視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第18回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
セッションID: P-27
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ポスター発表
読書速度に2つのピークを示した輪状暗点の症例の補助具の選定
*新井 千賀子尾形 真樹田中 恵津子工藤 かんな小田 浩一平形 明人
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抄録

緒言:読書速度と文字サイズの関係では、臨界文字サイズ以上になると速度が一定となるタイプと、さらに文字サイズを拡大すると読書速度が低下するパターンがあることが知られている。後者は求心性視野狭窄や黄斑を取り囲んだ輪状暗点など黄斑部に視野が残存する場合にみられる。このような症例の場合の補助具選択では視力が高い場合には拡大について十分に検討されていない。今回、黄斑部を囲む輪状暗点があり視力が高いが、高拡大倍率でより読書成績が改善された症例を経験したので報告する。症例:59歳男性、クロロキン網膜症による脈絡膜萎縮、視力:右眼(0.8) 左(0.1)、視野:右眼 、傍中心窩を囲む輪状暗点、左眼、中心窩の比較暗点および傍中心窩から耳側上方かけての暗点。左眼外斜視。強度近視のため接近視で11ポイントの文字を約100文字/分の速度で読めるが読み作業の困難を訴えていた。経過:19インチモニタでPC-版MNREAD-Jを両眼開放において実施した結果は、0.5logMARで読書速度96文字/分を示し0.9ogMARで読書速度が低下1.3logMARで再び速度が上昇した。より高い拡大を得るために42インチモニタで実施した結果では2.0logMARで読書速度206文字/分を示した。この結果より長時間の読み作業については拡大読書器で2.0logMARの文字サイズに拡大し、短時間の読み作業は裸眼で接近視にて行う事となった。考察:視力が高い輪状暗点を示す症例では、拡大効果よりも中心視力を活用した補助具の選択が行われることが多い。しかし、本症例の様に拡大することで読書効率が向上する場合には高倍率の補助具の方がより効率がよい。視力が高い輪状暗点の症例ではより高倍率を提供することで読書効率が改善する可能性を考慮して高倍率に拡大した文字サイズまで読書評価を実施し、用途に対応した補助具を検討する必要性が示唆された。

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© 2009 視覚障害リハビリテーション協会
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