2015 年 11 巻 1 号 p. 111-129
項目反応理論を用いてテストの作成・運用を行う場合,項目バンクに質の高いテスト項目を十分に確保することは容易ではない.本研究では,この問題の解決のために,日本語能力を測定する公的な大規模日本語試験のうち,BJT ビジネス日本語能カテスト(Business Japanese Proficiency Test)を資料として調査・分析を行い,実証的な研究を行った.具体的には,(1)過去の出題項目から項目統計量が特異であったテスト項目を抽出し,その解答の傾向の内実を検討,項目統計量が特異であった要因についての検証を行った.さらに,(2)検証結果に基づく方針によって項目に修正を加え,(3) 実験的データを収集してその修正が項目統計量の改善に寄与したか,定量的・定性的に分析した.検証の結果,修正によって項目統計量が改善されたことから,従来,項目統計量が特異であったために試験実施後に項目バンクへ追加されなかった項目も,適切な修正・改変を加えれば再利用できることが判明した.