本研究では,個別学力試験の解答形式の分類から国立大学の記述式問題を課す能力について実証的に検討した.大学院大学を除く国立大学全82校の2015年度一般入試個別学力試験問題を収集し,約24,000問の枝問を分類した.その結果,「記述式」を全く出題していない大学は1 大学に過ぎなかった.半数は「穴埋め式」や「短答式」を除いても150 問以上出題していた.また,全科目において,「記述式」が「客観式」よりも多く,「英語」以外は,概ね8割が「記述式」であった.「国語」「小論文」「総合問題」においても一部の問題は「客観式」であり,また,「記述式」であっても「穴埋め式」や「短答式」で出題されている例が見られた.以上の結果から,国立大学の個別学力試験で記述式問題の出題があまりなされていないと理解するのは明確に誤りであることが示唆された. 大学入試改革における「エビデンスに基づく(evidence-based) 」議論の重要性が提起された.