抄録
本報告の目的は、糖尿病網膜症や緑内障などで増加している高齢視覚障害者の基礎データ(高齢化の実態、地域で生活している高齢視覚障害者の状態像、外出の状況など)を把握し、その外出に関するニーズを明らかにすることである。四国地方A市(約4.5万人)の視覚障害による身体障害者手帳所持者全数(201名)に郵送アンケート調査を実施(回収率54.7%)し、有効回答から65歳以上の高齢者(65名)を抽出して分析した。
結果は、視覚障害者の65.7%が高齢者であった。地域で生活している高齢視覚障害者の状態像は、中途障害者が79.2%と多く、視機能はLV・不明者が80.5%であった。精神的にうつ傾向は53.8%にあった。高齢視覚障害者の中で、視覚障害以外の疾患や他の障害が理由で移動が困難な者は18.3%だった。
外出状況としては、「危険な外出(転倒・衝突の経験)68.8%」「閉じこもり(外出頻度週一回未満)44.6%」であった。家庭内での転倒経験ありは70.3%にあった。
A市における高齢視覚障害者の外出状態をまとめ、外出への関連要因として「年齢75歳以上」「中途障害」「家族」「福祉サービス活用」「精神的健康」に関して分析・検討を行った。
高齢期の視覚障害による生活習慣病リスク、転倒や骨折、うつ病などが指摘され、また寝たきりや認知症などの介護予防において閉じこもり対策は強化分野になっており、何よりも視覚障害者の生きがいや社会参加の向上のためにも「安全な外出」を保障することは重要な課題である。本報告による地域で生活している高齢視覚障害者の外出状況からも「安全な外出」を支援するサービスの必要性が示唆された。