視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
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シンポジウム
制度の空白
*渡辺 文治
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p. 55

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抄録

 我が国には、視覚障害に関して様々な制度がある。視覚障害者は、その時々において、必要な教育・福祉制度を利用することになる。それぞれの年代でそれぞれの関わりがなされるが、制度に必ずしも一貫性があるわけではない。そのため、制度の狭間となる空白地帯が発生する。
 七沢更生ライトホームの利用者は、感覚・歩行・コミュニケーション・日常・ロービジョン・レクリエーション等の訓練を受ける。退所後の進路は、職業・職業前・無職・その他に分類される。このうち、その他は、不明(逃亡もしくは無断退所)・死亡・他施設・病院であり、無職の多くは、家庭復帰である。家庭復帰の中には、単身生活が含まれ、訓練前は単独では生活できなかった人が含まれている。例えば、家庭内での自立度が高まったり、糖尿病の患者がインシュリン注射の自己注射ができるようになったり、日常生活に不可欠な作業が、ヘルパー等の助けを借りてできるようになる。これは大きな進歩である。
 しかし、訓練後も単独や家庭での生活ができない者が少数ではあるが存在している。
 ライトホーム利用者は、失明直後だけではなく、生活上の制限が表面化したときに利用を開始することが多い。この制限は生活訓練だけでは解消できない場合がある。
・医療・介護の必要度の高い者  ※ 服薬の管理や健康の管理ができない
・収入が無い、あるいは少ない  ※ 生活保護の対象にならない場合もある
・金銭の管理ができない     ※ 後見人制度の利用ができる訳ではない
・明確な意思の表明が出来ない  ※ 後見人制度の利用ができる訳ではない
・日常生活の技能が不足している ※ 訓練とヘルパー制度などで何とかなる(?)
これらの場合、一体どうすればいいのであろうか。
 単身で生活できるようにするには、手厚いサポートが必要となり、非常にコストがかかる。また、新たな社会的な関係を築くための時間も手間もかかる。年齢によって利用できる施設は限られる。これらを救うための有機的な利用が考えられるべきであろう。

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© 2012 視覚障害リハビリテーション協会
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