視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
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ポスター発表
東日本大震災で被災された視覚障害者への眼科・ロービジョン対応
*山田 明子仲泊 聡西田 朋美岩波 将輝茅根 孝夫中西 勉久保 明夫三輪 まり枝西脇 友紀小松 真由美
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p. 90

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抄録
【はじめに】
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災によって、多くの被災者が避難所生活を強いられた。当センターにおいても、被災地からの障害者の避難受け入れを積極的に行ったため、当院で対応した被災地からの視覚障害者の状況について報告する。

【対象と方法】
 平成23年3月11日から9月30日までの期間に、当院で対応した視覚障害を有する被災者を対象に行ったケア内容についてまとめた。

【結果】
 対象は計7例であり、当センター入院避難2例、当センター内宿舎避難3例、眼科外来受診のみ2例であった。7例の疾患内訳は、網膜色素変性症4例、糖尿病網膜症1例、ベーチェット病1例、黄斑上膜1例だった。7例のうち、3例は眼科疾患の治療・管理、残りの4例には、ロービジョンケアを行った。ロービジョンケアの内容は、主に遮光眼鏡や拡大読書器などの視覚補助具の選定、歩行訓練、日常生活訓練であった。そのうち以下の3例は、震災に伴う強い不安やストレスを考慮した支援が必要であった。
1)50代 男性 網膜色素変性症。入院避難。帰郷の希望が強く、現地での生活基盤の確立に対するソーシャルワーカーによる支援を迅速に行う必要があった。
2)60代 男性 網膜色素変性症。入院避難。体力向上を目的としたリハビリ体育での運動プログラム等を行った結果、日常生活レベルの向上がみられた。
3)60代 女性 糖尿病網膜症。当センター内宿舎避難。視覚補助具に関するニーズよりも、環境変化による不安やストレスを強く訴え、補助具の選定に集中できる状態ではなかったため、傾聴がケアの中心となった。

【考察】
 今回のような避難受け入れでは、通常のロービジョン対応に加えて、環境変化から生じる不安、ストレスを考慮した支援が必要であった。また、帰郷先での生活基盤の確立には当院および帰郷先のソーシャルワーカーの連携が重要であり、各人それぞれの抱える多様なニーズに合わせた対応や連携が求められた。
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© 2012 視覚障害リハビリテーション協会
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