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最近、受障してそれほど時間を経ていない患者への対応を経験した。この経験は、病院機能の違い、制度の谷間・空白を感じさせるものであった。
事例1 N病院に入院中の患者(眼内炎により全盲70歳代)が、当病院のロービジョンクリニックを身体障害者手帳申請のため受診、今後についての相談も受けた。その後、N病院からの依頼で生活訓練専門職が同病院を訪れ、医療スタッフが室内移動を支援した。その結果、移動が全介助だった患者は見守りによるトイレへの移動が可能になり、看護計画の立案、医療スタッフによる自立の支援へとつながった。
一般的には、視覚障害のある患者の介助や室内移動の方法を知る医療職は少ないと思われる。視覚障害のある患者への対応や知識の有無により、患者のQOLに違いが出るのではないだろうか。視覚リハの存在や知識、室内移動等の技術を一般病院の医療職にも広め、連携する必要性を実感させられた事例であった。
事例2 S病院入院中に重度視覚障害となった患者が、入院訓練のためにセンター病院に転院。視機能は重度であったが、発病後間もないため身体障害者手帳が未取得で障害者福祉制度を利用できなかった。法外サービス等の利用を前提の単身居宅生活を目標とした訓練を実施。基本的な単身居宅生活が可能となった。また、S病院入院中からMSWと情報交換(行政への働きかけ、身辺動作についての工夫)を行った結果、MSWが早期の手帳取得を行政機関に働きかけたり、身辺動作についての改善が見られた。
これは、制度の空白に患者が位置した場合でも、関係する社会資源との連携が重要であることを再確認させる事例であった。
医療職への研修を行っている訓練施設、地域の社会資源などと日常的に連携しているところもあると思われる。そのようなところからのご意見などをいただき、今後のあるべき方向性を検討できればと思う。