日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
論文
選抜試験における得点調整の有効性と限界
-合否入替りを用いた評価の試み-
倉元 直樹西郡 大木村 拓也森田 康夫鴨池 治
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2008 年 4 巻 1 号 p. 135-152

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抄録

本研究は,倉元他(2008)が提案した合否入替りによる得点調整の評価法について,その背景と考え方を理論的に説明し,実際に入試データに適用して得点調整の評価を試みた.日本の大学入試における科目選択では,等化の前提条件を満たせない.その代わり,テスト実施後に素点の調整が行われることがある.素点の調整は社会的問題でもある.本研究では,過去に起こった得点調整をめぐって矛盾した世論が喚起されたケースに対して,社会心理学的公正研究の観点から考察を加えた.さらに,個別試験では,公正さの担保は得点そのものよりも合否という判定結果にあることを論じ,合否入替りを用いた得点調整の評価法について解説を行った.東北大学の入試データを用いて個別試験理科の得点調整について合否入替りの観点から分析を加えた.その結果,合否入替りという観点から,素点による評価の不公平性を是正することには量的に成功していることが確認された.反面,調整の結果として合否が逆転した受験生の成績プロフィールが,大学側が望んでいる学生像と異なっている可能性が指摘された.

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© 2008 日本テスト学会
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