2009 年 19 巻 1 号 p. 73-86
Greenblat(1988)に代表されるこの分野固有のゲーミングの設計手法に対して,教育分野には,教材開発などのためのインストラクショナルデザインの研究領域があり,その中で教育ゲームの設計も論じられる.ゲーミングの教育利用と教育ゲームとは極めて近い関係にあるが,その基本的な発想は大きく異なる.インストラクショナルデザインは個別学習を基本とし,ゲーミングは集団学習を基本とする.インストラクショナルデザインでは,逐次的な形成的評価を行いフィードバックを返すことが重視されるが,ゲーミングでは,ディブリーフィングのフェーズでのみ形成的評価とフィードバックが行われる.本研究では,40人学級で行う授業の場を想定して,効果的な形成的評価をどう行うのかという点に着目して,2つの立場の設計手法を比較する.特に,具体的実践事例として技術者モラル教育の場面を取り上げ,総体的な状況理解を促すことや態度変容を促すことを教育目標とした場合について議論する.