計測セクションと同じ試験パラメータおよびダイナモメータの設定値(試験輪荷重,ブレーキ試験イナーシャなど)を使用する.
  3. (c)   WLTP-Brake cycleを5回繰り返し,試験対象のフロントブレーキのすり合わせを完了させる.
  4. (d)   5回のWLTP-Brake cycleは,中断することなく連続して実施しなければならない.すり合わせセクションの途中で試験が中断された場合,試験機関は9.3.2項の指示に従うこと.
  5. (e)   WLTP-Brake cycleの各Trip間にソーク区間を設けることなく,WLTP-Brake cycleの各繰り返しを実行する.WLTP-Brake cycleを5回の繰り返す間,2~5回目を開始する前にのみソーク区間を設けること.
  6. (f)   すり合わせセクションの1回目のWLTP-Brake cycleは,ブレーキ温度23±5 °Cで開始する.その後の4回のWLTP-Brake cycleは,9.2.2項の温度規定に従って開始する.
  7. (g)   エミッション計測セクションと同じダイナモメータですり合わせセクションを実施する.ブレーキ摩擦を故意に変更しないため,2つの試験セクションの間でブレーキ部品を分解しないこと.すり合わせ手順の開始後にブレーキ部品を分解すると,すり合わせとエミッション計測を完了するのに適さなくなる.ブレーキ部品を分解した場合,試験機関は新しいブレーキ部品と交換し,すり合わせ手順を最初からやり直すものとする.

本項に記載された規定のいずれかに従わない場合,すり合わせ手順は無効となる.この場合,エミッション計測セクションに進むことはできない.試験機関は,新しいブレーキ部品を用いてすり合わせ手順を最初から行うものとする.

11.2 リアブレーキ

試験機関は,GTR24で対象となる車両のリア車軸に装備される全てのタイプのブレーキについて,以下の仕様に従ってすり合わせ手順を実施する.

  1. (a)   10.1.2項に規定される対応するフロントブレーキの冷却流量の調整に従い,冷却流量を設定する.
  2. (b)   リア車軸に関連するエミッション計測セクションと同じ試験パラメータおよびダイナモメータの設定値(試験輪荷重,ブレーキ試験イナーシャなど)を使用する.
  3. (c)   WLTP-Brake cycleを5回繰り返し,供試リアブレーキのすり合わせを完了させる.
  4. (d)   5回のWLTP-Brake cycleは,中断することなく連続して実施しなければならない.すり合わせセクションの途中で試験が中断された場合,試験機関は9.3.2項に規定される指示に従うこと.
  5. (e)   WLTP-Brake cycleの各Trip間にソーク区間を設けることなく,WLTP-Brake cycleの各繰り返しを実行する.WLTP-Brake cycleを5回の繰り返す間,2~5回目を開始する前にのみソーク区間を設けること.
  6. (f)   すり合わせセクションの1回目のWLTP-Brake cycleは,ブレーキ温度23±5 °Cで開始する.その後の4回のWLTP-Brake cycleは,9.2.2項の温度規定に従って開始する.
  7. (g)   エミッション計測セクションと同じダイナモメータですり合わせセクションを実施しなければならない.ブレーキ摩擦を故意に変更しないため,2つの試験セクションの間でブレーキ部品を分解しないこと.すり合わせ手順の開始後にブレーキ部品を分解すると,すり合わせとエミッション計測を完了するのに適さなくなる.ブレーキ部品を分解した場合,試験機関は新しいブレーキ部品と交換し,すり合わせ手順を最初からやり直すものとする.

本項に記載された規定のいずれかに従わない場合,すり合わせ手順は無効となる.この場合,エミッション計測セクションに進むことはできない.試験機関は,新しいブレーキ部品を用いてすり合わせ手順を最初から行うものとする.

12. エミッション計測セクション

12.1 粒子状物質質量の測定

本節では,ブレーキエミッション試験中のPMエミッション計測の仕様について記述する.PMサンプリングシステムは,試験中にブレーキから発生するPMを定量する.単位走行距離あたりの質量で,供試ブレーキの排出量とする.試験システムは,カットオフ径(10 μmと2.5 μm)ごとに個別のサンプリングシステムを使用して,ブレーキのPM10とPM2.5の質量を測定して排出量を計測する.各PMサンプリングシステムは,以下の要素から構成されるものとする.

一連の装置や接続部品は,ブレーキ粒子と反応しない導電性材料で,電気的/静電的影響を避けるために電気的に接地する.図12.1は,PMサンプリングユニットの装置の構成を示している.各要素の位置と寸法は説明のためのものである.

図 12.1. PMサンプリングユニット構成の概略と各要件(図は原文から変更し最新の論文14)を引用)

  1. (a)   トンネル内に設置された1つのPMサンプリングプローブ.

PMサンプリングプローブの設計仕様は,12.1.1.2項に記述されている(図12.1.中のprobe).

  1. (b)   PMサンプリングプローブの先端に設置された適切なサンプリングノズル.

ノズルの設計に関する仕様は,12.1.1.3項に記述されている(図12.1中のnozzle).

  1. (c)   PM分級器として使用されるサイクロン.

サイクロンの仕様は12.1.2.1項に記載されている(図12.1.中のcyclone 2.5 μmとcyclone 10 μm).

  1. (d)   PM分級器からフィルタホルダにエアロゾルを移送する粒子サンプリングライン.

サンプリングラインの設計に関する仕様は,12.1.2.2項に記載されている(図12.1.中のPM sampling line).

  1. (e)   粒子状物質を捕集するためにフィルタホルダ内に設置されるフィルタ.

フィルタホルダの仕様は12.1.3.1項に記載されている(図12.1.中のPM).

  1. (f)   リアルタイムで流量を制御する手段を備えた一つ以上のポンプと,対応するセンサー.

サンプリング流量の仕様は,12.1.2.3項に記載されている(図12.1.中のFlow controller).

12.1.1 粒子状物質の採取

12.1.1.1 サンプリング面

サンプリング面の設計は,7.6項に従うこと.PMサンプリングプローブを設置するサンプリング面には,以下の規定に従うこと.

  1. (a)   PM測定には,サンプリングノズルを備えた2つのサンプリングプローブ,1つはPM10用,もう 1つはPM2.5用を設置する.サンプリング面は3プローブと4プローブのレイアウトが選択でき,図7.7.に示す白抜きの点は,PMサンプリングプローブを示している.
  2. (b)   3プローブを使用する場合,図7.7に示すように,2つのPMサンプリングプローブをトンネルの下部と同じ水平面に配置する(図7.7の左側に示すとおり,右からPM10とPM2.5の順番).
  3. (c)   4プローブを使用する場合,図7.7に示すように,2つのPMサンプリングプローブをトンネルの下部と同じ水平面に設置する(図7.7の右側に示すとおり,右からPM10とPM2.5の順番).
  4. (d)   サンプリングおよび測定システムは,PM測定用のフロースプリッターを使用しないこと.

12.1.1.2 PMサンプリングプローブ

適切なサンプリングプローブは,トンネルから分級器へエアロゾルを移送するために使用される.サンプリングプローブは,以下の設計要件を満たさなければならない(図12.1.中のprobe).

  1. (a)   プローブは,ノズル先端から分級器までの粒子損失を最小化するよう適切に設計されること.
  2. (b)   プローブは,ブレーキ粒子と反応しない導電性材料で作ること.プローブは,電気的/静電気的影響を避けるため,電気的に接地されていること.プローブは,超清浄で超微細な表面を実現するため,内側を電解研磨仕上げ(または同等の仕上げ)したステンレス鋼製とする.
  3. (c)   プローブの内径(dp)は直径10~18 mmとし,層流を確保すること(10 mm ≤ dp ≤ 18 mm).参考までに,ほとんどのブレーキエミッション計測を行う試験設備は,流量16.7 L/minのサイクロン(市販のPM10用サイクロン:URG-2000-30Eシリーズ(ステンレス製))を用いることで,層流を確保している.サイクロンの形状・寸法に伴い,粒径10 μmカットオフとなる流量が固定値となるため,層流(式7.4.にあるRe < 2300)を確保する場合,層流を最大限確保できる直径18 mmを用い,流量28.3 L/min(Re = 2254)(市販のPM10用サイクロン:URG-2000-30EA)が上限となる.
  4. (d)   サンプリングプローブは,粒子損失およびチューブの汚染の可能性を最小限にするため,可能な限り短い長さを目指して設計されるものとする.サンプリングノズルの先端からPM分級器の入口までのプローブの全長は,1 mを超えてないこと.
  5. (e)   本項(f)に記載されている曲げの設計仕様に適合している場合に限り,プローブに90°の曲げを1 回まで加えることができる.
  6. (f)   プローブに曲げを加える場合,曲げ半径rbはプローブの内径の4 倍(4∙dp)以上とする.

サンプリングプローブの内壁は,その方法と頻度について製造者の仕様に従って頻繁に検査し,清掃する.そのような仕様がない場合は,プローブを少なくとも2ヶ月連続で使用するごとに1回は清掃することが望ましい.

12.1.1.3 PMサンプリングノズル

PM10およびPM2.5の等速吸引を確実にする適切なノズルを使用する.サンプリングノズルは,以下の設計要件を満たさなければならない(図12.1.中のnozzleにある設計要件を満たさなければならない).

  1. (a)   ノズルは,試験機関がブレーキエミッション試験に使用するPMサンプリングプローブと互換性があること.
  2. (b)   ノズルは,超清浄で超微細な表面を得るため,内側が電解研磨仕上げ(または同等の仕上げ)のステンレス鋼製とする.
  3. (c)   12.1.2.4項の仕様に従い,等速比(IR)が1.0となるよう適切なノズルを使用する.ブレーキエミッション試験における等速比の平均値は,0.90~1.15(0.90≦IR≦1.15)とする.
  4. (d)   適用されるサンプリング流量に応じてノズルサイズを選択する.ノズルの内径(dn)は直径4 mm以上とする.
  5. (e)   ノズルは,少なくとも内径の1倍に等しい長さ,またはノズル先端から少なくとも10 mmのいずれか大きい方の長さに沿って,内径は一定とする.
  6. (f)   ノズルは,流れの歪みを最小限にするため,先端部の肉厚を薄くする.ノズル先端の外径/内径比は1.1以下とする.
  7. (g)   ノズルの内径の変化は,30 °以下の円錐角のテーパー状であること.
  8. (h)   ノズルは,サンプリングトンネルの軸と平行に配置し,吸引角が15 °以下であることを確認する.

試験機関は,ブレーキエミッション試験の前に,ノズルの製造者が規定する洗浄方法に従ってノズルの洗浄を行うことが望ましい.

12.1.2 PMサンプリング

12.1.2.1 PM分級器

PM10およびPM2.5サンプルの採取には,サイクロン式分級器と質量分析(質量分析)フィルタ用ホルダを使用する.試験機関は,以下の規定に従ってサイクロン式分級器を選択する.

  1. (a)   PM10およびPM2.5の試料採取には,それぞれカットオフサイズが10 μmおよび2.5 μmの市販のサイクロン式分級器を使用する.
  2. (b)   PM10およびPM2.5用のサイクロンは,それぞれ表12.1.および表12.2.に記載された分級効率を満たさなければならない.
  3. (c)   サイクロン式分級器をサンプリングプローブの出口に設置する.サイクロン式分級器は,導電性ステンレス鋼製の適切な継手を用いて,サンプリングプローブの出口に直接接続する.プローブとサイクロン式分級器の間にいかなるサンプリングチューブも使用しないこと.

試験機関は,サイクロンの内壁を,方法および頻度に関する装置製造業者の仕様に従い,頻繁に点検・清掃することが望ましい.

表 12.1. PM10サイクロン式分級器の分級効率の仕様2)

PM10

4 μm

8 μm

12.5 μm

20 μm

分級効率

< 20%

< 50%

> 60%

> 90%

表 12.2. PM2.5サイクロン式分級器の分級効率の仕様2)

PM2.5

1.5 μm

2 μm

3 μm

4 μm

分級効率

< 20%

< 50%

> 60%

> 90%

12.1.2.2 PM サンプリングライン

試験機関は,サイクロン式分級器からフィルタホルダにエアロゾルを移送するサンプリングラインの設計要件を満すこと.

  1. (a)   サンプリングラインは,サイクロン式分級器の出口とフィルタホルダの入口との間における粒子損失を最小化するように適切に設計する.
  2. (b)   サンプリングラインは,適切な継手を備えた導電性ステンレス鋼製,あるいは,柔軟な帯電防止ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)サンプリングラインを使用する.
  3. (c)   サンプリングラインは,内径(ds)10~20 mmの一定とする(10mm≦ds≦20mm).
  4. (d)   サイクロン式分級器の出口からフィルタホルダの先端までのサンプリングラインの全長は,合計で1 mを超えないこと.
  5. (e)   サイクロン式分級器とPMサンプリングラインを含むPMサンプリングシステムは,水の凝縮が起こらないように設計すること.試験環境内の温度は,常に15 °C以上に保つこと.
  6. (f)   サンプリングラインには,曲げ半径rbがサンプリングラインの内径の25倍(25・ds)以上であれば,曲げを加えることができる.

12.1.2.3 PM サンプリング流量

試験機関は,サンプリング流量の調整および測定について以下のとおり規定する.

  1. (a)  

    サンプリングシステムの流量を測定する方法(QPM10およびQPM2.5)は,すべての運転条件下で,最大許容誤差が読み値の±2.5%またはフルスケールの±1.5%のいずれか小さい方とする.

  2. (b)  

    標準条件における流量を報告するように校正された流量測定装置を使用すること.運転条件への適切な変換を確実にするため,温度センサーは,±1.0 °Cの精度を有し,圧力測定は,±1.0 kPa の精度および確度を有するものとする.

  3. (c)  

    サンプリング容積流量(QPM10-setおよびQPM2.5-set)の設定値(公称値)は,供試ブレーキのエミッション計測セクションの間,一定とする.

  4. (d)  

    平均サンプリング流量は,所定のブレーキエミッション試験における設定値の±2%以内とする.ブレーキ粒子を捕集するフィルタを通過する安定した流量を確保するために,流量制御機能を備えた装置(臨界オリフィス,圧力調整器,フィードバック制御器など)を使用すること.

  5. (e)  

    13.4項の表13.6.に規定されているTime Based fileの所定のパラメータのデータを使用して,PM10とPM2.5の両方について,平均測定サンプリング体積流量の設定値からの偏差を計算し報告する.

  6. (f)  

    サンプリング流量は,等速比が1.0にできるだけ近くなるように設定する.ブレーキエミッション計測セクションにおける平均等速比は,0.90~1.15とする.12.1.2.4項に記載された手順に従って,PM10とPM2.5の両方の平均等速比を計算し,報告すること.

  7. (g)  

    ノズルを密閉し吸引装置を始動させ,リークチェックを実施すること.流量は,サンプリング中に到達する最大真空における通常流量の最大2%とする.リークチェックは,システム設置時および製造事業者の仕様に従った保守または改良の都度実施こと.

  8. (h)  

    本項に規定するサンプリング体積流量,等速比の要件が満たされていない場合,試験は無効とする.

  9. (i)  

    PMサンプリング装置は,ブレーキエミッション計測セクションの間,連続的に動作すること.WLTP-Brake cycleの各Trip間のソーク区間も動作させ,PMサンプリングの一時停止やサンプリングラインの切り替えを行わないこと.PMサンプリング装置は,ブレーキエミッション計測セクションの終了後,少なくとも10秒以上動作させること.

12.1.2.4 等速比

サンプリングは,サンプリングトンネルとサンプリングノズルの風速が等しいとき,等速吸引と定義される.風速は,トンネルとノズルの内径(それぞれdiとdn)を考慮した流量値から計算される.式12.1および式12.2は,サンプリングトンネルおよびサンプリングノズル内の風速の計算に適用される.

U = ( 4 × 1000 × Q ) ( π × d i 2 )

(式12.1)
  
U S = ( 4 × 1000 × Q S ) ( π × d n 2 )
(式12.2)

ここで

U:表13.2によるトンネル内の平均風速(km/h)

US:ノズルに流入するサンプリング空気の平均速度(km/h)

Q:表13.2によるトンネル内の平均流量(m3/h)

QS:サンプリングノズル内の平均流量(m3/h)

dn:ノズル先端の内径(mm)

di:表7.1によるサンプリングトンネルの内径(mm)

等速比は,サンプリングトンネル内の風速に対するサンプリングノズル内の風速の比として定義される.式12.3は,式12.1と12.2を組み合わせて等速比を計算する手段を提供する.サンプリングトンネルおよびノズル内の流量値は,同じ温度および圧力条件を参照する.したがって,異なる試験機関間でも比較可能とするために,基準状態(0 °C,1気圧(1atm))に正規化した流量値を使用する.

  
I R = ( N Q S d n 2 ) ( N Q d i 2 )
(式12.3)

ここで

IR:等速比(-)

NQS:サンプリングノズルの平均ノルマル流量(0 °C,1気圧(1atm)換算値)(Nm3/h)

NQ:表13.2によるサンプリングトンネル内の平均正規化気流(Nm³/h)

dn:ノズル先端の内径(mm)

di:表7.1によるサンプリングトンネルの内径(mm)

サンプリング流量単位を[Nm3/h]から[Nl/min]に,内径単位を[m]から[mm]に変換し,従来の単位を反映させると,式12.3は式12.4となる.

  
I R = 0.06 × ( N Q S d n 2 ) ( N Q d i 2 )
(式12.4)

ここで

NQS:サンプリングノズルの平均ノルマル流量(0 °C,1気圧(1atm)換算値)(Nl/min)

NQ:表13.2によるサンプリングトンネル内の平均ノルマル流量(Nm3/h)

dn:ノズル先端の内径(mm)

di:表7.1によるサンプリングトンネルの内径(mm)

試験機関は,PM10とPM2.5の両方について,ブレーキエミッション試験のエミッション計測セクションにおける平均等速比を,式12.4を用いて個別に算出する.

  1. (a)   PM10(dn-PM10)およびPM2.5(dn-PM2.5)サンプリングの等速吸引ノズル内径に対応する値を使用する.
  2. (b)   Time-Based fileの平均ノルマルトンネル流量(NQ)および平均ノルマルサンプリング流量(NQPM10およびNQPM2.5)のデータを使用する.
  3. (c)   13.4項の表13.6.に規定されているように,計算値を報告する.

12.1.3 サンプリング媒体

12.1.3.1 フィルタホルダ

PM試料は,専用ホルダに取り付けた試験ごとに直径47 mmのフィルタ1枚に採取する.フィルタホルダは,サイクロン式分級器の出口にできるだけ近い場所に設置する必要がある.試験機関は,フィルタホルダアッセンブリについて以下に従うものとする.

  1. (a)   ステンレス鋼や陽極酸化アルミニウムのような不活性で腐食しない材料でできたフィルタホルダを選択する.
  2. (b)   円形フィルタの挿入に適したフィルタホルダを使用する.サンプリングされた空気が通過する有効直径(もしくは捕集面(Deposit Area))は直径34~44 mmとする.
  3. (c)   フィルタステイン(粒子がろ過捕集されてフィルタが着色している部分)が均一となる流量分布が得られるフィルタホルダを使用する.
  4. (d)   水分の凝縮が生じないようにフィルタホルダの配置を設計すること.フィルタホルダの温度は,12.1.2.2.項に従わなければならず,ブレーキエミッション試験全体を通して常に15 °C以上を維持すること.

12.1.3.2 サンプリングフィルタ

PM10およびPM2.5の測定には,フッ素樹脂バインダーガラス繊維フィルタ(例えば,Emfab,TX40HI20-WW,通称:TXフィルタ)またはサポートリング付きPTFEメンブレンフィルタ(例えば,TMPT47)を使用するものとする15)16)17).フィルタの種類は,以下の規格の一つに従って測定された,ガスフィルタ面速度5.33 cm/sで,粒径0.3 μm DOP(フタル酸ジオクチル,CS 68649-12-7)またはPAO(ポリα-オレフィン,CS 68037-01-4)の捕集効率は少なくとも99%以上とする.

  1. (a)  

    米国 国防総省試験方法規格,MIL-STD-282 102.8:DOP-Smoke Penetration of Aerosol-Filter Element(エアロゾルフィルタエレメントのDOP粒子透過率試験).

  2. (b)  

    米国 国防総省試験法基準,MIL-STD-282 502.1.1:DOP-Smoke Penetration of Gas-Mask Canisters(ガスマスクキャニスターのDOP粒子透過率試験).

  3. (c)  

    環境科学技術研究所,IEST-RP-CC021:HEPAおよびULPAフィルタ媒体の試験.

  4. (d)  

    本項に記載されるサンプリング媒体の捕集効率は,フィルタ供給者により証明されるものとする.

12.1.4 秤量手順

フィルタだけを秤量し,フィルタカセットや密閉シャーレ(または同等品)など,他のいかなる部品も同時に秤量しないこと.試験機関は,秤量手順が次の要件に従うこと.

  1. (a)   秤量室

秤量室内の環境は,粒子フィルタを汚染する可能性のある周囲汚染物質がないこと(ほこり,エアロゾルまたは半揮発性物質など).秤量室の環境条件を22±2 °C,45±8%RHに調整する.空気交換のための空気の流れが,マイクロ天びんの安定性に影響しないことを確認する.

  1. (b)   マイクロ天びん

ブレーキエミッション試験において,サンプリング前とサンプリング後の両方で,同じマイクロ天びんで秤量する.天びんを振動,静電気力,気流から隔離すること.本項(a)に従って,22±2 °C,45±8%RHに恒温恒湿された秤量チャンバー,または秤量室にマイクロ天びんを置くこと.マイクロ天びんの分解能は,少なくとも1 μgとする.質量校正証明書付きの分銅を使用して,マイクロ天びんの安定性と適切な機能を検証すること.マイクロ天びんは,14.4項の校正要件を満たさなければならない.

  1. (c)   静電気の影響

静電気防止マットの上に天びんを置くことによってマイクロ天びんを接地し,放射線源による中和器,または同様の効果を持つ静電気除去装置(イオナイザ)を用いて秤量前に粒子サンプリングフィルタを中和することによって,静電気の影響を無効にする.

  1. (d)   サンプリング前のコンディショニングと秤量

秤量する前に,フィルタを22±2 °C,45±8%RHの条件下で最低2時間コンディショニングし,本項(g)に記載された手順に従ってフィルタを秤量して,秤量値をPM-Mass Measurement fileに記録する.秤量中,本項に規定された条件から逸脱することは許されない.試験までの間,フィルタを密閉シャーレ(または同等品),またはフィルタホルダに密閉して保管する.秤量室内からフィルタを取り出してから1時間以内に,フィルタをフィルタホルダに入れる.密閉シャーレ(または同等品),または密閉フィルタホルダを使用して,フィルタを試験装置に移す.あるいは,すでに秤量室内にあるフィルタホルダにフィルタを取り付ける.

  1. (e)   サンプリング後のコンディショニングと秤量

試験終了後8時間以内にフィルタを密閉シャーレ(または同等品)または密閉フィルタホルダを使用し,秤量チャンバー,または秤量室へ運ぶ.または,フィルタホルダからフィルタを取り出さずに,移動中にフィルタホルダが傾かないようにフィルタを運ぶ.フィルタを22±2 °C,45±8%RHの条件下で最低2時間コンディショニングし,本項(g)に記載された手順に従ってフィルタを秤量して,秤量値をPM-Mass Measurement fileに記録する.秤量作業中,本項に規定された条件から逸脱することは許されない.フィルタは,密閉シャーレ(または同等品)または密閉フィルタホルダに保管する.

  1. (f)   基準フィルタの秤量

PMの秤量を検証するために基準フィルタを使用する.12.1.3.2項に基づいた仕様のフィルタを少なくとも2枚基準フィルタとして選択する.サンプリング前とサンプリング後の秤量後に基準フィルタの秤量を行い,秤量値をPM-Mass Measurement fileに記録する.基準フィルタの初回秤量値と最終秤量値の平均差は,±10 µg以内とする.基準フィルタの移動平均(最短1日~最長15日)の平均差も,±10 µg以内とする.基準フィルタは,最大30日ごとに交換する.どの試料フィルタを秤量するときも,少なくとも1日以上秤量チャンバー,または秤量室に置かれた基準フィルタを用いて比較すること.

  1. (g)   試料フィルタの秤量

以下に説明する手順に従って,サンプリング前およびサンプリング後のフィルタの秤量を実施する.

  1. (i)   フィルタの質量を2回秤量し,その質量をPM-Mass Measurement fileに記録する.
  2. (ii)   1回目と2回目の秤量値の差が30 µg以下の場合は,算術平均を用いてPe(Uncorrected)を記録し,本項(h)に従ってPe(Corrected)の質量を算出する.
  3. (iii)   1回目と2回目の秤量値の差が30 µgを超える場合は,2回の追加秤量を行い,PM-Mass Measurement fileにその質量を記録する.
  4. (iv)   4回の秤量の最小質量と最大質量の差が38 µg以下の場合,4回の秤量の算術平均を用いて Pe(Uncorrected)を記録し,本項(h)に従ってPe(Corrected)の質量を算出する.
  5. (v)   4回の秤量値の最小値と最大値の差が38 µgを超え42 µg以下の場合,4回の秤量値の中央値を用いてPe(Uncorrected)を記録し,本項(h)に従ってPe(Corrected)の質量を算出する.中央値とは,4つの値のうち,2番目に低い値と3番目に低い値の算術平均値である.
  6. (vi)   4つの秤量値の最小値と最大値の差が42 µgを超える場合,その試料フィルタの秤量を無効とする.試験機関は,サンプリング前の試料フィルタを無効にして,新しいフィルタと交換するか,サンプリング後の試料フィルタを廃棄し,ブレーキエミッション試験を繰り返し,サンプリング後の試料フィルタを秤量するかを決定することができる.
  7. (vii)   最低24時間後にフィルタをシャーレから取り出し,本項の(i)および(ii)に従って2回秤量する.
  8. (viii)   1回目と2回目の新たな秤量値の差が30 µgを超える場合,その試料フィルタと秤量を無効とする.サンプリング前の試料フィルタに新しいフィルタを使用するか,フィルタを廃棄し,ブレーキエミッション試験を繰り返し,サンプリング後の試料フィルタを秤量する.

  1. (h)   浮力補正

試料フィルタおよび基準フィルタの秤量値を空気中の浮力に対して質量値へ補正する.浮力補正は,サンプリングフィルタ密度,空気密度,天びんを校正する分銅の密度の関数であり,粒子状物質自体の浮力は考慮しない.フィルタ材料の密度(pf)が不明な場合は,次の値を使用する.

  1.    フッ素樹脂バインダーガラス繊維フィルタ:2300 kg/m3
  2.    サポートリング付きPTFEメンブレンフィルタ:2144 kg/m3

ステンレス鋼製校正分銅には,8000 kg/m3の密度(pw)を使用するか,異なる材料となる分銅には既知の密度を使用する.校正分銅に関する国際法定計量機関の国際勧告 OIML R 111-1 2004(E)版(または同等のもの)に従う.浮力補正前のフィルタ質量の秤量値の平均値を用いて,式12.5に従って,PM10およびPM2.5フィルタ(サンプリング前およびサンプリング後)の浮力補正後のフィルタ質量の測定値の平均値を計算する.浮力補正後の測定値をPM-Mass Measurement fileに記録する.

  
Pe ( C o r r e c t e d ) = Pe ( U n c o r r e c t e d ) × [ 1 ( p a p w ) ] [ 1 ( p a p f ) ]
(式12.5)

ここで

Pe(Corrected):各フィルタの浮力補正後の質量(mg)

Pe(Uncorrected):表12.4による各フィルタの浮力補正していない質量(mg)

pa:式12.6による秤量室内の空気の密度(kg/m3

pw:(e)項による校正用分銅の密度(kg/m3

pf:(e)項の未使用のサンプリングフィルタの密度(kg/m3

秤量時の秤量室の条件を使用して,式12.6に従って空気の密度を計算する.

  
p a = ( p b × M mix ) ( R × T a )
(式12.6)

ここで

pa:秤量室内の空気の密度(kg/m3

pb:秤量室内の大気圧(kPa)

Mmix:秤量室内の空気のモル質量(28.836 g/mol)

R:モル質量定数(8.3144 J/mol/K)

Ta:秤量室内の空気の温度(K)

  1. (i)   フィルタ荷重

サンプリング後のフィルタ質量の秤量値からサンプリング前の平均フィルタ質量の秤量値を引く.本項(h)で算出した浮力補正後のフィルタ質量の測定値の平均値を使用する.PM-Mass Measurement fileにおいて,PM10(Pe(10))およびPM2.5(Pe(2.5))の両方のフィルタ荷重質量を計算して記録する.13.4項の表13.6.に規定されているように,PM10およびPM2.5のフィルタ荷重を記録する.

  1. (j)   保管および輸送条件

秤量されたフィルタを,特定のフィルタサイズを収納するために設計された,適切に作られたフィルタボックスに保管する.フィルタの取り扱いには,ステンレス製のピンセットまたはトングを使用する.密閉シャーレ(または同等品)やバッグ内でのフィルタの移動はできるだけ少なくし,輸送する.試料フィルタは,フィルタホルダに慎重に取り付ける.フィルタの取り扱いが乱暴であったり,擦れたりすると,誤った質量測定につながる.

12.1.5 PM排出量の算出

試験機関は,走行距離あたりのPM排出量を報告する.供試ブレーキのPM2.5およびPM10の基準排出量(EFref)を,それぞれ式12.7および12.8に従って計算する.

  
PM 2.5 EF ref = [ Pe ( 2.5 ) × 1000 × ( NQ 60 ) N Q P M 2.5 ] d
(式12.7)
  
PM 10 EF ref = [ Pe ( 10 ) × 1000 × ( NQ 60 ) N Q P M 10 ] d
(式12.8)

ここで

PM2.5EFref:供試ブレーキの基準PM2.5排出量で,走行距離あたりの質量(mg/km)

PM10EFref:供試ブレーキの基準PM2.5排出量で,走行距離あたりの質量(mg/km)

Pe(2.5):表13.3によるPM2.5フィルタ荷重の質量(mg)

Pe(10):表13.3によるPM10フィルタ荷重の質量(mg)

NQ:表13.2によるサンプリングトンネルのノルマル流量の平均値(Nm3/h)

NQPM2.5:表13.2によるPM2.5サンプリングのノルマル流量の平均値(Nl/min)

NQPM10:表13.2によるPM10サンプリングのノルマル流量の平均値(Nl/min)

d:表13.2によるWLTP-Brake cycle中の総実走行距離(km)

  1.   

    12.1.4(i)項で規定されているPM質量(Pe(10)およびPe(2.5))を計算する.12.1.4(h)項で規定されている浮力補正後の値とする.

  2.   

    Time-Based fileの所定のパラメータから,トンネルノルマル流量(NQ)の平均値,平均正規化サンプリング流量(NQPM10およびNQPM2.5),エミッション計測セクションにおけるWLTP-Brake cycleの総実走行距離(d)を算出する.

  3.   

    試験されたブレーキのPM2.5およびPM10の基準排出量EFrefを,それぞれ式12.7および式12.8に従って計算する.次に,表5.1.の摩擦ブレーキ配分係数を使用して,供試ブレーキのPM2.5およびPM10の最終PM排出量EFを計算する.供試ブレーキに使用した車両タイプに対応する摩擦ブレーキ配分係数cを適用する.PM10およびPM2.5の最終PM排出量EFの算出には,それぞれ式12.9および式12.10を使用する.

  
PM 2.5 E F = PM 2.5 EF ref * c
(式12.9)
  
PM 10 E F = PM 10 EF ref * c
(式12.10)

  1. d.  

    13.4項の表13.6.に規定されているように,PM10およびPM2.5の最終PM排出量EFを報告する.

12.2 粒子個数(PN)濃度

本節では,ブレーキエミッション試験中のPNエミッション計測に関する仕様を説明する.PNサンプリングと測定システムは,試験中にブレーキから発生する粒子個数の定量化を可能にする.PNエミッションは,単位走行距離当たりに排出される粒子個数として測定する.

一般に,装置の構成は,ブレーキ粒子と反応しない導電性材料で,電気的/静電的影響を避けるために電気的に接地する.図12.2に,PNサンプリングと測定の装置の構成の例を示す.試験システムは,電気的移動度直径が約10 nm以上の公称粒子径でTotal-PN(TPN10)およびSolid-PN(SPN10)を測定できるものとする.各要素の位置と寸法は説明のために記載したものである.TPN10サンプリングおよび測定システムは以下の要素から構成されること.

図 12.2. PNサンプリングおよび測定ユニットの構成例(図は原文から変更し最新の論文18)を引用)

  1. (a)   サンプリングトンネルから試料を採取するPNサンプリングプローブ.PNサンプリングプローブの設計仕様は,12.2.1.2項に記載されている(図12.2中のprobe).
  2. (b)   PNサンプリングプローブの先端に設置される適切なPNサンプリングノズル.ノズルの設計に関する仕様は,12.2.1.3項に記載されている(図12.2中のnozzle).
  3. (c)   サンプリングプローブの出口からPN用プレ分級器(図12.2中のcyclone)の入口にエアロゾルを移送する適切なチューブ(粒子トランスファーチューブ:PTT).分級器がサンプリングプローブの出口に直接取り付けられている場合,PTTはPN用プレ分級器の出口から希釈システムの入口へ粒子を移送するために使用することができる.PTTの設計仕様は,12.2.1.4項に記載されている(図12.2中のtransfer tube PTT).
  4. (d)   大きな粒子を除去するために適用されるPN用プレ分級器.PN用プレ分級器の仕様は12.2.2.1項に記載されている(図12.2中のcyclone).
  5. (e)   1つ以上の希釈器を組み込んだ希釈システム.希釈システムの設計に関する仕様は,12.2.2項に記載されている(図12.2中のDIL).
  6. (f)   希釈システムの出口から粒子数測定装置の入口にエアロゾルを移送する内部トランスファーライン.内部トランスファーラインの設計の仕様は,12.2.2.3項に記載される(図12.2中のITL).
  7. (g)   TPN10濃度を測定する粒子数カウンター(PNC).PNCの仕様は12.2.3.1項に記載されている(図12.2中のPNC).

SPN10サンプリングおよび測定システムは,以下の要素から構成されるものとする.

  1. (h)   サンプリングトンネルから試料を採取するPNサンプリングプローブ.PNサンプリングプローブの設計仕様は,12.2.1.2項に記述されている(図12.2中のprobe).
  2. (i)   PNサンプリングプローブの先端に設置される適切なPNサンプリングノズル.ノズルの設計に関する仕様は,12.2.1.3項に記載されている(図12.2中のnozzle).
  3. (j)   サンプリングプローブの出口からPN用プレ分級器の入口へエアロゾルを移送する適切なPTT.PN予備分級器がサンプリングプローブの出口に直接取り付けられている場合,PTTは,PN予備分級器の出口から揮発性粒子除去装置の入口まで粒子を移送するために使用することができる.PTTの設計仕様は,12.2.1.4項に記載されている(図12.2中のtransfer tube PTT).
  4. (k)   大きな粒子を除去するために適用されるPN用プレ分級器.PN用プレ分級器の仕様は12.2.2.1項に記載されている(図12.2中のcyclone).
  5. (l)   PN測定前に試料を希釈し,揮発性粒子を除去する揮発性粒子除去装置(VPR).VPRの設計仕様は12.2.2項に記載されている(図12.2中のVPR).
  6. (m)   VPRの出口からPNCの入口へエアロゾルを移送する内部トランスファーライン(ITL).移送ラインの設計仕様は,12.2.2.3項に記載されている(図12.2中のITL).
  7. (n)   SPN10濃度を測定するPNC.PNCの仕様は12.2.3.1項に記載されている(図12.2中のPNC).

TPN10とSPN10のサンプリングは,12.2.1.1(a)項に規定されるように,異なるプローブを使用する.12.2.1.1(b)‒(e)項に規定された要件(ダクト内径が190 mmより小さい場合(175 mm ≦ di <190 mm))を満たす場合,3プローブレイアウトにより,同じサンプリングプローブならびにフロースプリッター(図12.2中のsplitter)を使用することができる.

12.2.1 サンプル採取

12.2.1.1 サンプリング面

サンプリング面の設計は,7.6項に従うものとする.PNサンプリングプローブの設計には,以下の規定に従うこと.

  1. (a)   PNエミッション計測には,TPN10用とSPN10用の2つのサンプリングプローブを適用する.4プローブレイアウトでは,図7.7.の右側に示す黒く塗りつぶした点に,PNエミッション計測用の2つのサンプリングプローブを設置する.
  2. (b)   3プローブレイアウトでは,本稿(c-e)で規定される適切なフロースプリッターを用いて,TPN10 とSPN10の両方に1つのサンプリングプローブを,図7.7.の左側に示す黒く塗りつぶした点に設置する.
  3. (c)   フロースプリッターを適用する場合,壁面付着による粒子損失を最小限にするため,ステンレス製で内部が電解研磨されたものとする.
  4. (d)   フロースプリッターを適用する場合は,各流出口の流路角度の変化を20 °以内(≦ 20 °)に抑え,分割した流速が,±5%を超えて互いに異ならないことを確認する.
  5. (e)   フロースプリッターを適用する場合,接続されたPNシステムの公称流量において,フロースプリッターのある場合とない場合の粒子透過率が±5%以内であることを実証すること.測定を開始する前に,システムを少なくとも30秒間安定させる(流量が公称値の±5%以内).安定化期間の後,少なくとも30秒間,15 nmと1.5μmの粒子透過率を測定し,フロースプリッターの有無による比較を行う.

12.2.1.2 PNサンプリングプローブ

適切なPNサンプリングプローブを使用して,サンプリングトンネルから粒子トランスファーチューブ,またはPNプレ分級器の入口まで試料を抽出するものとする.PNサンプリングプローブは,以下の設計要件を満たすこと.

  1. (a)   ノズル先端から粒子トランスファーチューブの入口までの粒子損失を最小限にするよう適切に設計されたサンプリングプローブを使用すること.
  2. (b)   ブレーキ粒子と反応しない導電性材料で作られたプローブを使用する.サンプリングプローブは,電気的/静電気的影響を避けるため,電気的に接地する.超清浄で超微細な表面を得るために,電解研磨仕上げ(または同等品)のステンレス鋼製のプローブを使用する.
  3. (c)   すべての使用条件下で層流を確保するため,内径(dp)が10~18 mm(10 mm ≤ dp ≤ 18 mm)で一定のサンプリングプローブを選択する.
  4. (d)   サンプリングノズル先端から粒子トランスファーチューブ,またはPNプレ分級器の入口までのサンプリングプローブの全長は,1 mを超えないこと.
  5. (e)   サンプリングノズル先端入口から粒子トランスファーチューブ,またはPN用プレ分級器の入口までの滞留時間は3秒未満であること.
  6. (f)   曲げ半径rbがPNサンプリングプローブの内径の4倍(4∙dp)以上であることを条件として,プローブに最大1回の90°の曲げを加えることができる.

12.2.1.3 PN サンプリングノズル

サンプリング流量およびサンプリングトンネルの冷却流量に基づく等速サンプリングを確実にするため,適切なノズルを使用する必要がある.試験機関は,TPN10およびSPN10サンプリングの両方について,以下の要件を満たすPNサンプリングノズルを選択する.

  1. (a)   超清浄で超微細な表面を得るため,内面が電解研磨仕上げ(または同等品)のステンレス製ノズルを使用する.
  2. (b)   等速比が0.6~1.5の範囲になるように適切なノズルを使用する.
  3. (c)   等速比(12.1.2.4項を参照)を本項(b)で規定された範囲内に保つために,適用流量に応じてノズルサイズを選択する.内径が4 mm以下のノズルは使用しないこと.
  4. (d)   ノズルは,少なくとも内径の1つに等しい長さ,またはノズル先端から少なくとも10 mmのいずれか大きい方の長さに沿って,一定の内径を有すること(図12.2中のnozzle).
  5. (e)   流れの歪みを最小限にするため,先端部の肉厚が薄いノズルを使用する.これらのノズルは,ノズル先端の外径と内径の比は1.1以下とする.
  6. (f)   ノズルの内面は,円錐角30 °以下のテーパー状とする.
  7. (g)   ノズルの軸がサンプリングトンネルの軸と平行になるように配置し,吸引角が15 °以下になるようにする.

試験機関は,ブレーキエミッション試験の前に,製造者が規定する洗浄方法に従ってノズルの洗浄を行うこと.

12.2.1.4 粒子トランスファーチューブ

PN用プレ分級器がプローブの出口に直接接続されていない場合,プローブの出口からPN用プレ分級器の入口へエアロゾルを移送するために,適切な粒子トランスファーチューブ(PTT)を使用するものとする.PN用プレ分級器がプローブの出口に直接接続されている場合,PTTはPN用プレ分級器の出口から試料調整システム(図12.2中のDILやVPR)の入口にエアロゾルを移送するために使用されるものとする.いずれの場合も,単一のPTTのみを使用することができ,その設計はTPN10およびSPN10サンプリングの両方について以下の要件を満たすこと.

  1. (a)   サンプリングプローブの出口とPN用プレ分級器の入口,またはPN用プレ分級器の出口と試料調整システムの入口の間の粒子損失を最小化するように適切に設計された粒子トランスファーチューブを使用する.
  2. (b)   サンプリングプローブの出口とPN用プレ分級器の入口,またはPN用プレ分級器の出口と試料調整システムの入口の間で直径の変化がある場合は,直径の変化が緩やかなトランスファー管を使用する.
  3. (c)   ブレーキ粒子と反応しない導電性材料でできた粒子トランスファーチューブを使用する.
  4. (d)   すべての操作条件下で層流を確保するために,内径(dtt)が4 mm以上のチューブを選択する.
  5. (e)   粒子トランスファーチューブの長さと試料流量の比は,60000 s/m2以下とする.
  6. (f)   粒子トランスファーチューブの粒子の滞留時間は1秒以下であること.
  7. (g)   曲げ半径rbは,少なくとも管直径の25倍(25∙dtt)とする.

12.2.2 サンプルの前処理と調整

12.2.2.1 PN用プレ分級器

試験機関は,希釈システムおよびVPRを汚染の可能性から保護するため,サイクロン式分級器を使用しなければならない.試験機関は,PNプレ分級器が,以下の要件を満たしていることを確認する必要がある.

  1. (a)   TPN10とSPN10のエミッション計測に異なるサンプリングプローブを使用する場合は,2台のサイクロン式分級器を使用する.
  2. (b)   TPN10とSPN10の両方に単一のサンプリングプローブが使用される場合,フロースプリッターの上流に設置されるサイクロン式分級器を1つ使用する.あるいは,フロースプリッターの下流に設置される場合は,2つのサイクロン式分級器を使用する.
  3. (c)   サイクロン式分級器は,サンプリングプローブの出口または試料調整システムの入口のいずれかに設置する.
  4. (d)   サイクロン式分級器を通過する体積流量で,50%カットオフ粒子径が2.5 µmから10 µmの市販のサイクロン式分級器を使用する.
  5. (e)   サイクロンは,粒子径1.5 µmに対して80%の透過効率を達成すること.

試験機関は,サイクロンの内壁を頻繁に検査し,清掃するものとする.清掃頻度および清掃手段については,装置製造業者の仕様に従うものとする.

12.2.2.2 サンプル調整

PNシステムに流入するエアロゾルは,PNCに流入する前に調整させること.試験機関は,試料調整システムが,測定されるパラメータに応じて以下の要件を満たしていることを確認する必要がある.

TPN10

希釈システムは必須であり,少なくとも一つの粒子希釈器(一次希釈器)から構成されること.次項SPN10に記載されるSPN10用VPRのような希釈システムを使用することができる.その場合,蒸発管および希釈器の加熱は停止する必要がある.TPN10測定時の希釈システムには,以下の仕様が適用される.

  1. (a)   試料と接触する希釈システムのすべての部品は,導電性材料で作られ,静電効果を防ぐために電気的に接地され,粒子の沈着を最小限にするように設計すること.
  2. (b)   PNCのシングル粒子計数モードの上限閾値以下のPN濃度になるように,試料を1段階以上希釈できること.希釈システムは,少なくとも10:1の希釈倍率を提供できること.
  3. (c)   エミッション試験の全期間を通じて,希釈倍率を一定(設定値の±5%)に保つことができること.
  4. (d)   希釈ガス温度を38 °C以下に維持できること.
  5. (e)   少なくともクラスH13(EN 1822:2008規格)のHEPAフィルタまたは同等の性能のHEPAフィルタで濾過された希釈空気が供給されること.
  6. (f)   電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmの粒子に対する粒子損失補正係数(PCRF)は,システム全体として,電気移動度径100 nmの粒子と比較して,それぞれ100%,30%,20%以下とする.さらに,15 nm,30 nm,50 nmの粒子のPCRFは,システム全体として100 nmの粒子のPCRFよりも5%以下とする.PCRFの計算は,14.5.1項に記載された方法に従うものとする.
  7. (g)   リアルタイムで希釈倍率の変動を監視し,1Hzの周波数で算術平均PCRF(fr-TPN10)を報告すること.PCRFの算術平均値の計算は,14.5.1項の方法に従うこと.
  8. (h)   0.5 Hz以上の報告周波数で,標準状態におけるPCRF補正TPN10濃度を報告すること.
  9. (i)   電気移動度径100 nmの粒子に対して,少なくとも70%の粒子透過効率を達成すること.
  10. (j)   850~1050 mbarの範囲の試料圧力と±50 mbarの範囲の周囲との相対圧力差で動作可能であること.

SPN10

揮発性粒子除去装置(VPR)は,少なくとも一次希釈器(PND1)と蒸発管から構成されること.二次希釈器(PND2)は,オプションでPND1および蒸発管と直列に設置することができる.SPN10測定時のVPRには,以下の仕様が適用される.

  1. (k)   試料と接触するVPRのすべての部分は導電性材料とし,静電気の影響を防ぐために電気的に接地され,粒子の沈着を最小限にするように設計されていること.
  2. (l)   PNCのシングル粒子計数モードの上限閾値以下のPN濃度になるように,試料を1段階以上希釈できること.システム全体として,少なくとも10:1の希釈倍率を提供できること.
  3. (m)   PNC製造者が指定する最大許容入口温度以下にガス温度を維持できること.
  4. (n)   VPRのPND1に150 °Cから350 °Cの間の壁面温度で試料を採取するプレ加熱希釈器を含むことができる.壁面温度の設定値は,蒸発管の壁面温度を超えないこと.希釈器には,少なくともクラスH13(EN 1822:2008)のHEPAフィルタ,または同等の性能のHEPAフィルタでろ過された空気が供給されるものとする.
  5. (o)   蒸発管は,PND1の壁面温度よりも高い温度で触媒活性を有すること.蒸発管の壁面温度は,公称温度350 °Cに固定されていること.
  6. (p)   加熱部分を公称動作温度±10 °Cで一定に制御すること.VPRシステムは,加熱部分が適切な動作温度にあるかどうかを表示すること.
  7. (q)   電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmの粒子に対するPCRFは,VPRシステム全体として,電気移動度径100 nmの粒子に対して,それぞれ100%,30%,20%以下とする.さらに,15 nm,30 nm,50 nmの粒子のPCRFは,VPRシステム全体として,100 nmの粒子のPCRFよりも5%以下とする.PCRFの計算は,14.5.1項の方法に従うものとする.
  8. (r)   リアルタイムで希釈倍率の変動を監視し,1Hzの周波数で算術平均PCRF(fr-SPN10)を報告すること.PCRFの算術平均値の計算は,14.5.1項に記載された方法に従うこと.
  9. (s)   標準状態におけるPCRF補正SPN10濃度を,0.5 Hz以上の報告周波数で報告すること.
  10. (t)   VPRは,中央径が50 nmを超え,質量濃度が1 mg/m3を超えるテトラコンタン(CH3(CH2)38CH3)粒子を,99.9%以上気化させる性能を有すること.
  11. (u)   電気移動度径100 nmの粒子に対して,少なくとも70%の粒子透過効率を達成すること.
  12. (v)   850~1050 mbarの範囲の試料圧力と±50 mbarの範囲の周囲との相対圧力差で動作可能であること.

12.2.2.3 PN内部トランスファーライン

希釈システム(TPN10)およびVPR(SPN10)からPNCの入口へエアロゾルを移送する配管は,以下の仕様を満たすものとする.

  1. (a)   希釈システム(TPN10)またはVPR(SPN10)とPNCの入口との間の粒子損失を最小化するよう に適切に設計された内部トランスファーラインを使用する.
  2. (b)   ブレーキ粒子と反応しない導電性材料で作られた内部トランスファーラインを使用する.
  3. (c)   内部トランスファーラインは,すべての運転条件下で層流を確保するために,内径(dtl)が4 mm以上のものを選択する.
  4. (d)   希釈システム(TPN10)またはVPR(SPN10)の出口からPNCの入口までの内部トランスファーラインの全長は,1 mを超えないこと.
  5. (e)   内部トランスファーライン内での粒子の滞留時間は,1秒以下とする.
  6. (f)   曲げ半径rbが内部トランスファーラインの内径の10倍(10∙dtl)以上であることを条件に,PN内部トランスファーラインに曲げを加えることができる.

12.2.3 粒子個数測定

12.2.3.1 粒子個数カウンター

TPN10とSPN10の濃度測定には,粒子個数カウンター(PNC)を使用する.試験機関は,以下の要件を満たしている必要がある.

  1. (a)   フルフロー運転条件下で動作すること.
  2. (b)   トレーサブルな標準に対して,PNCの1 #/cm3からシングルカウントモードの上限閾値までの範囲において,±10%の計数精度を有すること.
  3. (c)   100 #/cm3未満の濃度において,少なくとも0.1 #/cm3の最小表示を有すること.
  4. (d)   シングルカウントモードにおいて,全測定範囲にわたり粒子濃度に対して直線的な応答を有すること.
  5. (e)   測定濃度範囲における応答時間t90が5秒未満であること.
  6. (f)   トレーサブルな基準に対する直線性校正から得られた内部校正係数を組み込み,PN計数効率を決定する.計数効率は,14.6項の仕様に従い,校正係数を含めて報告すること.
  7. (g)   PNC用の校正粒子の組成は,100 °Cでの4cSt動粘度をもったポリα-オレフィン(エメリーオイル),すす状粒子(火炎から発生したすす,グラファイト粒子など),または銀粒子とする.
  8. (h)   電気移動度径10 nm,15 nmの公称粒子径における計数効率が,それぞれ65±15%,90%以上であること.これらの計数効率は,装置の設計・制御(内部的手段)または粒子径の事前の分級(外部的手段)により達成することができる.
  9. (i)   PNCで使用する作動液を,装置製造者が規定する頻度で交換すること.

12.2.3.2 PNサンプリング流量

PN測定システムは,PNサンプリングプローブ内の流量の調整に関して,以下の要件を満たす必要がある.これらはTPN10とSPN10の両方のサンプリングに適用される.

  1. (a)   サンプリングおよび測定システムの流量の測定は,すべての流量制御の条件で,読み取り値の±5%の最大許容差とする.
  2. (b)   運転条件と標準条件の両方で流量を報告するように校正された流量測定器を使用する.システム稼働時に流量を適切に調整するために,温度センサーは±1.0 °Cの精度を有し,圧力測定は±1.0 kPa の精度と精度を有するものとする.
  3. (c)   実際のサンプリングノルマル流量(NQTPN10およびNQSPN10)は,所定の試験の平均値から±10%を超えて逸脱してはならない.安定した流量を確保するために,流量制御機能(臨界オリフィス,圧力調整器,フィードバック制御器,その他など)を備えた装置を使用する.
  4. (d)   実際のサンプリングノルマル流量を収録し,それを1Hzの周波数でTime-Based fileへ記録する.13.4項に規定されているように,実際のサンプリングノルマル流量の平均値を記録する.
  5. (e)   供試ブレーキのエミッション計測セクションにおける平均等速比が0.60~1.50であることを確認する.
  6. (f)   TPN10とSPN10の両方の平均等速比を計算するために,式12.4を使用する.TPN10およびSPN10 サンプリングの等速吸引ノズルの内径に対応する値を使用する.Time-Based fileのトンネルノルマル流量(NQ)およびサンプルノルマル流量(NQTPN10およびNQSPN 10)それぞれ平均値を使用する.13.4項の表13.6.に規定されている計算値を報告する.
  7. (g)   本項に規定されるサンプリング流量または等速比の要件を満たさない場合,試験は無効とする.
  8. (h)   PNサンプリング装置は,ブレーキエミッション計測セクションの間,連続的に作動することWLTP-Brake cycleの各Trip間のソーク区間も動作させる.ソーク区間中にPNサンプリングの一時停止やサンプリングラインの切り替えを行なわないこと.PNサンプリング装置は,試験後のバックグラウンド確認が完了するまで動作すること.

12.2.4 PN 排出量の算定

試験機関は,PN排出量を走行距離あたりの粒子数で報告する.供試ブレーキのTPN10およびSPN10の基準排出量EFrefの計算は,それぞれ式12.11および式12.12に従う.

  
T P N 10 EF ref = 10 6 × ( TPN 10 # × N Q ) V
(式12.11)
  
S P N 10 EF ref = 10 6 × ( SPN 10 # × N Q ) V
(式12.12)

ここで

TPN10 EFref:供試ブレーキの走行距離あたりのTPN10の排出量(#/km)

SPN10 EFref:供試ブレーキの走行距離あたりのSPN10の排出量(#/km)

TPN10#:表13.2によるノルマル体積への変換とPCRF補正後のTPN10平均濃度(#/Ncm3

SPN10#:表13.2によるノルマル体積への変換とPCRF補正後のSPN10平均濃度(#/Ncm3

NQ:表13.2によるサンプリングトンネルのノルマル流量の平均値(Nm3/h)

V:表13.2によるWLTP-Brake cycleの平均実速度(km/h)

  1. (a)   Time-Based fileの所定の値から,ノルマル体積へ変換され,PCRF補正されたTPN10およびSPN10の平均濃度をそれぞれ計算する.
  2. (b)   エミッション計測セクションにおけるトンネルノルマル流量(NQ)の平均値とWLTP-Brake cycleの平均実速度(V)を,Time-Based fileの所定の値から算出する.
  3. (c)   供試ブレーキのTPN10およびSPN10それぞれの基準排出量EFrefを,それぞれ式12.11および 式12.12に従って計算する.次に,表5.1.の摩擦ブレーキ配分係数を使用して,試験済みブレーキのTPN10とSPN10の最終排出量EFをそれぞれ計算する.ブレーキ試験に使用した車種に対応する摩擦ブレーキ配分係数を適用する.最終的なTPN10とSPN10の計算には,それぞれ式12.13と式12.14を使用する.

  
T P N 10 E F = T P N 10 EF ref * c
(式12.13)
  
S P N 10 E F = S P N 10 EF ref * c
(式12.14)

  1. (d)   TPN10およびSPN10それぞれの最終排出量EFを,13.4項の表13.6.に規定されたとおりに報告する.
  2. (e)   測定されたTPN10またはSPN10の排出量がPNC機器の規定された測定範囲外の場合,試験は無効とする.

12.2.5 PNシステムの検証手順

試験機関は,以下のPNシステムチェックの手順により,システム全体が完全に作動していることを確認する.

  1. (a)   PNCの吸引流量は,校正された流量計でチェックした場合,PNCの公称流量の±5%以内の測定値とする.ここで,公称流量とは,PNCの最終校正の文書に記載された流量を指す.試験機関は,このチェックを毎月実施すること.
  2. (b)   PNC入口で適切な性能のフィルタを用いてPNCのゼロチェックを行い,0.2#/cm3以下の濃度を報告する.フィルタを取り外してPNCの測定濃度を上昇させ,フィルタを装着して0.2#/cm3以下に戻ること.PNCはいかなるエラーも報告してはならない.試験機関は,ブレーキエミッション試験ごとにこのチェックを実施すること.
  3. (c)   PNCは,少なくともクラスH13(EN 1822:2008規格)のHEPAフィルタ,または同等性能のHEPA フィルタが試料調整システムの入口に取り付けられている場合,PCRF補正しない0.5 #/cm3未満の測定濃度を報告する.試験機関は,各ブレーキエミッション試験の前にこのチェックを実施すること.
  4. (d)   各ブレーキエミッション試験の開始前に,試験機関は,測定システムが,試料調整システムが正しい動作温度に達したことを示していることを確認する.

12.3 Mass Loss計測(ブレーキ摩耗質量排出量の計測)

供試ブレーキのMass Lossは,試験手順全体の堅牢性と正確性に関する有益な情報となる.ブレーキエミッション試験の実施中に起こりうる問題の指標としてMass Lossを使用することができる.試験機関は,試験前と試験後にブレーキアッセンブリの質量を試験前後で秤量しなくてはならない.ブレーキエミッション試験中にブレーキアッセンブリが緩みなく固定されるように注意しなくてはならない.冷却空気調整,すり合わせ,エミッション計測セクションに同じ部品を使用する場合,試験前の質量は冷却空気調整を開始する前に秤量した質量とする.冷却空気調整後に新しい部品を使用する場合,試験前の質量は,すり合わせセクションを開始する前に秤量した質量とする.いずれの場合も,試験後の質量はエミッション計測セクションの後に秤量された質量に対応する.すべての測定は,以下の手順に従って実施する.

  1. (a)   秤量を実施する前に部品を吸引して掃除し,部品表面の汚れを除去する.
  2. (b)   すべてのブレーキ部品にバリ,亀裂,空洞,剥離がないか検査し,記録する.そのような問題がなければ,最初の秤量を続行する.
  3. (c)   熱電対を取り付け,熱電対コネクタを取り外した状態で,各部品の質量をそれぞれ秤量する.試験前の質量をPM-Mass Measurement fileに記録する.
  4. (d)   騒音防止用シム,パッド,シム,スプリング,その他の要素を含むブレーキ摩擦材の質量を秤量する.PM-Mass Measurement fileに試験前の質量を報告する.
  5. (e)   総重量が20 kg未満の部品には,少なくとも0.1 g以上の分解能を持つ秤量はかりを使用する.校正証明書付き校正分銅を使用して,毎月,天びんの安定性と適切な機能を検証しなくてはならい.マイクロ天びんは,14.4項に記載した校正要件を満たさなければならない.秤量はかりは,22±2 °C,45±8%RHに恒温恒湿された秤量室に設置することを推奨する.
  6. (f)   ブレーキエミッション試験終了後,恒温恒湿された秤量室で最大24時間保管し,ブレーキ部品を 30 °C以下の温度まで冷却する.
  7. (g)   ブレーキを冷却した後,試験後の質量を秤量する前に,ブレーキ部品の油脂や汚れを取り除いて清掃する.
  8. (h)   ブレーキディスクまたはドラム,ブレーキパッドまたはシューの質量を秤量する.試験後の質量をPM-Mass Measurement fileに記録する.
  9. (i)   ディスクまたはドラム,ブレーキパッドまたはシューのMass Lossは,試験前と試験後のそれぞれの質量から質量差を計算する.表13.5の指示に従い,各部品のMass LossをPM-Mass Measurement fileに記録する.
  10. (j)   本項(i)で算出した各部品の質量差の値を合計して,表13.5の指示に従って供試ブレーキ全体のMass Lossを報告する.
  11. (k)   本項(j)で算出された総Mass Lossを,全セクションを考慮したブレーキエミッション試験中の総走行距離で除すことにより,平均Mass Loss排出量を算出する.総走行距離には,冷却空気調整からブレーキエミッション試験まで同じ部品を使用する場合,冷却空気調整試験の全ての走行距離を含めること.平均Mass Loss排出量は,表13.5の指示に従って報告する.

13. 試験結果の出力

本章では,ブレーキエミッション試験の4つの主な出力について述べる.これらの概要は以下のとおりである.

  1. (a)   Event-Based file19):ファイルの詳細と報告する項目について,13.1項で説明する.
  2. (b)   Time-Based file20):ファイルの詳細と報告する項目について,13.2項で説明する.
  3. (c)   PM-Mass Measurement file21):報告する項目など詳細については,13.3項に記載されている.
  4. (d)   報告ファイル:報告する項目など詳細については,13.4項(表13.6.)に記載されている.

13.1 Event-Based file19)

試験機関は,ブレーキエミッション試験用のCSVまたはODS形式のEvent-Based fileを生成する必要がある.このファイルには,ブレーキエミッション試験全体を通して,各ブレーキ減速イベントに必要なデータを含めること.このファイル形式は,制御技術やソフトウェアに依存しない.ブレーキエミッション試験のデータは,以下のようにセクションごとにタブで分けて報告する.

  1. (a)  

    "Test ID - EBF - Raw Data"と題されたTab#1を生成し,試験全体を通してブレーキダイナモメータによりサンプリングまたは算出された,本項に規定されるすべてのデータを含めること.

  2. (b)  

    "Test ID - EBF - Cooling"と題されたTab#2を生成し,冷却調整セクションにわたって本項で規定された項目のデータを含めること.(b)項"Test ID - EBF - Cooling"と題されたTab #2には,冷却調整セクションの上に本項で規定された項目のデータを含めること.Trip#10を複数回繰り返した場合,このタブには冷却調整が成功しているTrip#10のデータだけを報告すること.

  3. (c)  

    "Test ID – EBF – Bedding 1-5"と題されたTab #3~#7を生成し,すり合わせセクションの本項に規定される項目のデータを含めること.各タブは,WLTP-Brake cycleの1回の繰り返しに対応する.Tab #3~#7には,5回のWLTP-Brake cycleの繰り返す間のソーク区間のデータを含まない.

  4. (d)  

    "Test ID – EBF – Emissions"と題されたタブ8を生成し,ブレーキエミッション計測セクションの本項に規定される項目のデータを含めること.タブ8には,WLTP-Brake cycleの各Trip間のソーク区間のデータは含まない.

試験設備もしくは試験機関は,表13.1に記載された項目を連続的かつ自動的にサンプリングおよび/または算出する.各項目の適用単位,小数点以下の桁数,およびサンプリングレートに関する詳細は,表13.1に示す.GTR24におけるサンプリングレートとは,オートメーションシステムが様々な項目を収録する頻度である.

Event-Based fileでは,サンプリングレートに関係なく,303回のブレーキイベント単位でデータを報告する.ブレーキイベント(または減速イベント)は,開始時刻と終了時刻によって定義される.減速イベント開始時刻は,減速設定値がゼロを超えたときのタイムスタンプである.現行公開されているテンプレート19)のE列のTime of stopとF列のDate of stopに該当する.タイムスタンプとは,電子文書が改ざんされていないことを証明する日付と時刻を記録する仕組みをいう.減速イベント終了時間は,減速度設定値がゼロまたは負の値に戻ったときのタイムスタンプである.原文ではタイムスタンプとなっているが,実際には表13.1にあるE列とF列の開始時刻と,D列にあるStop Duration(開始時刻と終了時刻の差)から終了時刻を判別することができる.Event-Based fileで報告する項目の一部は,ブレーキイベント開始時刻と終了時刻によって定義され,瞬時値を表す.表13.1にあるTime of Stop, Stop Duration, Initial Brake Speed Measured, Release Speed Measured, Initial Brake Temperature, Final Brake Temperatureが該当する.表13.1にある"averaged"と題された残りの項目は,各固有の値を報告するために,減速イベントにわたった距離ベースまたは時間ベースの平均値を報告する.これらの項目の平均値は,減速イベント開始時刻の0.5秒後からブレーキイベント終了時刻の0.5秒前までにサンプリングされた250Hzのデータを使用する必要がある.

表 13.1. ブレーキエミッション試験のEvent-Based file19)におけるサンプリングと報告に必要な項目2)

測定値

記号

単位

小数点以下の桁数

備考

サンプリングレート

Test Section

-

#

N/A

減速イベントに対する3桁の "ABC "識別コード.A=1は冷却調整,A=2~6はすり合わせ,A=7はエミッション計測.BCは,Trip♯(B=01-10)を表す.

N/A

A

Trip Stop Number

-

#

N/A

Trip内の減速イベントの通し番号(1~114の値となる)

N/A

B

Cycle Stop Number

-

#

N/A

WLTP-Brake cycle内のブレーキイベントの通し番号(1~303の値となる)

N/A

C

Stop Duration

tbrake

s

1

減速イベントの総時間.減速イベントの開始時間と終了時間によって定義される.

250Hz

D

Time of Stop

-

hh:mm:ss

N/A

ブレーキダイナモメータに記録された減速イベント開始時間

250Hz

E

Date of Stop

-

yyyy-mm-dd

N/A

ブレーキダイナモメータによって記録された減速イベントの開始日.ブレーキイベント単位で自動的に報告される.

N/A

F

Initial Brake Speed Setpoint

-

km/h

1

WLTP-Brake cycleで定義されている減速イベント開始時の公称直線速度(設定値).これはサンプリングされないが,ブレーキイベント単位で自動的に報告される.

N/A

G

Initial Brake Speed Measured

-

km/h

1

ブレーキダイナモメータが収録した減速イベント開始時の実際の直線速度.

250Hz

H

Release Speed Setpoint

-

km/h

1

WLTP-Brake cycleで定義されている減速イベントの終了(ブレーキ解放)時の公称直線速度(設定値).これはサンプリングされないが,ブレーキイベント単位で自動的に報告される.

N/A

I

Release Speed Measured

-

km/h

1

ブレーキダイナモメータが収録した減速イベント終了時(リリース時)の実際の直線速度.

250Hz

J

Rotational Speed – Time Averaged

f

rpm

1

ブレーキダイナモメータによって登録された時間平均回転ブレーキ速度.ブレーキイベント中に 250Hzでサンプリングされた回転速度は,時間平均として個々のブレーキイベントレベルで報告すること.平均化は,ブレーキイベント開始時刻の0.5秒後からブレーキイベント終了時刻の0.5秒前まで にサンプリングされた250Hzデータを用いて実施すること.

250Hz

K

Deceleration Rate Setpoint

-

m/s2

2

WLTP-Brake cycleで定義されているイベントの公称減速度.これはサンプリングされないが,ブレーキイベント単位で自動的に報告される.

N/A

L

Deceleration Rate Calculated

-

m/s2

2

D列,H列,J列の値から計算される,所定のブレーキイベントの減速度.

N/A

M

Brake Torque – Distance Averaged

-

Nm

1

ブレーキダイナモメータによって登録された距離平均ブレーキトルク.250 Hzのブレーキイベント中にサンプリングされたブレーキトルクは,距離平均としてブレーキイベント単位で報告する.平均化は,ブレーキイベント開始時刻の0.5秒後からブレーキイベント終了時刻の0.5秒前までにサンプリングされた250 Hzデータを用いて実施すること.

250Hz

N

Brake Torque – Time Averaged

τbrake-avg

Nm

1

ブレーキダイナモメータによって登録された時間平均ブレーキトルク.250 Hzのブレーキイベント中にサンプリングされたブレーキトルクは,時間平均としてブレーキイベント単位で報告すること.平均化は,ブレーキイベント開始時刻の0.5秒後からブレーキイベント終了時刻の0.5秒前までにサンプリングした250 Hzデータを用いて実施すること.

250Hz

O

Brake Pressure

-

bar

2

ブレーキダイナモメータによって登録された距離平均ブレーキ圧力.250 Hzのブレーキイベント中にサンプリングされたブレーキ圧力は,距離平均としてブレーキイベント単位で報告する.平均化は,ブレーキイベント開始時刻の0.5秒後からブレーキイベント終了時刻の0.5秒前までにサンプリングされた250Hzデータを用いて実施すること.

250Hz

P

Friction Coefficient

μ

-

3

ブレーキトルク,有効ブレーキ半径,ピストン面積の関数として計算された距離平均摩擦係数摩擦係数は,距離平均として個々のブレーキイベント単位で報告する.平均化は,ブレーキイベント開始時刻の0.5秒後からブレーキイベント終了時刻の0.5秒前までにサンプリングされた250 Hzデータを用いて行うこと.

N/A

Q

Initial Brake Temperature

IBT

°C

1

8.3項に従って測定された減速開始時のブレーキ温度.

250Hz

R

Final Brake Temperature

FBT

°C

1

8.3項に従って測定された減速イベント終了時のブレーキ温度

250Hz

S

Peak Brake Temperature

PBT

°C

1

8.3項に従って測定された減速事象のピークブレーキ温度.

250Hz

T

Specific Friction Work

Wf

J/kg

1

D列,K列,およびO列のから,式10.1を使用して計算される,所定の減速時にブレーキにかかる実際の比摩擦仕事.

N/A

U

13.2 Time-Based file20)

試験機関は,ブレーキエミッション試験のCSVまたはODS形式のTime-Based fileを生成する必要がある.Time-Based fileには,ブレーキエミッション試験全体を通して収録し,GTR24で規定されたデータがすべて含まれること.ブレーキエミッション試験のデータは,以下のようにセクションごとにタブで分けて報告する.

  1. (a)   "Test ID – TBF – Raw Data"と題するTab#1には,本項に規定されるブレーキダイナモメータ,サンプリング装置,測定装置によりサンプリングまたは算出された全ての生データを含めること.
  2. (b)   "Test ID - TBF - Pre-test BG"と題するTab#2には,試験前バックグラウンド検証手順において本項で規定された報告データを含めること.試験機関は,7.2.2項に規定されるバックグラウンドエミッションの計算に必要なデータのみを報告することが求められる.
  3. (c)   "Test ID – TBF – Cooling"と題するTab#3には,冷却調整セクションの本項で規定される報告データを含めること.Trip#10の反復が複数ある場合,このタブには,冷却調整に成功したTrip#10のデータのみを報告する.
  4. (d)   "Test ID – TBF – Bedding 1-5"と題するTab#4~#8には,すり合わせセクションの本項に規定される報告データを含めること.各タブには,WLTP-Brake cycleの1回の繰り返しに対応する.Tab#4~#8には(原文ではTab#3~#7となっており本稿ではTab#4~#8に訂正),5回のWLTP-Brake cycleの繰り返しの間のソーク区間のデータを含まない.
  5. (e)   "Test ID – TBF – Emissions"と題されたTab#9には,ブレーキエミッション計測セクションの本項で規定される報告データを含めること.Tab#9(原文ではTab#8となっており本稿ではTab#9に訂正)には,WLTP-Brake cycleの各Trip間のソーク区間のデータは含まない.
  6. (f)   "Test ID - TBF - Post-test BG"と題されたTab#10には,試験後のバックグラウンド検証手順に関する本項で規定される報告データを含めること.試験機関は,7.2.2項に規定されるバックグラウンドエミッションの計算に必要なデータのみを報告する.

試験機関は,表13.2に記載された項目を継続的かつ自動的にサンプリングおよび算出する.各項目の適用単位,小数点以下の桁数,サンプリングレートに関する詳細は,表13.2に示す.GTR24サンプリングレートとは,オートメーションシステムが様々な項目を収録する頻度である.

Time-Based fileでは,各項目のサンプリングレートに関係なく1 Hzで報告する.サンプリングされた値を,1 Hzの平均値として計算する.表13.2.には,各項目の簡単な説明と,本文中で使用されている記号を示す.

表 13.2. ブレーキエミッション試験のEvent-Based file19)におけるサンプリングと報告に必要な項目2)

測定項目

略語

単位

小数点以下の桁数

備考

サンプリングレート

Timestamp

-

sec

0

ブレーキエミッション試験のタイムスタンプ

10Hz

A

Linear Speed Nominal

Vset

km/h

1

WLTP-Brake cycle で定義されている,ある時間の公称直線速度.サンプリングされないが,1 Hzで報告される.

N/A

B

Linear Speed Actual

V

km/h

1

ブレーキダイナモメータが収録した,ある時間の実際の直線速度.

10Hz

C

Driven Distance

d

km

1

指定された時点までのサイクルでの総走行距離

10Hz

D

Deceleration Rate

α

m/s2

2

ブレーキダイナモメータがある時点で収録した減速度

10Hz

E

Brake Torque

τbrake

N·m

1

ブレーキダイナモメータがある時点で収録したブレーキトルク

10Hz

F

Brake Pressure

Pbrake

bar

2

ブレーキダイナモメータがある時点で収録したブレーキ圧

10Hz

G

Friction Coefficient

μ

-

3

ある時点で計算された摩擦係数

10Hz

H

Brake Temperature

Tbrake

°C

1

ある時点でのブレーキ温度

10Hz

I

Cooling Airflow Set

Qset

m3/h

1

指定されたブレーキエミッション試験用の冷却空気流量の設定値(公称値).サンプリングされないが,1Hzで報告される.

N/A

J

Cooling Airflow Actual

Q

m3/h

1

ある時点での冷却風量の測定値

10Hz

K

Cooling Airflow Actual Normalised

NQ

Nm3/h

1

ある時点における標準状態で正規化された冷却流量.冷却ノルマル流量.

10Hz

L

Cooling Airspeed Actual

U

km/h

1

ある時点での冷却風速(測定値または計算値).

10Hz

M

Cooling Air Temperature

T

°C

1

ある時点の冷却空気の温度

10Hz

N

Cooling Air Relative Humidity

RH

%

1

ある時点の冷却空気の相対湿度.

10Hz

O

Cooling Air Absolute Humidity

AH

mg/g

1

ある時点での冷却空気の絶対湿度.

10Hz

P

Cooling Air Pressure

P

kPa

1

ある時点での冷却空気の圧力

10Hz

Q

PM2.5 Sampling Flow Set

QPM2.5-set

l/min

2

PM2.5サンプリング流量の設定値.サンプリングされないが,1Hzで報告される.

N/A

R

PM2.5 Sampling Flow Actual

QPM2.5

l/min

2

ある時点で測定されたPM2.5サンプリング流量

10Hz

S

PM2.5 Sampling Flow Actual Normalised

NQPM2.5

Nl/min

2

ある時点におけるPM2.5サンプリングノルマル流量

10Hz

T

PM10 Sampling Flow Set

QPM10-set

l/min

2

PM10サンプリング流量の設定値.サンプリングされないが,1Hzで報告される.

N/A

U

PM10 Sampling Flow Actual

QPM10

l/min

2

ある時点で測定されたPM10サンプリング流量

10Hz

V

PM10 Sampling Flow Actual Normalised

NQPM10

Nl/min

2

ある時点におけるPM10サンプリングノルマル流量

10Hz

W

TPN10 Sampling Flow Actual Normalised

NQTPN10

Nl/min

2

TPN10関連のサンプリングノルマル流量.所定の時点で測定され,標準状態で報告される.試験機関は,公称値と異なる場合は,その旨を明記すること.

10Hz

X

TPN10 - Average PCRF

fr-TPN10

-

1

TPN10測定の粒子損失補正係数の算術平均値

10Hz

Y

TPN10 Concentration Normalised - PCRF Corrected

TPN10#

#/Ncm3

1

ある時点でPNCによって測定され,標準状態へ換算し,PCRFで補正したTPN10濃度.

10Hz

Z

SPN10 Sampling Flow Actual Normalised

NQSPN10

Nl/min

2

SPN10関連のサンプリングノルマル流量.所定の時点で測定され,標準状態で報告される.試験機関は,公称値と異なる場合は,その旨を明記すること.

10Hz

AA

SPN10 - Average PCRF

fr-SPN10

-

1

SPN10測定の粒子損失補正係数の算術平均値

10Hz

AB

SPN10 Concentration Normalised - PCRF Corrected

SPN10#

#/Ncm3

1

ある時点でPNCによって測定され,標準状態へ換算し,PCRFで補正しSPN10濃度.

10Hz

AC

13.3 PM-Mass Measurement file21)

試験機関は,試験全体のCSVまたはODS形式のPM-Mass Measurement fileを作成するものとする.このファイルには,12.1項に規定されているフィルタの秤量に関する情報と,12.3項に規定されているブレーキ部品の秤量に関する情報が含まれること.PM質量データは,表13.3に規定されるとおり,1つのタブで報告されるものとする.基準フィルタに関する情報は,表13.4に規定するように,別のタブで報告する.ブレーキ部品のMass Lossに関する情報は,表13.5.に規定するように別のタブで報告する.

13.3.1 PM測定データ

試験機関は,表13.3に示すPM質量測定に関連する項目を報告し,計算する.各項目の単位,および小数点以下の桁数に関する詳細,各項目の簡単な説明は,表13.3.に示す.PMの秤量データを,PM-Mass Measurement fileの"Test ID – PMMF – PM Mass"というタブに報告する.

表 13.3. ブレーキエミッション試験のPM-Mass Measurement fileへ報告するためのPM質量測定手順に関連する必要な項目2)

測定値

単位

小数点以下の桁数

備考

Test ID

-

N/A

試験機関が試験済みブレーキを識別するための固有のコード.表13.6の"Test ID "と同じであること.

A

Filter Material

-

N/A

12.1.3.2項に従って,PMサンプリングに使用するフィルタのタイプを明示する.

B

PM2.5

Y/N※1

N/A

入力データがPM2.5のサンプリングと測定に関するものかどうかを明示する.

C

PM10

Y/N※1

N/A

入力データがPM10のサンプリングと測定に関するものかどうかを明示する.

D

Weighing Date

yyyy-mm-dd

N/A

捕集前のフィルターの秤量が行われた日付

E

Weighing Time

hh:mm

N/A

捕集前のフィルターの秤量が行われた時刻

F

Stabilisation time before weighing

hh:mm

N/A

12.1.4項に従い,サンプリング前フィルタを秤量する前の安定時間.

G

Elapsed time from weighing to test start

hh:mm

N/A

12.1.4項に従い,サンプリング前のフィルタを秤量してからエミッション試験を開始するまでの経過時間.

H

Unloaded Measurement 1

mg

3

12.1.4項に従い1回目に秤量されたサンプリング前のフィルタの質量.

I

Unloaded Measurement 2

mg

3

12.1.4項に従い2回目に秤量されたサンプリング前のフィルタの質量.

J

Unloaded Measurement 3

(if necessary)

mg

3

12.1.4項に従い3回目に秤量されたサンプリング前のフィルタの質量.

この秤量が必要なのは,最初の2回の秤量値間の偏差が30 μgを超える場合だけである.

K

Unloaded Measurement 4

(if necessary)

mg

3

12.1.4項に従い4回目に秤量されたサンプリング前のフィルタの質量.

この秤量が必要なのは,最初の2回の秤量値間の偏差が30 μgを超える場合だけである.

L

Mean Value

mg

3

12.1.4項に規定されるサンプリング前フィルタの平均質量.(Pe(Uncorrected)

M

Mean Value – Corrected

mg

3

12.1.4項に規定される浮力補正したサンプリング前のフィルタ質量の平均値.(Pe(Corrected)

N

Ambient Air Temperature

°C

1

秤量室温度 - 秤量手順の直前1時間の平均室温を報告する.

O

Ambient Air Relative Humidity

%

1

秤量室相対湿度 - 秤量手順の直前1時間の部屋の平均相対湿度を報告する.

P

Weighing Date

yyyy-mm-dd

N/A

サンプリング後のフィルタの秤量が行われた日付

Q

Weighing Time

hh:mm

N/A

サンプリング後のフィルタの秤量が行われた時刻

R

Stabilisation time before weighing

hh:mm

N/A

12.1.4項に従ってサンプリング後フィルタを秤量する前の安定時間.

S

Elapsed time from end test to weighing

hh:mm

N/A

エミッション試験が終了してから,12.1.4項に従いサンプリング後のフィルタを秤量するまでの経過時間.

T

Loaded Measurement 1

mg

3

12.1.4項に従い2回目に秤量されたサンプリング後のフィルタの質量.

U

Loaded Measurement 2

mg

3

12.1.4項に従い2回目に秤量されたサンプリング後のフィルタの質量.

V

Loaded Measurement 3

(if necessary)

mg

3

12.1.4項に従い3回目に秤量されたサンプリング後のフィルタの質量.

この秤量が必要なのは,最初の2回の秤量値間の偏差が30 μgを超える場合だけである.

W

Loaded Measurement 4

(if necessary)

mg

3

12.1.4項に従い4回目に秤量されたサンプリング後のフィルタの質量.

この秤量が必要なのは,最初の2回の秤量値間の偏差が30 μgを超える場合だけである.

X

Mean Value

mg

3

12.1.4項に規定されるサンプリング後フィルタの平均質量.(Pe(Uncorrected)

Y

Mean Value – Corrected

mg

3

12.1.4項に規定される浮力補正したサンプリング後のフィルタ質量の平均値.(Pe(Corrected)

Z

Ambient Air Temperature

°C

1

秤量室温度 - 秤量手順の直前1時間の平均室温を報告する.

AA

Ambient Air Relative Humidity

%

1

秤量室相対湿度 - 秤量手順の直前1時間の部屋の平均相対湿度を報告する.

AB

Loaded Mass

mg

3

Pe(2.5)とPe(10):M列の値をX列の値で引く.

AC

※1:原文では♯であるがPM-Mass Measurement file に従うとY/Nの誤りであり本稿では訂正した.

13.3.2 基準フィルタデータ

試験機関は,供試ブレーキのPM質量測定に使用した基準フィルタに関する項目を報告する.各項目の単位,および小数点以下の桁数に関する詳細,各項目の簡単な説明は,表13.4.に示す.PMの秤量データを,PM-Mass Measurement fileの"Test ID – PMMF – Reference"というタブに報告する.

表 13.4. ブレーキエミッション試験のPM-Mass Measurement fileへ報告するためのPM質量測定手順で使用される基準フィルタに関する関連する必要な項目2)

計測項目

単位

小数点以下の桁数

備考

Test ID

#

N/A

試験機関が試験済みブレーキを識別するための固有のコード.表13.6の"Test ID "と同じであること.

A

Filter Material

#

N/A

12.1.4項の基準として使用されるフィルタのタイプ.- エミッション試験で使用したフィルタと同じであること.

B

Weighing Date Beginning

yyyy-mm-dd

N/A

基準フィルタの1回目の秤量が行われた日付

C

Weighing Time Beginning

hh:mm

N/A

基準フィルタの1回目の秤量が行われた時刻

D

Measurement Beginning

mg

3

12.1.4項に従い1回目に秤量された基準フィルタの質量.

E

Ambient Air Temperature

°C

1

秤量室温度 - 秤量手順の直前1時間の部屋の平均温度

F

Ambient Air Relative Humidity

%

1

秤量室温度 - 秤量手順の直前1時間の部屋の平均相対湿度

G

Weighing Date End

yyyy-mm-dd

N/A

基準フィルターの最終秤量が行われた日付

H

Weighing Time End

hh:mm

N/A

基準フィルターの最終秤量が行われた時刻

I

Measurement

End

mg

3

12.1.4項従い最後に秤量された基準フィルタの質量.

J

Ambient Air Temperature

°C

1

秤量室温度 - 秤量手順の直前1時間の部屋の平均温度

K

Ambient Air Relative Humidity

%

1

秤量室温度 - 秤量手順の直前1時間の部屋の平均相対湿度

L

Mass Difference

mg

3

試験期間の開始時と終了時の基準フィルタの移動平均値の差 - E列の値をL列の値で引く.

M

13.3.3 Mass Loss測定データ

試験機関は,12.3項に規定されるとおり,試験されたブレーキの総Mass Lossに関する項目を別のタブで報告する.各項目の単位,および小数点以下の桁数に関する詳細,各項目の簡単な説明は,表13.5. に示す.Mass Loss測定データは,PM-Mass Measurement fileの"Test ID – PMMF –Mass Loss"と題するタブに報告する.

表 13.5. ブレーキエミッション試験のPM-Mass Measurement fileへ報告するために必要なブレーキの総Mass Lossに関する項目2)

測定値

単位

小数点以下の桁数

備考

Test ID

#

N/A

試験機関が試験済みブレーキを識別するための固有のコード.表13.6の"Test ID "と同じであること.

A

Disc Brake

Y/N※1

N/A

ブレーキの組み合わせがディスクとパッドで構成されているかどうかを明示する.

B

Drum Brake

Y/N※1

N/A

ブレーキカップルがドラムとシューから構成されているかどうかを明示する.

C

Initial Weighings Inner pad / Leading shoe

g

3

全ての試験手順を開始する前に,インナーパッドまたはリーディングシューを秤量した質量- リーディングシューとは,ホイール回転方向でみて,ホイールシリンダーに後続するシューのことである.

D

Initial Weighings Outer pad / Trailing shoe

g

3

全ての試験手順を開始する前に,アウターパッドまたはトレーリングシューを秤量した質量.

E

Initial Weighings Disc / Drum

g

3

全ての試験手順を開始する前に,ディスクまたはドラムを秤量した質量.

F

Final Weighings Inner pad / Leading shoe

g

3

全ての試験手順が終了した後に,インナーパッドまたはリーディングシューを秤量した質量.

G

Final Weighings Outer pad / Trailing shoe

g

3

全ての試験手順が終了した後に,アウターパッドまたはトレーリングシューを秤量した質量.

H

Final Weighings Disc / Drum

g

3

全ての試験手順が終了した後に,ディスクまたはドラムを秤量した質量.

I

Mass Loss Inner pad / Leading shoe

mg

3

試験手順全体の最初と最後におけるインナーパッドまたはリーディングシューの質量の差 - G列の値からD列の値を引いた値.

J

Mass Loss Outer pad / Trailing shoe

mg

3

試験手順全体の最初と最後におけるアウターパッドまたはトレーリングシューの質量の差 - H列の値からE列の値を引いた値.

K

Mass Loss Disc / Drum

mg

3

試験手順全体の最初と最後におけるディスクまたはドラムの質量の差 - I列の値からF列の値を引いた値.

L

Mass Loss Total

mg

3

試験手順全体におけるブレーキアッセンブリの総Mass Loss - J列,K列,およびL列の値を加算する.

M

Total Distance

km

1

すべてのセクションを含むブレーキエミッション試験全体の総走行距離(該当する場合は,冷却調整セクション中のすべてのTrip#10の反復も含む.)

N

Mass Loss Rate Averaged

mg/km

1

試験手順全体におけるブレーキアッセンブリのMass Lossの平均値 - M/N列の値を除算する.

O

※1:原文では♯であるがPM-Mass Measurement file に従うとY/Nの誤りであり本稿では訂正した.

13.4 試験の報告ファイル

試験機関は,供試ブレーキに関する試験報告書を作成するための入力ファイルとして,トレーサブルなデータ書式に完全準拠して作成するものとする.表13.6.には,報告書に記載するために必要なすべての情報が記載されている.報告書に記載されるすべての情報は,供試ブレーキに関連付けられたものであること.試験機関は,報告書を*.pdfまたは同等のフォーマットで提出する.

表 13.6. ブレーキ粒子エミッション試験後に報告するべく項目2)

No.

段落番号

パラメータと入力値

備考

単位

1

8.1.1

Brake emissions test ID

供試ブレーキについて,試験機関がブレーキエミッション試験に帰属させる固有のコード - この値は,すべての出力ファイルで使用される.

-

2

8.1.1

Vehicle make and model

供試ブレーキが装着されている車のモデルを報告する.

-

3

3.7

Vehicle type

供試ブレーキが装着されている車の車種を報告する.

-

5.2

Friction braking share coefficient

供試ブレーキが装着されている車両の摩擦ブレーキ配分係数を報告する.

-

5

8.1.1

Axle (front or rear)

供試ブレーキに対する車軸位置を報告する(FAまたはRA).

-

6

8.1.1

Brake orientation (mounting position in the vehicle)

供試ブレーキが車両に取り付けられている場所,右コーナーまたは左コーナーを報告する(RHCまたはRLC).

-

7

8.1.1

Vehicle test mass

ブレーキエミッション試験の全セクションにおいて,ブレーキダイナモメータ上で 模擬した車両質量(Mveh)を報告する.非摩擦ブレーキの場合,ブレーキエミッション試験中に適用されたブレーキエミッション・ファミリーペアレントのMvehを報告する.

kg

8

8.1.1

Brake force distribution

供試ブレーキの車軸のブレーキ力と車両の総ブレーキ力の比を報告する(FAFまたはRAF).非摩擦ブレーキの場合,ブレーキエミッション試験中に適用されたブレーキエミッション・ファミリーペアレントのFAFまたはRAFを報告する.

%

9

8.4.1

Fixture style

ブレーキアッセンブリの治具の形式を報告する(L0-UまたはL0-P).

-

10

8.1.1

Part number for the disc or drum

ブレーキメーカーがディスクやドラムに表示しているコードを報告する.

#

11

8.1.1

Part number for the friction material

摩擦メーカーがパッドやシューに表示したコードを報告する.

#

12

8.1.1

Nominal wheel load

式8.1に従い供試ブレーキの公称輪荷重(WLn-fまたはWLn-r)を計算し,報告する.非摩擦ブレーキの場合,公称輪荷重の計算と報告には,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントのパラメータを使用する.

kg

13

8.1.1

Test (or applied) wheel load

式8.2に従いブレーキダイナモメータにかかる試験輪荷重(WLt-fまたはWLt-r)を計算して報告する.非摩擦ブレーキの場合,試験輪荷重を計算して報告するために,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントのパラメータを使用する.

kg

14

8.1.1

Tyre dynamic rolling radius

供試ブレーキに関連するタイヤ動的負荷半径を報告する(rR).

mm

15

8.1.1

Brake effective radius

供試ブレーキの有効半径(reff)を報告する.

mm

16

8.1.1

Brake nominal inertia

式8.3に従い供試ブレーキの公称イナーシャ(In)を計算して報告する.非摩擦ブレーキの場合,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントのパラメータを使用して公称イナーシャを計算して報告する.

kg·m2

17

8.1.1

Brake Test (or applied) inertia

供試ブレーキに対してブレーキダイナモメータがかける試験イナーシャ(It)を,式8.4に従い計算して報告する.非摩擦ブレーキの場合,試験イナーシャを計算し報告するために,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントのパラメータを使用する.

kg·m2

18

8.1.1

Disc/Drum outer diameter

供試ブレーキの外径を報告する.

mm

19

8.1.1

Disc mass

公称前輪荷重とディスク質量のグループへ割り当てるために,未使用のディスクの実際の質量を報告する.

kg

20

8.1.1

Number of pistons per side

ブレーキキャリパーの片側のピストン数を報告する.

#

21

8.1.1

Piston Mean (or hydraulic) Diameter

供試ブレーキのピストンの直径を式8.5 に従って報告する.

mm

22

8.1.1

Brake calliper or brake drum efficiency (if applicable)

ブレーキメーカーが指定している場合は,摩擦損失,ピストントラベルなどを考慮した効率を報告する.

%

23

8.1.1

Threshold pressure

ブレーキトルクが発生する前に,内部抵抗を克服するための最小圧力(ブレーキ油圧閾値)を報告する.

kPa

24

8.1.1

Brake runout limit

ブレーキ治具に取り付けた状態で,摩擦接触面に垂直な方向に供試ブレーキに許容されるブレーキの振れの最大値を報告する

µm

25

7.2

Minimum operational flow of the system

GTR24に定義されているすべての関連する冷却空調要件および測定要件を満たしつつ,試験機関のレイアウトが達成できる最小冷却流量を報告する.

m3/h

26

7.2

Maximum operational flow of the system

GTR24に定義されているすべての関連する冷却空気調整要件および測定要件を満たしつつ,試験機関のレイアウトが達成できる最大冷却流量を報告する.

m3/h

27

7.2.1.1

Average cooling air temperature – Cooling adjustment section

冷却調整セクションの正常な反復中に測定された平均冷却空気温度を計算して報告する.Time-Based fileの"Cooling Air Temperature"の1Hzデータを使用してTrip#10の平均を計算する.

°C

28

7.2.1.1

Average cooling air temperature – Bedding section

すり合わせで測定された平均冷却空気温度を計算し,報告する.5回のWLTP-Brake cycleの平均冷却空気温度を個別に報告する.Time-Based fileの"Cooling Air Temperature "の1Hzデータを使用して,5回のWLTP-Brake cycleの平均値を計算する.

°C

29

7.2.1.1

Average cooling air temperature – Emissions measurement section

エミッション計測セクションで測定された冷却空気温度の平均値を計算し,報告する.Time-Based fileの"Cooling Air Temperature "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均を計算する.

°C

30

7.2.1.1

Average cooling air temperature – Overall compliance

試験のすべての部分が,GTR24に規定されている平均冷却空気温度の仕様を満たしていることを確認する.

Y/N

31

7.2.1.1

Instantaneous air temperature violations – Cooling adjustment section

冷却調整セクションの正常な反復中に,値が18°C未満または28°Cを超えた瞬時冷却空気温度読み取り値(1Hz)の割合を計算し報告する.Time-Based fileの "Cooling Air Temperature "の1Hzデータを使用し,Trip#10に対するその発生回数と割合を計算する.

%

32

7.2.1.1

Instantaneous air temperature violations – Bedding section

すり合わせ中の瞬間冷却空気温度測定値(1Hz)のうち,18 °C未満または28 °C以上の値の割合を計算し,報告する.5回のWLTP-Brake cycleすべてについて,その割合を個別に報告する.Time-Based fileの "Cooling Air Relative Humidity "の 1Hz データを使用して,5回の WLTP-Brake cycleにおける発生回数とその割合を計算する.

%

33

7.2.1.1

Instantaneous air temperature violations – Emissions measurement section

エミッション計測セクションにおいて,瞬時冷却空気温度の測定値(1Hz)のうち,18 °C未満または 28 °C以上の値の割合を計算し,報告する.Time-Based fileの "Cooling Air Temperature "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleにおけるその発生回数と割合を計算する.

%

34

7.2.1.1

Instantaneous cooling air temperature – Overall compliance

試験の全セクションで,GTR24に規定されている瞬間冷却空気温度の仕様を満たしていることを検証する.

Y/N

35

7.2.1.2

Average cooling air relative humidity – Cooling adjustment section

冷却調整セクションの正常な反復中に測定された冷却空気相対湿度の平均を計算し,報告する.Time-Based fileの"Cooling Air Relative Humidity "の1Hzデータを使用し,Trip#10の平均を計算する.

%

36

7.2.1.2

Average cooling air relative humidity – Bedding section

すり合わせセクションの正常な反復中に測定された平均冷却空気相対湿度を計算し,報告する.5回のWLTP-Brake cycleすべての平均冷却空気相対湿度を個別に報告する.Time-Based fileの "Cooling Air Relative Humidity "の 1Hz データを使用して,5回のWLTP-Brake cycleの平均を計算する.

%

37

7.2.1.2

Average cooling air relative humidity – Emissions measurement section

エミッション計測セクションで測定された冷却空気相対湿度平均値を計算し,報告する.Time-Based fileの "Cooling Air Relative Humidity "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均を計算する.

%

38

7.2.1.2

Average cooling air relative humidity – Overall compliance

GTR24に規定されている平均冷却空気相対湿度の仕様を,試験のすべての部分が満たしていることを検証する.

Y/N

39

7.2.1.2

Instantaneous air relative humidity violations – Cooling adjustment section

冷却調整セクションの正常な反復中に,値が20%RH未満または80%RH以上の瞬間冷却空気相対湿度測定値(1Hz)の割合を計算し,報告する.Time-Based fileの“Cooling Air Relative Humidity”の1Hzデータを使用し,Trip#10におけるその発生回数と割合を計算する.

%

40

7.2.1.2

Instantaneous air relative humidity violations – Bedding section

すり合わせ中の瞬間冷却空気相対湿度測定値(1Hz)のうち,20%RH未満または80%RH以上の値を示す割合を計算し,報告する.5回のWLTP-Brake cycleすべてについて,割合を個別に報告する.Time-Based fileの“Cooling Air Relative Humidity”の 1Hz データを使用して,5回の WLTP-Brake cycleにおける発生回数とその割合を計算する.

%

41

7.2.1.2

Instantaneous air relative humidity violations – Emissions measurement section

エミッション計測セクションにおいて,瞬間冷却空気相対湿度測定値(1Hz)のうち,20%RH未満または80%RH以上の値の割合を計算し,報告する.Time-Based fileの "Cooling Air Relative Humidity "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均を計算する.

%

42

7.2.1.2

Instantaneous cooling air relative humidity – Overall compliance

GTR24に規定された瞬間冷却空気相対湿度の仕様を,試験のすべての部分が満たしていることを検証する.

Y/N

43

7.2.1.2

Average cooling air absolute humidity – Cooling adjustment section

冷却調整セクションの正常な反復中に測定された冷却空気絶対湿度の平均を計算し,報告する.Time-Based fileの"Cooling Air Absolute Humidity"の1Hzデータを使用して,Trip#10の平均を計算する.

mg H2O/g dry air

44

7.2.1.2

Average cooling air absolute humidity – Bedding section

すり合わせセクションで測定した平均冷却空気絶対湿度を計算し,報告する.5回のWLTP-Brake cycleの平均冷却空気相対湿度を個別に報告する.Time-Based file の "Cooling Air Absolute Humidity"の 1Hz データを使用して,5つのWLTP-Brake cycleの平均を計算する.

mg H2O/g dry air

45

7.2.1.2

Average cooling air absolute humidity – Emissions measurement section

エミッション計測セクションで測定された冷却空気絶対湿度の平均値を計算し,報告する.Time-Based fileの"Cooling Air Absolute Humidity "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均を計算する.

mg H2O/g dry air

46

7.2.1.2

Average cooling air absolute humidity – Overall compliance

GTR24に規定されている平均冷却空気絶対湿度の仕様を,試験のすべての部分が満たしていることを検証する.

Y/N

47

7.2.2.1

Cooling air filtering – Overall compliance

システムに流入する冷却空気が,GTR24に規定された仕様に準拠していることを確認する.

Y/N

48

7.2.2.2.1

System background verification – TPN10 at minimum operational airflow

最小運転流量で測定された設備のTPN10 バックグラウンド濃度を報告する.

#/Ncm3

49

7.2.2.2.1

System background verification – SPN10 at minimum operational airflow

最小運転流量で測定した設備のSPN10 バックグラウンド濃度を報告する.

#/Ncm3

50

7.2.2.2.1

System background verification – TPN10 at maximum operational airflow

最大運転流量で測定した設備のTPN10バックグラウンド濃度を報告する.

#/Ncm3

51

7.2.2.2.1

System background verification – SPN10 at maximum operational airflow

最大運転流量で測定した設備のSPN10バックグラウンド濃度を報告する.

#/Ncm3

52

7.2.2.2.3

System background verification – Overall compliance

異なる流量で測定されたTPN10と SPN10のバックグラウンド濃度が,7.2.2.2.3項の(c)で定義された最大許容差以下であることを確認する.

Y/N

53

7.2.2.2.2

Test level background verification – TPN10 PCRF setting

TPN10の試験前後のバックグラウンド検証におけるPCRF設定値を報告する.

#

54

7.2.2.2.2

Test level background verification – SPN10 PCRF setting

SPN10の試験前後のバックグラウンド検証におけるPCRF設定値を報告する.

#

55

7.2.2.2.2

Pre-test background – TPN10 concentration

試験前バックグラウンド検証中に測定された TPN10バックグラウンド濃度を計算し報告する.Time-Based file (Pre-test Background)の"TPN10 Concentration Normalized - PCRF Corrected "の1Hz データを使用して,7.2.2.2.2 項に記載されているように5分間の平均を計算する.

#/Ncm3

56

7.2.2.2.2

Pre-test background – SPN10 concentration

試験前バックグラウンド検証で測定した SPN10バックグラウンド濃度を計算し報告する.Time-Based file(Pre-test Background)の"SPN10 Concentration Normalized - PCRF Corrected "の1Hzデータを使用して,7.2.2.2.2項に記載された5分間平均を計算する.

#/Ncm3

57

7.2.2.2.2

Post-test background – TPN10 concentration

試験後のバックグラウンド検証で測定されたTPN10バックグラウンド濃度を計算し報告する.Time-Based file (Post-test Background)の"TPN10 Concentration Normalized - PCRF Corrected "の1Hzデータを使用して,7.2.2.2.2項に記載された5分間平均を計算する.

#/Ncm3

58

7.2.2.2.2

Post-test background – SPN10 concentration

試験後バックグラウンド検証で測定されたSPN10バックグラウンド濃度を計算し報告する.Time-Based file (Post-test Background)の"SPN10 Concentration Normalized - PCRF Corrected "の1Hz データを使用して,7.2.2.2.2.項に記載された5分間平均を計算する.

#/Ncm3

59

7.2.2.2.3

Test level background verification – Overall compliance

供試ブレーキに対して定義された流量設定で測定されたTPN10とSPN10のバックグラウンド濃度が,7.2.2.2.3(c)項で定義された許容差以下であることを確認する.

Y/N

60

7.2.2.2.4

Pre-test background – TPN10 number per distance

試験前のバックグラウンド検証で測定されたTPN10バックグラウンドを,式7.1に従って走行距離あたりの粒子個数で計算し報告する.

#/km

61

7.2.2.2.4

Pre-test background – SPN10 number per distance

試験前のバックグラウンド検証で測定されたSPN10バックグラウンドを,式7.2に従い,走行距離あたりの粒子個数で計算し報告する.

#/km

62

7.2.2.2.4

Post-test background – TPN10 number per distance

試験後のバックグラウンド検証で測定されたTPN10バックグラウンドを,式7.1に従って走行距離あたりの粒子個数で計算し報告する.

#/km

63

7.2.2.2.4

Post-test background – SPN10 number per distance

試験後のバックグラウンド検証で測定されたSPN10のバックグラウンドを,式7.2に従って走行距離あたりの粒子個数で計算し報告する.

#/km

64

7.2.3

Airflow measurement device – Overall compliance

流量測定が,7.2.3(a)‒(h)項に規定されたすべての要件に適合していることを検証する.

Y/N

65

7.2.3

Cooling airflow – Nominal (or set) value

供試ブレーキの公称冷却流量(または設定流量)(Qset)を報告する.

m3/h

66

7.2.3

Cooling airflow – Nominal (or set) value

ブレーキエミッション計測セクションで,同じ公称冷却流量が適用されていることを確認する.

Y/N

67

7.2.3

Cooling airflow – Average value (cooling adjustment section)

冷却調整セクション中の平均冷却流量測定値を計算し,報告する.Time-Based fileの "Cooling Airflow Actual "の1Hzデータを使用し,Trip#10の平均を計算する.冷却調整セクションが複数回繰り返された場合は,冷却調整が成立した試験のQsetのみを報告する.

m3/h

68

7.2.3

Cooling airflow – Difference with the nominal flow (cooling adjustment section)

冷却調整セクションにおいて,測定された平均冷却流量と公称冷却流量の差分(%)を計算し,報告する.

%

69

7.2.3

Cooling airflow – Average normalized value (cooling adjustment section)

冷却調整セクション中の平均正規化冷却流量測定値を計算し,報告する.Time-Based fileの"Cooling Airflow Actual Normalized "の1Hzデータを使用し,Trip#10の平均を計算する.冷却調整セクションを複数回繰り返した場合は,冷却調整が成立した試験のQsetのみを報告する.

Nm3/h

70

7.2.3

Cooling airspeed – Average value (cooling adjustment section)

Time-Based fileで,式7.3に従って冷却調整セクション中の瞬間冷却風速を計算する.冷却調整セクション中の平均冷却風速を計算し報告する.Time-Based fileの "Cooling Airspeed Actual "の1Hzデータを使用し,Trip#10の平均を計算する.冷却調整セクションが複数回繰り返された場合は,冷却調整が成立した試験のQsetのみを報告する.

km/h

71

7.2.3

Cooling airflow – Average value (bedding section)

すり合わせセクションの平均冷却流量測定値を計算し,報告する.5回のWLTP-Brake cycleすべてについて,測定された冷却空気流量の平均を報告する.Time-Based fileの "Cooling Airflow Actual "の1Hzデータを使用して,5回のWLTP-Brake cycleの平均を計算する.

m3/h

72

7.2.3

Cooling airflow – Difference with the nominal flow (bedding section)

すり合わせセクションにおける公称冷却流量との差分(%)を計算し,報告する.5回のWLTP-Brake cycleすべてについて,公称冷却流量との差分(%)を報告する.

%

73

7.2.3

Cooling airflow – Average normalized value (bedding section)

すり合わせセクションの平均冷却ノルマル流量測定値を計算し,報告する.5回のWLTP-Brake cycleすべてについて冷却ノルマル流量の平均測定値を報告する.Time-Based fileの"Cooling Airflow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,5回のWLTP-Brake cycleの平均を計算する.

Nm3/h

74

7.2.3

Cooling airspeed – Average value (bedding section)

式7.3に従って,すり合わせセクション中の瞬間冷却風速を計算し,Time-Based fileに報告する.5回のWLTP-Brake cycleすべてについて,すり合わせセクションの平均冷却風速を計算し,報告する.Time-Based file の"Cooling Airspeed Actual "の 1Hz データを使用して,5回のWLTP-Brake cycleの平均を計算する.

km/h

75

7.2.3

Cooling airflow – Average value (emissions measurement section)

エミッション計測セクションで測定された冷却空気流量の平均値を計算し,報告する.Time-Based fileの"Cooling Airflow Actual "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均を計算する(ソーク区間は含まない).

m3/h

76

7.2.3

Cooling airflow – Difference with the nominal flow (emissions measurement section)

エミッション計測セクションにおいて,公称冷却流量との差分(%)を計算し,報告する.

%

77

7.2.3

Cooling airflow – Average normalized value (emissions measurement section)

エミッション計測セクション中の平均冷却ノルマル流量測定値を計算し,報告する.Time-Based fileの "Cooling Airflow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均を計算する(ソーク区間は含まない).

Nm3/h

78

7.2.3

Cooling airspeed – Average value (emissions measurement section)

エミッション計測セクション中の瞬時冷却風速を式7.3に従って計算し,Time-Based fileに報告する.エミッション計測セクション中の平均冷却風速を計算し報告する.Time-Based fileの "Cooling Airspeed Actual "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均を計算する(ソーク区間は含まない).

km/h

79

7.2.3

Average cooling airflow – Overall compliance

試験のすべての部分が,公称冷却空気流量と平均冷却空気流量測定値との差分に関して,GTR24に規定された要件に適合していることを確認する.

Y/N

80

7.2.3

Instantaneous airflow violations – Cooling adjustment section

冷却調整セクションの正常な反復中に,公称値に対して5~10%の差異がある冷却流量測定値(1Hz)の 数を計算し,報告する.Time-Based file の"Cooling Airflow Actual "の1Hzデータを使用して,Trip#10で発生したこのような事象の回数を計算する.

#

81

7.2.3

Instantaneous airflow violations – Emissions measurement section

エミッション計測セクションにおいて,公称値と比較して5~10%の差異がある冷却流量測定値(1Hz)の回数を計算し,報告する.Time-Based fileの"Cooling Airflow Actual "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycle(ソーク区間は含まない)において,このような現象が発生した回数を計算する.

#

82

7.2.3

Instantaneous cooling airflow – Overall compliance

冷却調整セクションとエミッション計測セクションが,GTR24に規定された公称値に対し5~10%の差のある瞬時冷却流量 読み取り値(1Hz)の許容差の最大数に準拠していることを確認する.

Y/N

83

7.2.3

Instantaneous cooling airflow – Overall compliance

冷却調整およびエミッション計測セクションのどの時点においても,瞬時冷却流量 読み取り値(1Hz)が公称冷却流量値と比較して10%を超えないことを確認する.

Y/N

84

7.2.3

System leak check – Average measured airflow

リークチェック中に測定された平均流量を計算し,報告する.

m3/h

85

7.2.3

System leak check – Overall compliance

リークチェック中に測定された平均流量が,GTR24に規定された要件を満たしていることを確認する.

Y/N

86

7.3

Brake dynamometer and automation system – Overall compliance

7.3(a)‒(e)項に定めるブレーキダイナモメータの必須仕様を満たしていることを確認する.

Y/N

87

7.3

Brake dynamometer and automation system – Overall compliance

7.3(f)‒(h)項に定める自動化,制御およびデータ収集システムの必須要件が満たされていることを検証する.

Y/N

88

7.4.2

Brake enclosure design – Reynolds number at the entrance of the enclosure

供試ブレーキについて,エンクロージャーの入口における流量のレイノルズ数を計算し,報告する.レイノルズ数は,式 7.4 に従ってエミッション計測セクションでのみ計算する.Time-Based fileの"Cooling Airspeed Actual "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均冷却風速を計算する(ソーク区間は含まない).

-

89

7.4.2

Brake enclosure design – Speed uniformity verification at the minimum operational airflow

速度の均一性の検証に使用した平面Cの各位置での対気速度が,設備の最小運転気流に対する全測定値の算術平均の±35%を超えて変動しないことを検証する.

Y/N

90

7.4.2

Brake enclosure design – Speed uniformity verification at the maximum operational airflow

速度の均一性の検証に使用した平面Cの各位置における対気速度が,設備の最大運転気流に対する全測定値の算術平均の±35%を超えて変動しないことを検証する.

Y/N

91

7.4.2

Brake enclosure design – Overall compliance

エンクロージャーが7.4.2(a)‒(l)項に定義されたすべての仕様に準拠していることを検証する.

Y/N

92

7.4.3

Brake enclosure dimensions – Length

7.4.3項で定義されている,平面A1の長さ(IA1-囲いの長さ)を報告する.

mm

93

7.4.3

Brake enclosure dimensions – Height

7.4.3項で定義されている,平面Dの長さ(hD - エンクロージャーの高さ)を報告する.

mm

94

7.4.3

Brake enclosure dimensions – Depth

7.4.3項で定義されている,平面Dにおけるエンクロージャーの最大軸方向深さを報告する.

mm

95

7.4.3

Brake enclosure dimensions – Inlet and outlet diameter

エンクロージャーの入口と出口の直径(di)を報告する.

mm

96

7.4.3

Brake enclosure dimensions – Inlet and outlet transition length

入口と出口のトランジション長(li)を報告する.

mm

97

7.4.3

Brake enclosure dimensions – Inlet and outlet transition height

入口と出口のトランジション高さ(hB)を報告する.

mm

98

7.4.3

Brake enclosure dimensions – Inlet’s height to enclosure’s height ratio

入口の高さ(hB)とエンクロージャーの高さ(hD)の比を報告する.

%

99

7.4.3

Brake enclosure dimensions – Overall compliance

エンクロージャーの寸法が,7.4.3(a)‒(g) 項に定義されているすべての仕様に準拠していることを確認する.

Y/N

100

7.5.

Design of the sampling tunnel – Duct inner diameter

サンプリングトンネルのダクトの内径(di)を報告する.

mm

101

7.5

Design of the sampling tunnel –Presence of a bend

サンプリングトンネル(エンクロージャーの出口より下流で,サンプリング面より上流)に曲がりがある場合は報告する.

Y/N

102

7.5

Design of the sampling tunnel –Bend’s specifications (angle)

サンプリングトンネルに曲げがある場合,曲げの角度を報告する.曲げがない場合は "NA "と報告する.

°

103

7.5

Design of the sampling tunnel –Bend’s specifications (bending radius)

サンプリングトンネルに曲げがある場合は,図7.6に従う曲げ半径を報告する.曲げがない場合は"NA"と報告する.

X·di

104

7.5

Design of the sampling tunnel – Overall compliance

サンプリングトンネルが,7.5(a)‒(i)項に定義されるすべての仕様に適合していることを検証する.

Y/N

105

7.6

Design of the sampling plane – Number of probes

ブレーキエミッション試験に使用したサンプリングプローブの数を報告する.

#

106

7.6

Design of the sampling plane – Distance between the probes

図7.7に規定されたプローブ間の最小距離(a1)を報告する.

mm

107

7.6

Design of the sampling plane – Distance between probes and walls

図7.7に規定されているように,プローブとトンネル壁面の間の最小距離(a2)を報告する.

mm

108

7.6

Design of the sampling plane – Overall compliance

サンプリング面が,7.6(a)‒(f)項に規定されるすべての距離および配置の仕様に適合していることを検証する.

Y/N

109

8.3

Brake temperature measurement – Thermocouples overall compliance

使用する熱電対が8.3(a)‒(f)項に規定されたすべての要件に適合していることを検証する.

Y/N

110

8.3

Brake temperature measurement – Friction material temperature measurement

ブレーキディスクまたはドラムの温度に加えて,ブレーキパッドまたはシューの温度も測定したかどうかを報告する.

Y/N

111

8.4.1

Brake assembly – Fixture type

ブレーキアッセンブリを慣性ダイナモメータに取り付けるために使用する支持具のタイプを指定する(L0-U または L0-P またはその他).

-

112

8.4.1

Brake assembly –Overall compliance

ブレーキアッセンブリの取り付け位置と使用する固定冶具の形式が,8.4.1項で指定された要件を満たしていることを確認する.

Y/N

113

8.4.1

Brake assembly – Brake rotation

排出方向に対するブレーキディスクまたはドラムの回転方向(CWまたはCCW)を報告する.

-

114

8.4.1

Brake assembly – Brake rotation

試験対象のブレーキディスクまたはドラムが排出方向に回転することを確認する.

Y/N

115

8.4.2

Calliper orientation – Overall compliance

試験対象のブレーキのキャリパーの向きが,8.4.2項に指定された要件を満たしていることを確認する.

Y/N

116

9.2.1

Initial temperature – Cooling adjustment section

冷却調整が成立した反復の初期ブレーキ温度を報告する.Time-Based fileの"Brake Temperature "の対応する値を使用する(すなわち,Trip#10の開始時のブレーキ温度を使用する).

°C

117

9.2.2

Initial temperature – Bedding section

すり合わせセクションの初期ブレーキ温度を報告する.5回のWLTP-Brake cycleすべての初期ブレーキ温度をそれぞれ報告する.Time-Based fileの"Brake Temperature"の対応する値を使用する(すなわち,5回のWLTP-Brake cycleのそれぞれの開始時のブレーキ温度を入力する).

°C

118

9.2.3

Initial temperature – Emissions measurement section

9.2項に定義されるように,エミッション計測セクションにおいて,WLTP-Brake cycleの全10回のTripにおける初期ブレーキ温度を報告する.Time-Based fileの "Brake Temperature "のデータを使用する(すなわち,WLTP-Brake cycleのTrip#1から#10の開始時のブレーキ温度を使用する).

°C

119

9.2.1, 9.2.2, 9.2.3

Initial temperature – Overall compliance

すべての試験セクションにおいて,初期ブレーキ温度が9.2.1,9.2.2,9.2.3項に規定された基準に適合していることを確認する.

Y/N

120

9.3.1, 9.3.2, 9.3.3

WLTP-Brake cycle interruptions – Occurrence

ブレーキエミッション試験中の中断の有無を報告する.

Y/N

121

9.3.1, 9.3.2, 9.3.3

WLTP-Brake cycle interruptions – Overall compliance

一つ以上の中断が発生した場合,9.3.1,9.3.2および9.3.3項に定義された仕様に従って試験を再開するために必要な全ての手順が取られたことを検証する.

Y/N/NA

122

9.3.1, 9.3.2, 9.3.3

WLTP-Brake cycle interruptions – Overall compliance

供試ブレーキが,ブレーキエミッション試験全体のどの時点でも分解されていないことを確認する.

Y/N

123

9.4.1

Speed violations – Cooling adjustment section

冷却調整セクションの成立した反復中の速度違反の割合を計算し,報告する.Time-Based file の"Linear Speed Actual "と "Linear Speed Nominal "の1Hzデータを使用する.2つのデータを比較し,Trip#10を超える速度違反の数と全体の割合を計算する.

%

124

9.4.1

Speed violations – Bedding section

すり合わせセクションにおける速度違反の割合を計算し,報告する.5つのWLTP-Brake cycleすべてについて個別に計算を行う.Time-Based file の "Linear Speed Actual" と "Linear Speed Nominal" の 1Hzデータを使用する.2つのデータを比較して,5つのWLTP-Brake cycle における速度違反の数と全体の割合を計算する.

%

125

9.4.1

Speed violations – Emissions measurement section

エミッション計測セクションにおける速度違反の割合を計算し,報告する.Time-Based fileの "Linear Speed Actual "と"Linear Speed Nominal "の1Hzデータを使用する.2つのデータを比較し,WLTP-Brake cycleにおける速度違反の数と全体の割合を計算する.

%

126

9.4.1

Speed violations – Overall compliance

ブレーキエミッション試験の全てのセクションが,9.4.1(a)‒(g)項に規定された速度違反基準に適合していることを確認する.

Y/N

127

9.4.2.

Number of deceleration events – Count using the “Stop duration”

エミッション計測セクションにおけるEvent-Based fileの"Stop Duration "の数値と非ゼロ値の数を報告する.

#

128

9.4.2

Number of deceleration events – Count using the “Deceleration rate”

エミッション計測セクションにわたって,Event-Based fileの"Deceleration Rate - Distance Averaged "の数値と非ゼロ値の数を報告する.

#

129

9.4.2

Number of deceleration events – Overall compliance

ブレーキイベントの数が,9.4.2項に規定されている303と等しいことを確認する.

Y/N

130

9.4.3

Kinetic energy dissipation – Wf during the cooling adjustment section

式9.1に従って,冷却調整セクションの成立した反復中の運動エネルギー散逸(Wf)を計算し,報告する.Event-Based fileの"Stop Duration","Rotation Speed - Time Averaged","Brake Torque - Time Averaged "のデータを使用する.個々のブレーキイベントから計算された比摩擦仕事量を合計し,冷却調整セクションのTrip#10における比摩擦仕事量の合計を報告する.

J/kg

131

9.4.3

Kinetic energy dissipation – Deviation from the nominal value (cooling adjustment section)

冷却調整セクションの成立した反復の間,公称摩擦仕事値からの差異(%)を計算し,報告する.

%

132

9.4.3

Kinetic energy dissipation – Wf during the bedding section

式9.1に従い,すり合わせセクション中の運動エネルギー散逸(Wf)を計算し,報告する.5つのWLTP-Brake cycleすべてについて,運動エネルギー散逸を個別に報告する.Event-Based file の"Stop Duration","Rotational Speed - Time Averaged","Brake Torque - Time Averaged "のデータを使用すること.個々のブレーキイベントから計算された比摩擦仕事量を合計し,すり合わせセクションの各 WLTP-Brake cycle における比摩擦仕事量の合計を報告する.

J/kg

133

9.4.3

Kinetic energy dissipation – Deviation from the nominal value (bedding section)

すり合わせセクションにおける公称摩擦仕事値からの差異(%)を計算し,報告する.すり合わせセクションの5回のWLTP-Brake cycleすべてについて,公称値からの差異(%)を報告する.

%

134

9.4.3

Kinetic energy dissipation – Wf during the emissions measurement section

式9.1に従ってエミッション計測セクション中の運動エネルギー散逸(Wf)を計算し報告する.Event-Based fileの"Stop Duration","Rotational Speed - Time Averaged","Brake Torque - Time Averaged "のデータを使用する.個々のブレーキイベントから算出された摩擦係数を合計し,エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleにおける比摩擦仕事量の合計値を報告する.

J/kg

135

9.4.3

Kinetic energy dissipation – Deviation from the nominal value (emissions measurement section)

エミッション計測セクションにおいて,公称比摩擦仕事量からの差異(%)を計算し,報告する.

%

136

9.4.3

Kinetic energy dissipation – Overall compliance

ブレーキエミッション試験の全てのセクションが,9.4.3(a)‒(j)項に規定される運動エネルギー散逸基準に適合していることを確認する.

Y/N

137

10.1.1

Nominal front wheel load/disc or drum mass ratio (WLn-f/DM)

供試ブレーキのディスク質量(フロントドラムブレーキの場合はドラム質量)に対する公称前輪荷重比(WLn-f/DM)を計算し,報告する.非摩擦ブレーキの場合は,ブレーキエミッション・ファミリーペアレントのパラメータを使用して,ディスク質量に対する公称前輪荷重を計算し報告する.

-

138

10.1.3

ABT over Trip #10 of the WLTP-Brake cycle – Measured value (cooling adjustment section)

供試ブレーキ(B1)の冷却調整セクションが成立したときの平均ブレーキ温度を報告する.Time-Based fileの"Brake Temperature"の1Hz データを使用して,Trip#10の平均ブレーキ温度を計算する.

°C

139

10.1.3

ABT over Trip #10 of the WLTP-Brake cycle – Difference to the target value (cooling adjustment section)

冷却調整セクションが成立したときの平均ブレーキ温度と,供試ブレーキの目標平均ブレーキ温度(C1)との差を,式10.3に従って報告する.

°C

140

10.1.3

Average IBT of selected brake events from Trip #10 of the WLTP-Brake cycle – Measured value (cooling adjustment section)

供試ブレーキ(B2)の冷却調整セクションが成立したときの平均IBTを報告する.10.1.3(b)項に従って平均IBTを計算するために,Event-Based fileの"Initial Brake Temperature "に対応するデータを使用する.

°C

141

10.1.3

Average IBT of selected brake events from Trip #10 of the WLTP-Brake cycle – Difference to the target value (cooling adjustment section)

冷却調整セクションが成立したときの平均IBTと,供試ブレーキの目標平均IBT(C2)との差を,式10.4に従って計算し,報告する.

°C

142

10.1.3

Average FBT of selected brake events from Trip #10 of the WLTP-Brake cycle – Measured value (cooling adjustment section)

試験対象ブレーキの冷却調整セクションが成立したときの平均 FBT を報告する.10.1.3(c)項に従って平均FBTを計算するために,Event-Based fileの"Final Brake Temperature "に対応するデータを使用する.

°C

143

10.1.3

Average FBT of selected brake events from Trip #10 of the WLTP-Brake cycle – Difference to the target value (cooling adjustment section)

冷却調整セクションが成立したときの平均FBTと,供試ブレーキの目標平均FBT(C3)との差を,式10.5に従って報告する.

°C

144

10.1.2

10.1.3

Definition of the nominal (set) cooling airflow for the specific brake – Overall compliance

供試ブレーキの冷却調整セクションで測定されたブレーキ温度が,表10.2に定義された目標値に適合していることを確認する.

Y/N

145

10.1.4

Definition of the nominal (set) cooling airflow for the specific brake – number of iterations

冷却調整セクションの反復回数(Trip#10の繰り返し)を報告する.

#

146

11.1

11.2

Bedding section – Number of complete WLTP-Brake cycles

すり合わせセクションで実施された完全なWLTP-Brake cycle の回数を報告する.

#

147

11.1

11.2

Bedding section – Overall compliance

すり合わせセクションが,11.1(a)‒(g)または11.2(a)‒(g)に記載されたすべての仕様を満たし,完了したことを確認する.

Y/N

148

11.1

11.2

Bedding section – Use of new parts in case of failure

11.1項と11.2項に規定されているすり合わせ手順が失敗した場合は,新しいブレーキ部品を使ってすり合わせセクションをやり直したことを確認する.

Y/N/NA

149

12.1.1.1

PM sampling plane – Flow splitting

PM10およびPM2.5サンプリングユニットが,PMサンプリングプローブの入口とフィルタの間のどこかでフロースプリッターを使用していないことを確認する.

Y/N

150

12.1.1.1

PM sampling plane – Overall compliance

サンプリング面の設計とPM10およびPM2.5サンプリングプローブの配置が,12.1.1.1(a)‒(d)項に記載された仕様を満 たしていることを確認する.

Y/N

151

12.1.1.2

PM sampling probes – PM2.5 probe dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用したPM2.5サンプリングプローブの内径(dp)を報告する.

mm

152

12.1.1.2

PM sampling probes – PM10 probe dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用したPM10サンプリングプローブの内径(dp)を報告する.

mm

153

12.1.1.2

PM sampling probes – PM2.5 probe dimensions (length)

サンプリングノズルの先端からPM分級器の入口までのPM2.5サンプリングプローブの全長を報告する.

mm

154

12.1.1.2

PM sampling probes – PM10 probe dimensions (length)

サンプリングノズルの先端からPM分級器の入口までのPM10サンプリングプローブの全長を報告する.

mm

155

12.1.1.2

PM sampling probes –Application of a bend

供試ブレーキに使用したPM10およびPM2.5サンプリングプローブに曲げ加工が施されているかどうかを報告する.

Y/N

156

12.1.1.2

PM sampling probes – PM2.5 probe application of a bend (bending radius)

PM2.5サンプリングプローブに曲がりがある場合,その曲げ半径をプローブ径で報告する.曲げがない場合は,"NA"と報告する.

X·dp

157

12.1.1.2

PM sampling probes – PM10 probe application of a bend (bending radius)

PM10サンプリングプローブに曲がりがある場合,その曲げ半径をプローブの直径で報告する.曲げがない場合は,"NA"と報告する.

X·dp

158

12.1.1.2

PM sampling probes – Overall compliance

供試ブレーキに使用されるPM10およびPM2.5サンプリングプローブが,12.1.1.2(a)‒(f)項に規定されるすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

159

12.1.1.3

PM sampling nozzles – PM2.5 nozzle dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用したPM2.5サンプリングノズルの内径(dn)を報告する.

mm

160

12.1.1.3

PM sampling nozzles – PM10 nozzle dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用したPM10サンプリングノズルの内径(dn)を報告する.

mm

161

12.1.1.3

PM sampling nozzles – PM2.5 nozzle aspiration angle

供試ブレーキに使用したPM2.5サンプリングノズルの吸引角度を報告する.

°

162

12.1.1.3

PM sampling nozzles – PM10 nozzle aspiration angle

供試ブレーキに使用したPM10サンプリングノズルの吸引角度を報告する.

°

163

12.1.1.3

PM sampling nozzles – Overall compliance

供試ブレーキに使用されるPM10およびPM2.5サンプリングノズルが,12.1.1.3(a)‒(h)項に規定されるすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

164

12.1.2.1

PM separation device – PM2.5 cyclone cut-off size

供試ブレーキに使用されたPM2.5サイクロン式分級器のカットオフサイズを報告する.

μm

165

12.1.2.1

PM separation device – PM10 cyclone cut-off size

供試ブレーキに使用されたPM10サイクロン式分級器のカットオフサイズを報告する.

μm

166

12.1.2.1

PM separation device – Overall compliance

供試ブレーキに使用されるPM10およびPM2.5サイクロン式分級器が,12.1.2.1(a)‒(c)項に規定されるすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

167

12.1.2.2

PM sampling line – PM2.5 line dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用したPM2.5サンプリングラインの内径(ds)を報告する.

mm

168

12.1.2.2

PM sampling line – PM10 line dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用したPM10サンプリングラインの内径(ds)を報告する.

mm

169

12.1.2.2

PM sampling line – PM2.5 line dimensions (length)

供試ブレーキに使用したサイクロンからフィルタホルダ先端までのPM2.5サンプリングライン全長を報告する.

mm

170

12.1.2.2

PM sampling line – PM10 line dimensions (length)

供試ブレーキに使用したサイクロンからフィルタホルダ先端までのPM10サンプリングライン全長を報告する.

mm

171

12.1.2.2

PM sampling line – Application of a bend

供試ブレーキに使用されているPM10およびPM2.5サンプリングラインにベンドが適用されているかどうかを報告する.

Y/N

172

12.1.2.2

PM sampling line – PM2.5 line bending radius

PM2.5のサンプリングラインに曲げがある場合は,その曲げ半径をサンプリングラインの直径で報告する.曲げがない場合は "NA"と報告する.

X·ds

173

12.1.2.2

PM sampling line – PM10 line bending radius

PM10サンプリングラインに曲げがある場合は,その曲げ半径をサンプリングラインの直径で報告する.曲げがない場合は"NA"と報告する.

X·ds

174

12.1.2.2

PM sampling line – Overall compliance

供試ブレーキに使用されているPM10およびPM2.5サンプリングラインが,12.1.2.2(a)‒(f)項に規定されているすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

175

12.1.2.3

PM sampling flow – PM2.5 nominal flow

供試ブレーキのPM2.5サンプリングの設定流量値(公称流量値)を報告する(QPM2.5-set).

l/min

176

12.1.2.3

PM sampling flow – PM10 nominal flow

供試ブレーキのPM10サンプリングの設定流量値(公称流量値)を報告する(QPM10-set).

l/min

177

12.1.2.3

PM sampling flow – PM2.5 measured flow

供試ブレーキのエミッション計測セクションにおけるPM2.5サンプリングフローの平均値を報告する.Time-Based fileの"PM2.5 Sampling Flow Actual "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均値を計算する(ソーク区間は含まない).

l/min

178

12.1.2.3

PM sampling flow – PM10 measured flow

供試ブレーキのエミッション計測セクションにおけるPM10サンプリングフローの平均値を報告する.Time-Based fileの"PM10 Sampling Flow Actual "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均値を計算する(ソーク区間は含まない).

l/min

179

12.1.2.3

PM sampling flow – PM2.5 normalized measured flow

供試ブレーキのエミッション計測セクションにおけるPM2.5サンプリングフローの平均値(NQPM2.5)を報告する.Time-Based fileの"PM2.5 Sampling Flow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleのノルマル流量の平均値を計算する(ソーク区間は含まない).

Nl/min

180

12.1.2.3

PM sampling flow – PM10 normalized measured flow

供試ブレーキのエミッション計測セクションにおけるPM10サンプリングフローの平均値(NQPM10)を報告する.Time-Based fileの"PM10 Sampling Flow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleのノルマル流量の平均値を計算する(ソーク区間は含まない).

Nl/min

181

12.1.2.3

12.1.2.4

PM sampling flow – PM2.5 isokinetic ratio

供試ブレーキのエミッション計測セクションにおけるPM2.5サンプリングの平均等速比を報告する.式12.4を適用し,PM2.5用のノズル径と,Time-Based file の"Cooling Airflow Actual Normalized "および "PM2.5 Sampling Flow Actual Normalized "の 1Hz データを使用して,WLTP-Brake cycleの平均等速度比を算出する(ソーク区間は含まない).

-

182

12.1.2.3.

12.1.2.4

PM sampling flow – PM10 isokinetic ratio

供試ブレーキのエミッション計測セクションにおけるPM10サンプリングの平均等速比を報告する.式12.4を適用し,PM10用のノズル径と,Time-Based file の"Cooling Airflow Actual Normalized "および "PM10 Sampling Flow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,WLTP-Brake cycleの平均等速度比を算出する(ソーク区間は含まない).

-

183

12.1.2.3

PM sampling flow – Overall compliance

12.1.2.3(a)‒(i)項に規定されている等速比だけでなく,PM10およびPM2.5のサンプリング流量に関するすべての仕様が満たされていることを確認する.

Y/N

184

12.1.3.1

PM filter holder – PM2.5 filter holder overall compliance

PM2.5フィルタホルダが12.1.3.1(a)‒(d)項で定義されたすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

185

12.1.3.1

PM filter holder – PM10 filter holder overall compliance

PM10フィルタホルダが12.1.3.1(a)‒(d)項に定義されたすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

186

12.1.3.2

PM sampling filters – Type of filter for PM2.5 sampling

供試ブレーキのPM2.5サンプリングに使用したフィルタの種類(フィルタ材質)を明記する.

-

187

12.1.3.2

PM sampling filters – Type of filter for PM10 sampling

供試ブレーキのPM10サンプリングに使用したフィルタの種類(フィルタ材質)を明記する.

-

188

12.1.3.2

PM sampling filters – Overall compliance

供試ブレーキのPM10およびPM2.5サンプリングに使用するフィルタが,12.1.3.2項に定義されるすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

189

12.1.4

Weighing procedure – Climatic room

天びんが12.1.4項に記載されているすべての要件を満たす適切な部屋に保管されていることを確認する.

Y/N

190

12.1.4

Weighing procedure – Balance resolution

PM10およびPM2.5フィルタの秤量に使用した天びんの分解能を報告する.

μg

191

12.1.4

Weighing procedure – Pre-sampling date and time

供試ブレーキに使用したPM10およびPM2.5フィルタのサンプリング前秤量日時を報告する.

-

192

12.1.4

Weighing procedure – Pre-sampling room’s temperature

PM10およびPM2.5フィルタ質量秤量中のサンプリング前秤量室の平均温度を報告する.

°C

193

12.1.4

Weighing procedure – Pre-sampling room’s RH

PM10およびPM2.5フィルタ質量秤量中のサンプリング前秤量室の平均相対湿度を報告する.

%

194

12.1.4

Weighing procedure – Pre-sampling PM2.5 filter weight

供試ブレーキのサンプリング前PM2.5フィルタ質量を報告する.12.1.4(g)項の手順従って,サンプリング前のPM2.5フィルタ質量を計算する.(Pe(Uncorrected)

μg

195

12.1.4

Weighing procedure – Pre-sampling PM2.5 filter weight corrected

供試ブレーキの浮力を補正したサンプリング前のPM2.5フィルタ質量を報告する.式12.5を使用して,浮力補正後の質量測定値を計算する.(Pe(Corrected)

μg

196

12.1.4

Weighing procedure – Pre-sampling PM10 filter weight

供試ブレーキのサンプリング前PM10フィルタ質量を報告する.12.1.4(g)項の手順従って,サンプリング前のPM10フィルタ質量を計算する.(Pe(Uncorrected)

μg

197

12.1.4

Weighing procedure – Pre-sampling PM10 filter weight corrected

供試ブレーキの浮力を補正したサンプリング前のPM10フィルタ質量を報告する.式12.5を使用して,浮力補正後の質量測定値を計算する.(Pe(Corrected)

μg

198

12.1.4

Weighing procedure – Post-sampling date and time

供試ブレーキに使用したPM10およびPM2.5フィルタのサンプリング後の秤量日時を報告する.

-

199

12.1.4

Weighing procedure – Post-sampling room’s temperature

PM10およびPM2.5フィルタ質量秤量中のサンプリング後秤量室の平均温度を報告する.

°C

200

12.1.4

Weighing procedure – Post-sampling room’s RH

PM10およびPM2.5フィルタ質量秤量中のサンプリング後秤量室の平均相対湿度を報告する.

%

201

12.1.4

Weighing procedure – Post-sampling PM2.5 filter weight

供試ブレーキのサンプリング後PM2.5フィルタ質量を報告する.12.1.4(g)項の手順従って,サンプリング後のPM2.5フィルタ質量を計算する.(Pe(Uncorrected)

μg

202

12.1.4

Weighing procedure – Post-sampling PM2.5 filter weight corrected

供試ブレーキの浮力を補正したサンプリング後のPM2.5フィルタ質量を報告する.式12.5を使用して,浮力補正後の質量測定値を計算する.(Pe(Corrected)

μg

203

12.1.4

Weighing procedure – Post-sampling PM10 filter weight

供試ブレーキのサンプリング後PM10フィルタ質量を報告する.12.1.4(g)項の手順従って,サンプリング前のPM10フィルタ質量を計算する.(Pe(Uncorrected)

μg

204

12.1.4

Weighing procedure – Post-sampling PM10 filter weight corrected

供試ブレーキの浮力を補正したサンプリング後のPM10フィルタ質量を報告する.式12.5を使用して,浮力補正後の質量測定値を計算する.(Pe(Corrected)

μg

205

12.1.4

Weighing procedure – PM2.5 final filter load

供試ブレーキのPM2.5フィルタ荷重質量(Pe(2.5))を報告する.浮力を補正した試験前および試験後のPM2.5フィルタ測定値を,12.1.4(g)項に規定する計算に使用する.

μg

206

12.1.4

Weighing procedure – PM10 final filter load

供試ブレーキのPM10フィルタ荷重質量(Pe(10))を報告する.浮力を補正した試験前および試験後のPM10フィルタ測定値を,12.1.4(g)項に規定する計算に使用する.

μg

207

12.1.4

Weighing procedure – Overall compliance

供試ブレーキに使用されるPM10およびPM2.5フィルタの調整,取り扱い,秤量に関して,12.1.4項に定められているすべての要件が満たされていることを確認する.

Y/N

208

12.1.4

Weighing procedure – PM2.5 reference filter initial weight

供試ブレーキの浮力を補正したPM2.5基準フィルタの初期質量を報告する.式12.5を使用して,補正後の質量測定値を計算する.

μg

209

12.1.4

Weighing procedure – PM2.5 reference filter final weight

供試ブレーキについて,浮力を補正した PM2.5基準フィルタの最終質量を報告する.式12.5を使用して,浮力補正後の質量測定値を計算する.

μg

210

12.1.4

Weighing procedure – PM10 reference filter initial weight

供試ブレーキの浮力を補正したPM10基準フィルタの初期質量を報告する.式12.5を使用して,補正後の質量測定値を計算する.

μg

211

12.1.4

Weighing procedure – PM10 reference filter final weight

供試ブレーキについて,浮力を補正した PM10基準フィルタの最終質量を報告する.式12.5を使用して,浮力補正後の質量測定値を計算する.

μg

212

12.1.4

Weighing procedure – Verification of reference filters validity

基準フィルタの初期測定値と最終測定値の平均差が,12.1.4(f)項に規定される仕様に従い,±10 μg以内であることを検証する.

Y/N

213

12.1.4

Weighing procedure – Overall compliance of reference filters weighing procedure

PM10およびPM2.5基準フィルタの秤量が,12.1.4(f)項に規定された仕様に従って実施されたことを検証する.

Y/N

214

12.1.5

PM emission factor calculation – Reference PM2.5 Emission Factor

12.1.5項に規定されているように,供試ブレーキについて,走行距離あたりのPM2.5排出量を質量で報告する.(PM2.5 EFref)を使用する.PM-Mass Measurement fileで計算された試験対象ブレーキのPM2.5フィルタ荷重質量(Pe(2.5))を使用する.エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleにおける Time-Based file の"Cooling Airflow Actual Normalized","PM2.5 Sampling Flow Actual Normalized","Driven Distance"のデータを使用する.

mg/km

215

12.1.5

PM emission factor calculation – Final PM2.5 Emission Factor

供試ブレーキが搭載されている車両について,走行距離あたりの質量で最終的なPM2.5排出量(PM2.5EF)を報告する.12.1.5項に規定されているように,式12.9に従って計算を行う.

mg/km

216

12.1.5

PM emission factor calculation – Reference PM10 Emission Factor

12.1.5項に規定されているように,供試ブレーキについて,走行距離あたりのPM2.5排出量を質量で報告する.(PM10 EFref)を使用する.PM-Mass Measurement fileで計算された試験対象ブレーキの PM10フィルタ荷重質量(Pe(10))を使用する.エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleにおける Time-Based file の"Cooling Airflow Actual Normalized","PM10 Sampling Flow Actual Normalized","Driven Distance"のデータを使用する.

mg/km

217

12.1.5

PM emission factor calculation – Final PM10 Emission Factor

供試ブレーキが搭載されている車両について,走行距離あたりの質量で最終的なPM10排出量(PM10EF)を報告する.12.1.5項に規定されているように,式12.10に従って計算を行う.

mg/km

218

12.2.1.1

PN sampling plane – PN sampling layout

供試ブレーキのTPN10およびSPN10サンプリングに使用したサンプリングプローブが1つか2つかを明記する.

-

219

12.2.1.1

PN sampling plane – PN sampling probes positioning

サンプリング面の設計とTPN10およびSPN10サンプリングプローブの配置が,12.2.1.1(a)‒(b)項に記載された仕様を満 たしていることを確認する.

Y/N

220

12.2.1.1

PN sampling plane – Flow angle of the flow splitter

1つのサンプリングプローブがTPN10とSPN10の両方に使用される場合,適用されるフロースプリッターのフロー角度を報告する.

°

221

12.2.1.1

PN sampling plane – Overall compliance of the flow splitter

1つのサンプリングプローブがTPN10とSPN10の両方に使用される場合,適用されるフロースプリッターが,12.2.1.1(c)‒(e)項で定義される設計,流速,および粒子透過率に関する全ての要件を満たしていることを検証する.

Y/N/NA

222

12.2.1.2

PN sampling probes – TPN10 probe dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用するTPN10サンプリングプローブの内径(dp)を報告する.

mm

223

12.2.1.2

PN sampling probes – SPN10 probe dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用するSPN10サンプリングプローブの内径(dp)を報告する.

mm

224

12.2.1.2

PN sampling probes – TPN10 probe dimensions (length)

TPN10サンプリングプローブのサンプリングノズル先端から試験対象ブレーキに使用する粒子トランスファーチューブの入口までの全長を報告する.

mm

225

12.2.1.2

PN sampling probes – SPN10 probe dimensions (length)

SPN10サンプリングプローブのサンプリングノズル先端から試験対象ブレーキに使用する粒子トランスファーチューブの入口までの全長を報告する.

mm

226

12.2.1.2

PN sampling probes – Application of a bend

供試ブレーキに使用するTPN10サンプリングプローブおよびSPN10サンプリングプローブに曲げがあるかどうかを報告する.

Y/N

227

12.2.1.2

PN sampling probes – TPN10 bending radius

TPN10サンプリングプローブに曲げがある場合,その曲げ半径をプローブ径で報告する.曲げがない場合は"NA"と報告する.

X·dp

228

12.2.1.2

PN sampling probes – SPN10 bending radius

SPN10サンプリングプローブに曲げがある場合,その曲げ半径をプローブ径で報告する.曲げがない場合は"NA"と報告する.

X·dp

229

12.2.1.2

PN sampling probes – Overall compliance

供試ブレーキに使用するTPN10サンプリングプローブおよびSPN10サンプリングプローブが,12.2.1.2(a)‒(f)項に規定されるすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

230

12.2.1.3

PN sampling nozzles – TPN10 nozzle dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用するTPN10サンプリングノズルの内径(dn)を報告する.

mm

231

12.2.1.3

PN sampling nozzles – SPN10 nozzle dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用するSPN10サンプリングノズルの内径(dn)を報告する.

mm

232

12.2.1.3

PN sampling nozzles – TPN10 aspiration angle

供試ブレーキに使用するTPN10サンプリングノズルの吸引角度を報告する.

°

233

12.2.1.3

PN sampling nozzles – SPN10 aspiration angle

供試ブレーキに使用するSPN10サンプリングノズルの吸引角度を報告する.

°

234

12.2.1.3

PN sampling nozzles – Overall compliance

供試ブレーキに使用するTPN10および SPN10サンプリングノズルが,12.2.1.3(a)‒(g)項に規定されるすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

235

12.2.1.4

PN transfer tube – TPN10 PTT dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用するTPN10粒子トランスファーチューブの内径(dtt)を報告する.

mm

236

12.2.1.4

PN transfer tube – SPN10 PTT dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用するSPN10粒子トランスファーチューブの内径(dtt)を報告する.

mm

237

12.2.1.4

PN transfer tube – Application of a bend

供試ブレーキに使用するTPN10およびSPN10の粒子トランスファーチューブに曲げがあるかどうかを報告する.

Y/N

238

12.2.1.4

PN transfer tube – TPN10 bending radius

TPN10の粒子トランスファーチューブに曲げを加える場合,曲げ半径を粒子トランスファーチューブの直径で報告する.

X·dtt

239

12.2.1.4

PN transfer tube – SPN10 bending radius

SPN10の粒子トランスファーチューブに曲げを加える場合,曲げ半径を粒子トランスファーチューブの直径で報告する.

X·dtt

240

12.2.1.4

PN transfer tube – Overall compliance

供試ブレーキに使用するTPN10および SPN10の粒子トランスファーチューブが,12.2.1.4(a)‒(g)項に規定されるすべての要件を満たしていることを検証する.

Y/N

241

12.2.2.1

PN separation device – TPN10 cut-off size

供試ブレーキに使用するTPN10用のサイクロン式分級器のカットオフサイズを報告する.

μm

242

12.2.2.1

PN separation device – SPN10 cut-off size

供試ブレーキに使用するSPN10用のサイクロン式分級器のカットオフサイズを報告する.

μm

243

12.2.2.1

PN separation device – Overall compliance

供試ブレーキに使用するPNサイクロン式分級器が,12.2.2.1(a)‒(e)項に規定されるすべての要件を満たしていることを確認する.

Y/N

244

12.2.2.2

PN sample conditioning – TPN10 average PCRF

供試ブレーキに使用するTPN10の算術平均PCRFを報告する.Time-Based fileの "TPN10 - Average PCRF "の1Hzデータを使用して,エミッション計測セクションの WLTP-Brake cycleにおける算術平均 PCRFを計算する.

-

245

12.2.2.2

PN sample conditioning – SPN10 average PCRF

供試ブレーキに使用するSPN10の算術平均PCRFを報告する.Time-Based fileの "TPN10 - Average PCRF "の1Hzデータを使用して,エミッション計測セクションの WLTP-Brake cycleにおける算術平均 PCRFを計算する.

-

246

12.2.2.2

PN sample conditioning – TPN10 overall compliance

供試ブレーキに使用するTPN10サンプリングと測定に適用される希釈システムが,12.2.2.2(a)‒(j)項に規定されるすべての要件を満たしていることを検証する.

Y/N

247

12.2.2.2

PN sample conditioning – SPN10 overall compliance

供試ブレーキに使用するS

PN10サンプリングと測定に適用される希釈システムが,12.2.2.2(k)‒(v)項に規定されるすべての要件を満たしていることを検証する.

Y/N

248

12.2.2.3

PN internal transfer line – TPN10 line dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用するTPN10内部トランスファーラインの内径(dtl)を報告する.

mm

249

12.2.2.3

PN internal transfer line – SPN10 line dimensions (inner diameter)

供試ブレーキに使用するSPN10内部トランスファーラインの内径(dtl)を報告する.

mm

250

12.2.2.3

PN internal transfer line – TPN10 line dimensions (length)

供試ブレーキに使用する希釈システムの出口からPNCの入口までのTPN10の内部トランスファーラインの長さを報告する.

mm

251

12.2.2.3

PN internal transfer line – SPN10 line dimensions (length)

供試ブレーキに使用する希釈システムの出口からPNCの入口までのSPN10の内部トランスファーラインの長さを報告する.

mm

252

12.2.2.3

PN internal transfer line – Application of a bend

供試ブレーキに使用するTPN10およびSPN10の内部トランスファーラインに曲げがあるかを報告する.曲げがない場合は,"NA"と報告する.

Y/N

253

12.2.2.3

PN internal transfer line – TPN10 bending radius

TPN10の内部トランスファーラインに曲げがある場合,その曲げ半径をトランスファーラインの直径で報告する.曲げがない場合は"NA"と報告する.

X·dtl

254

12.2.2.3

PN internal transfer line – SPN10 bending radius

SPN10の内部トランスファーラインに曲げがある場合,その曲げ半径をトランスファーラインの直径で報告する.曲げがない場合は"NA"と報告する.

X·dtl

255

12.2.2.3

PN internal transfer line – Overall compliance

供試ブレーキに使用するTPN10と SPN10の内部トランスファーラインが,12.2.2.3項に規定されているすべての設計要件を満たしていることを確認する.

Y/N

256

12.2.3.1

Particle number counter – TPN10 PNC overall compliance

供試ブレーキに使用するTPN10の粒子個数カウンターが,12.2.3.1(a)‒(i)項に規定されるすべての要件を満たしていることを検証する.

Y/N

257

12.2.3.1

Particle number counter – SPN10 PNC overall compliance

供試ブレーキに使用するSPN10の粒子個数カウンターが,12.2.3.1(a)‒(i)項に規定されるすべての要件を満たしていることを検証する.

Y/N

258

12.2.3.2

PN sampling flow – TPN10 measured flow

供試ブレーキのTPN10のサンプリングノルマル流量の平均値を報告する.Time-Based fileの"TPN10 Sampling Flow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleのサンプリングノルマル流量を計算する.

Nl/min

259

12.2.3.2

PN sampling flow – SPN10 measured flow

供試ブレーキのSPN10のサンプリングノルマル流量の平均値を報告する.Time-Based fileの"TPN10 Sampling Flow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleのサンプリングノルマル流量を計算する.

Nl/min

260

12.2.3.2

PN sampling flow – TPN10 isokinetic ratio

供試ブレーキのTPN10サンプリングの平均等速比を報告する.TPN10ノズル径と,Time-Based file の"Cooling Airflow Actual Normalized "および"TPN10 Sampling Flow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleのTPN10サンプリングの平均等速比を式12.4に従って計算する.

-

261

12.2.3.2

PN sampling flow – SPN10 isokinetic ratio

供試ブレーキのSPN10サンプリングの平均等速比を報告する.SPN10ノズル径と,Time-Based file の"Cooling Airflow Actual Normalized "および"TPN10 Sampling Flow Actual Normalized "の1Hzデータを使用して,エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleのSPN10サンプリングの平均等速比を式12.4に従って計算する.

-

262

12.2.3.2

PN sampling flow – Overall compliance

供試ブレーキに使用するTPN10およびSPN10のサンプリング流量,ならびに12.2.3.2(a)‒(h)項に従うTPN10およびSPN10の等速比に関するすべての仕様が満たされていることを確認する.

Y/N

263

12.2.4

PN emission factor calculation – Reference TPN10 EFref

供試ブレーキのTPN10排出量(TPN10 EFref)を12.2.4項に従い走行距離あたりの粒子個数で報告する.

#/km

264

12.2.4

PN emission factor calculation – Final TPN10 EF

供試ブレーキが搭載されている車両について,走行距離あたりの粒子個数で最終 TPN10排出量を報告する.12.2.4項の式 12.13に従い計算する.

#/km

265

12.2.4

PN emission factor calculation – TPN10 measurement range verification

TPN10測定濃度(#/Ncm3)がPNC装置の指定された測定範囲内であることを検証する.エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleで,Time-Based fileの"TPN10 Concentration Normalized - PCRF Corrected "の1Hzデータで検証する.

Y/N

266

12.2.4

PN emission factor calculation – Reference SPN10 EFref

供試ブレーキのSPN10 排出量(SPN10 EFref)を12.2.4項に従い走行距離あたりの粒子個数で報告する.

#/km

267

12.2.4

PN emission factor calculation – Final SPN10 EF

供試ブレーキが搭載されている車両について,走行距離あたりの粒子個数で最終 SPN10排出量を報告する.12.2.4項の式 12.14に従い計算する.

#/km

268

12.2.4

PN emission factor calculation – SPN10 measurement range verification

SPN10測定濃度(#/Ncm3)がPNC装置の指定された測定範囲内であることを検証する.エミッション計測セクションのWLTP-Brake cycleで,Time-Based fileの"SPN10 Concentration Normalized - PCRF Corrected "の1Hzデータで検証する.

Y/N

269

12.2.5

PN system verification procedures – Overall compliance

供試ブレーキで使用するPNシステムが12.2.5(a)‒(d)項の検証手順に従いに正常に適用されていることを確認する.

Y/N

270

12.3

Mass loss measurement – Disc or drum pre-test mass

ディスクまたはドラムの試験前の質量を報告する.

mg

271

12.3

Mass loss measurement – Friction material pre-test mass

ノイズ防止シム,パッドシム,スプリング,その他の要素を含むブレーキ摩擦材の試験前質量の合計を報告する.PM-Mass Measurement fileのデータを使用して,ブレーキ摩擦材の試験前の質量の合計を報告する.

mg

272

12.3

Mass loss measurement – Disc or drum post-test mass

ディスクまたはドラムの試験後の質量を報告する.

mg

273

12.3

Mass loss measurement – Friction material post-test mass

ノイズ防止シム,パッドシム,スプリング,その他の要素を含むブレーキ摩擦材の試験後質量の合計を報告する.PM-Mass Measurement fileのデータを使用して,ブレーキ摩擦材の試験後の質量の合計を報告する.

mg

274

12.3

Mass loss measurement – Total mass loss

表13.5.および12.3(j)項に定める手順に従って,供試ブレーキの総質量損失を報告する.

mg

275

12.3

Mass loss measurement – Total distance driven

冷却調整,すり合わせ,およびエミッション計測セクションを含む(ソーク区間は含まない),ブレーキエミッション試験全体における,Mass Loss計測に該当する総走行距離を報告する.

km

276

12.3

Mass loss measurement – Weight loss emission factor

表13.5.および12.3(k)項に従って,供試ブレーキの平均Mass Loss排出量を報告する.

mg/km

277

12.3

Mass loss measurement – Overall compliance

供試ブレーキのMass Loss測定が,12.3項(a)‒(k)に従って実施されたことを確認する.

Y/N

278

14.2

Calibration requirements – Inertia dynamometer

表14.1.および14.2項のブレーキダイナモメータについて規定された校正要件が満たされていること,ならびにブレーキエミッション試験時に有効な校正証明書が入手可能であることを確認する.

Y/N

279

14.3

Calibration requirements – Airflow measurement device

表14.1.および14.3項にある冷却流量測定装置の校正要件が満たされていること,ならびに有効な校正証明書がブレーキエミッション試験時に入手可能であることを確認する.

Y/N

280

14.1

Calibration requirements – Cyclonic separators

表14.1.および12.1項と12.2項に記載されているPMとPNのサイクロン式分級器の校正要件が満たされていること,ならびに有効な校正証明書がブレーキエミッション試験時に入手可能であることを確認する.

Y/N

281

14.4

Calibration requirements – Weighing balance

表14.1.および14.4項のマイクロ天びんの校正要件が満たされていること,ならびに有効な校正証明書がブレーキエミッション試験時に入手可能であることを確認する.

Y/N

282

14.1

Calibration requirements – PM sampling flow measurement device

表14.1.および12.1項のPMサンプリング流量測定装置の校正要件が満たされていること,および有効な校正証明書がブレーキエミッション試験時に入手可能であることを確認する.

Y/N

283

14.1

Calibration requirements – PN sampling flow measurement device

表14.1.および12.2項のPNサンプリング流量測定装置に規定されている校正要件が満たされていること,ならびに有効な校正証明書がブレーキエミッション試験時に入手可能であることを確認する.

Y/N

284

14.5

Calibration requirements – Sample treatment and conditioning devices

表14.1.および14.5項でTPN10希釈システムおよび SPN10揮発性粒子除去装置について規定されている校正要件が満たされていること,ならびに有効な校正証明書がブレーキエミッション試験時に入手可能であることを確認する.

Y/N

285

14.6.

Calibration requirements – Particle number counter

表14.1.および14.6項の粒子個数カウンターについて規定されている校正要件が満たされていること,ならびに,有効な校正証明書がブレーキエミッション試験時に入手可能であることを確認する.

Y/N

286

14.4.

Calibration requirements – Brake parts balance

表14.1.および14.4項でブレーキ部品天びんに規定されている校正要件が満たされていること,ならびに有効な校正証明書がブレーキエミッション試験時に入手可能であることを確認する.

Y/N

14. 校正要件と継続的な品質管理

14.1 校正要件の概要

本節は,ブレーキエミッション試験に使用される機器に対する最小限の校正要件をまとめたものである.表14.1.は,GTR24に規定されている主要機器の校正基準および校正間隔をまとめたものである.

表 14.1. エミッション計測用主要機器の校正要件2)

測定機器

校正周期

校正要件

段落番号

ブレーキダイナモメータ

初回設置時,1年毎,主要整備時

表14.3.

14.2

トルク測定装置

初回設置時,1年毎,主要整備時

表14.4.

14.2

冷却流量測定装置

初回設置時,1年毎,主要整備時

表14.5.

14.3

冷却流量温度センサー

1年毎

±1°C

14.3

冷却流量大気圧センサー

1年毎

±0.4 kPa

14.3

冷却空気温度センサー

1年毎

±1°C

7.2.1

冷却空気相対湿度センサー

1年毎

±5 per cent of nominal

7.2.1

PM10サイクロン式分級器

初回設置時にメーカーが提供する適合証明書

表12.1.

12.1

PM2.5サイクロン式分級器

初回設置時にメーカーが提供する適合証明書

表12.2.

12.1

マイクロ天びん

初回設置時,1年毎,主要整備時

表14.6.

14.4

PMサンプリング流量測定装置

初回設置時,1年毎,主要整備時

読み値の±2.5%もしくは

フルスケールの±1.5%いずれか小さい方

12.1

PMサンプリング流量温度センサー

1年毎

±1°C

12.1

PMサンプリング流量圧力センサー

1年毎

±1 kPa

12.1

PNサイクロン式分級器

初回設置時にメーカーが提供する適合証明書

電気移動度径1.5 µmの粒子の透過効率80%以上

12.2

PNサンプリング流量測定装置

13ヵ月毎

すべての調整条件下で読み値の±5%

12.2

PNサンプリング流量温度センサー

1年毎

±1°C

12.2

PNサンプリング流量圧力センサー

1年毎

±1 kPa

12.2

TPN10用希釈システム

構成により6ヵ月または13ヵ月

14.5.1項

14.5

SPN10用揮発性粒子除去装置

構成により6ヵ月または13ヵ月

14.5.2項

14.5

粒子個数カウンター

13ヵ月毎,主要整備時

14.6項

14.6

ブレーキ部品天びん

初回設置時,1年毎,主要整備時

表14.6.

14.4

施設室内または秤量室内の温度,気圧,および周囲湿度などを測定するために使用されるセンサーまたは補助装置は,表14.2に規定される要件を満たさなければならない.

表 14.2. 補助機器の校正要件2)

測定器

校正周期

校正要件

温度センサー

1年毎

±1°C

大気圧センサー

1年毎

±1 kPa

相対湿度センサー

1年毎

±5% ノルマル値

絶対湿度センサー

1年毎

±10%, 読み値もしくは 1 gH2O/kg dry air いずれか大きい方

14.2 ブレーキダイナモメータ

表14.3.は,GTRに規定されるブレーキダイナモメータの校正基準および校正周期の要約である.回転速度,ブレーキトルクおよびブレーキ圧測定装置は,表14.4の直線性要件に準拠しなくてはならない.

表 14.3. ブレーキダイナモメータの校正要件2)

装置

校正周期

校正要件

回転速度装置

初回設置時,1年毎,主要整備時

表14.4.

ブレーキトルクセンサー

初回設置時,1年毎,主要整備時

表14.4.

ブレーキ圧センサー

初回設置時,1年毎,主要整備時

表14.4.

ブレーキフルード液量

初回設置時,1年毎,主要整備時

最大 ±0.5%

温度データ収録装置

初回設置時,1年毎,主要整備時

最大 ±0.25%

表 14.4. 回転速度,ブレーキトルク,ブレーキ圧測定装置の直線性要件2)

測定システム

切片 a0

傾き a1

標準推定誤差

Standard error of estimate (SEE)

決定係数, r²

ブレーキ回転速度

≤ 0.05%

0.98 – 1.02

≤ 0.25%

≥ 0.990

ブレーキトルク

≤ 0.05%

0.98 – 1.02

≤ 0.5%

≥ 0.990

ブレーキ圧

≤ 0.05%

0.98 – 1.02

≤ 0.5%

≥ 0.990

表14.3.および表14.4.に示すシステムの校正とは別に,試験施設は,ブレーキエミッション試験を開始する前に,毎回トルクゼロレベルと圧力ゼロレベルを確認する必要がある.

14.3 冷却空気流量測定装置

流量測定装置の校正,冷却空気流量の決定に使用する流量測定装置の校正は,国家規格または国際規格にトレーサブルであること.流量測定装置は,表14.5.の直線性要件に準拠し,最小流量と最大流量の間の回帰直線は,少なくとも4つの等間隔の基準流量をとること.さらに,各流量測定は,測定された基準流量の±2%以内とする.試験施設は,気流測定装置の校正を,最初の設置時,毎年,および装置の構成の主要保守の都度に実施する必要がある.

表 14.5. 流量測定装置の直線性要件2)

測定装置

切片 a0

傾き a1

推定標準誤差 (SEE)

決定係数 r²

流量計

≤ 1%

0.98 – 1.02

≤ 2%

≥ 0.990

試験施設は,標準状態における流量を報告するように校正された流量測定装置を使用するものとす る.温度センサーは±1 °Cの精度を有し,圧力測定は±0.4 kPaの精度と精度を有するものとする.試験機関は,両センサーの校正を毎年実施するものとする.

14.4 PMとMass Lossの測定器

14.4.1 PMフィルタ秤量のマイクロ天びん

12.1.4項に従ったPMフィルタの秤量に使用するマイクロ天びんの校正は,国家または国際標準にトレーサブルであること.天びんは,少なくとも4つの等間隔の基準分銅を用いて,線形回帰により表14.6.の直線性要件に準拠しなくてはならない.これは,少なくとも±2 μgの精度および少なくとも1 μg(1桁=1 μg)の分解能を意味する.試験機関は,認証された校正分銅を使用して,定期的にマイクロ天びんの安定性と適切な機能を検証しなくてはならない.試験施設は,マイクロ天びんの校正を,最初の設置時,年1回,および主要保守のたびに実施する必要がある.

14.4.2 ブレーキ部品秤量の天びん

12.1.3項に従ったブレーキ部品の秤量に使用する天びんの校正は,国家または国際標準にトレーサブルであること.天びんは,少なくとも4つの等間隔の基準分銅を用いて,線形回帰により表 14.6.の直線性要件に準拠しなくてはならない.これは,少なくとも±1 gの精度および少なくとも0.1 gの分解能を意味する.試験機関は,認証された校正分銅を使用して,定期的に天びんの安定性と適切な機能を検証しなくてはならない.試験機関は,マイクログラム天びんの校正を,最初の設置時,年1回,および主要保守のたびに実施する必要がある.

表 14.6. 天びんの検証基準2)

測定システム

切片 a0

傾き a1

推定標準誤差 (SEE)

決定係数 r²

PM 天びん

≤ 1 μg

0.99 – 1.01

≤ 1%

≥ 0.998

ブレーキ部品天びん

≤ 0.3 g

0.99 – 1.01

≤ 1%

≥ 0.998

14.5 サンプル前処理と調整を行う装置

14.5.1 TPN10測定における希釈システム

希釈システムのPCRFの希釈設定の全範囲にわたる校正は,装置を新設したときと主要保守の後に,装置の公称動作温度の一定温度で実施するものとする.希釈システムのPCRFに対する定期的な検証要件は,市場で入手可能な典型的なブレーキのエミッション試験に使用される典型的な設定条件におけるチェックに限定されるものとする.技術支援機関は,エミッション試験の前6ヵ月以内に,校正証明書または妥当性を確認できる証明書の存在を確認しなくてはならない.希釈システムが温度監視アラームを内蔵している場合,検証の間隔は13ヶ月とする.

希釈システムは,電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmおよび100 nmのシステムの運転条件下で,熱的に安定な粒子を用いてPCRFの特性を評価しなくてはならない.電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmの粒子に対するPCRF(fr(dx))は,電気移動度径100 nmの粒子に対して,それぞれ100%,30%,20%以上高くなってはならず,また5%以下とする.以上低くなってはならない.つまり,表14.7.に示す,電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmの粒子に対するPCRF(fr(dx))の要件をまとめたものである.許容差に収まらなければならない.平均PCRFは,希釈システムの一次校正で決定された算術平均粒子損失補正係数(fr)の±10%以内とする.

表 14.7. 電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmの粒子に対するPCRF(fr(dx))要件2)

PCRF フラクション

最小許容差

最大許容差

(fr (15nm))/(fr (100nm))

0.95

2.00

(fr (30nm))/(fr (100nm))

0.95

1.30

(fr (50nm))/(fr (100nm))

0.95

1.20

PCRF(fr(dx))と算術平均粒子損失補正係数(fr)の測定のための試験エアロゾルは,電気移動度径15 nm,30 nm,50 nm,および 100 nmのシステムの運転条件において熱的に安定な粒子とする.希釈システム入口における最低濃度は,電気移動度径 15 nmの粒子については3000 #/cm3とし,電気移動度径 30,50,100 nmの粒子については5000 #/cm3とする.粒子濃度は,構成要素の上流および下流で測定するものとする.各単分散粒子径におけるPCRF(fr(dx))は,式14.1に従って算出するものとする.Nin(dx)およびNout(dx)は同一条件(すなわち標準条件)を指すものとする.

  
f r ( d x ) = N in ( d x ) N out ( d x )
(式14.1)

ここで

Nin(dx):電気移動度径dxの粒子に対する上流のPN濃度(#/cm3

Nout(dx):電気移動度径dxの粒子に対する下流のPN濃度(#/cm3

所定の希釈設定における算術平均粒子損失補正係数(fr)は,式14.2を用いて算出されるものとする.

  
f r = [ f r ( 30 n m ) + f r ( 50 n m ) + f r ( 100 n m ) ] 3
(式14.2)

ここで,

fr (30 nm):電気移動度径30 nmの粒子に対するPCRF

fr (50 nm):電気移動度径50 nmの粒子に対するPCRF

fr (100 nm):電気移動度径100 nmの粒子に対するPCRF

装置メーカーは,各システムモデルについて1台の試験により粒子透過率(Pr(dx))を検証しなくてはならない.ここでいうシステムモデルとは,同じハードウェア,すなわちエアロゾル経路における同じ形状,導管材料,流量,および温度プロファイルを有するすべてのシステムを対象とする.粒子径dxにおける粒子透過率(Pr(dx))は,式14.3を用いて計算するものとする.DFは,微量ガスの測定または流量測定により決定されたNin (dx)とNout (dx)の測定位置間の希釈係数である.

  
P r ( d x ) = D F × N out ( d x ) N in ( d x )
(式14.3)

14.5.2 SPN10測定における揮発性粒子除去装置(VPR)

VPRのPCRFの希釈設定の全範囲にわたる校正は,装置を新設したときと主要保守の後に,装置の公称動作温度の一定温度で実施するものとする.VPRのPCRFに対する定期的な検証要件は,市場で入手可能な典型的なブレーキのエミッション試験に使用される典型的な設定条件におけるチェックに限定されるものとする.技術支援機関は,エミッション試験の前6ヵ月以内に,校正証明書または妥当性を確認できる証明書の存在を確認しなくてはならない.VPRが温度監視アラームを内蔵している場合,検証の間隔は13ヶ月とする.

VPRは,電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmおよび100 nmのシステムの運転条件下で,熱的に安定な粒子(すなわち固体粒子,Solid PN)を用いてPCRFの特性を評価しなくてはならない.電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmの粒子に対するPCRF(fr(dx))は,電気移動度径100 nmの粒子に対して,それぞれ100%,30%,20%以上高くなってはならず,5%以下とする.低くなってはならない.つまり,表14.7.に示す,電気移動度径15 nm,30 nm,50 nmの粒子に対するPCRF(fr(dx))の要件をまとめたものである.許容差に収まらなければならない.平均PCRFはVPRの一次校正で決定された算術平均粒子損失補正係数(fr)の±10%以内とする.

PCRF(fr(dx))と算術平均粒子損失補正係数(fr)の測定のための試験エアロゾルは,電気移動度径15 nm,30 nm,50 nm,および100 nmのシステムの運転条件において熱的に安定な粒子(固体粒子)とする.希釈システム入口における最低濃度は,電気移動度径15 nmの粒子については3000 #/cm3とし,電気移動度径30,50,100 nmの粒子については5000 #/cm3とする.粒子濃度は,構成要素の上流および下流で測定するものとする.各単分散粒子径におけるPCRF(fr(dx))は,式14.1に従って算出するものとする.Nin(dx)およびNout(dx)は同一条件(すなわち標準条件)を指すものとする.所定の希釈設定における算術平均粒子損失補正係数(fr)は,式14.2を用いて算出されるものとする.

VPRは,装置全体として校正および検証されることが推奨される.VPRの揮発性粒子除去効率は,SPN10を測定する装置ファミリーについて一度だけ証明する必要がある.装置製造者は,VPRの除去効率が技術的要求事項を下回らないことを保証する保守または交換間隔を提供する必要がある.そのような情報が提供されない場合,揮発性物質の除去効率は各測定装置について毎年チェックされなければならない.

SPN10測定に使用されるVPRは,その最小希釈設定および製造者が推奨する運転温度で運転された場合,電気移動度径が50 nmを超え,質量が1 mg/m3を超えるテトラコンタン(CH3(CH2)38CH3)粒子の 99.9%を超える除去効率を示すこと.

装置製造者は,各システムモデルについて1台を試験し,粒子透過性Pr(dx)を証明しなくてはならない.ここでいうシステムモデルとは,同じハードウェア,すなわちエアロゾル経路における同じ形状,導管材料,流量,および温度プロファイルを有するすべてのシステムを対象とする.粒子径dxにおける粒子透過率(Pr(dx))は,式14.3を用いて計算するものとする.

14.6 Particle Number Counter

認証機関は,エミッション試験前の13ヶ月以内に,トレーサブルな基準への適合を証明するPNCの 校正証明書が存在することを保証しなくてはならない.校正と校正の合間には,PNCの計数効率が悪化していないか監視するか,または計器製造者が推奨している場合は6ヶ月ごとにPNCのウィックを定期的に交換する必要がある.PNCは,主要保守の後,再校正を行い,新しい校正証明書を発行する必要がある.

校正は標準校正法にトレーサブルであること.試験施設は,PNCの校正に以下の2つの方法のいずれかを使用する必要がある.

  1. (a)   静電的に分級された校正用粒子を同時にサンプリングした場合の,校正対象のPNCと校正済みのエアロゾルエレクトロメータとの応答の比較.
  2. (b)   校正対象のPNCと,上記の方法で直接校正された第2のPNC(基準PNC)との応答の比較.

校正は,PNCの測定範囲にわたる少なくとも6種類の標準濃度を用いて実施しなくてはならない.このうち5つの標準濃度は,3000 #/cm3以下の標準濃度とシングル粒子カウント測定モードにおけるPNCの測定範囲の最大値との間に,できる限り均一な間隔で配置する.6つの標準濃度には,少なくともEN 1822:2008のクラスH13(または同等の性能)のHEPAフィルタを各装置の入口に取り付け,公称ゼロ濃度を1点含むものとする.

2つのデータセットの線形最小二乗回帰から勾配(直線の傾き)を計算し,記録するものとする.基準値をx軸,校正対象のPNCをy軸としたとき,直線の傾きの逆数に等しい校正係数を校正対象のPNCに適用する.応答の直線性は,2つのデータセットのピアソン積率相関係数の二乗(r2)として計算され,0.97以上とする.直線の傾きとR2の両方を計算する際,回帰直線は原点(両測定器のゼロ濃度)を強制的に通るものとする.校正係数は0.9~1.1とする.校正中のPNCで測定された各濃度は,ゼロ点を除き,測定された基準濃度に勾配を乗じた値の±5%以内であること.

校正は,電気移動度径10 nmの粒子を用いたPNCの検出効率の要件に対するチェックも含むこと.15 nmの粒子を用いた計数効率のチェックは,定期校正では必要ない.

15. おわりに

乗用車と小型商用車から排出されるブレーキ粒子について,世界で初めての世界的に調和された排出量を計測する規則であるGTR24を和訳し,その上で解説を行った.GTR24では各項目の測定方法だけでなく,測定機器の許容差,校正方法や頻度について広く解説されている.自動車のブレーキはこれまでは安全を重視して設計されてきたが,次世代の自動車は環境へ配慮したブレーキ粒子の排出を低減した設計も重要となる.低減効果を公正公平に証明するためには,GTR24のような世界共通の規則に基づく必要がある.GTR24は本稿の和訳でも101ページにおよぶ長編となる.長編となったのは,ブレーキ粒子の測定は手軽に行えるものではないため,きめ細かな規程の整備を行った結果である.ブレーキ粒子の排出の要因となるブレーキ摩耗自体が安定しないことと,空気中に浮遊する粒子状物質,例えば,PM2.5やエアロゾルといった混合物のように,化学的・物理的に不安定な物質であり,粒子を正しく測定することは容易ではない.不安定な物質であるからこそ健康影響が懸念され,測定が容易ではないことから,大気環境における要因調査や発生源対策の解決に数十年単位の時間を要する.ブレーキ粒子の測定には,専門的な知識を得るだけでなく,実際の作業の一つ一つに対して,試験方法や装置の原理原則をよく理解して進めて頂くことが重要となる.本稿が日本におけるブレーキエミッション計測の関係者の一助となれば幸いである.

謝辞

本稿を執筆するにあたり,JSPS科研費JP 22K03895により文献調査を実施した.

References
 
© 一般財団法人日本自動車研究所
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