視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
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教育基礎セミナー
視覚リハビリテーションと新しいコミュニケーションエイド
*尾形 真樹
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p. 39

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抄録

 コミュニケーションエイドとは、障害によって妨げられた情報のやり取りを復活・支援するために用いられる道具や機器である。

 タッチパネルの上で指2本の開閉(ピンチングと呼ばれる指によるジェスチャー)を行うことで画面上の文字や写真、図表などを簡単に拡大縮小可能なタブレットPCや電子書籍リーダーの登場は、ロービジョンの人の情報入手の方法を大きく変える可能性を持っている。iPadやKindleの登場で電子書籍の普及が進めば、小さい文字で紙に印刷されたものを拡大鏡やCCTVで拡大して読むのではなく、大きい文字で画面に表示されている電子書籍を読むというユニバーサルな読書環境の実現の可能性がある。
 また、日常生活用具ともいえるスマートフォンの普及は、視覚障害のある人たちが抱える周辺環境とのコミュニケーションの問題の軽減を図れる。判別したい物を手に取り内蔵カメラで撮影すれば、データベースとの照合によりそれが何かを判別し音声出力する。内蔵の通信機能(GPS・Wi-Fi など)を活用すれば自分の現在位置を確認しながら移動も可能である。
 タブレットPCもスマートフォンも凹凸のないタッチパネルで操作する。そのため、視覚障害のある人には使えないと考える人もいるかもしれない。しかし,音声認識技術の進歩による機器との対話型の音声操作も現実となりつつあり、たとえ目の見えない状態であっても言葉を発することができれば機器を操作可能な時が近くまで来ている。
 今後、視覚障害のある人のさまざまな場面での円滑なコミュニケーションのため、タブレット PC やスマートフォンなどの通信端末と通信技術の視覚リハビリテーションへの積極的導入は必要不可欠ではないだろうか。視覚リハビリテーションにおける新しいコミュニケーションエイドの可能性を考えてみたい。

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© 2012 視覚障害リハビリテーション協会
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