中小企業会計研究
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新書面添付制度に関する一考察
総合所見欄の考察を中心に
宮下 仁志
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2024 年 2024 巻 10 号 p. 109-120

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抄録

 2024 年4 月1 日以降税理士法第33 条の2 第1 項に規定するいわゆる書面添付制度(以下,「書面添付制度」とする)は,申告書の作成に関する計算事項等記載書面(以下,「新書面添付制度」とする)と名称を改め刷新される。筆者自身は,かねてより中小企業会計計算書類の信頼性保証の研究を重ねてきた。そのような研究背景のなかで,刷新される新書面添付制度がどのように中小企業会計計算書類の信頼性保証に影響を及ぼすものであるかを考察することが本稿である。

 本稿は,まず書面添付制度の概略を表す。続いて新書面添付制度と書面添付制度との変更点を明確に表す。書式のなかの具体的な変更内容は,「1 自ら作成記入した帳簿書類に関する事項」から始まり「2 提示を受けた帳簿書類に関する事項」を記載していく様式から「1 提示を受けた帳簿書類に関する事項」から始まり「2 自ら作成記入した帳簿書類に関する事項」を記載していく様式となり,端的に言えば記載順序が入れ替わった。また,旧来「5 その他」欄に内包されていた申告書の作成における所見等が,今回あらたに「5 総合所見」欄として独立し,申告書の作成に関し,計算し,整理し,または相談に応じた事項の総合的な所見を述べる欄に変更された。これらの変更点をつぶさに表すとともに,「5 総合所見」欄の記載例を「図表3 総合所見欄の記載例」にて表す。さらに,試査・精査につき明らかにしたのちに,帳簿監査に基づき,今回の改正で総合所見欄が抜き出された意味合いを中小企業会計計算書類の信頼性保証の観点から明らかにすることを大胆に試みる。本稿における新書面添付制度の研究が,税理士による新書面添付制度の積極的な活用に寄与することを期待するとともに,税理士による新書面添付制度の積極的な活用が,中小企業会計計算書類の信頼性保証の新たな一端を担うことに帰すること こそが本稿考察の根拠である。

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