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本実践報告は、東京都武蔵野市における中高年視覚障害者クライミング教室のセラピューティックレクリエーション(Therapeutic Recreation、以降TR)的視点を取り入れた試みに基づく報告である。
TRとは、疾病や障害など何かしらの問題をかかえる人々を対象に、レクリエーションを意図的・段階的に治療的に利用する専門的サービスのことをいう。米国では確立されたレクリエーションセラピストの資格が存在し、彼らは病院、施設、地域等で広く活躍している。
武蔵野市民社会福祉協議会では、市からの委託を受け、障害者の社会参加や自立を促す事業の一環として、スポーツ(エアロビ等)や文化活動(絵画・和太鼓等)を積極的に取り入れている。その事業の一つに2012年2月より3回に渡り、「視覚障害者対象 ボルダリング(クライミング)体験教室」が開催された。参加者は38~75歳(平均55.9歳)の男女7名であった。指導にはNPOモンキーマジックより2名の指導者(内1名は自身視覚障害者のクライミング指導者・1名は晴眼者のTR分野の指導者)が進行を行った。
参加者は、積極的に参加する様子が見られ回を重ねるごとに「面白い!」「できなくて悔しい。どうしたらいいか家で考えていました」「これははまる」「自分たちでサークル作りたいって話していたの」というポジティブな発言が多く聞かれた。また、同市社会福祉協議会職員からはひきこもりがちな男性Aさんの様子を見て「初めてAさんが自分から発言しているのを聞いた」という感想が聞かれた。
一概に「視覚障害」といえど、レクリエーションに自ら選択し、積極的に参加するに至るまでには、身体的、精神的、スキル、知識の問題等が考えられる。参加者が今どんな問題を抱えているのかを把握し、何を現在の目標とするのか等、意図的・段階的に行う今回のTR的視点を取り入れた試みは、視覚障害者クライミング教室の成功に繋がった要因だと考えられる。