2009 年 19 巻 1 号 p. 61-72
本研究では,シミュレーションの評価を実証的分析にもとづいて行うのではなく,内部観測という観点からシミュレーションの参加者の意識や態度形成を追い,シミュレーションを外部から観察する者の視点とのギャップに注目してその評価を試みる.評価対象として,異文化理解シミュレーション Bafa Bafa の報告事例を取り上げる.ここでは,学習とか教育を,ある目標(学習目標や教育目標)に向かう過程とみるという姿勢は弱く,シミュレーション参加者が予想外の出来事に戸惑い,驚き,それがどういう態度となって現れるかという点について,参加者の様子から明らかにする.結果として,Bafa Bafa での体験が,必ずしも偏見やエスノセントリズムの創出を引き起こしている原因ではないこと,一般的に考えられることとは逆に, β文化参加者がα文化を訪問するときのカルチャーショックのほうが,意外性(疎外感を生じる)が高いのではないか,という可能性を示した.