項目反応理論に基づく標準化テストを実施する際、どのテストでも項目の再出題を行わないようにすれば,公平性に最大限配慮することができるが,そのようなデザインの一つに「本試験同時モニター受験者」がある。このデザインでは,本試験同時モニター受験者の能力分布が,本試験受験者と同等であることが求められるが,実際のテストでは難しい場合もある。本研究では,本試験同時モニター受験者集団の能力分布が本試験受験者集団と比べて異なる場合に,本試験受験者の能力値や本試験受験者向け項目のパラメタ推定にどのような影響を与えるかを,複数の等化方法間でシミュレーション研究により比較した。結果,能力分布が大きく異なる条件やモニター受験者が極端に少ない条件においては,個別推定に比べて同時推定を併用した方法や項目パラメタ固定法を用いた場合に真値に近い項目パラメタの推定結果が得られた。あわせて,本試験同時モニター受験者によるデザインのための等化手法について議論した。