本稿は 2022 年度村研東北地区研究会の内容報告である。本報告会は、19 年間岩手県岩泉町安家地区で暮らしつつフィールドワークをおこなってきた、環境民俗学研究者の岡惠介氏(東北文化学園大学)に「北上山地山村の暮らしから学ぶ」というタイトルで報告をいただいた。生態人類学を大学院で学んだ岡氏は、「食」にかかわる事柄を把握することから山村社会を理解しようと試みてきた本研究会では、事前打合せにて「生産」の捉え直しを通じて自然と人の関係性を考え直したいという企画者の意図をお話しし、報告をお願いした。
岡氏は、安家地区の生業複合の変化、「救荒食」や野生動植物の利用、食物の貯蔵方法の変化、近年の災害への住民対応など、いくつかのトピックを話されながら、山棲みの根幹に迫るような報告をされた。有意義な質疑応答もあり、企画者側は学ぶものが多かったように思う。ここでは紙面をお借りし、研究会の内容を簡単にではあるが記述していきたい。