視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第18回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
選択された号の論文の65件中1~50を表示しています
特別講演
  • 福島 智
    セッションID: SL1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     1.28年前、私は盲ろう者になった
     私は9歳で失明し、18歳で失聴した全盲ろう者である。私が盲ろう者となったのは今から28年前、ちょうど国際障害者年の年、1981年の初頭のことだった。
     2.「盲ろう」という状態がもたらす困難
     その本質は、「見えない」、「聞こえない」ということ自体よりも、他者とのコミュニケーションの断絶だった。
     私は深い孤独と苦悩の中で考えた。「人は見えなくて、聞こえなくても生きていけるだろう。しかし、コミュニケーションが奪われて、はたして生きていけるのだろうか」と。
     3.解放の三つの段階
     このように、私は絶望の状態にあったが、その暗黒と静寂の牢獄から解放されるときがやってきた。その解放には三つの段階があった。
     第一はコミュニケーション方法の獲得、私の場合は母による「指点字」という新しいコミュニケーション方法の考案であり、私はこうして、他者とのコミュニケーションがよみがえることによって、生きる意欲と勇気を再び取り戻すことができたのである。  私にとっての解放のための第二の段階は指点字という「手段」を用いて実際にコミュニケーションをとる相手、身近な他者に恵まれた、ということだった。
     そして、第三の段階は、「通訳」というサポート、私にコミュニケーションの自由を保障してくれるサポートを制度的に受けられる状態になった、ということである。
     4.困難な状況からの解放
     こうした自らの体験を通して、障害者だけではなく、私は困難に直面した人が挫折を乗り越えて、再び元気を取り戻すには、第一に、生きる上で不可欠な基礎的な手段や資源の提供、第二に、身近な他者による励ましやエンパワメント、そして第三に、これら二つを支える社会的な制度の枠組みを整えることが重要だと考えている。
     5.解放から社会参加にいたるプロセス
     盲ろう者として大学に入学し、学部から大学院に進学。そして特別研究員・非常勤講師などをへて、常勤の大学教員となっていくまでのプロセスについて。どのようなサポートを受けて来たか。盲ろう者の自立と社会参加の全般的な問題を踏まえて考える。
     6, 盲ろう者のリハビリテーションのありかた
     盲ろう者のリハビリテーションの専門家は、厳密にいえばまだ日本にはいない。まして視覚障害、聴覚障害いずれか一方の専門家だけの取り組みでは、盲ろう者のリハビリテーションは実現不可能である。なぜなら盲ろう者は、単一の視覚障害者ではなく、単一の聴覚障害者でもない、あくまでも「盲ろう者」だからである。<>br  その意味で、視覚障害・聴覚障害それぞれの専門家が協力しつつ、いまだわが国に存在しない「盲ろう者リハビリ」の領域を開拓していく必要がある。その際、自らの専門知識を過信する「専門家の罠」にとらわれないことが重要だ。
シンポジウム
  • 小林 章, 野口 忠則, 前川 賢一, 園 順一, 小田 浩一
    セッションID: SHI-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     障害者自立支援法の施行により、社会福祉制度の中で行われて来た生活訓練等の視覚障害リハビリテーションサービスに大きな転換期が訪れている。障害者の福祉サービスの一元化およびサービス提供主体の一元化により、利用者は障害の種別を問わず、最も身近な市町村でサービスを受けられることとなった。それは反面、これまで視覚障害リハを専門に提供してきた事業所が転換を求められ、「資格」を持たない視覚リハ訓練専門職の存在を希薄にする引き金となっている。今この時期に視覚障害リハ訓練専門職の専門性が確立されていかなければ、視覚障害者へのリハサービスは、他職種の人たちの手に委ねられるものになってしまう可能性が高い。
     このシンポジウムでは、(1) 資格認定制度立ち上げのための課題と最近の取組、(2) 視覚障害リハ訓練専門職(歩行訓練士)組織化の必要性と取組の経過、(3) サービス利用当事者が視覚障害リハ訓練専門職に求める専門的ニーズ、(4) エビデンスに基づいたサービス提供ができる専門性確立のための取組について、それぞれシンポジストから報告、提言を行い、会場でのディスカッションを通して資格制度の仕組み作りへ向けて、大きな一歩を踏み出すための切掛けの場としたい。
  • これから地域で視覚リハシステムづくりに取り組もうとする人達へのメッセージ
    吉野 由美子, 別府 あかね, 前川 賢一, 古橋 友則
    セッションID: SHI-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     視覚障害者に対する相談窓口や歩行・日常生活訓練、便利グッズの普及などのシステムづくりを行おうとする時、県や市町村の担当者との相互理解なしでは、システムづくりは難航し、また頓挫してしまうのは明らかな事である。しかし、視覚障害者は身体障害者手帳所持者全体の約1割と数が少なく、視覚障害リハビリテーションとは何かと言うことや、どんな専門家がいるのかと言うことも、一般の人だけでなく、福祉・教育などの行政担当者にもほとんど知られていないのが現状である。
     このシンポジウムでは、県の費用を使って研修に行き、視覚障害者生活訓練指導員の認定資格を得て高知に戻って来たが、「ニーズがない」と言う理由で、仕事に就けなかった別府さんが、どのように働きかけて行政担当者の理解を得られたか。三重県で、盲学校や市町村に職員を派遣し、視覚リハを展開している前川さんに、どのようにして盲学校や市町村と契約を結んで来たか、そして、県費で15人の視覚障害者生活訓練指導員をつくる計画を承認させた静岡の古橋さんに、なぜそのようなことが出来、現状はどうなっているのかを語っていただく事を通して、視覚障害リハビリテーションの必要性とその効果について、どのようにして行政担当者の理解を得、公的な予算を引き出すことが出来るかについて、地域のそれぞれの条件を超えた共通点を見いだし、これから地域で視覚障害リハビリテーションシステムを構築し、また専門家としてやりがいのある職場をつくって行こうとしている人達に、その方法論を学んでいただくと共に、共に共感し、相談できるつながりをつくって行くことを狙いとしている。
ワークショップ_I_
  • 氏間 和仁
    セッションID: W1-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     平成19年4月に特殊教育から特別支援教育へと大きく梶が切られ、地域の学校においても一人一人のニーズに応じた適切な指導及び必要な支援が行われるようになった。平成19年4月1日付 19文科初第125号 文部科学省初等中等教育局長の通知は、学校長のリーダーシップの下、校内体制を整え、コーディネータの指名、個別の教育支援計画及び指導計画の作成・活用、教員の専門性の向上を図ることを求めている。このような教育の枠組みの大転換が行われて2年が過ぎたわけだが、果たして地域の学校で学ぶ視覚障害の子ども達の教育環境はどのようになっているのか、また盲学校は地域の学校や教師・子ども・保護者に対してどのようにセンター的機能を発揮しているのか、まずは現状を確認することが肝心と考えられる。それぞれの立場で現状を出し合い、特別支援教育制度になってもたらされた影響を確認し、今後の進むべき道を参加者と共にし、ひいては本会の事業展開に示唆を与えられればと考え企画した。
    報告者と概要
     松友教諭(愛媛県立松山盲学校)
     概要:地域の学校及び教員、そこに在籍する児童生徒及びその保護者に対する盲学校のセンター的機能としての支援はどのように展開されているのか、このような盲学校の支援が、地域で学ぶ子ども達の日常の学習環境にどのように貢献してきたのか、その成果及び課題について報告する。
     古賀教諭(福岡市立長尾小学校)
     概要:視覚障害のある子どもを受け入れる地域の学校として、学校の中での弱視教育はどのように展開されているのか、また盲学校等の機関との連携や校内での特別支援教育体制はどのように変化してきたのか、その現状及び課題について報告する。
  • 山中 幸宏
    セッションID: W1-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    目的)まぶしく感じる理由を考え、なぜ遮光眼鏡が有効なのか?遮光眼鏡の選び方はどのように進めればいいのか?を提案します。

    内容) 1・中間透光体疾患のまぶしさを検証します。
     白内障などの中間透光体疾患があると、眼内で短波長が散乱することでまぶしさが生じることはよく知られていますが、では何故短波長が散乱するのか?(レイリー散乱)を「昼間の空はなぜ青く見えて、夕焼けは赤く見えるか?実験」を通じて検証していきます。

    2・網膜・視神経疾患のまぶしさを考えます。
     網膜・視神経疾患は中間透光体のまぶしさと異なり、白っぽく見えるまぶしさを症状として表現することが多い(山中・伊佐他、日本ロービジョン学会誌8:145-147,2008)ですが、その理由と遮光眼鏡が有効性を持つ理由を仮説をもとに検証していきます。

    3・遮光眼鏡の選択方法を考える。
    疾患により夜盲が生じている場合とそうでない場合の選択方法、青錐体がダメージを受けているロービジョン者への選択方法、私が臨床で経験した疾患別に有効だったカラー内容などをお話しいたします。
  • 伊藤 和之, 伊藤 和幸, 石川 充英, 清田 公保, 江崎 修央
    セッションID: W1-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    募集人員 20名程度 対象 文字入力の手段と方法に関心のある方  このワークショップでは、中途視覚障害者の「読む」「書く」「聞く」「話す」のうち「書き」、すなわち「筆記行動の支援」に焦点を当てて、意見交換を図る。
     実施者たちは、現在、低機能で携帯性と利便性を追究した6点入力、そして手書き文字入力の実用化を図っている。具体的には、「点字タイプライター式文字入力システムL. L. Writer」「手書き式文字入力システムPen-Talker」「デジタルペンによる予診票・施術録入力システム」を紹介する。これらのシステムは、PC、点字、墨字の使用に困難を感じる方に、既存の機器とは少し異なる視点で文字入力を促すものである。システムの使用によって、理療師として、生活者としての自立に寄与することを期待している。
     開発のきっかけは、理療教育のフィールドにおいて、臨床実習における医療面接(狭義の問診)とカルテ作成の充実が求められていることによる。それは、患者との対人間コミュニケーション(聴く、話す)と記録(書く)を連動させる取組みである。そのためには、入所前の訓練、在籍時の地道な学習環境が重要と考える。
     近年、理療教育課程在籍者のIT関連機器の導入は普通となった。PCとデジタル録音図書を駆使する全盲者も珍しくない。その一方で、授業時や自習時に筆記具を使用しない方が、低視力群を中心に増えているのも事実である(2001-2008学習手段実態調査)。PCも使用できず、ノート・テイキングに困難を有する方々の場合、録音物に依存するしか方法はなく、後々、受験もカルテ作成も苦慮することとなる。
    このような方々も「ちょっとした時にすぐにメモがとれる」手段を獲得し、その積み重ねを習慣化していくためには、自立訓練、職業教育訓練、就労・生活場面がつながる支援の枠組みが必要である。枠組みづくりには当事者の積極的な参加はもとより、専門職間の協働が突破口となる。
  • 田中 桂子, 中野 泰志
    セッションID: W1-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    ワークショップ「中途視覚障がい者支援での心理臨床家の役割」 企画者:田中 桂子(橋村メンタルクリニック・きんきビジョンサポート)
        中野泰志(慶應義塾大学)
    話題提供者:中野泰志(慶應義塾大学)
          原田敦史(税団法人 日本盲導犬協会・きんきビジョンサポート)
    <企画の目的>
     「ロービジョンケアにこころのケアが必要だ」と言われることが多くなっている。しかし、当事者にとって、心理臨床の専門家の存在はなじみが薄いことが多く、どこに行ったら会えるのか、具体的には、どういう仕事をする人なのかが、想像しにくいと思われる。医療及びリハビリ従事者、福祉関係者の場合も、それは同様の事態である。彼らの中にも「必要とは思うものの、どこに、どう声をかけ、どう活用したらいいのかわからない」という声がある。
     演者は、ここ数年「障害を負ったという、変えられないものを、各自の人生にどう入れ込み、なじませるか」をベースにして、今の自分が貢献できることは何かを模索する中、中途視覚障がい勤労男性のセルフヘルプグループに関わってきた。
     今回のこのワークショップは、中途視覚障がい当事者及びその支援に接点を持つ可能性の高い方々を対象としたものである。より具体的には、当事者・関係者の声を受けた上で、この領域で、心理臨床家の果たしうる役割の紹介とその可能性を、演者の経験から呈示し、議論してみたい。
     この企画が、今後、当事者はもちろんのこと、各職種が連携して、協働していく上での一助となることを期待している。 <企画の内容>
     はじめ30分で、話題提供者から、それぞれの立場での発言をいただき、その後10分程度、演者から、経験に基づくトピックを呈示する。その刺激を受けた後、残りの時間で、グループディスカッションを行う。
     ワークショップ参加者の人数・職種の制限は設けないが、グループ参加者の上限は、30人とする。  各領域からの、積極的な参加を期待しています。
  • -触って聞いて学ぶ-
    佐々木 健, 大越 教夫, 坂本 裕和, 大沢 秀雄, 手嶋 吉法, 中島 善人, 寺口  さやか, 佐藤 文信
    セッションID: W1-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     点字などの触覚活用者に、図・イラスト・写真などを提示する場合は、カプセルペーパー(立体コピー用紙)がよく利用される。このようにして作成された触図などは、先ずは視覚的な2次元情報として作成された図などを、触覚情報に変換して伝える媒体であるといえる。利点は、(1)_視覚活用者が利用している内容に準拠していること、(2)_安価かつ容易に作成できること、(3)_持ち運びが容易であることなどである。欠点は、(1)_2Dという情報量の制約があること、(2)_3D→2Dという視覚情報処理経由の表現物を触覚情報用に変換することに起因した表現上の限界があること、(3)_因っていわゆる「分かり難さ」があることなどである。そこで触覚活用者のために、3D→3D(対象そのものの情報→触察模型)という試みや、モーション化・音声化による情報量向上の試みを、各分野から集めて紹介する。
    1.立体縮小化の応用例
     触察に耐えうるミニチュア建物模型作成のための市販品を紹介する。白杖使用者などの歩行訓練やファミリアリゼーションで用いるために作成されたものである。
    2.立体拡大化の応用例
     解剖学の学習教材である骨模型は原寸大のものが多く、通常は視覚活用者用に作製された模型を触覚活用者用に利用(転用)している。教育的には「視覚か触覚かという活用感覚に関わらず教材としては実際の骨標本が最良である」という意見がある一方、特に中途失明の触覚活用者からは「椎骨の小さく細やかな部分の触察は、原寸大模型では難しい」という意見がある。そこで、積層造形法により椎骨の拡大模型を作成したので紹介する。
    3.モーション化の応用例
     手芸等の技術を応用したクラフト模型を紹介する。視覚障害者用の基礎医学・臨床医学教材として作製されたものである。
    4.音声化の応用例
     それぞれの模型の触察部分に音声情報を付加した、触覚・聴覚情報コラボレーション模型を紹介する。
ワークショツプ_II_
  • 仲泊 聡
    セッションID: W2-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    脳がなければ視覚は生じない。この脳が壊れてしまったときに視覚 に変調をきたすのは当然といえる。脳卒中後、見え方がおかしいと 訴える患者は少なくない。まず、ほとんどの患者はピントが合いず らくなる。そして、実際に視力が低下する場合、その病態は、程度 によって大脳性弱視とか皮質盲と呼ばれる。様々なタイプの視野障 害も頻繁に生じる。そして、中には視力と視野の観点からは理解で きないような視覚の変調をきたす場合もある。色が消える、顔だけ わからない、文字だけわからない、場所だけわからない、暗い、奥 行きがわからない、よく見落とすなどと様々な訴えが存在してい る。
    多くの場合、これらは、1)視覚伝達路の問題、2)視覚情報 処理の問題、3)視覚的注意の問題に集約することができる。
    本ワークショップでは、視覚伝達路の問題として、同名半盲と大脳性弱視・皮質盲について、視覚情報処理の問題として、大脳性色覚異常、相貌失認、純粋失読、街並失認、視覚失認、視覚失調について、そして、視覚的注意の問題として、半側空間無視と同時失認について述べる。また、これらの多くは「見えるはずなのに見えな い」という状態であるが、それとは反対に「見えないはずなのに見える」という状態があるということについても加えて紹介し解説したい。
  • 釣井 ひとみ
    セッションID: W2-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     学習場面において、・板書作業に時間がかかる、時間内に書き写しきれない ・文字を書くことが苦手、書字のバランスが悪い ・図形を書いたり認識したりするのが苦手 ・読み作業で行飛ばしがみられる、読んでいる場所がわからなくなる ・逐語読みになる ・プリント問題で書く場所がわからなくなる など、また、行動場面で、・物を探すのが苦手 ・球技が苦手 などの困難さがみられる子どもたちがいます。 そのような、視覚認知に課題がある児童・生徒の背景には、幾つかの要因が考えられます。 感覚の統合、視覚と運動の統合、視知覚、認知処理など、どの要因からその状態像がみられているか、評価、分析していくことが必要になります。それをもとに支援に取り組み、実際場面での配慮と対応を検討していくことが重要です。 今回は、視覚認知の仕組みについて、また、その中の、視知覚発達検査・評価方法についてご説明し、視覚認知に課題のある児童・生徒への理解を深めていただければと考えます。それをもとに、対応として、教室でできる支援方法のポイントについても幾つかご紹介したいと思います。
  • 山中 幸宏
    セッションID: W2-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    目的)屈折異常のあるロービジョン者の見え方に関する意外な優位点や“たかがルーペ、されどルーペ”な拡大鏡の意外な側面などを屈折・ロービジョンシミュレーションを使用しながら体感していただくワークショップです。
    ロービジョンケアを知り、明日からの相談・ケアに役立てていただければと思います。

    内容) 1・“近視は悪い目”と思われがちですが、ロービジョンケアを行う上ではむしろ“よい目”という観点もあります。実際に体験してみませんか?
    2・ルーペの倍率表記はメーカーによってバラバラであることをご存知ですか?あるメーカーの7倍とあるメーカーの5倍は全く同じ強さであったりします。それは何故?…答えはワークショップで!
    3・据置型ルーペは焦点が合っていない=調節力というものが必要=以外と年配者には不向き…見たいものの上に置けば、見えるわけではない!”ことを体感してみませんか?
    4・ルーペには裏表があるものとないものがあって、それが“歪まないで見る眼とルーペの距離”に影響することをご存知ですか。ルーペの設計に合わせた使い方が必要なんですね。これも体感していただきます。
    5・白内障体験と遮光眼鏡体験。まぶしさを実感して遮光眼鏡の有効性を体感していただきます。

    ご来場をお待ちしています。
口頭発表1
  • 地域単位での盲導犬訓練士•歩行訓練士の配置と連携の一提案
    福井 良太, 前川 賢一
    セッションID: O1-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    盲導犬を希望する視覚障害者数は、潜在的なニーズが相当数あるのにかかわらず、高齢化•重度重複化などの理由により、このままでは今後減少していく可能性すらあると考えている。
     盲導犬をもつことの前提となる、相応の自立生活能力の習得に必要な生活技術指導の支援(これの一翼を担っているのが歩行訓練士)の体制が、地域格差も含めて全国的には未だに未定着であること、生計基盤が低下傾向であることも相まって、盲導犬をもつだけの諸条件を満たせない可能性があるからだ。
     盲導犬訓練士の日常は、歩行訓練士同様、なかなか厳しい繁忙の中にある。両方の現場の実際を知る私たち2人には、盲導犬の育成にしろ、白杖歩行にしろ、その指導内容の掘り下げをすればするほど、両者の専門性の中で共通する考え方、指導の展開の仕方があることも実質的に知っている。
     盲導犬ユーザーに対しては、アフタフォローだけをとって考えてみても、所在する現地に赴いての支援が必要であるが、日常業務の繁忙の中にあるので、もっと回数を確保して、時間も内容も充実させた体制を築きたいところであるが、それがままならない現実もある。
     また、遠方であればあるほど、時間もかかれば旅費もかかり、その経費は寄付金の中で賄われている現実を考えれば、なにかしらの改善の努力をするべきこととの認識も強い。
     本来のあるべき、求めるべき体制のありかたを考えたときに、これからの盲導犬の更なる普及を実現させるためには、各都道府県に盲導犬訓練士の配置と、盲導犬ユーザーになるための基盤づくりの一支援者である地域の歩行訓練士との連絡と連携は、もっと実質的で密なものであるべきだと考える。
     今回は、双方の専門性の中身について、知識としても実践的にも知りうる立場にある盲導犬訓練士と歩行訓練士の私たち2人が、共同で今後の両者の実質的な連携のありかたを考察し、これからの盲導犬普及のありかたの一提案としたい。
  • 並木 正, 田辺 泰弘
    セッションID: O1-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    ロービジョン者の見え方は千差万別であり、疾患名、視力、視野、色覚といった検査結果や、障害等級といった法的認定のみでは、視覚特性を十分に表現し得ない。日常生活や社会生活で生じる支障や必要な支援も千差万別である。医療従事者やロービジョン者どうしでさえ、その人の見え方を的確に把握するのは至難である。  まして、専門知識を持たない一般の人は、視覚障害者=全く見えない、目が悪い=メガネを掛ければよいとの理解がまだまだ支配的であり、ロービジョンという状態は理解され難く、誤解を受けやすい。 この、「わかりづらさ」ゆえに、ロービジョン者は時にいじめに遭うなど対人関係で窮地に陥ってしまう。特に幼年期や思春期に受けた心の傷は、生涯癒えることのない苦しみを背負わせてしまうことがある。 また、人生半ばにしてロービジョンとなった場合には、自らの状態を的確かつ客観的に把握できなければ、孤立感や劣等感、自暴自棄に陥り障害受容を困難にしてしまう。  そこで、この「わかってもらえない」問題を解決するために、本会では、1997年に、弱視者者の具体的な生活場面に即しての視覚特性や必要な援助をまとめた、カード形式の冊子「私の見え方紹介カード」を考案、刊行した。  選択肢と自由記述を組み合わせたアンケート的な形式の本文と、ロービジョン者の数や使用している視覚補助具、視野欠損について概説した資料編で構成されている。  A6版リング綴じの厚紙カード形式にすることで、必要な項目のみを抜粋したり、順序を変更することが可能で、相手によって伝える内容を変えることも容易であるため、多様な「見え方」や必要な配慮・援助を的確かつ平易に表現することができる。  現在までに約2,500部が完売しており、学校での深刻ないじめを解決に導いたり、弱視教育に携わる教員の参考資料としても活用されている。  発行後10年余が経過し、IT化の進展や視覚補助具の改良などによって陳腐化した内容を更新し、学校生活場面での記述を拡充するため、改版作業を進めており、秋には刊行予定である。  ロービジョン当事者のみならず、診療現場や、教育、福祉関係の方々にもご活用頂ければ幸いである。
  • 「点・線混合ブロック」の方向定位機能の検証
    高橋 和哉, 岡村 祐, 秋山 哲男
    セッションID: O1-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    目的:
視覚障害者(全盲者、重度弱視者)が日常的に信号交差点でどのような行動をとり、またその行動に起因する情報が何かをアンケートを通して、明らかにする。その結果から幾つかの問題点を抽出し、立地的、構造的に悪条件下の交差点に対して、ブロック種類を変えることにより、どのような効果が得られるかを検証する。 
方法:視覚障害者20名に対して、交差点歩行に関するアンケートを行う。その結果を受けて、ホーム縁端警告ブロック(以下、混合ブロック)で方向定位ができるという仮説をたて、それを基に、新たな敷設と従来の敷設を実験空間において、被験者に交差点横断を想定しながら歩行を行ってもらい、それぞれの歩行の軌跡を計測し、比較する。被験者は、視覚障害者16名、晴眼者4名(必要に応じて、アイマスク、耳栓を着用する) 
結果:
アンケート結果:日常的に利用している交差点においても、状況が変わることにより横断失敗することがある。また、直交していない交差点に関しては、音情報を正確に捉えることが難しく、横断回避をする傾向にある。交差点横断の行動を5つに分けて考えた場合、横断開始時と歩行方向決定時に音情報が重要であるが、現状はその情報が不足している。 実験結果:被験者障害の度合いによる違いはあるものの、おおよそ3分の2の被験者において混合ブロックで方向定位ができることがわかった。 
考察:
実験前に混合ブロックでの方向定位オリエンテーションを行ったが、障害状況の違いにより実験主旨の理解度にばらつきが生じた。視覚障害の度合いによって効果の違いがみられ、光覚のある視覚障害者、あるいは軽度の視覚障害者に対しては、効果が低かった。晴眼者に対して効果があったことを考慮すると、混合ブロック効果のなかった他のグループに対しても、内方線を利用した方向定位を訓練で修得すれば、効果は上がると考えられる。この混合ブロックを活用した交差点での誘導用ブロックの敷設方式は、通過車走行音などの音情報が加わることで、有効性が増すと考えられる。ただし、内方線の向きを車道側・歩道側どちらに置くかは、今後の課題である。
  • 高橋 信行
    セッションID: O1-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    視覚障がい者がWebページにアクセスする際、 Webデザインがユーザビリティーにどのような影響を与えるかについての研究を行った。 Yahooのトップページに代表されるような一画面に沢山の要素を配置したデザインと、 全ての要素を左寄せで縦に配置したデザインの二つを用意し、 あらかじめ指定した要素にアクセスするまでの所要時間を計測した。 さらに使いやすさについてのアンケートを実施し、併せて解析を行った。 その結果、全盲者、ロービジョン、視覚に障害のない者のそれぞれにおいて、 webデザインがユーザビリティーに与える影響について ある程度の傾向が見られたので報告する。
口頭発表2
  • ―視覚障害者を対象とした実験的検討―
    天野 博透, 井上 崇也, 栗原 貴文, 大倉 元宏, 林 斉, 中川 幸士
    セッションID: O2-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    視覚障害者用道路横断帯を構成する突起の高さ5条件(1、2、3、4、5.26mm)の模型(45×45cm)を作成し、2つの室内実験により突起の高さと足裏での検知性の関係を調べた。

    【方法】
    実験参加者は視覚障害者10名(年齢22~64歳、男3名、女7名)で、全員にアイマスクとイヤーマフ、履き慣れた靴を着用してもらった。白杖は使用しなかった。実験1:模型5枚をはさんで、平板(45×45cm)を歩行開始側に10枚と停止側に2枚配した歩行路(幅45cm、全長765cm)を作成した。実験参加者には歩行路に隣接したテーブルの側面を利用してトレーリング歩行し、突起を検知できたら停止するよう教示した。停止するまでに要した模型端からの距離と歩数を測定した。高さ5条件をランダムな順で2回ずつ試行した。実験2:模型2枚をはさんで、平板を歩行開始側に5枚と停止側に2枚配した歩行路(幅45cm、全長405cm)を作成した。実験参加者は模型を2歩程度で通過したのち、突起を踏んだ印象を「まったくわからない、わからない、わかる、よくわかる」で評価した。突起の高さ5条件をランダムな順で1回ずつ試行した。

    【結果・考察】
    実験1:停止できなかった試行が高さ1mm、2mmにおいて、それぞれ6試行(30%)、1試行(5%)あった。高さ1~5mmの平均停止距離は、それぞれ106±29、92±46、60±18、59±16、64±17cmで、1mmは他に比べて有意に長かった。高さ1~5mmの平均歩数は、それぞれ2.85±0.77、2.23±0.80、1.92±0.27、1.77±0.42、1.69±0.61歩であった。突起を検知して停止できる最低限の歩数を2歩と考えると、高さが2mm以下では停止の困難さが推察される。実験2;高さ1mmと2mmの「よく分かる」「分かる」の合計の割合は、それぞれ10、80%であり、この間で評価が大きく変化した。2つの実験結果を安全性に配慮して総合すると、道路横断帯の補修の目安は2mmあたりにあると考えられる。
  • 村山 慎二郎, 青木 恭太
    セッションID: O2-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    始めに
    近年SKYPEやLiveMessangerなどの普及により、高性能のカメラが廉価で入手可能になった。カメラの感度も改善され応答性も改善された。今回これらのパソコンに接続可能な動画カメラを利用した拡大読書機用のソフトウエアを開発した。
    従来の拡大読書機の機能にこだわらず、機能を見直した。特に、色の強調やカラー反転は、弱視者の色判定能力を活用する事を目的として機能を吟味した。 さらに、健常者とともに作業を行うことを前提に必要な機能を選定した。
    晴眼者には隠されている内容が見えるハーフトーンのマスクなどがその例である
    今回リリース版の主な機能
    主な機能は以下の通りである。各機能には定義キーを割り当てた。
    (1)基本モードは、「カラー」「グレスケール」「白黒」「2色(例青と黄色)」を用意した。
    (2)反転表示は従来の「白黒反転」だけでなく、「カラー反転」も用意した。
    (3)コントラスト強調、明るさの調整も可能とした。
    (4)濃度が調整可能な「縦横のマスク」を用意した。「マスクの幅」「位置」についても調整可能とした。
    (5)カメラのズーム機能に頼らず拡大をする「デジタルズーム」を用意した。
    (6)色を強調し色の視認性を改善することを目的として「カラー強調モード」を用意した。
    (7)グレア対策としての白レベルの調整機能を用意した。 太い文字の資料を拡大し反転すると白の面積が多く、グレアを感じる場合がある。従来の2色モードでの対応に加え、白レベルを調整する機能を用意した。
    ゲームパッドを利用した簡単な操作
    操作には、キーボードの操作が可能であるが、低価格で入手可能なゲームパッドに拡大読書機の機能キーを割り当て利用できる設計とした。(別途フリーソフトが必要)
  • 石川 充英, 酒井 智子, 山崎 智章, 大石 史夫, 長岡 雄一
    セッションID: O2-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     視覚障害者の生活訓練施設である東京都視覚障害者生活支援センター(以下、センターとする)は平成22年4月から障害者自立支援法に基づく施設運営に移行する予定である。それにともない、新たに提供するサービス内容を検討する基礎資料を得るため、センターでの生活訓練を終了し、職業訓練施設を経て、主として一般事務職として企業などに就労した視覚障害者に対し、聞き取り調査を実施した。調査項目は、1)仕事で使用しているパソコン技術やそれ以外の技術、2)移動や日常生活に関すること、3)職場でのサポート態勢、4)生活・職業訓練施設への要望などである。
     その結果について報告する。
  • ―アジア各国における資格制度の比較を通して―
    指田 忠司
    セッションID: O2-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     わが国では、いわゆる「あはき業」(あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう)賀視覚障害者の伝統的職業として広く認められていることから、盲学校における職業教育、或は、中途視覚障害者の職業的自立に向けたリハビリテーションの課程でも亜破棄業への就業を目標にした指導が行われている。br  こうしたわが国の伝統は、近隣のアジア諸国、すなわち、大韓民国や台湾など、かつての日本植民地だけでなく、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、カンボジアなどの諸国についてもみられるところである。br  本研究では、こうした認識に立って、アジア各国におけるマッサージ施術を巡る法的規制の概要をスケッチするとともに、視覚障害者がこの職業分野で働く場合にとられている各国の資格制度について比較検討を試みる。その際、特に、視覚障害者に対するアファーマティヴ・アクションとして、どのような法的枠組みが設けられているかについても検討してみたい。
口頭発表3
  • 短期入所型生活訓練利用者へのアンケート調査報告
    内田 まり子, 畑野 容子, 菅原 美保, 原田 敦史, 安山 周平
    セッションID: O3-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターで実施している短期(7~10日間)入所生活訓練の「短期視覚障がいリハビリテーション」(以下短期リハ)について、効果があったかどうかを調べ、短期入所訓練の効果と有効性について検討する。
    【方法】
    2002年度から2008年度までに短期リハを利用した95名(10~70歳代)を対象とし、電話によるアンケート調査を行なった。聞き取りに要した時間は1名につき約20分だった。質問内容は受講訓練内容の活用や受講後の生活全般についてなど約30項目だった。
    【結果】
    短期リハでの訓練について、活用できているかという質問には、78%ができていると答えた。その内容は、段差の処理や電子レンジ調理など実際に訓練をした具体的なものだった。できていない理由では、生活環境で必要でないという回答があった。その後の生活に変化があったかという質問には、85%が以前より良くなったと答えた。具体的にどのような変化があったかという質問には、行動面の他、考え方が変わったとの回答が挙がり、精神的な面での効果が見られた。
    【考察】
    訓練内容を活用できているという回答が多かったのは、訓練プログラムを事前の聞き取りに基づいて組み、内容を絞って実施したためと思われる。また、集団で行うために精神面での効果が大きいことも分かった。施設入所というと長期間をイメージしがちだが、短期間でも内容を絞った訓練は一定の効果があり、その後の生活に活かされていた。しかし一方で必要でないからという理由で活用されていない訓練内容もあり、より生活の中で活かされるよう在宅訓練等と補完しあうことも必要と思われる。
  • 短期在宅訓練利用者へのアンケート調査から
    畑野 容子, 内田 まり子, 菅原 美保, 原田 敦史, 安山 周平
    セッションID: O3-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターが実施する、短期在宅訓練の「地域生活サポートサービス」(以下サポートサービス)利用者に対して、利用後の生活における訓練効果についてアンケート調査を実施した。この調査から得られた結果をもとに、本報告で短期在宅訓練の訓練効果と有効性について検討する。
    【対象と方法】
    対象:2005年度~2008年度に事業を利用した10~80歳代の115名 調査方法:電話による聞き取り(一名につき約20分程度)  アンケート内容:訓練内容の活用や受講後の生活について約30項目
    【結果】
    訓練内容を実生活で活用していると回答した人は全体の約66%、活用していないと回答した人は約34%であった。また、訓練後の生活に良い変化があったという回答は約68%であった。
    【考察】
    現在、我々が仙台市からの委託事業で実施している在宅訓練の2008年度実施回数は、一人平均11.1回である。一方、サポートサービスは県外へ出向いての訓練事業であるため、回数は一人につき1回~4回と少ない。そのため「訓練が足りなかった」という回答もあり、短期生活訓練では効果が得られないケースもあった。しかし、アンケート結果から、利用者の約70%が訓練効果を実感しており、回答の中には「単独で歩行ができるようになった」という技術的な効果だけでなく、「精神的に楽になった」というメンタル面での効果を挙げる利用者も見られた。このことから、短期在宅訓練は今後のサービス形態の一つとして有効ではないかと考える。
  • 花輪 瑞穂, 千葉 慎二
    セッションID: O3-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    1.背景と目的
     一般に,視覚障害者は白杖を使って歩行しているが,白杖によって周囲を知覚できる範囲は限られており,うっかり段差や障害物などを見逃して事故につながる危険性がある.本研究では,そのような白杖による検出の限界をカバーする歩行支援システムを提案する.
    2.歩行支援システムの概要
       本研究で提案するシステムは,視覚障害者の歩行を補助する目的で,白杖と併用して用いることを考えている.そのため,利用者の歩行の妨げにならないようなシステムのコンパクト化が求められる.本研究では,マイコンとCPLDと呼ばれるハードウェアデバイスを併用した組み込みシステムとして実現することで,システムのコンパクト化を試みた.本システムは足元の段差を検出する段差検知部と,頭部前方の障害物を検出する障害物検知部から構成される.検出方法としては赤外線の反射を利用した距離計測センサを用いており,段差や障害物を検出した場合はモータによる振動によって歩行者に危険を知らせる.段差検出センサは両足の膝上に装着し,足元の外側の斜め前方の段差を検出する.障害物検出センサは両肩に装着し,頭部前方1m以内の障害物を検出する.
    3.実験方法と結果
     システムのプロトタイプを作製し,屋外での路面状態・縁せき・くぼみ等の段差・前方の生垣や壁などの障害物といったさまざまな条件下での歩行実験を行い,各種センサ情報の測定をした.  測定データの解析により,段差検出センサ信号には歩行時の足の動きの変動によるノイズが発生するが,そのノイズパターンと段差検出時の信号変化のパターンが異なるため,デジタルフィルタによる信号処理を施すことで段差の検出は可能であると確認できた.障害物検出に関しては,通常の壁や生垣など様々な材質の障害物検出が確認できた.
    4.結論
     赤外線センサを応用した視覚障害者歩行支援システムを提案し,提案システムのプロトタイプを製作した.その後,プロトタイプを利用した様々な環境下での歩行実験を行い,提案システムの有効性を確認した.
  • 山本 利和
    セッションID: O3-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     年齢の低い視覚障がい児への歩行指導については、研究も少なく、十分な実績が示されていないようである。さらに、それ以上に、低年齢の視覚障がい児の中で高い割合を占める重複視覚障がい児への歩行指導となると、ほとんど実施されていないのが現状である。今回の報告では重複視覚障がい児への歩行指導の事例を映像で示し、キリンなどの歩行補助具を利用した実践があげている成果かを紹介する。また、成人への歩行指導の背景にある枠組みを、低年齢の視覚障がい児の歩行指導にそのまま当てはめることが困難なので、重複障がい児や低年齢の視覚障がい児への歩行指導を考えるための枠組みを提案する。
口頭発表4
  • 荒牧 和希, 長岡 雄一
    セッションID: O4-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     視覚障害者のリハビリテーション課題としては歩行やパソコン、点字といった訓練が行われている。どの訓練もニーズが高く、獲得すれば生活の質が向上し、その他の手段を用いて代替することが困難な特徴をもつといえる。(歩行以外の方法で移動、パソコン以外の方法での文書入力やインターネット、点字以外の方法で文字を読み書きするのは困難) 2009年度から日本点字図書館では新しいテープ図書の製作が終わり、2011年度にはテープ図書の貸し出しからデイジー図書と切り替えることとなっている。それ故、視覚障害者が本を読むため、または通信を発行するためにデイジー図書の再生録音機を使用することが望まれてくるだろう。 機器の種類にはプレクストークやVR-Streamがあり、インターフェイスや音声ガイドがよく研究され、マニュアルも墨字や点字CD、テープが用意されていて充実しているが、実際に視覚障害者に聞いてみると手元にあるものの使用法が分からない、マニュアルを読んでも(聞いても)理解できない、機能の一部しか使用していない、使用できるか不安で申し込めない、箱のまま手をつけていないという意見が目立った。実際筆者もマニュアルを読みながら使用法を覚えたが、再生・停止、早送り、巻戻しなどデイジーを聞く上で最低限度必要な操作はすぐに理解できたが、タイトル、フレーズを理解し、応用するのには時間がかかった。 そこで、東京都視覚障害者生活支援センターでは、デイジー図書の再生録音器がその他の機器を用いて代替させることが困難なツールで、それを訓練することで視覚障害者の情報収集や自立助長につながると考え、訓練課題として行っている。 現在、当センターでは基礎的な操作を習得した視覚障害者に対し、授業の録音を整理するにはどうしたら良いか、料理でレシピを整理して録音したい、2つ以上の機種を使い分けたい、パソコンでデイジー図書を管理したいといった実生活上の高度な操作が求められる質問の対応に追われている。
  • 永井 和子, 大町 律子, 岡野 光成, 金子 忍
    セッションID: O4-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     平成13年から始まった社会福祉協議会の「視覚障害者の集い」に盲ろう者が参加し始めたのは、市町村合併時の平成18年4月であった。視覚障害者だけの「集い」に盲ろう者が参加するということで、「集い」の担当者が心配したのは、見えない人が触手話での通訳に時間がかかることを理解し、待ってもらえるだろうかということであった。しかし毎回触手話で通訳していることを担当者が参加者に伝え、そして、盲ろう者を含む参加者が仲間として語り合うことにより、その心配は不要となった。
     1年後、「集い」参加者の一人の盲ろう者が地域の障害者福祉サービス事業所を利用し始めたと聞いた。とても嬉しいことだが、市専任手話通訳者は、ほとんど関わりが無いという。市福祉事務所の担当者へ事業所職員の盲ろう者への対応はスムーズにいっているのかと尋ねた。事業所が対応について専門的な助言を待っているとしたら、そしてそれを何処へ依頼したらよいかが分からずにいたら、ただ通所しているだけでお客さん的存在になっている盲ろう者が気の毒であると思った。早速動いてくれた市担当者により、筆者は事業所からの相談を受けた。「デイサービスたすかる」の職員と出会った時はその熱意と努力に頭が下がる思いであった。利用状況を見学させてもらい、状況説明と対応方法、方針について話を聞き、基本的な考え方が分かった。職員総出で一人の盲ろう者への対応を考え、悩み、学ぼうとする意欲に、筆者は感激し何も助言することはないのではないかとも思った。その後職員研修を行い、日々の対応に職員は少しずつ自信を持てるようになっていった。
     今回は全国的に珍しいと思われる盲ろう者が他の障害者と共に福祉サービスを利用していることを知っていただき、そのことにより本人自身はもとより事業所職員と他の利用者が変化していった過程をお伝えしたい。そして、今抱えている課題を解決し、今後このような事業所が増え、それが当たり前の社会へとなっていくことを願うものである。
  • ―疫学的うつ病評価尺度CES-Dによる評価―
    安藤 伸朗
    セッションID: O4-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】わが国では、自殺死亡者が毎年3万人を超え国民的問題になっている。うち3割は「抑うつ症状」が原因とされている。一方視覚障害者に睡眠障害が多いというデータがある。睡眠障害は抑うつ症状と関連が深い。では視覚障害者に抑うつ症状が多いのか?今回は今回は今回は眼科手術患者を対象に、抑うつ症状を評価した。
    【方法】疫学的うつ病評価尺度 (CES-D~Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)を用いて、抑うつ症状の評価を行った。この評価法では、20の設問にスコアが与えられ、合計スコアが 16 以上である場合、過去 1 週間の抑うつ症状亢進症状が深刻であることを示す。
     対象は、平成20年7月1日から14日まで、当科で手術を受けた60名の術前患者(一部は術後も施行)。年齢は23から95歳、男性28名女性32名。眼疾患は、白内障が主で、ほかに緑内障、網膜剥離、糖尿病網膜症であった。
    【成績】60名中合計スコアが16以上の抑うつ症状亢進を呈したのは、7名(12%)であった。CES-Dによる正常人の時点有病率は2~3%であり、今回の眼科手術患者の抑うつ症状亢進の割合は、有意に高率であった。
    【結論】眼科手術患者に、抑うつ症状亢進が多いことが示された。眼科医は、眼科手術を受ける患者は抑うつ症状が亢進するリスクが高いという認識を持ち、そうした患者に対しては抑うつ症状のスクリーニングを日常的に行うことを考えに入れておく必要がある。
ポスター発表
  • 小林 幸一郎, 小田 浩一, 高梨 美奈
    セッションID: P-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     この発表の目的は、視覚障害者を対象としたフリークライミングの教育的プログラムの効果を調べることであった。
     フリークライミングは視覚障害者の運動機会拡大に加え、自己効力感の向上による社会生活への積極性の獲得も考えられることから、その効果をより一層引き出すため、このスポーツの特性を活かした「教育プログラム」の実践を試みた。
     2008年9月筑波技術大学(茨城県)の視覚障害のある学生を対象とした3日間にわたる体育集中授業としてフリークライミング指導を実施。 フリークライミング未経験の5名の学生が受講し、内訳は以下のとおり。(20歳代3・30歳代1・50歳代1、女性1男性4、全盲2弱視3)。 また実施場所はすべて人工壁で、2日目のみが屋外設置の施設となった。
     通例フリークライミングの指導では、個人の登攀能力や技術の上達を目指すことが一般的だが、今回は「自分で命綱を結ぶ」「他人の安全確保を行う」「晴眼者の指示なく登る」など、自己責任やパートナーシップ、創意工夫などを意図的に重視した3日間のプログラムを構成。
     効果測定として、インタビューによる学生の変化と、主に野外活動で用いられることのある調査票を用いて自己効力感尺度を測定。また担当教員と日常との違いも検討。
     結果として自己効力感指標の大きな優位は表れなかったが、インタビューや担当教員からのヒアリングでは大きな変化を表した。
    これらのことから、スキルアップを重視したスポーツとしてのクライミングではなく、クライミングの特性を活かした教育プログラムは積極性の獲得に有効である。教育だけでなくリハビリテーションなどの現場でも「教育的プログラムとしてのフリークライミング」の活用価値は高いことを示唆する。
  • 山中 幸宏
    セッションID: P-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    目的)周辺からの光を遮断するインナー型サイドシールド「レチノマイドゥ」が発売された。発売にあたり、使用具合をモニターした結果を得たので報告する。

    方法)2009.3月~5月にレチノマイドゥをモニター使用した30名に使用具合を聞き取り調査した。

    結果)おおよそ90%の方に、インナーシールドを装用しないケースと比べて自覚的なまぶしさが抑えられたという結果が出た。

    考察)周辺部からの光の遮光を行うことを考えることは今後遮光眼鏡を考える上で大切な要因になると考える。
  • 山中 幸宏
    セッションID: P-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    目的)既製のガリレイ式弱視眼鏡では、Eschenbach社製ニューロービジョンレンズなどがあるが、視野が21.7度である。このたび、琴の楽譜を見る・パソコンを使用するなどの目的で、より高視野のエイドを求められた方に、メガネレンズを使用してハンドメイドの弱視眼鏡を試作し知見を得たので報告する。

    方法)非検者の希望する距離に合わせて、接眼レンズに眼鏡レンズの-20.00D対物レンズに+13.00Dを使用して1.5倍/視野約36度のガリレイ式の弱視眼鏡を試作した。

    結果)約70cm離れた所に置いた琴の譜面や60cm離れたパソコンのモニターが見えるようになった。

    考察) 1・ガリレイ式エイドの視野の広さは対物レンズの口径で決まるが、プラスティック製のプラスレンズの最大作製度数である+20.00Dで有効径47mmのレンズが最も望ましいことが解った。
    対物レンズの度数を弱くすれば、より口径の大きなレンズが作製可能であるが、その場合筒長が長くなり、眼鏡に保持できなくなることと、かえって視野が狭くなることがわかった。
    2・非球面レンズを使用すると眼前からの距離が12mmより長くなるため収差が大きくなることがわかった(眼鏡レンズとして非球面設計をしているため眼前12mmから変わると収差が生じる)。
    3・高倍率のエイドにすると、筒長が長くなり眼鏡に対する保持が困難になることと視野が狭くなることがわかった。

    まとめ)1.5倍程度の低倍率であれば、ハンドメイドで36度の視野を持つガリレイ式弱視眼鏡が作製可能であることがわかった。
  • 宮城 愛美, 飯塚 潤一
    セッションID: P-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    視覚障害のある学生のICT(情報通信技術)利用の実態を把握し、利用時の問題点、課題を抽出する。
    【方法】
    筑波技術大学保健科学部の1~3年生(全員が視覚障害のある学生)を対象に、パソコン・インターネット・携帯電話の利用する機能・サービス、利用時間、課題とその対処方法について質問紙によるアンケート調査を実施した。
    【結果】
    筑波技術大学保健科学部(保健学科(鍼灸学専攻、理学療法学専攻)、情報システム学科)の全学生118人に質問紙を配布した。有効回答者数は61人(回答率51.7%)だった。
    携帯電話の利用時間は、“1時間以上2時間未満”が32.8%と最も多かったが、“5時間以上”利用する学生も11.5%いた。補助機能の利用は75.4%で、文字サイズの拡大、色設定の変更、音声読み上げの順で多かった。83.6%がインターネットで音楽・動画などのコンテンツを利用していた。利用時の課題対処方法は、全学科では“取扱説明書・ヘルプを読む”が多かったが、情報システム学科は“インターネット、メーリングリストで解決方法を検索する”が最も多かった。
    パソコンの利用時間は、“1時間以上2時間未満”が27.9%と最も多かったが、“3時間以上5時間未満”、“5時間以上”もともに23.0%と多かった。スクリーンリーダーの利用は37.7%で、PC-Talker、95Reader、JAWSの順で多かった。画面拡大ソフトの利用は49.2%で、Windowsのユーザー補助機能を利用する学生がほとんどだった。86.8%がインターネットで音楽・動画などのコンテンツを利用していた。ブログなどのコミュニティサービスの利用は49.1%で、特に情報システム学科の利用が多かった。利用時の課題対処方法は、全学年とも“周囲の人に尋ねる”が多く、他者に依存する傾向があるが、学年が上がるほど“取扱説明書・ヘルプを読む”の割合が増え、自力で解決する学生が増えていた。
    【結論】
    学科・学年によってパソコン・携帯電話の利用状況に差がみられた。今後は、利用が活発でない学科・学年を対象に、情報通信機器のアクセシビリティを踏まえた教育を十分に行い、学生のICT活用を促進していく。
  • 島津 典子, 田上 和子, 岡部 道隆, 新井田 孝裕, 四之宮 佑馬, 青木 恭太, 村山 慎二郎
    セッションID: P-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    L.V.P(弱視親子の会)の発足活動について
    1.はじめに
    弱視親子の会は、鳥取県西部の弱視児と保護者を中心として平成21年2月8日に 発足した任意団体です。発足の目的は「弱視児の指導ノウハウを、指導教職員 、本人、保護者とICTサポートスタッフ、眼科医のグループで継続して共有し、よりよい学習環境をつくること」です。今回は、発足の経緯と発足記念講演の内容および、今後の活動方針等を報告します。
    2.弱視親子の会の発足
    平成20年8月に開かれた科学へジャンプサマーキャンプに参加し、弱視者を含む視覚障害者を指導できる人材や多くの情報に接したことがきっかけです。
    さらに、視覚障害者のICT支援のため、NPO SPANで弱視者の指導を行っているスタッフと、眼科的な指導に国際医療福祉大学の眼科医と視能訓練士等のサポートを受けることとしました。 また、弱視児の保護者が、各地域で私どもの様な親子の会を立ち上げる事への 協力も会の使命の一つです。
    3.発足記念講演
    平成21年3月25日に、米子市と米子市教育委員会の後援を受けて講演会を実施しました。参加人数が40名をこえたことは、地域が渇望している情報であることを示しています。ほとんどの参加者が弱視さらに色覚障害についてのサポートについては初めての経験でした。当日は、パソコンのフィッティングの実演を実施し、サポート方法を参加者で体験しました。
    4.各弱視児の所属学校においての支援体制づくり
    所属学校において支援体制や指導方針、指導方法を検討するよう保護者が学校に働きかけ、鳥取盲学校の地域支援部に協力の依頼をし、少しずつ成果を上げています。
    5.今後の活動予定
    STEP-1 メールマガジンの発行 終了
    STEP-2 ホームページの開設
    STEP-3 リモートサポートの実験
    STEP-4 NPO法人化
  • 北神 あきら, 園 順一, 松坂 治男, 新井 愛一郎, 村山 慎二郎
    セッションID: P-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    始めに
    平成20年度より財団法人 機械産業記念事業財団の事業として、視覚障害者に対するパソコン指導者養成講座の開催とSkypeを利用した、視覚障害者への遠隔IT指導を開始している。今回は、この2年間の実施状況とそこで明らかになった問題点等を報告する。
    視覚障害者に対するパソコン指導者養成講座(平成20年度)
    開催場所は、旭川市、北九州市、福島市、東京都港区、静岡市、東京都江東区の計6箇所で、参加人員は76名。OSはWindowsXPのパソコンを利用して行った。いずれの会場も経験の少ない者から10年を超す人までが受講した。講習内容は、視覚障害者の基礎知識や関連ソフトウエアの紹介、スクリーンリーダやアプリケーションソフトの操作および指導法、アイマスクをつけての操作と指導体験等であった。特にアイマスクを使用した体験は新鮮な感動を与えると共に、指導の難しさを体験することができたとの感想が多かった
    また21年度からの利用を前提に、WindowsVistaのテキストを作成した
    視覚障害者に対するパソコン指導者養成講座(平成21年度)
    前年度に作成したWindowsVistaのテキストを使用して実施中である。
    遠隔IT指導
    視覚障害者にとって「移動」は大変大きな問題である。今回のSkypeを活用した 遠隔IT指導は、この移動の困難性を打ち破り、「学びたい」という視覚障害 の熱い思いに応えていくものである。
    講師と受講者と2名のサポータ計5名が1組になり、Skypeの会議機能を利用 して、一回が90分で、16回の講座を5組で実施した。 平成21年度も引き続き実施を予定している。
    新たに作成したWindowsVistaテキストの特徴
    指導者を対象にしたものと、初めてパソコンに触れる視覚障害者を対象としたもののほか、遠隔IT指導の指導者用、ならびに受講者用の合計4種類のテキストを制作した。
  • 京都府身体障害者更生相談所との取り組み
    神屋 郁子, 野崎 正和, 牧 和義, 田尻 彰
    セッションID: P-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
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    【はじめに】2004年より京都府身体障害者更生相談所(以下、更生相談所とする)主催の地域(年間6市町村)での「視覚相談会」の企画を共に行い、相談員として京都ライトハウスの歩行訓練士が参加している。施設だけでの開催と行政と一緒に取り組むのでは成果に大きな違いがあるのではないかと考える。この5年間、行政機関である更生相談所と開催した相談会を振り返り、その意義を検証したい。
    【経緯】2004年度から更生相談所は「視覚障害」の来所や巡回方式での手帳診断及び補装具判定業務は廃止することを通達した。その通達を知り、更生相談所が相談業務をどのように位置づけしているのか尋ね、地域での相談機会の必要性などを確認していった。そこで、生活相談を中心とした相談会を共に行うことを提案し開催することとなった。
    【広報】更生相談所と京都ライトハウスが行うものとを整理して同じチラシを配布している。更生相談所からは、開催市町村の福祉課へ概ね過去5年以内に身体障害者手帳(視覚障害)を交付された方への案内を行うように連絡をされているのが大きな特徴である。京都ライトハウスからは、京都府視覚障害者協会の支部など当事者や地域の医療機関へ案内を行っている。
    【内容】個別の生活相談と便利グッズの紹介から始まり、ロービジョン相談や体験コーナー、年2回の講演会の実施。今年度からは関西盲導犬協会や音声読み上げ携帯メーカーなども相談会に参加するなど毎年企画内容に変化をもたせている。
    【成果と課題】行政機関と相談会を開催することにより主に以下のような成果があった。
    ・開催地域の福祉課の方が会場へ来られ地域との連携がとれるようになった。
    ・公的機関の会場確保ができ手続きや費用負担が軽減される。
    ・新規手帳取得者への情報提供ができる
     課題としては、相談者の来場者数に差がみられるので地域特性などを考慮した案内方法を今後は検討する必要があるのではないかと考えている。
  • 田邉 正明, 魚里 博
    セッションID: P-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
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    【目的】単眼鏡は遠方を見るための補助具であるが、鏡筒を長くすることで近方を見ることができる。しかし、単眼鏡の表示倍率は遠方視をしたときの角倍率で表記されており、近見視の拡大の評価がされていない。そのために近見視の一般的な補助具である拡大鏡の倍率と比較することができない。そこで近見視をしたときの単眼鏡と拡大鏡を同じ基準で評価する方法を明らかにする。
    【対象と方法】作業距離が鏡筒に記されており、スケールが示す作業距離に合わせればピントが合うように工夫されているNEITZの単眼鏡PKシリーズを対象とした。拡大鏡の単レンズと比較するために、単眼鏡の接眼レンズと対物レンズの2枚レンズを1枚の薄いレンズと考えたときの等価屈折力、等価屈折力に対応した作業距離、鏡筒の長さの変化率を求める一般式を導出し、等価屈折力、作業距離を記載したスケールを作成した。
    【結果】近見視をするために単眼鏡の接眼レンズと対物レンズの焦点距離の合計より鏡筒を長くしたときの等価屈折力は負となり、主面は虚像を生じるように算出された。光路図では正立像が実像で結像されるが、単眼鏡ではプリズムの作用で倒立像として結像した。そこで、実像を生じさせる正の屈折力を持つ主面を定義し、正の等価屈折力(Fe)を求める一般式を導出した。a: 作業距離、F: 対物レンズの屈折力、Fe: 等価屈折力、m: 角倍率とするとFe=mF/(aF-1)となった。つまり作業距離はa=m/Fe+1/Fで求められ、鏡筒は等価屈折力が1D増加すれば1/mF2だけ長くすればよいことが導出されたので、最短の作業距離に対応した等価屈折力から0Dまでのスケールを作成し、単眼鏡に貼り付けた。
    【結論】単眼鏡に貼られた等価屈折力と作業距離が記載されたスケールで、必要とされる等価屈折力、作業距離に適した鏡筒の長さに調節可能となり、適切な単眼鏡、拡大鏡を選択できるようになった。
  • 山田 明子, 仲泊 聡, 西田 朋美, 三輪 まり枝, 関口 愛
    セッションID: P-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
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    【目的】
     遮光眼鏡は羞明に対する補助具として、広く使用されているが、信号の色が見えにくい、食べ物の鮮度が分かりにくいなど、遮光眼鏡装用による色覚異常が、日常生活の不便さの一因となっている場合がある。本研究では、正常被験者と色覚異常を認めない網膜色素変性症患者に、遮光眼鏡装用下でパネルD15テストを行い、遮光眼鏡によって生じる色覚異常について検討を行った。
    【方法】
     眼疾患を有さない正常被験者5名(男性1名、女性4名、平均34歳)と標準色覚検査表(第2部 後天異常用)で異常を示さない網膜色素変性症患者4名(男性1名、女性3名、平均54歳)を対象とした。遮光眼鏡はHOYA社のDG,YB,YG,YE,OB,東海光学社のFL,NA、AC,FR、NL,BR,YG、MGの13種類を使用し、それぞれの遮光眼鏡を装用して、パネルD15テストを行った。結果は正常から軽度異常を示すpassと重度異常を示す failに分類し比較した。
    【結果】
     正常被験者では、YG(東海光学)で5名中5名、BRとOBでは5名中4名、FRで5名中1名がfail(3型)を示したが、その他の遮光眼鏡は5名全員がpassを示した。
    一方、網膜色素変性症患者では、YG(東海光学)、BR、OBで4名中4名、FRで4名中2名、YEでは4名中2名がfail(3型)を示し、その他の遮光眼鏡では4名中全員がpassを示した。
    【考察】
     正常被験者および網膜色素変性症患者のすべてがfailを示したYG(東海光学)、BR、OB、少数ではあるがfailを示したFR、網膜色素変性症患者のみでfailを示したYEについて、その透過率の特徴を錐体の視物質の吸光度曲線と比較したところ、これらのレンズは青錐体の感受性の最も高い波長(437nm)を透過する割合が10%以下であった。一方、同帯域を15%透過するYBでは、すべての被験者がpassを示すことから、青錐体の感受性の高い波長帯域を透過する割合が10%以下であるレンズを処方する際には、色覚の変化について注意が必要と思われた。
  • 山口 えり, 小田 浩一
    セッションID: P-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
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    【 【目的】家電製品のパネルをデザインする際に文字の縦横比の変形が行われるが、実際にはどこまで変形も視認性を維持できるのか分かっていない。平仮名、カタカナ、漢字などそれぞれの文字が持つ特徴によって視認性を維持できる比率があるのではないだろうか。本実験では仮名文字の特徴に注目し、ひらがなの視認性を定量的に求めた上で、同様の方法でカタカナで行った実験結果と比較することで文字の構成特徴と縦横比による視認性の変化の関係を検討した。
    【対象と方法】刺激にはひらがな清音46文字でモリサワ新ゴシックLを使用し、縦横比0.2~5の範囲を対数間隔で9段階に変化させた。縦横比ごとに、認識の正答率100_%_となる大きさから0_%_になる大きさまで対数間隔で7段階に変化させた。被験者は提示された7つの大きさでランダムに変化する文字を認識する課題を20回繰り返した。正答率が50_%_になる文字サイズを推定して比較し、それを幾何平均した値を閾値文字サイズの指標とした。被験者は裸眼または矯正で少数視力1.0以上の晴眼の日本人20人であった。
    【結果】ひらがなの縦横比の主効果は有意であった(F(8,152)=46.753,p < .001)。仮名の種類と縦横比を要因とした2要因の分散分析の結果、共に主効果は有意であり(かな:F(1,342)=7.845 p<.01)(縦横比:F(8,342)=15.956 p<.001)、交互作用は見られなかった。
    【考察】ひらがなの縦横比の変化は文字の視認性に影響を及ぼすことが分かり、1:0.3 ~ 1:1.49 までの変形であれば、正体とほぼ同じ視認性を維持したまま変形が可能であることが分かった。仮名の主効果が見られたことから、カタカナとひらがなという画数の少ない文字でも構成線が直線か曲線かという特徴で視認性に違いがあることが分かった。
  • 山中 今日子, 小田 浩一
    セッションID: P-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】主観的な視認性評価が文字の画数の多少とウェイト(線の太さ)から受ける影響は呈示文字サイズによってどのように変化するか、質問紙を用いて調査した。
    【方法】刺激は良く使われる漢字の画数分布に合わせてサンプルした1画~20画の90字(加藤・横澤)を画数で4グループに分け、各グループから4文字ずつランダムに抽出した。モリサワ新丸ゴシックのウェイトL,R,M,B,Uを用い、普通紙に2400dpiのレーザープリンタを用い文字サイズは35,22,14,9,6pointでランダム順に印刷した。調査対象者は大学生6名で、見やすい・どちらとも言えない・見にくいの3段階評価を行った。
    【結果・考察】評価得点に対する画数,ウェイト,文字サイズを要因とした三元配置の分散分析では三要因の主効果及び全ての組み合わせにおける交互作用が有意であった。(画数:F(3, 15)=87.76, p=.00、ウェイト:F(1.52, 7.58)=50.69, p=.00、文字サイズ:F(1.27, 6.34)=6.45, p<.05、画数×ウェイト:F(2.32, 11.60)=56.75, p=.00、画数×文字サイズ:F(3.47,17.34)=28.51,p=.00、ウェイト×文字サイズ:F(1.72,8.62)=6.48, p<.05、画数×ウェイト×文字サイズ:F(3.92, 19.59)=5.64, p<.01) 文字の複雑さによって読みやすいと感じるウェイトの値は異なると言える。また、この画数とウェイトが主観的視認性にもたらす効果は文字の大きさによって変化し、読み素材として身近な文字サイズでは日常的に見慣れているフォントに近いLやRを画数に関係なく好むことが示唆された。またこのサイズを下回ると、ウェイトが太く画数の多い文字の視認性が急激に低下し、逆にこのサイズを極端に上回るとLよりもR,Mを好む傾向が伺えた。
  • トライアル事業 その3
    西原 健司, 柳澤 嘉紀, 寺田 真也
    セッションID: P-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    2007年度より継続している、リハビリテーションのトライアル事業について。 その後の経過などを報告する。
  • 小林 章
    セッションID: P-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     日本ではストリームライト社のスティンガーシリーズが、ロービジョンの人たちにも良く知られ、利用者も多い。しかし、最も明るいウルトラスティンガーは大きくて重量があり、とても女性が使える道具とは言えない。そこで筆者は2004年から小型LEDライトの有効性を検証してきた。その結果、その当時入手可能であったLuxeon® Star LEDの3W以上のLEDが組み込まれたライトを路肩の白線に当てて使えば、視力が0.1以上ある求心性視野狭窄3度以上の人であれば、快適な歩行速度で歩くことが可能であるという知見が得られた。しかしながら、絶対的な明るさが足りないため、さらに視力の低い人には使えないという評価を受けた。
     ところが、昨年頃から1つの基盤に4個の発光体が組み込まれた「SSC P7」や「Cree MC-E」と呼ばれる低価格のライト用のエミッターが販売されるようになり、それを組み込んだLEDライトが何種類も販売されるようになった。残念ながら、日本の市場ではほとんど出回っていないが、ネット上で個人で購入すれば、35ドル程度で、ウルトラスティンガーを凌ぐパフォーマンスを発揮するLEDライトを入手することができる。
     筆者がもっともコストパフォーマンスが高いと判断したライトは長さ13cm、バッテリ込みの重さは160gである。3m前方の壁に照射したときの照度は約800ルクスで、これは最も明るいと言われたウルトラスティンガーよりも30%以上も明るい数値である。
     この報告では、筆者が現在最もコストパフォーマンスが高いと思われるLEDライトのスペックを報告し、新しいLEDライトの活用方法を検討する。
  • 吉野 由美子, 上光 陽子, 下元 佳子, 金平 景介
    セッションID: P-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    医療・福祉現場で働いている方を対象に、みえない・みえづらい方たちの抱えている問題に専門的に関わる「視覚障害者生活訓練指導員(歩行訓練士)」と言う専門職があること知っているか?
    人生半ばでみえない・みえづらい状態になった人達のリハビリテーションと言う分野があること知っているか?
    「知られていないこと」が、視覚障害リハビリテーションと言う専門分野の発展を阻害し、視覚障害者生活訓練指導員(歩行訓練士)の活躍する場を奪い、その結果みえない・みえづらい方たちが辛い思いをしていると言うことを、私たち関係者は以前から意識していたが、「どのぐらい知られていないのか」「なぜ知られてこなかったのか」について、きちんとした分析をしてこなかった。
     この事実に真正面から向き合い、克服する方策を探って行きたいと考え、その第一歩として、本アンケートを行った。
  • 視覚障害者向け機器展示室 「ルミエールサロン」を中心に
    金平 景介, 別府 あかね, 西岡 和美, 渋谷 晶
    セッションID: P-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    平成13年6月に視覚障害者向け機器展示室ルミエールサロンの開設依頼、年間約300名の方が来場し、平成21年3月まで、合計2874名の来場があった。視覚障害者当事者はもちろん、家族、地域の支援者(保健師、ヘルパー、ケアマネ etc),福祉関係者、病院スタッフ(医師、看護士、PT、OT、ORT)行政担当者、教諭、学生など多種多用な見学者が来場している。
    ルミエールサロンの周知と同時に、高知県の視覚障害リハビリテーションの事情も大きく進展してきた。今回は、これまでのルミエールサロンの見学者の推移と高知県の視覚障害者生活相談訓練の実績を報告し、そこから見えてきたこれからの地方における視覚障害リハビリテーションのあり方を報告、提案をする。
  • 当協会の視覚リハサービス受講者へのアンケート調査より
    菅原 美保, 原田 敦史, 内田 まり子, 畑野 容子, 安山 周平
    セッションID: P-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】2004年から2009年5月までに財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターに盲導犬を申し込んだ方のうち50%以上が当協会で実施している視覚障がいリハビリテーション(以下視覚リハ)を経験している。このことから、視覚リハの受講が盲導犬取得にどのような影響しているか調査した。併せて、盲導犬の取得を希望しない理由などもアンケート調査し傾向を分析したので報告する。
    【方法】アンケートは当協会で実施した視覚リハを利用した約200名に対して、「盲導犬を希望するか」「今すぐ希望しない理由は何か」など10項目を当協会職員が電話で質問紙を読み上げる形で実施した。
    【結果】 今回のアンケート回答者のうち、全体の約17%がすでに盲導犬を貸与されたか、現在申し込んで待機中という結果であった。 「盲導犬についての話を聞いてみたい」が53%、「盲導犬の歩行体験を希望する」が65%、「盲導犬との生活体験を希望する」が50%であった。 盲導犬を今すぐ希望しない理由は「白杖で十分歩けるから、家族やヘルパーとの歩行で十分だから」といったような現状に満足しているというところからの理由が21%、「世話が大変だから」が20%であった。
    【考察】 平成10年に日本財団が行った調査と比較すると視覚リハの受講者の中で盲導犬を希望する割合は多い結果となった。このことから視覚リハを受講することが、その後の盲導犬取得希望へつながっている可能性があると考えられる。 しかし、盲導犬を希望しない理由や盲導犬に対するイメージについては日本財団の調査結果と大きな差がない。併せて、約半数が盲導犬との生活体験等を希望しているということを考えると、盲導犬に関する情報提供がまだ十分ではないと考えられる。視覚リハの受講が盲導犬取得につながると可能性があるという結果を考えると、視覚リハ受講者に対し、もっと積極的に盲導犬の情報を提供する必要があるのではないだろうか。
  • 原田 敦史, 内田 まり子, 畑野 容子
    セッションID: P-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    日本盲導犬協会では、参加しやすい視覚リハサービスの提供という考えのもと、白杖歩行講習会を福祉センター等で実施してきた。今回、形を変えて病院と連携し院内で実施したことで、視覚障がい者の参加を増やすことができた。前年度は100名を超える参加があり、この方法は他地域でも効果的であると思われるため報告する。
    方法
    「見えない・見えにくい方の相談とすぐに役立つ生活講習会」という名称で実施し、内容は白杖操作、音声パソコン紹介、点字の触り方、日常生活の工夫で、2時間実施した。その後1時間は、個別相談や機器についての説明を行った。参加者募集は関係機関に案内をし、合わせて病院から患者に向けてアナウンスをしてもらった。
    結果
    2006年度は岩手県1か所で実施し、参加者は視覚障がい者が9名、その他(家族・病院スタッフ等)が7名の参加であった。2007年度は岩手・山形・青森県で各1か所ずつの合計3か所で実施し、参加者は視覚障がい者が14名、その他が16名の参加であった。2008年度は、岩手県で1か所、宮城・秋田県で各2か所、福島・青森・山形県で各3か所ずつの合計12か所で実施し、参加者は視覚障がい者が101名、その他が178名であった。参加者からは非常にいい体験となったという感想が多くあり、他のリハサービスの利用につながった方もいた。また病院からは毎年続けてほしい、患者の様子が明るくなった等の感想も寄せられた。
    考察
     病院での実施回数を増やすことで、福祉センター等での実施に比べて一回当たりの視覚障がい者の参加は平均で4名→9名と増えた。特に障害者手帳を持っていない、白杖を見たことがない方等、福祉センターなどで実施していたときには参加がなかったタイプの者が多く、早期の情報提供という意味で効果があった。各県にはロービジョンケアを実施していなくとも、視覚障がい者が通院しているところはあり、連携していくことができれば各地で開催が可能である。そういう意味では医療から福祉という流れを作っていくことができる一つの効果的な方法と思われる。
  • 安山 周平
    セッションID: P-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    財団法人日本盲導犬協会日本盲導犬総合センターでは、静岡視覚特別支援学校・沼津視覚特別支援学校の2校とそれぞれ連携し、静岡では3名、沼津では1名の学生を対象に年間を通して継続的な歩行訓練を実施してきた。訓練により一定の効果が得られたので報告する。
    【内容】
    静岡:平成19年度から「多様な人材活用学習支援事業」を利用して、年間約30回の訪問訓練を実施。1回の訪問では最大2名、学内の時間割に合わせ、一人約1時間の訓練を実施した。
    沼津:平成20年度から「特別非常勤講師」の制度を利用して年間12回の訪問訓練を実施。1回の訪問では一人に約1時間半の訓練を実施した。
    両校とも、訓練後には個々の生徒の歩行中の様子から読み取れる心理状態とその根拠、歩行技術の問題点等、その意図について教員に指導のポイントを伝えた。
    【成果】
    学生:静岡では方向・位置関係を答えることが苦手であった中学部1年生1名が18回(約15時間)、小学部6年生2名がそれぞれ8回(約6時間)と12回(約9時間)の訓練後、目的地までの歩行が可能となった。さらに現在地から離れた2点間の位置関係が答えられるようになるなどオリエンテーション能力に向上が見られた。
    沼津では外出意欲の低かった小学部5年生1名が2回(約3時間)の訓練を実施した段階で外出意欲が向上し、オリエンテーションの課題に取り組みながら目的地までの歩行が可能になった。
    教員:普段の学習において意図的に歩行訓練技術を応用した声掛けや指導が行われるようになり、学校生活と訓練の連携が継続的に図られるようになった。
    【考察】
    学童期の歩行学習に専門家が関わり、連携を図ることで、限られた時間の中でも歩行能力向上に一定の効果が得られることが分かった。歩行訓練士は各地に点在しており、どの学校においても同様の取り組みを実施できる可能性がある。視覚障がい児の将来を考えれば、ひとつの効果的な関わり方であると考えられる。
  • 田中 恵津子, 尾形 真樹, 西脇 友紀, 新井 千賀子, 小田 浩一, 平形 明人
    セッションID: P-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】中心暗点のあるロービジョン患者の読書困難の特徴は、高い拡大率が要ることと、偏心視のための眼球・頭部運動の制御の難しさにある。今回、拡大読書器での読書において、読書検査から推測された臨界文字サイズ(以下CPS)よりさらに大幅に拡大すると偏心視のための頭部運動が減少し、読書パフォーマンスの向上がみられた症例を経験したので報告する。
    【症例】85歳男性、両眼加齢黄斑変性で、矯正視力は右0.05、左0.15、両眼開放下で中心部を含む右視野に10度以上の暗点があった。PC版MNREAD-J(19inchモニタ, 1.1~1.7logMAR)による読書評価では、CPSは1.3 logMAR、最大読書速度は66字/分であった。
    【方法】拡大読書器上の文字をCPSから徐々に拡大していき読書の様子を観察した。変化が生じたときのサイズとCPSの二つのサイズ条件で速度と頭部運動についてビデオ分析した。
    【結果】読書の様子が変化したサイズを換算すると2.8 logMARで, CPSの約10倍であった。CPS条件(1.78logMAR)と比較すると、速度はそれぞれ79±26字/分と65±15字/分、頭部運動(1方向の動きを1回)は36回/分と94回/分で、2.8 log MARまで大幅に拡大すると読書速度も速く(p=0.08)、頭部運動も少なくなった。
    【考察】本症例にとって実際の最適文字サイズは検査から推測されたものより約10倍大きい2.8logMARであったが、検査に使用した19inchモニタで表示可能なサイズの上限は、輻輳の負担を要する極端な接近視を避けると約1.8logMARであり、検査から最適サイズの推測は困難であった。視力が1 log MARを超えたり(中村ら2000)、読書中の頭部運動が多い中心暗点の患者には、表示モニタを大きくしたり、拡大読書器を用いるなど、最適な文字サイズを見逃さない測定条件を整える必要があると思われた。
  • 久保 寛之, 角田 亮子, 釼持 藍子, 仲泊 聡
    セッションID: P-21
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     関口らは、縦方向の位置情報が視野狭窄によって影響されるかもしれないということを正常被験者に視野狭窄シミュレーションゴーグル(以下SG)を用いて実験的に示した。一方、釼持らは、楕円視標を用いて視野狭窄が視覚的形態認知に影響を与えるかどうかを同様の方法で検討し、明らかな縦横の歪みは生じないことを示した。前者の視覚刺激は、日常視に近い風景画像であったため、縦方向には横方向に比べ、奥行き情報などの影響が生じやすいものと予想された。この認知空間の歪みの原因を明らかにするため、関口らの実験よりも単純な視覚刺激を用い、そして釼持らの実験とほぼ同じ条件での実験を行った。

    【対象と方法】
     被験者はSGを装用し、視野狭窄条件を「制限なし、10度、7.5度、5度、3度」の5条件で測定した。視覚刺激は、黒背景上にひし形の4つの各頂点に相当する部位に小白点を配したもので、ひし形の歪み率を『(縦径―横径)/(縦径+横径)×100(%)』で定義し、歪み率を-10~+10(%)の1%刻みで視覚刺激を作成した。刺激サイズは、平均径を10度、20度、40度とし、各サイズそれぞれ22個(0%は2個)、全体で66個の視覚刺激をランダムな順で提示した。提示時間は3秒、刺激間隔は2秒であった。SGを装用し、_丸1_「縦長」と判断した場合、または、_丸2_「横長」と判断した場合にボタンを押し、反応時間を測定した(各視野狭窄条件で1回ずつ)。歪み率による反応時間の変化を「縦長」判断と「横長」判断で比較し、正方形と判断する歪み率を求め、これが視野狭窄の程度により変化するかについて検討した。

    【結果】
     SG装用下で視野狭窄になるほど反応時間は遅くなり、それとともに正方形と判断された場合の歪み率は横方向に大きくなった。

    【結論】
     今回の実験においても、関口らが示した縦方向の空間が歪曲する傾向が示された。ただし、その程度はわずかであり、更なる検討が望まれた。
  • 小田 浩一, 李 嘉賢
    セッションID: P-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】韓国語について視覚的な読み能力を評価する評価チャートを作成し、視覚正常の被験者に試用したので報告する。
    【対象と方法】27文字からなる韓国語の平易な文章を多数作り、読めるぎりぎりの文字サイズよりも小さいサイズから、50ポイント程度のサイズまで0.1logずつ変化させながら、韓国の明朝体を用い2400dpiで印刷したMNREAD形式の読書評価チャートを試作した。これを用い19名の韓国語を母国語とする視覚正常の被験者に読み評価を実施した。うち13人には、1~2週間の期間をおいて2回目の測定を行った。同時にランドルト環による視力検査も実施し読書視力との関係を見た。
    【結果】文字サイズが大きい間は安定した高い読み速度が得られ、一定の文字サイズを境に文字が小さくなると急激に速度が低下するという、英語や日本語など他の言語・文字について観察されているのと同様の読書速度の関数が得られた。読書視力文字サイズ、臨界文字サイズ、最大読書速度を他の言語と同じ方法で推定することができた。近見視力と読書視力、読書視力と臨界文字サイズの間に高い相関(それぞれr=0.71と0.79)が得られた。
    【結論】読み材料の言語的な統制を精緻化する必要が残されているが、韓国語についても読書関数や臨界文字サイズを測定することができ、読書評価チャートの試作としては十分な成果をあげることができた。結果は他の言語で知られている知見と基本的な性質として一致するものであった。
  • 触地図への道路種別とランドマークの付与
    山口 俊光, 渡辺 哲也, 南谷 和範, 宮城 愛美, 大内 進
    セッションID: P-23
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    1.背景
    視覚障害者用の触地図を作成する方法としてサーモフォーム,立体コピー,点字プリンタなどがある。しかし,いずれの方法も原型あるいは原図の作成段階で,晴眼者の関与が求められる.そこで我々は,視覚障害者の自立的活動のために,国内の任意の地点の触地図を視覚障害者自身が作成できるシステムの開発を行っている.

    2.これまでの経過
    これまでに,日本国内の任意の地点の触地図を出力できるシステムをWebアプリケーションとして実装し,公開してきた.このシステムはスクリーンリーダを使って操作することができる.触地図として出力したい場所の地名や施設名,住所をユーザが入力することで触地図の原図を自動的に生成する.生成された原図をカプセルペーパに印刷して立体コピー現像機にかけることで触地図が完成する.触地図には道路,線路,駅,水域が描かれる. 開発したシステムについて意見を広く集めるため,サイトワールド2008に出品した.また少人数の視覚障害者からより詳細な意見の聞き取りを行うためのワークショップを2回開催した.

    3.今回の提案
    比較的多くの人から,システムの改善意見として挙げられたのが,「線の太さで道路種別を表現する」と「ランドマークの表示」である.今回はこれらの意見をシステムに取り込み実装した.
  • 飯塚 潤一, 宮城 愛美
    セッションID: P-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     筑波技術大学所有の視覚障害者用補償機器を大学など高等教育機関に貸し出し,そこで試行した様々な活用事例を収集する。それらをデータベース化し,相談のあった大学に提供するなど,機器の活用情報を共有する。
    【内容】
     最近,一般大学から視覚障害者用補償機器の選び方やその有効な使い方についての相談が,本学に多く寄せられるようになってきた。潜在的に同様な問題を抱えている大学は相当数あると考えられる。
     以前から,当支援センターでは,最新の補償機器(約300製品)を揃え,在学生に貸出してきたが,その活用場面は,本学での利用環境に限定されていた。このため,他大学からの幅広い相談に対し,常に的確なアドバイスができるとは限らなかった。そこで,今般,

    『本学所有の補償機器を大学など高等教育機関に貸し出し,そこで試行した様々な活用事例を収集する。それらをデータベース化し,相談のあった大学に提供するなど,機器の活用情報を共有する』

    事業を立ち上げた。
     現在,貸出し対象は,本学が運営している“視覚障害学生支援ネットワーク(VISS-Net)”に登録している大学,高等専門学校など計54の機関である。
     すでに,貸出しを開始しており,携帯型拡大読書器の実験室での利用など貴重な情報が得られつつある。これらのデータはデータベース化し,ウェブサイトで公開することを予定している。
     この事業を推進することにより,各大学において視覚障害者用補償機器を活用した学生支援が効果的に行えると考えている。
  • 守田 稔, 藤原 義朗
    セッションID: P-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    2001年6月の通常国会にて、「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律」が成立した。その恩恵を受けて、2003年3月の第97回医師国家試験をはじめ、各種資格試験において、何人もの視覚障害者が実際に試験を受けることができた。他方、その受験方法や対応については、受験者の視覚障害の程度など、いくつもの要因により、様々な方法が取られており、手探りの中でケースバイケースのところが多いのが現状である。
    私たち「視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)」は、見えない、見えにくいというハンディーを持ちながらいろいろな医療関係職に従事する者が、情報交換を行なったり、親睦を深めていこうという趣旨の下に 2008年6月8日に発足した集まりである。このたび私たちの会では、会員の受験経験についてアンケートを行ったので報告したい。
    【結果】
    当日、ポスターにて6人の各受験ケースについて報告する。
    【考察】
    1.受験方法は、受験者の視覚障害の程度、受験者の各種代替手段に対する能力などによって、種々のケースがあり、とくに統一されてはいない。
    2.試験を実施する機関の特例受験に対する姿勢によって、受験しやすい環境となるかが大きく左右される。
    【まとめ】
    このたび私たちは、視覚障害者における特例受験ケースレポートについてまとめてみた。
    受験者の視覚障害の程度、パソコンや点字などの代替方法に対する受験者の能力、実施機関の特例受験に対する姿勢などにより、実際の試験は様々である。
    今後も、各種資格試験にて、視覚障害をもつ方々のチャレンジが続いていくものと思われる。受験方法については、画一的なものとするのではなく、受験者が他の受験者と同等に試験を受けることができる様な、フレキシブルな対応が期待される。このたびのケースレポートが、今後受験する方々にとって少しでも参考になれば幸いである。
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