視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第20回視覚障害リハビリテーション研究発表大会 in 九州
セッションID: 6
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口頭発表
歩行訓練に伴う余裕能力の変化
*大倉 元宏中川 幸士
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抄録

【はじめに】
 本研究の目的は、二次課題法により、簡便に単独歩行中の余裕能力を測定できる方法を開発し、もって、歩行訓練の段階における心理的ストレスの評価に応用することにある。

【方法】
 実験参加者は施設に入所して半年間のリハ訓練を受ける視覚障害者3名(男2、女1;35~62歳)と修了生1名(男、40歳)であった。修了生は対照として参加してもらった。訓練生のうち1名の程度等級は4級、他は1級であった。訓練を開始して3、5および6か月後の3回にわたって、二次課題法により、単独歩行中の余裕能力の測定を行った。二次課題は白杖と反対側の手に持った押しボタンスイッチを1秒に1回タッピングすることであった。歩行ルートは全長140m、大部分が歩道で、1か所幅員5mの道路が直角に交差しているところがあった。歩道部には点字ブロックが整備され、3つの曲がり角が含まれていた。実験参加者には、各測定日において、二次課題を行いながら、1往復することを求め、往路および復路の終点で、歩行中の不安感を10段階(10:非常に不安であった、1:まったく不安はなかった、5:その中間)で答えてもらった。また、往路出発前に電子メトロノームで1秒間隔のタイミングを知らせ、その後、二次課題のみを約1分間行わせた。

【結果と考察】
 歩行訓練の現場での応用のためには評価指標は簡便である必要がある。二次課題の評価に「最大変動量」(隣り合うタッピング間隔の差分(絶対値)の最大値)、「平均変動量」(隣り合うタッピング間隔の差分(絶対値)の平均値)、「変動倍率」(平均変動量から二次課題のみにおける平均変動量を減じたものを二次課題のみにおける平均変動量で除した値)を取り上げた。歩行訓練の進行に伴う各評価指標の変化をみたところ、訓練生に低減傾向がみられた。一方、修了生の変化はほとんどみられなかった。 二次課題の成績をみると、訓練生において、歩行訓練の進行に伴い、余裕能力の増大が伺われ、心理的ストレスの評価への応用が示唆された。

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© 2011 視覚障害リハビリテーション協会
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