項目反応理論モデルにおける局所独立性は,項目反応の同時分布を周辺分布の積に分解するための基本的な仮定であるが,実際のデータではモデルの不適合や環境要因,テスト項目間の構造的依存,クラスター内に共通する要因などによって局所依存(LD)が発生する。伝統的なLD診断法であるQ3や分割表に基づく独立性検定は,近年リサンプリング法を用いた改良が進み,新たな指標も提案されている。さらに,従来のIRTモデル拡張は,項目間依存性を表現するパラメタを追加するにとどまっていたが,近年では(a)個人と項目の依存性を同時に組み込む拡張や,(b)攪乱次元の射影やコピュラ関数を用いて,複雑な依存構造を表現しつつ高い解釈性を保つ枠組みが提案されている。本研究では,LD診断およびモデル拡張の近年の発展をレビューし,これらの手法を用いる上での実務的な要点を明らかにするとともに,LDに関する将来的な研究の方向性を示す。