日本テスト学会誌
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Print ISSN : 1880-9618
一般研究論文
個別大学の追試験における得点調整方法に関する一提案
―タッカーの線形等化法を用いて―
倉元 直樹
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2011 年 7 巻 1 号 p. 67-83

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抄録

本研究では,大学の個別試験で追試験を実施する際の得点調整法を提案する.大学入試の得点調整はリンキングの一種だが,状況によって条件が異なる.追試験の場合,科目選択間の得点調整と比較して等化の条件に近い状況は満たされる半面,受験者は少数しか見込めない.また,成績処理に複雑なプロセスを加えると入試ミス発生の危険性が高くなり,望ましくない.本研究では係留テストを用いたタッカーの線形等化法を応用した得点調整の方法を提案した.本試験と追試験と係留テストの関係に二つの仮定を加えることで,安定しない追試験のパラメタを用いずに済み,追試験受験者に一定の調整得点を付加する単純な式となる利点がある.国立A大学の入試データを用いてブートストラップシミュレーションを行った.その結果.全体として調整誤差の平均値はほぼゼロに抑えられる半面,追試験受験者が少ないときは誤差の幅が大きくなった.合否入替りを用いた評価では,母集団の性質によって調整の成否が異なった.それでも,ある程度は公平性の確保に寄与することが期待される.

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