視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
会議情報

一般口演
高齢視覚障害者の生活視力の実際的なケアについて
高齢視覚障害者施設における日常生活の実際から視機能を考える
*新阜 義弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 65

詳細
抄録

 研究目的として、高齢視覚障害者施設(盲老人ホーム)の専門的な設備とケアが、利用者の生活場面にどのように生かされ、生活面での視力と視野にどう影響するか考察した。
 中高年で、中途視覚障害者となり、在宅時には、移動も含めあらゆる生活場面で受け身で介護状態にある高齢視覚障害者が、入所後は、生活者として、少しずつリハビリ的な支援と共に、日常生活の中で、様々な生活ニーズを実現していくことや自立して行動範囲を確立していくことに着目したことから研究を開始した。
 その具体的な生活面での取り組みは、
1.日常生活におけるロービジョン者の生活課題としての食事に関する食器、食堂内設備、食材について考察していく。
2.高齢視覚障害者の居室整理と周辺情報のための心的地図のオリエンテーションの課題の考察。
3.安全な移動や場所確認のための生活視力の実際的な問題点。
4.住環境アセスメントからみた高齢視覚障害者の生活に必要な視力と視野の現状を探る。(施設内点字案内図・点字表示・音声エレベーター・点字ブロック・手すりの使用等を具体的に考察してみた。)
 この研究で、高齢視覚障害者の生活視力と視野は、専門的な設備やケアで大きく変わることがわかる。カラーリング、コントラスト・照明、手触り、丁寧な声かけと音声環境が、高齢視覚障害者の食事や食事環境、居室等の住居環境、館内外移動時の設備、具体的な施設設備での物的・人的なサポートに大きく影響されているといえる。
 結論的には、高齢視覚障害者の生活視力の実際的なケアは、視覚障害者リハビリテーションの基礎知識の活用と設備面での配慮、高齢者介護技術と生活支援のための支援者の援助の融合によって、眼科的な視機能が生活視機能として大きく変化すること、生活視力や生活視野は、医学モデルではなく、生活モデルとして確立していかねばならない分野であるといえるのではないかと考察した。

著者関連情報
© 2012 視覚障害リハビリテーション協会
前の記事 次の記事
feedback
Top