シミュレーション&ゲーミング
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Print ISSN : 1345-1499
閲読論文
ファシリテーションという教育実践への状況論的アプローチ―ディブリーフィングにおける「強制される自由討論」のパラドックス―
長岡 健
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2007 年 17 巻 1 号 p. 41-50

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抄録

本稿では,状況論的アプローチのフレームワークをもとに,プレイヤーとファシリテーターによる相互行為の組織化プロセスについて考察する.特に,学習の場における「正統性(legitimacy)」という概念を投用しつつ,シミュレーション&ゲーミングにおける学習者中心主義的なディブリーフィングに焦点を当てた分析を進める.そして,学習者中心主義的なディブリーフィングには,自由な討論が奨励される一方で,プレイヤーにとって討論自体に参加しないという自由のない,「強制される自由討論」とでも言うべきパラドックスが潜在していることを明らかにする.さらに,ファシリテーターによるプレイヤーの「取り込み(enrol)や,両者間の不均衡な権力開係か機能することで,パラドックスを露呈させることなく相互行為が組織化され,結果的に,シミュレーション&ゲーミングの中で学習者中心主義が具現化されていくプロセスを描き出す.以上を踏まえ最後に,学習者中心主義を背景にもつ経験学習アプローチが,学習者個人の心理状態に注目する一方で,相互行為を通じて変化する参加者の関係性には注目してこなかったことを指摘する.

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© 2007 特定非営利活動法人日本シミュレーション&ゲーミング学会
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