日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
事例研究論文
英語文章要約パターンの教育測定学的検討
―削除・一般化・統合のプロセスに着目して―
寺尾 尚大石井 秀宗
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 15 巻 1 号 p. 59-78

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抄録

本研究の目的は,記述式の英語文章要約問題を用いて,要約文における解答パターンを能力群別に検討することであった.認知心理学において提唱されている文章要約モデルを踏まえて,要約問題として1) 要約に必要のない情報を削除する過程に焦点を当てた問題(指定段落要約問題・削除),2) 文章中で並列されたことがらをより上位概念の語に置き換える過程に焦点を当てた問題(指定段落要約問題・一般化),3) 段落の内容を代表するような文(トピック・センテンス) を作成する過程に焦点を当てた問題(指定段落要約問題・統合),4) 文章全体要約問題の4 種類を作成した.大学生60 名に対して英語文章要約問題への解答を求めた後,研究協力者3 名に受検者の要約文の分類を求めた.トレースライン(解答率分析図) を描出した結果,能力低群の受検者が作成した要約文には,重要でない情報が混入している,具体的な記述をそのまま含めているなど,削除・一般化に関連した特徴が見られた.一方,能力中群の受検者の要約文には,筆者の意図から逸脱した表現を含めている,対比的に述べられている記述のうちの一方に重きを置いているなど,統合に関連した特徴が見られた.本研究から得られた知見により,受検者の誤答情報をテスト問題や採点基準の作成などに活用できる可能性が示唆された.

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© 2019 日本テスト学会
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