視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
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一般口演
中途視覚障害者への点字指導について
保有視覚・触知覚による概念形成を先行導入した指導の試み
*伊東 良輔武田 貴子中村 龍次柴垣 明
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p. 62

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抄録

【はじめに】
 福岡県北九州市が実施する「中途視覚障害者緊急生活訓練事業(以下、訓練事業)」の一環で、平成21年度より視覚障害生活訓練等指導者(以下、歩行訓練士)が、視覚障害リハビリテーションとして、中途視覚障害者を対象として開催している点字講習会について、「保有視覚・触知覚による概念形成を先行導入した指導方法の試み」として報告する。

【カリキュラム・教材開発までの経緯・方法】
 平成14年度より、点字講習会を開始。当事者講師を招聘し、1対1の対面形式で実施してきた。対面形式で実施する講習会では、受講者の点字学習における学習進度の差が大きく、目標設定が難しかった。
 そのため、訓練事業を担当する歩行訓練士は、目標と期間を設定した視覚障害リハビリテーションとしての講習会の必要性を感じていた。
 そこで、平成22年度より、3名の参加者で、点字の基礎知識のみを習得することに特化した全5回のスクール形式の講習会を企画し、点字習得を支援するカリキュラムと学習器を開発した。

【結果】
 講習会終了時に参加者の習熟度を「点字表記の基礎」と「点字イメージ」の2つの項目に分類し、9名を評価した。「点字表記の基礎」では、学習器を利用し点字表記クイズの正答率、「点字イメージ」では、点字板で文字を書き、「鑑文字」の発現率で評価した。その結果、点字表記の基礎習得率は100%、点字イメージの理解率は89%であった。
 本講習会は点字学習未経験者を対象とした、全5回の講習会で、あくまで点字学習の入り口であり、触読に関しては、今後の継続的な学習で獲得することを前提としたため、習熟度の評価に含まなかった。

【考察】
 中途視覚障害者の点字習得は非常に多くの年月を必要とするため、受講者、指導者共に多大な労力を必要とする。そこで、点字の基礎知識を習得することに特化した講習会を立案し、イメージと触知覚を一致させる指導法と学習器を考案した。その結果、9名の受講者全員が点字表記の基礎を理解することができた。現在の状況では、被験者の数が少ないが、今後も講習会の開催を継続し、実践を重ねデータを蓄積することで、より効率的な指導方法に繋げていきたい。

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© 2012 視覚障害リハビリテーション協会
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