2008 年 4 巻 1 号 p. 3-12
日本のテスト研究の主流は長らく比較のための個人差の測定にあった. 素点や偏差値に代表されるそれらは教育評価, 入学入社選抜, 昇進・配置,資格・検定,進路適性相談などの相対的評価に多くの貢献をしたが, その反面, 教育の世界における過度の競争意識の助長, 成長発達量の認知困難, 異集団・異テスト間の比較不良といった問題も残している. これからのテストは客観的基準を基礎とした個人内変化や集団の時系列的変化の査定に役立つ尺度構成を目指さなければならない. しかしそれには技術的に困難な課題を多く抱えている. それを克服するための条件を考え, 解決のための産官学を含む学際的な協力体制の必要性を訴える.