視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
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ポスター発表
歩行ガイドロボットの現状と課題
*森 英雄丹沢 勉
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p. 91

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抄録

 歩行ガイドロボット「ニューひとみ」は、視覚障害者が朝の散歩や近所の友人宅の訪問などで利用するロボットです。従来のインテリジェント車いす「ひとみ」は、1.玄関から道路に出るまでによくある一寸した段差が乗りこせない、2.路面の凹凸により20センチメートルくらいよろめいて塀や縁石をこすり進めなくなる、3.駐車した自動車や自転車などの障害物にあたり動けなくなる、などの課題がありました。「ニューひとみ」は課題1を次のように解決し、2と3は次のような解決の途上です。
 課題1は、ロボットの車台の電動車いすを後ろ向き、すなわち、後輪を前にキャスターを後ろにし、さらにキャスターを大型の一輪にすることによって解決しました。そのかわり、人は乗れなくなりました。
 課題2と3は、ロボットが塀や障害物にあたったとき、やり直し走行、すなわちバックして少し方向を変えて前進する走行を導入しました。ロボットは障害物が何であるかを正しくは認識できませんが、おおよそのところを音声で伝えることにします。やり直し走行には、バックと前進の程度により幾つかのタイプがあります。利用者はそのなかから一つを選んで実行します。全自動ではなくて利用者が複数のやり直し走行の一つを選ぶのです。
 「ニューひとみ」は、盲導犬に比して階段が登れず、電車や車に乗れないなどの短所がありますが、操作やメンテナンスが簡単である、目的地までの道順はロボットが記憶する、 量産すれば製造コストは百万円ていどになる、などの利点があります。
 「ニューひとみ」の普及には、道路交通法の改正、厚生労働省の補装具の改正、盲導犬協会の協力などの社会的認知と産業の参入が必要です。社会的認知に至るには、ロボットのデモでは不十分で、視覚障害者が「ニューひとみ」を利用して日常生活を改善した事例を作ることが先決と考えています。

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© 2012 視覚障害リハビリテーション協会
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