2011 年 7 巻 1 号 p. 1-14
欠測に対応した非線形因子分析を,一部共通受験者のある大学入試センター試験モニター調査(大学1年生を被験者とする)のテスト得点に適用することにより,共通受験者についての情報が事実上利用できない異なる年度の試験問題の難易度の比較を試みた.ある年度の英語追試験問題をアンカーテストとして利用し,当該年度の本試験と翌年度の本試験との難易度を比較した.モニター調査被験者は,センター実受験者集団と比較すると,かなり高い成績の者から構成されるため,得点分布は実受験者とは大きく異なる.しかし,アンカーテストを用いることにより,実受験者における難易度の違いを良く予測することができた.ただし,非線形因子分析による推定の精度は,各項目の正誤情報を用いるIRTの2パラメータロジスティックモデルによる予測には及ばない.特に,分布の上限と下限部分において,推定の偏りが大きい傾向がみられる.